アレルギー性鼻炎に対する鍼灸治療では、鼻まわりの施術がメインとなります。
鼻炎症状を抑える特効穴として「迎香」「上迎香」「神堂」「神庭」があり、それらを経穴に鍼を刺していきます。
迎香と上迎香は鼻翼の横にあり、神堂は眉間部分、神庭は頭部にあります。
鍼を刺すばかりでなく、人によっては鍼に電気を流す『鍼通電療法』も用いて症状改善をはかる場合もあります。
その他、アレルギー反応は免疫機能異常ともとらえ、免疫機能をつかさどる自律神経の乱れが原因で起きると考えられています。
当院では鼻まわりへの特効穴への施術に加えて全身の自律神経のツボも刺激することで自律神経を調整してまいります。
今までで国内でアレルギー性鼻炎の自覚症状を指標とした症例集積研究が行われています。
その中で頭頸部や後頭部、前傾部、腕などに鍼灸治療を行ったところ鼻炎症状が軽減されたとする報告がされています。
通年性アレルギー性鼻炎の患者さん13例を対象に行われた研究では、鍼灸治療群と何も治療をしないグループとに分けて臨床研究が行われました。
その報告では、鍼灸治療群の鼻症状や鼻粘膜所見の改善が見られて、鼻汁好酸球や非特異的IgEの減少が見られたと報告されています。
ドイツでもアレルギー性鼻炎に対する鍼灸治療の大規模な研究が2008年に行われています。アレルギー性鼻炎患者5237名に対して通常の医療を受けたグループと通常の医療に加えて鍼灸治療を行った2つのグループに分けて鍼治療の有効性を検討しました。
3か月間25分間の治療を行い、3か月後と6か月後にQOL質問票と健康関連包括的尺度によって評価したところ、鍼灸治療を取り入れたグループは対象群と比べて明らかな改善が見られました。
鍼治療をもう行っていない6か月後の評価でも鍼治療を行っていたグループの方が症状の改善が見られたことからドイツではアレルギー性鼻炎患者にとって鍼は有効で安全な治療法の選択肢として考えることができると報告されています。
東洋医学ではアレルギー性鼻炎の原因を水分の代謝障害「水滞」もしくは「水毒」と捉えます。
普段から冷たい飲食物を摂り過ぎたり、過労やストレス、または虚弱体質などにより胃腸の働きが弱まり消化吸収力が低下すると飲食物がしっかり代謝されずに体内に残ることがあります。
この余分な水分は体の生理機能に影響を与え、鼻や喉の症状に関わるとされる五臓の「肺」の機能低下を引き起こします。
そのため肺経のツボも多く用いて施術を行っていきます。肺経のツボは上肢に多く存在しており、主にお灸の施術で治療を行っていきます。
また、東洋医学では鼻水の質によっても見方が変わってきます。
鼻水の色が黄色っぽく粘性が高い状態では炎症性の熱をもっている状態ですので熱をとる治療を行いますが、色が透明で水っぽく流れ出るような鼻水の場合、体の冷えが原因と考えられているため冷えを除く治療を行います。
また、鼻閉や眼球の充血が見られる場合、鼻粘膜の充血や鬱血がみられます。東洋医学ではこれを「瘀血(おけつ)」と捉えます。
この「瘀血」の病態としてのぼせや、イライラなど「気逆」の状態が一緒に現れることがあります。その場合瘀血や気逆状態を正常に正すツボも用いて施術を行っていきます。
「アレルギー」とは体の免疫システムが関係して起こる症状で、ある特定の物質に対して起こる防御反応が過敏に起こる体質の人に多く見られます。
「アレルギー性鼻炎」とは鼻の粘膜に入った異物を除去しようという働きが過剰に起こり主に鼻炎状態が続く状態をいいます。風邪の合併症としても同じような症状が見られますが、風邪の症状の原因はウイルスであるのに対し、「アレルギー性鼻炎」の原因は花粉やハウスダストなどが多いといわれています。
原因物質はたくさんありますが、抗原にさらされることでアレルギー性鼻炎が出現する点は共通しています。
アレルギー性鼻炎は一年中症状がある通年性アレルギー性鼻炎と、一定の季節に限局して生じる季節性アレルギーに分類されます。
通年性アレルギー性鼻炎の原因
ハウスダスト、ダニ、動物の毛、フケ、蛾などの虫等があります。
季節性アレルギー性鼻炎の原因
アレルギー性鼻炎の原因(抗原)として最も多いのが花粉で、成人患者の約90%が花粉症といわれています。中でも多いのがスギ花粉症、ヒノキ花粉。次いでイネ科花粉症、ブタクサ花粉症の順になっています。
くしゃみ、鼻水、鼻づまりが主な症状です。
その他に頭痛、頭重感、発熱、食欲不振、喉、目のかゆみなどの随伴症状が起こることがあります。
・頭痛に対する鍼灸治療について
・頭重感に対する鍼灸治療について
・食欲不振に対する鍼灸治療について
診断のためには問診と診察を行います。症状や発症年齢、症状が出やすい時期、家族歴や他のアレルギーの有無などを確認します。診察は直接鼻の中の観察を行います。
アレルギーの原因物質を探る検査として、血液検査でアレルギーに関連性の深い好酸球やIgEなどを測定します。鼻汁の好酸球を顕微鏡で確認する場合もあります。
また、原因として疑われるアレルギー反応が誘発されるか確認するプリックテスト、皮内テストなどがあります。
アレルギー性鼻炎に対し行われる治療として症状を抑える対処療法と根本的な体質改善が期待できるアレルゲン免疫療法があります。
対処療法として薬物療法が一般的です。内服薬として抗ヒスタミン薬と抗ロイコトリエン薬、鼻に直接投与する噴霧薬、ステロイド点鼻薬などがあります。
アレルゲン免疫療法としてアレルゲンのエキスを少量から体内に投与する「皮下免疫療法」と「舌下免疫療法」があります。
症例
30代 男性
植物の花粉で鼻炎が起こることが多いが、季節の変わり目、気温の変化でも鼻炎になってしまう。最近の寒暖差で鼻水が止まらなくなってしまい、平日は薬で誤魔化して乗り切ったが、鼻だけでなく目にも症状がではじめ来院。
学生の頃はアレルギー性鼻炎はなかったが、社会人になり上京して生活のリズムが変わった頃からなってしまった。
鍼に恐怖心はあるがサイトに「痛くない」と書いてあり、鼻も辛いので勇気を出して予約した。
当院の治療
鼻周りの局所治療だけでなく、東洋医学的な水分の代謝障害に対する治療をおこないました。
また、社会人になり体質に変化があったとのことでしたので、内蔵機能の向上と自律神経の調節の治療も合わせておこないました。
治療頻度は週1回
治療経過
◇1~3回目◇
特に変化なし
◇4回目◇
仕事中に鼻水の量が減ったことに気づいた。徐々に減っていたのか変化に気付かなかった。
◇5~8回目◇
回数を重ねるごとに鼻炎が気にならなくなっていき、薬の量も半分にまで減った。
◇9~10回目◇
日常生活に支障がでないまでに回復した。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
心因性難聴は、内耳や脳など検査では異常が見られないのにも関わらずに耳の聞こえが悪かったり、耳鳴りが起きてしまいます。
一般的に心因性難聴は、思春期の子供に多いといわれていますが、働き盛りの30~50代の男性や子育てや仕事で忙しい20~40代の女性にも多くみられることがあります。
耳もデリケートな器官であり、血流やリンパの流れが悪くなってしまう事で上手く機能が果たせません。ストレスなどで自律神経が乱されることで全身的な血液循環が悪くなってしまい、弱っている耳の機能に異常をきたしてしまうことが考えられます。
心因性難聴の鍼灸治療では、他の難聴とは違い全身的な自律神経のバランス調整や東洋医学でいう五臓六腑の『心』『腎』の調節がメインになります。もちろん耳周りのツボにも施術していきますが、比重が全身調整の部分が大きくなります。
初診時に自律神経測定器で自律神経の状態を測定してそれを踏まえた上で治療を行っていきます。
上向きでお腹手足のツボ・頭頂部の百会というツボを用いて自律神経の調整、耳周りの循環改善を目的に耳周りの施術を行います。
うつ伏せ治療では、背部兪穴といって五臓六腑の重要なツボに鍼灸治療を行っていきます。また、頸部の筋緊張は耳周りの循環を悪化させる危険性があるため頸部の筋緊張緩和もうつ伏せ治療時に行います。
難聴は、発症して時間が経ってしまいますと症状が固定化してしまうことが多いため発症したら早期に治療を開始することをおすすめします。
一般的には発症して2週間が一番症状が改善しやすいと言われています。それ以降でも治っていく可能性はありますが、治療が遅くなればなるほど治るまでの時間を要することが多いです。
東洋医学では、耳の疾患は五臓六腑の『腎』と深い関わりがあると言われています。特に多いのが腎の機能が弱くなってしまう『腎虚』という病態です。
腎虚の状態では、耳の異常に加えて腰痛や思考力の低下、排尿異常も出る場合があります。
その他、心因性難聴で関わりが深くなってきますのが五臓六腑の『心』です。東洋医学の心は、心臓の働きの他に意識や精神活動などの部分の働きも含まれています。ストレスなどの過度な負荷が掛かってしまいますと影響が顕著に出てしまうのが心です。
また、東洋医学では心火の状態と腎陰虚の状態が同時に診られることが多くありその病態を『心腎不交』と言います。心腎不交の病態では耳の不調と共に不眠・自律神経失調・更年期障害がよく現れます。
心因性以外で難聴を引き起こす場合特に気を付けないといけないのが、聴神経腫瘍や脳血管障害で難聴が起きている場合です。脳血管障害の場合、難聴の他にふらつきやめまいなどが同時にあらわれます。
その他、メニエール病・ムンプス難聴なども難聴を引き起こします。
難聴や耳鳴りが突然起きた場合、原因解明のため一度病院で診察を受けることをお勧めします。
・メニエール病の鍼灸治療について
突発的に起きた難聴の場合、ステロイドの点滴や耳鳴りの場合血管拡張剤や筋弛緩薬が処方されることが多いです。
鍼灸治療はそれらの治療と並行して行っていくことが可能です。
心身性難聴・耳鳴りでは、過度なストレスや睡眠不足などの生活習慣の乱れが大きな要因となります。それらを出来るだけ排除していくことがとても重要です。
ストレスへの耐性や生活習慣など一人一人違いますので、これを行えば確実に防ぐことが出来るというものではありません。しかし、睡眠・運動・食事は生活の基盤であり、それらを正しく行っていけばいくらか症状を軽減させたり防ぐことは可能です。
睡眠
しっかりと睡眠時間を確保することや寝る前にスマートフォンやパソコン作業は行わずに深い睡眠をとれるような準備をしましょう。
食事
栄養バランスのとれた食事を大体毎日決まった時間に摂るようにしましょう。
運動
ウォーキングやストレッチなどの有酸素運動は、身体をリラックスさせて全身の循環をよくします。特に朝日を浴びながらのウォーキングは体内時計も調整してセロトニンも体内に排出させますので自律神経の状態を整えるのにとても有効です。
症例
60代 女性
半年前から耳鳴りがする。
それ以前にもたまに耳鳴りはあったが、気になる程ではなかった。ここ半年でかなり頻度が上がり今も鳴っている。特に左が酷く、右耳は左耳程ではないが、気になる時がたまにあるくらい。左耳は強弱があり、一日中耳鳴りがする。
病院に行っても異常は無く、本人の中では、症状が出始めた時に身内の不幸が重なり忙しさとストレスがかかったのではと思っているとのこと。
耳鳴りが強くなる前兆で肩にコリや疲れを感じる日は耳鳴りが酷くなる。
治療頻度は週に1回
当院の治療
治療の前に自律神経測定を行ったところ肉体的、精神的ストレスが共に標準以上の数値が出ておりました。また、疲労度も高く交感神経が高まっている状態が長期に渡って慢性的なものになっていると感じました。首肩の筋肉も緊張で筋肉が硬くなっていたので、筋肉の緊張緩和の為の血流改善治療、耳の周りの局所治療、そしてメインのストレスを軽減させ、リラックス効果を高めるための自律神経調節治療を行いました。
治療経過
◇1回目◇
肩回りがかなり軽さを感じる、耳鳴りの変化は感じない。
◇2回目◇
前回の治療でだるさが強くでたので、刺激を軽くして施術。
◇3回目◇
耳鳴りが少し改善されてきた。肩も動かしやすくなり生活が楽になった。
◇4~8回目◇
回数を重ねるにつれ耳鳴りが順調に小さくなっていった。
◇9回目◇
耳だけではなく、身体も軽くなった。
ほぼ耳鳴りを感じなくなり、次回からは治療間隔を月に1、2回程度にしてメンテナンス目的で通院中。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
当院の腱板炎に対する施術は、第一に炎症を抑える目的で肩周りにはりやお灸を施します。また、痛みの強い場合は、当院独自の電気ハリ療法を用いて鎮痛効果を促します。
炎症がおさまった段階で、少しずつ血行を良くし、老廃物を取り除くことや筋肉や腱に栄養が行き渡るように促して早期回復を目指します。
腱板炎は五臓六腑の「肝」と「腎」と「脾」に深く関係しているので肝と腎と脾に関するツボを用いて肝血や腎気を補うことや脾の作用不足を正常に戻すように促します。また患部が冷えていて発症した場合はお灸の刺激により温めることも行います。
東洋医学の特徴の一つである全身を診て施術をすることで人間の本来持っている自然治癒力を取り戻します。
また肩の柔軟性が失われている場合が多いので、無理のない範囲でストレッチなどを行い肩関節への負担軽減を目指します。
中医学では腱板炎は体の外から邪気を受けるため発症するものと中医学でいう「肝」と「腎」と「脾」が何らかの原因で損傷して働きが弱まって発症するものと考えられています。そういった原因で肩背部付近もしくは上肢の気血が滞り、それが痛みや痺れの原因となると考えられています。
またスポーツでの肩に負担のかかる動作繰り返しや長い間腕を上げながら作業していた時などに気血は滞り、それが肩背部付近であった場合に腱板炎を発症する可能性が高くなります。
また中医学でも冷えは、様々な症状をもたらすとわれており、腱板炎の場合でも肩を冷やしてしまった場合に発症確率が高くなると考えられています。
50代 女性
1か月ほど前にヨガで右腕を動かした際に急に右肩に痛みを感じた。その日は、夜も痛みが続いて次の日に病院を受診したところ腱板炎と診断された。湿布薬と痛み止めの飲み薬を処方されたが、あまり効果が見られずにマッサージ店に行って右首肩周りをほぐしてもらったところさらに痛みが悪化してしまい当院にご来院された。仕事中は、気を張っているせいか痛みが軽減されて可動域も狭くない。
当院来院時は仕事終わりで痛みが強く出ていた。
治療経過
触診したところ、左右の首肩や肩甲骨周りの筋肉が緊張状態で右肩には多少熱感がありました。右肩には痛みを抑えるように鍼通電療法を行い、その他筋肉が緊張している場所には鍼を刺して心地よい温度程のお灸で筋肉を弛緩させていきまました。最初の5回程の治療は3~4日おきに治療。その後は治療間隔を延ばしていきました。
◇1回目◇
治療した日の夜はあまり痛みを感じなくてよく眠ることが出来たとのこと。
◇2回目◇
まだ日常生活でのドアノブを回すなどふとした時に痛みを感じる。
◇3~5回目◇
痛みは徐々に消失。しかし、腕を後ろにまわす動作で痛みが誘発。その部分は可動域も狭い
◇6回目◇
少しずつ可動域を広げるように家でもできるストレッチ法を行ってもらった。右肩の炎症はだいぶ治まってきたと判断して右肩も温熱灸療法を施していきました。
◇7~9回目◇
痛み・可動域制限ともに日常生活で感じる事がなくなったので治療を終了しました。
症例2
40代 女性
趣味でダンスを習っており、2週間前から右肩の痛みが気になりはじめ、ここ数日で急に痛みが増してきた。念のため整形外科に受診し、断裂はなく腱板炎と診断された。
腕は肩関節を外転させると三角筋中部に激痛が走り、高いところから物を取る動作や、持ち上げる動作ができない。
ダンスでは腕を大きく振り回す動作が多く、以前から大きく負荷がかかっていた。肩こりも慢性的にある。
日常生活に支障をきたし、好きなダンスに早く復帰したいと思い当院を受診した。
当院の施術
施術を始める前に、肩関節の可動域や筋肉の緊張度、痛みの状態を確認していきました。
横向きの状態で、肩の痛みを抑えるために患部に直接刺鍼し、他の肩関節の可動で負荷のかかっている筋肉にに対しても刺鍼を行い、これらに電気を流す低周波鍼通電療法を行いました。
また、炎症を抑えるために痛みが出ている部分にお灸し、炎症を抑える施術、自然治癒力を上げるために自律神経の調節を促す施術も同時に行っていきました。
施術間隔は、痛みが強く出ている間は週に2回~3回、痛みが軽快してきたら週に1回ペースで通院してもらいました。
経過
◇1回目◇
まだ変わらず激痛が走る。
腕を上げられない。
◇2回目◇
まだ痛みが強く出るが、少し軽くなったような気がする。
◇3回目◇
痛みは変わらない。
◇4回目◇
痛みの変化はなく、筋緊張がまだ取れていないため、電気の強さを少し上げてみたら、痛みが軽くなってきた。
◇5回目◇
前回から痛みが和らいできて、腕が前より挙がるようになってきた。
◇6回目~8回目◇
まだ痛みが出るが、以前よりも軽くなっている。
◇9回目~11回目◇
痛みが気にならなくなってきたので、ダンスを再開したらまた少し痛みが気になるようになった。
◇12回目~14回目◇
痛みが徐々にひいてきて、物を上に持ち上げる動作もできるようになってきた。
◇15回目~17回目◇
痛みがほとんど気にならなくなり、ダンスも問題なく再開できるようになった。
腱板炎とは、腱板という肩関節を安定させ動かすために重要な役割をもつ筋肉が炎症を起こす疾患です。
腱板とは、肩甲下筋・棘上筋・棘下筋・小円筋の4つの小さな筋肉のことをいいます。それぞれの筋肉は、上腕骨頭に付着しており肩関節がはずれないように上腕骨を固定しています。これらの筋肉の上腕骨頭に付着する部分の腱がそれぞれ境目のわからないように板状に付着しているため「腱板」と呼ばれています。
肩関節は身体の関節の中でも最も可動性のある関節です。関節の動ける範囲が広いために関節にある程度の弛みが必要であるため脱臼が多く、周囲の筋肉への負担が重い関節の一つです。肩関節周囲に数多くの筋肉があり、肩関節の可動性はこれらの筋肉がバランスよく連動する事でスムーズかつ複雑な動きを可能にしています。なかでも関節の深部にある腱板は、肩甲骨と上腕骨頭を覆うような形で関節を安定させる重要な役割をしています。
腱板炎は、徐々に発症する腕を上げた時の疼痛・ひっかかり感・筋力低下やこわばりおよび夜間痛などが主な症状です。特に腕を肩の高さより上で使用した時の運動痛が特徴であり、肩を使うほど症状が悪化します。症状が悪化すると、握手のため腕を前へ動かす動作だけでも痛みを伴う場合もあります。
簡単な検査法として腕を水平に挙げて前方に動かしたり内側に捻ったりすると痛みが出ます(インピンジメント徴候)。腕を挙げて、下ろしてくるときに痛みが出ます(ペインフル・アーク・サイン)。又、腕を外側へ挙げてゆくと、水平の位置で止めておくことが出来ず腕が落ちてしまう(ドロップアームサイン)などが見られます。
急性期の症状
痛みが出始める急性期は、痛みのため可動域の制限が出ることが多いです。しかし、痛みがどこであるかはっきりとはわからずに肩全体が痛みます。肩に熱感や腫れが見られることもあります。
慢性期の症状
急性期の症状が悪化してしまい、慢性的な痛みとなると肩前面の奥の方が痛むというように急性期とは違い痛む位置がはっきりとわかってきます。押すと痛みが出ますが、熱感や腫れはみられません。
腱板
棘上筋
腕を外側に挙げる運動に重要な役割を果たす筋肉。肩甲骨の上部から出て上腕骨大結節につきます。この筋肉の障害は、腕を高い位置で長時間作業している方に多く、痛みにより眠れない方もいます。
棘下筋
腕を外側に捻る働きをする強力な筋肉。肩甲骨の表下部から出て上腕骨大結節につきます。この筋肉が障害されると、髪を結む動作や痛みの内方の耳を頭の後ろ側から触るような動作で痛みが出ます。
肩甲下筋
肩甲骨の裏から起こり上腕骨に付く筋肉。腕を内側に捻る働きをする筋肉です。また肩甲骨を安定させるための重要な筋肉であるため肩関節の障害の多くは肩甲下筋が関与していると考えられています。
小円筋
腕を外側に捻る働きをする筋肉。肩甲骨の外側から出て上腕骨に付きます。上腕が運動するときに上腕骨頭を関節内で安定させる補助的な役割もあります。
※腱板断裂の場合
腱板炎が進行したり、腱板の部分断裂が進行してしまうと腱板が完全断裂してしまう場合があります。そうなってしまうと病院で手術治療を受ける必要があるので注意が必要です。
棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋のうち最も損傷を受けやすい部位は、棘上筋腱で肩峰の下にある肩峰下腔と呼ばれる空間を通過しなければいけないために肩峰下腔が狭くなればなるほど腱板が骨に挟まれて擦れてしまうことで炎症や部分断裂を引き起こします。
炎症が起きるとその部位は腫れあがってしまいさらに骨に擦れやすくなってしまう悪循環に陥ってしまうのです。
この悪循環が繰り返されることによって腱板の筋としての強度は低下してしまい、そこに強い衝撃が加わってしまうと完全断裂が起きてしまう危険性があるのです。腱板断裂は、野球など肩部を多く使うスポーツ選手や交通事故等による強い衝撃を受けた場合に多く見られますが、その他にも高齢者にもみられる場合があります。
高齢となればなるほど傷の修復能力は低下します。それと同じように腱板が少しでも損傷してしまうと治癒能力が低下してしまっているため、炎症が進行して腫れ上がることでさらに損傷部位が広がりやがて完全断裂へと悪化します。
腱板が断裂してしまっている場合腕を身体前面から上に挙げるような動作ができなく日常生活でも著しく支障をきたします。
腱板炎はすべての年代に起こりうる疾患で、若い年代では野球投球動作や水泳の自由形・背泳ぎなどといった肩を酷使するスポーツに多く、過度な方の動きや腕を高く上げる動作を繰り返し行うことにより腱板は靭帯や骨と摩擦が生じたり、動作時に強く引き伸ばされるため微細な損傷を受けやすくなります。(野球肩について)
痛みがあっても我慢して動作を続ければ、腱が断裂してしまうことがあります。またスポーツをしない人でも年を重ねるごとに肩周辺は筋力低下して肩関節のさまざまな動きにより腱板は圧迫・摩擦・牽引されやすく、転倒した際に手をつく動作で損傷を受けます。そういったはっきりとした外傷から腱板炎を発症する場合も多いですが、特別な外傷もなく発症する場合も多いです。
腱板の中では、棘上筋の腱がちょうど骨と骨との間にあって最も障害されやすく、最終的には腱の断裂に至ります。
また、夜間に突然痛みが生じる肩関節の原因としまして石灰沈着性腱板炎というものがあります。石灰沈着性腱板炎は主に40~50代の女性に多く見受けられ、痛みで睡眠中に起きてしまったり日常生活でも痛みが強く肩を動かすことができずに支障をきたします。
石灰沈着性腱板円は腱板内にリン酸カルシウム結晶が沈着してしまい急性の炎症が生じて強い痛みと可動域制限が起きます。
沈着したばかりの石灰は、粘り気は少ない状態ですが時間が経つにつれてどんどんと固まってさらにそれが集まり膨らんだ状態へと変化して肩の痛みが増していきます。
石灰沈着性腱板炎では整形外科で激痛を早く取り除くため腱板内に注射をして石灰を吸引する方法がとられます。
しかし、それでもなかなか症状が改善されないで症状が6か月以上も続く場合もあります。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年
鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年
おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年
中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年
渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年
三軒茶屋α鍼灸院を開院
頭痛の鍼灸治療はWHO(世界保健機構)に適応疾患として定義されています。
頭痛で悩まれている方は日々増加傾向にあります。ストレス社会といわれる現代社会では、ストレスによって頭痛に悩まされている方が多いです。
当院の緊張性頭痛に対する施術は、第一に頸肩部周辺の経穴に鍼をさして刺激することにより頸肩部周辺の筋肉の血行状態をよくします。
頸肩部周囲の筋肉への治療ツボとして僧帽筋や頭半棘筋部の「天柱」「風池」、胸鎖乳突筋や頭板状筋の停止部の「完骨」、肩甲上部では僧帽筋上部線維上の「肩井」、肩甲間部では各筋が交差する「膏肓」などの経穴を主に使用します。
また緊張性頭痛は東洋医学的に診ると「腎」「肝」「脾」の不調により気血水がうまく身体に回らないことが原因で発症すると考えられているので、上肢や下肢にあるツボを用いて鍼灸治療を施すことで「腎」の機能を活性化させたり、「肝」の機能低下・過亢進を抑えます。
東洋医学では局所的に診るのではなく、全体的に診ることが特徴のひとつであり、全身治療を行うことにより自然治癒力を高めます。
過度な身体的・精神的ストレスは、自律神経を乱して交感神経が優位に働くことで緊張性頭痛の原因となります。そこで当院では自律神経測定器を使い、自律神経の状態を把握した上で施術することで他にはない施術効果が期待できます。
また東洋医学の特徴である全身を診て治療することにより全身をリラックス状態へと導き、交感神経の過亢進を抑制して過度なストレスを和らげます。それは、緊張性頭痛の治療になるばかりではなく、身体全体の調子が上がっていくことが期待できます。実際に当院でも頭痛の治療で「目が疲れなくなった」「便秘が解消した」「ゆっくりと体が休められ、熟睡できた」などといった声が数多く聞かれます。
当院の緊張性頭痛に対する施術目的は、緊張性頭痛の回復程度を高め、回復を速めることです。また西洋医学とは違う東洋医学の観点により少しでも緊張性頭痛が回復できる機会を提供することです。それにより、患者さんの仕事の質の向上や生活の質の向上が期待できます。
緊張性頭痛は、痛くてもなんとか仕事をすることができる程ですので、症状が起きても放っておく方が多いのが現状です。しかし、放っておいた時間が長いと症状がなかなか取れません。
痛みが慢性化する場合も多くあるので、早めの治療をお勧めします。
頭痛における鍼灸治療の効果についての研究は国内外で行われています。その中で全日本鍼灸学会の報告で
『頭痛に対する鍼灸治療の効果と現状』
鍼灸治療が緊張性頭痛や片頭痛の鎮痛効果や痛み発作を抑制する可能性があると示唆しれています。
また、ある研究では、緊張性頭痛の発症機序や鍼治療の作用機序について、サーモグラフィーを用いて行ったものがあります。
その研究では、頭痛の発症機序は頭周りの筋肉よりも首の後ろの筋肉や、肩甲骨の上または肩甲骨の間の筋肉が過緊張状態が引き起こしている可能性が高いことが示唆され、鍼治療ではこのような筋肉にアプローチすることで筋緊張の緩和や循環を正常に戻すことが結果として出ています。
また、鍼治療では脳の核や中心灰白質に影響を及ぼすことも示唆されています。
埼玉医大東洋医学科の臨床研究では、神経内科等から薬物療法では効果が期待できない難治性の筋緊張性頭痛患者に対して鍼治療を行ったところ鍼治療の有効率は、82.3%だったという高い有効率が出ています。その臨床研究では、鍼治療を行うことで頭痛の改善や首肩部のコリの改善、施術後の患者さんの満足度も上がるという事が示唆されています。
※参考文献
『鍼灸臨床 最新科学』 医歯薬出版株式会社
緊張性頭痛は、東洋医学では「太陽経頭痛」といわれ、後頭部辺りの痛みや肩甲骨周辺の筋肉の痛みを伴います。また、頭痛の症状ばかりでなくイライラ感・不眠・精神不安・目の疲れ・耳鳴りなども併発します。
東洋医学では、痛みは常に「不通即痛」あるいは「不栄即痛」によって起こると考えられています。つまり、痛みはどこであろうと「気血水が何らかの影響で滞ると痛みが生じ、さらに進行すると栄養不足となりさらに痛みが加速する」ということです。
頭痛の場合もその過程が当てはまり、頭部を通る経絡の不通と頭部への栄養不足が原因と考えられます。
では、何によって気血水が滞らせるというと大きく二つの原因が挙げられます。
まず一つは気温・天候や飲食物などの体外環境によるものです。気温が低い・湿度が高い・冷たい飲食物の過多摂取による頭痛がこれにあてはまります。
二つ目は、東洋医学でいう「肝」「腎」「脾」の病変により気血津が体にうまく回らず、頭部の経絡の流れが障害されて起こる頭痛です。この3つの臓器は、気血水を循環させるのにとても重要な役割があり、緊張性頭痛の場合は「肝」が大きく影響します。
ストレス過多といわれる現代では、日常生活の中でストレスを感じる機会が増えており激しい怒りや不安などを感じる場面が増えています。そういったストレスは特に「肝」に悪影響を及ぼします。
「肝」の疏泄を主るという機能が低下すると体全体の気血水の流れが悪くなり、肩や頸部周囲の気血水の流れも悪くります。すると筋肉への血行が悪化し、筋肉が十分に栄養されません。そのため頸肩部の筋肉にこりや痛みが生じて、脳への血流が低下します。脳へ行く血管は必ず頸肩部を通過するため、頸肩部のこりや痛みによる血管収縮は、頭部への気血水の滞りや栄養不足に繋がり、緊張性頭痛を引き起こします。
症例1
40代 女性
30代後半ごろから慢性的な頭痛に悩まされてきた。仕事はデスクワークで首肩コリの症状が強く出るのと連動して後頭部から側頭部にかけて締め付けられるような頭痛やズキズキと痛む頭痛などが出てその都度市販されている頭痛薬で抑えていた。
しかし、最近頭痛が起こって頭痛薬を服用してもあまり効果が出ずに症状がひどいと吐き気も催すようになってしまった。
病院で検査したところ特に異常は見られずに痛み止めを処方されて服用したが、少し痛みは軽減するもののすっきりと症状が消えないためにほかの対処法はないかと探していたところ知人の紹介で当院にご来院されました。
治療
問診時に自律神経測定器を用いて自律神経の状態を測定したところ交感神経の活動が高い状態で自律神経の乱れがありました。また、後頭部から耳裏にかけての筋緊張が強くそれが筋緊張性の頭痛となって症状が出ていると考えられたため、それらの筋緊張を取り除くような施術を行っていきました。
まず上向きとなり腹部や手足の経穴を用いて自律神経調整施術と頸部の筋緊張の緩和のため頸部の前部、後頭部の横に刺鍼していき、次にうつ伏せとなり、頸部や肩部、背部の筋緊張緩和のための刺鍼やお灸を行っていきました。
治療経過としまして、一回目の施術後は疲れが体の表面に出てきた感じで次の午前中くらいまで倦怠感が出ていたが夕方程からは体や頭がすっきりして頭痛症状が軽減されたとのことでした。2回目以降も同様の施術を行っていき、4回目の施術後にはほぼ頭痛を感じることがなくなりました。
症例2
30代 女性
頭痛は慢性的で社会人になった20代前半から悩まされているが、ここ最近頭痛の頻度が増えてきたため来院した。
また、今まで悪化に伴い痛み止めの薬を服用してきたが、薬に頼る事を控えたいという思いもある。
普段はデスクワークのため首肩コリや眼精疲労もひどく、疲労が溜まりすぎると頭痛がひどくなる。
こめかみが強く締め付けられる感覚があり、痛くて仕事に集中できないこともある。
触診を行うと側頭部だけではなく、前頭部、頭頂部の方さも強く、広範囲にコリが拡がっていることが分かった。
当院の治療
この頭痛の原因は肩こりによる緊張性頭痛のため、うつ伏せで首肩の筋緊張の緩和を目的とした施術を行いました。
その後は、仰向けの態勢で自律神経調節治療と側頭筋、前頭筋、頭頂筋に直接鍼を刺し、そこに電気を流す低周波鍼療法を行いました。
1回目
治療直後は頭が軽くなったが、また次の日から締めつけるような痛みが出た。
2回目
首肩の方さが軽減。頭の硬さも取れてきた。
3回目
最近よく寝れるようになり、疲れが残りにくくなってきた。
4回目
治療直後、頭痛が消えた。週末になるとまた少し出てくる。
5回目
最近痛みが気にならなくなってきた。
現在、月2回のペースでメンテナンスを行っています。
症例3
40代 男性
数年前から慢性的な頭痛に悩まされていたが、ここ数日で悪化したため来院した。
特に痛くなる患部は側頭部周辺で、首肩コリがひどいと後頭部も痛くなる。
念のため病院にも受診し検査を受けたが、特に問題がなかった。
毎回天気が崩れるとひどくなる。
仕事は営業で、デスクワークと外回りが中心の業務。
仕事柄、精神的ストレスが溜まりやすく、寝ても熟睡できている感覚がなく、朝起床すると体が重だるい。
首肩コリも慢性的で、マッサージを定期的に受けていて、直後は軽くなるがすぐに元に戻る。
当院の施術
精神ストレスが溜まりやすいという事でしたので、まずは自律神経測定器で現在の自律神経の状態を測定していきました。
測定の結果、交感神経が過剰に働いており、リラックスに必要な副交感神経の働きが弱い状態でした。
交感神経は血管や筋肉を収縮させる作用があり、この状態が長く続く事で筋肉の慢性的な硬さの原因になってしまいます。
そのため、まずは自律神経のバランスを整える施術を行いました。
次に頭部や首肩の筋緊張を緩め、頭痛を抑えるために低周波鍼通電法を行っていきました。
経過
1回目
頭痛が軽減した。首肩も軽い。
2回目
痛みが出にくくなっている。
3回目
かなり楽になったが、天気が崩れると痛み出す。
4回目
痛みはほとんど気にならなくなった。
現在もメンテナンスのため通院中。
緊張性頭痛とは、頭痛の7~8割ほどを占めていて日本では成人のおよそ22%がこの疾患に悩まされており、5人に1人が緊張性の頭痛持ちであるといえます。
症状の特徴として鋭い頭の痛みではなく、なんか頭が重たいと感じたり、頭が鉢巻で締め付けられているような何となくダラダラと続く痛みがあります。運動などでの日常生活動作による症状の増悪はなく、頭痛が30分から7日間続く場合や一カ月に15日以上を三カ月以上にわたり続く慢性の場合もあります。
寝込んでしまうような激しい痛みではないので日常生活に支障はきたすことはなく、仕事もなんとか我慢して続けられます。
緊張性頭痛はほぼ男女差がなく、女性にも男性にもみられるが中年以降の方に多いようです。
頭痛は一般的に一次性頭痛と二次性頭痛とに分けられます。一次性頭痛とは、身体にこれといった異常がないのに頭痛を感じる疾患で、二次性疼痛は脳腫瘍やくも膜下出血などの脳や身体に異常があるために起こる頭痛で命の危険にもさらされる危険性のある疾患です。
ⅰ)一次性頭痛
一次性頭痛の中でよく知られている疾患としては、肩首のこりなどが原因で起こる緊張性頭痛や数時間・数日間、ズキンズキンと拍動とともに痛みが続くという片頭痛、転げ回るほどの痛みを感じる群発頭痛などがあります。
いわゆる「頭痛持ち」の方の頭痛で命に差し支えることはありません。
片頭痛はとにかく女性に多い頭痛の一種です。男性の約4倍もの人がこの片頭痛で悩まされているともいわれています。
片頭痛の痛みの特徴として頭部の片側あるいは両側がズキズキと痛むことが挙げられます。まれに緊張性ずつのような後頭部に痛みを伴う事もありますが、おもに側頭部への痛みが片頭痛と言われるものです。痛みが起きる頻度としましては、1か月に数回の方もいれば1年に数回程度しか片頭痛が現れない方もいます。
この片頭痛は緊張性頭痛と違い、日常生活に多大な影響を与えてしまうことも特徴です。痛みのために寝込んでしまい仕事や学校に行けなくなるほどの方もいます。片頭痛は筋緊張性の頭痛とは違い、脳の視床下部が何らかの理由により興奮すると脳内の血管が拡張して血管のまわりにある三叉神経を刺激して痛みを感じることが痛みの原因となります。
よって片頭痛が起きている時に過度な運動や飲酒、入浴は血管を拡張させて痛みを増幅させる危険性もあるので注意してください。その他、光や音などの外界の刺激にも敏感になっている場合もあり、それが引き金となって痛みを増長させることもあります。
群発性頭痛もひどい頭痛に悩まされます。頭痛の中でも群発頭痛はごく少数ですが、発症してしまうとのたうち回る程の痛みが襲い、痛みが顔面部までに及ぶこともあります。痛みにより睡眠の妨げとなり、睡眠障害や自律神経失調症なども併発する危険性もあり、注意が必要です。
ⅱ)二次性頭痛
二次性頭痛は、脳腫瘍やくも膜下出血など脳内に異常があって起こる頭痛や癌や免疫不全・精神疾患など身体が原因で起こる頭痛があります。二次性頭痛は命の危険がある場合があり、発症したら出来るだけ早く脳神経外科や神経内科などにかかる必要があります。
二次性頭痛を疑うのは、
・突然の頭痛
・今までに経験したことのないような頭痛
・50歳以降に初発の頭痛
・癌や免疫不全の疾患を患っている方
・精神症状を患っている方
・発熱・項部硬直などを訴える方
・悪心・嘔吐・意識障害
などがあります。
緊張性頭痛は、後頭部周りの筋肉の緊張によって血管が収縮し、血液の流れが滞ることによって起こると考えられています。筋肉の過緊張は、筋肉内部の血流が悪化し、老廃物である乳酸やピルビン酸が溜まってしまいます。この老廃物が、痛みの神経を刺激して頭全体を締め付けるような頭痛を引き起こすのです。
目の周囲にある眼輪筋や眼瞼挙筋や頸肩部にある僧帽筋などは、頭を覆う前頭筋や後頭筋にも影響を与えるため肩こりや疲れ目は緊張性頭痛の原因にもなります。例えば、悪い姿勢や一定の姿勢を続け、パソコンなどを長時間行い目を酷使すると緊張性頭痛になりやすくなります。
またその他に身体的・精神的ストレスも緊張性頭痛の大きな原因になります。枕の高さが合わない・常に頸肩部が緊張状態にある・頸部の筋肉が弱く頭部をうまく支えられないなどといった身体的ストレスや不安感の強い人・うつ状態の人などによる精神的ストレスが原因となる場合が多くあります。精神的・社会的ストレスは、大脳辺縁系に作用して痛みを感じやすくさせ、頭痛が誘発させるといわれています。
過度なストレスは、自律神経系を乱して主に交感神経が優位になることにより、血管の収縮が起こってしまい老廃物を溜めこみやすくします。また筋肉に栄養を送れなくなり、痛みがさらに強くなる場合があります。その痛みを身体がストレスと感じてしまい、また痛みを誘発するといった「痛みの悪循環」となってしまうのです。
女性に多い頭痛の一つとして挙げられるのがダイエットなどによる過度な食事制限です。過度な食事制限は低血糖状態となってしまうため頭痛の症状が起きてしまうのです。人間生きていくためには、必要最低限のエネルギーが必要となってきます。エネルギー不足は必要な栄養の代謝活動が悪くなるために血行が悪くなります。血行が悪くなると、新陳代謝が悪くなり、痛みを発生させる発痛物質や老廃物質が留まりやすくなるため痛みの原因やコリの原因となってしまうのです。
また、身体は冷えて肩こりや頭痛の原因となってしまうのです。そういったことが起きないような無理な食事制限は控えてバランスよく食事をとって有酸素運動で体の脂肪を落とすような運動をしたり、筋力トレーニングなどで筋力をつけるようにして基礎代謝を上げる運動をおりまぜることが健康的に痩せる第一歩となります。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
首コリに対する当院の治療は、第一に首回りの筋緊張の緩和を目的に鍼灸施術中心に行っていきます。また、首周りのコリがある方の多くは肩甲骨まわり等も筋緊張が見られる方が多くそれらの筋肉もほぐしていきます。
また、自律神経のバランスを整える自律神経調整施術も行っていきます。
上述したように首コリにも自律神経の乱れが関係してくる場合が多く、場合によっては最初の問診時等に自律神経測定器で現在の自律神経の状態を測定していく場合もございます。
首やその周囲に対する局所的な施術にプラスして全身的な自律神経のバランスを整える施術を行うことで根本的な治療を行っていきます。その他、東洋医学的観点から五臓六腑のどの臓腑が弱っているかを診断して五臓六腑の働きを正常に戻すツボも用いて施術を行っていきます。
また、マッサージやストレッチなどの手技療法も行っていき、鍼灸施術との相互効果を狙っていきます。
運動やストレッチを行う
日々の運動習慣特に有酸素運動(ウォーキングや軽いジョギング)を取り入れると全身への血流が良くなり、コリの解消に繋がります。また、自律神経も整える効果があります。その他、デスクワーク中はこまめに休憩を入れて首を回したり、ゆっくりといろいろな方向に首を倒すことでストレッチを行いましょう。
軽く自分でマッサージする
マッサージは、強くやりすぎてしまうと筋肉を傷めつけて傷んだ筋肉を再生しようとして筋線維が硬くなってしまう危険性があります。自身での強めのまっさじは厳禁です。軽く押す程度、さするだけでも血流が促されて首コリの解消・予防に繋がります。
パソコン作業の増加やスマートフォン操作などで、首コリで悩まされている方が増えています。
パソコン作業やスマートフォン操作をするときには、首は前傾します。頭の重さは、体重比率で約10%ほどにもなると言われ、首が長時間前傾してしまうことで頸部の筋肉などの組織に負荷をかけてしまうのです。その状態が続いてしまうと首コリばかりでなく、頸部の生理的湾曲が失われてしまうストレートネックという疾患にかかってしまう危険性もあるのです。
ストレートネックは、首コリばかりでなく、頭痛や吐き気、上肢の痺れなどにも繋がることもあります。
頸部は自律神経を調節する自立神経節や脳や目などに栄養を送る重要な動脈が走っていたり、上肢へ巡らす血管や神経も通っています。よって首コリはそれらにも影響を与えてしまう危険性もあるのです。
・自律神経失調症の鍼灸治療について
・頭痛に対する鍼灸治療について
長時間のデスクワーク
長時間のデスクワークは首コリの最大の原因となります。パソコン作業時の姿勢は気を付けていても首コリが起こりやすい姿勢となりがちです。少しの時間でもいいのでこまめに休憩をはさんで首を動かしたりストレッチを行う必要があります。
運動不足による筋肉の硬さや血行不良
運動習慣が日常的にない方は、首コリにかかりやすいとされています。筋肉は動かしたりストレッチすることで柔軟性が保たれます。逆にその柔軟性を失ってしまいますと頸部の場合、頭部の重さの負担が筋肉の柔軟性がないために過度にかかってしまうために筋肉のコリとなって現れていしまいます。
自律神経の乱れ
自律神経特に交感神経の活動が活発な状態が長時間続いてしまいますと、筋肉は科緊張状態、さらに血管は収縮された状態が続いてしまうことでコリの原因となってしまいます。
自律神経には、交感神経と副交感神経とがあり、日中は活動的な神経である交感神経の活動のほうが副交感神経の活動よりも優位になります。逆に夕方から夜にかけては副交感神経の活動が交感神経の活動よりも優位なります。
しかし、現代では仕事が夜遅かったり、夜に活動的になる機会が多く、夕方から夜にかけても副交感神経の活動が高まらずに一日を通して交感神経の活動が高くなりがちです。
すると、身体はしっかり休むことができずに筋肉にも悪影響をもたらしコリの原因となってきます。
また、頸部には自律神経を調節する自律神経節が多く張り巡らされており頸部のコリはさらなる自律神経の乱れを起こしてしまう悪循環に陥ってしまう危険性もあるのです。
そこで当院では、首コリ症状に対しましても自律神経の状態を整える事がとても重要だと考えて施術してまいります。
寒さによる筋緊張
夏では、冷房の風が頸部にあたっていたり、冬マフラーをしないで外出して首が寒さにさらされてしまうと筋が緊張して首コリの原因となってしまう危険性があります。
寒さで一時的に首回りの筋肉が緊張してしまっても運動やストレッチ等でほぐせればよいのですが、それを放っておいてしまいますと頑固な首コリに悪化しかねません。
首コリ症状で慢性的に悩まされている方の中には、その中に隠されている疾患がある可能性もあります。
・頚椎椎間板ヘルニア
頸椎と頸椎との間にあるクッションの役割のある椎間板が圧迫されて飛び出してしまうことでその間から出ている神経を刺激して痛みが生じます。特に首を後ろに曲げると首周囲に痛みや腕や手のほうに痛みやしびれ感が走ります。
頚椎椎間板ヘルニアは、様々な原因が考えられますが首コリが原因となって起こってしまう場合があります。首コリが起きているということは首回りの筋肉が過緊張状態ということです。すると、筋肉にある本来の柔軟性が損なわれてその周りの関節や靭帯に負担がかかってしまうことで首に関しましては頚椎椎間板ヘルニアにかかってしまうことがあるのです。
・変形性頚椎症
変形性頚椎症は、加齢によって頸椎と頸椎との間にあるクッションの役割のある椎間板が硬くなってしまうことで神経を圧迫して首コリや痛み、腕の痺れなどもあらわれます。
・むちうち
むち打ち症とは、よく車の衝突事故時にみられる疾患です。頸部が不意に衝撃を受けてしまう事で関節に捻挫が起こってしまうことで首への痛みや筋肉の凝りが起こってしまいます。頸部は非常に繊細な部分でその部分が孫作用されてしまうことで倦怠感や頭痛、吐き気等の全身症状も後遺症として残ってしまう危険性もあります。
・更年期障害
女性は、閉経前後でホルモンバランスの急激な変化によって心身に様々な不調が起こりやすくなってしまいます。特に自律神経の乱れが見られることで全身の凝りや疲労感、のぼせや急な火照り、イライラ感などがみられることがあります。更年期障害の症状の1つとして首コリも挙げられます。
・高血圧
高血圧は特に自覚のない場合が多いですが、まれに首肩コリなどの全身症状が高血圧によってあらわれることがあります。
・眼精疲労
目の周りの筋肉は頭部を経由して首の方まで連動しています。眼精疲労によって眼輪筋など目の周りの筋緊張が起きてしまうと首の筋肉の緊張状態にもつながってしまうことで首コリの原因となります。逆に首コリも頸部の下の目へ栄養素を送る重要な血管を圧迫して栄養ある血液が目へ行き届きにくくなってしまいます。そのような状態となってしまいますと悪循環で改善させるのにも時間がかかってしまいます。
20代 女性
現在学生で、10代のころは首肩コリに無縁だったが、最近パソコンでの論文作成で首コリがひどく感じるようになった。
とくに右側の付け根から肩にかけてがつらく、左を向こうとすると動きにくく少し痛みも感じる。
首コリがひどくなると締め付けられるような頭痛がして、不眠になる。
今まで我慢してきたが、日常生活に支障が出てきたので、当院に来院した。
当院の施術
まず自律神経測定器で、自律神経のバランスを見てたところ、交感神経が強く働きすぎていることがわかりました。また、運動不足のせいか血管年齢も少し老化していました。
まず仰向けで自律神経の調節治療を行い、それに加えて頭に刺鍼をし電気を流して頭の筋肉を緩めていきました。
次に、うつ伏せで首肩や肩甲骨周りの硬結に刺鍼し、頭と同様に電気を流して刺激を入れました。最後に首の動きを確認したところ、まだ硬さは残っているがスムーズに動けるようになりました。
1回目
硬さはまだ残っているが、引っかかりが取れて動きが良くなった。
2回目
まだコリは硬いが、前回終了後よく眠れた。
3回目
筋肉が緩んできた感じがする。以前より首のつらさが少ない。
4回目
首がスムーズに動かせるようになった。
5回目
ほとんど気にならない
現在もメンテナンスのため定期的に通院中
30代女性
仕事が忙しくパソコンを長時間使用していると首が痛く感じるようになった。
動作時痛はなく、常に重く痛い。
はじめは寝たらもとに戻っていたが、ここ2ヶ月は寝てもよくならない。
頭痛は1週間に2回ほど。夕方をすぎるとギューと締め付けられるような頭痛やこめかみが痛くなる。鎮痛薬はのんでいない。自分で軽くマッサージをすると楽になる。
あと1ヶ月は忙しい状態が続くため、はやめにコリをとりたい。
当院の治療
触診したところ、特に後頭部のコリが強く、そこから肩や肩甲骨にかけても硬さがでてきていた。睡眠時間も短く身体が全体的に緊張状態にあったため、全身の治療も併せて行う。
まずは仰向けで自律神経を整え、副交感神経を高める施術を行った。腕の硬さも強いため、お灸施した。
次にうつ伏せで首や背中、腰の反応点を中心に施術を行った。
最後は首の一番つらい場所に手技をして施術は終了。
1回目
施術後は首がまわしやすくなり、頭が軽くなった。
目も開きやすい。
2回目
前回後3日程は調子よかったがもとにもどってしまった。
刺激量をすこし増やして前回同様の施術を行った。
すこし重だるさが残った。
3〜6回目
翌日体全体がすっきりした。
1週間に1回ペースで続けるうちに首の筋肉がやわらかくなった。
7回目
首のこりはよくなった。
今後は3週間に1回のペースでメンテナンスを行う。
症例 3
30代 女性
10代の頃から慢性的な首コリはあったが、ここ最近コリを強く感じるようになってきた。
きっかけはリモートワークに切り替えた事から始まり、徐々に悪化しているような気がする。ひどい時は後頭部から側頭部にかけて締め付けられるような鈍痛が走り、数日は治まらなくなる。
会社に出社していた頃よりリモートワークに切り替わってから、パソコンに向かっている時間がどうしても長くなってしまい、通勤がない分外に出て歩くことが著しく減少したため、同じ体制で動かない時間が長くなっている。もちろん、運動不足の自覚あり。
頭部を前と外側に傾けると首のコリが強く引っ掛かりを感じ曲げずらい。
じっとしていても重だるさが辛いため、少しでも改善を願い来院した。
当院の施術
まず、全身の血流促進や自然治癒力を高めるために仰向けで自律神経調節の目的とした施術を行いました。
次に、うつ伏せになり首肩のコリやトリガーポイントに刺鍼し、、電気を流す低周波鍼通電療法で筋緊張を緩める施術を行いました。
施術間隔は最初の1,2か月は週に1~2回。
症状の改善に合わせ間隔を少しずつ空けていきました。
経過
1回目
施術当日は軽くなったが、翌日には戻ってしまった。
2回目
首が回りやすくなったが、仕事をしていると首の凝り感やだるさが気になる。とくに夕方から夜にかけてがひどい。
3回目
前回より首が軽くなった。つらさもあまり気にならなくなってきた。
4回目
夕方以降は多少つらくなるが、あまり気にならない程度まで改善。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
腰痛の鍼灸治療はWHO(世界保健機構)に適応疾患として定義されています。
当院の変形性腰椎症に対する治療の目的は、第一に腰部のツボや痛みの強い部位に鍼をさして必要な場合は微電流も流します。電気の刺激が苦手な方はお申し付けください。無理な施術は致しません。
はりやお灸を施すことで血流改善や筋の過緊張を和らげます。また鍼を刺すことにより痛みを感じる閾値を上げて痛みを感じにくくする作用を促します。
慢性的な痛みは自律神経特に交感神経を過亢進させている場合が多いので、当院では心地よい刺激を心掛けております。はりやお灸などを使った心地よい刺激は、交感神経の亢進を抑えてリラックス神経である副交感神経優位の状態に持っていきます。
もちろん腰ばかりではなくお体全体を診させていただくことは、東洋医学の基本です。当院では、自律神経測定器を用いてお体の状態を十分に把握した上で施術に入らせて頂いております。そうすることで他にはない治療効果を得られます。
※腰痛の鍼灸治療の論文
鍼灸治療を受ける方で一番多い疾患が、腰痛症状だと言われています。その中で腰痛に対する鍼灸治療の臨床研究は世界各国で数多く行われてきました。
中国やアメリカはもちろんのことドイツなどヨーロッパでも積極的に行われているようです。
腰痛に対する鍼灸治療では、鍼治療や鍼通電治療を行うことでほとんどの研究でその有意差が示されています。
また近年ドイツで「医師と健康保険計画の連邦政府合同委員会」によって鍼治療の効果を検証する大規模の臨床研究が行われました。慢性腰痛患者1162人に対して鍼治療群と偽鍼治療群、薬物療法・理学療法・運動療法などの西洋医学群をランダム分けて6か月間治療を行った結果が報告されています。
結果は鍼治療群47.5%、偽鍼群44.2%、西洋医学群は27.4%に効果があったというものでした。
ここで注目していただきたいのが従来の西洋医学群ではその効果が不十分であるという結果が出たことです。この結果ドイツでは日本と違って鍼治療で異常保険が適用されているとのことです。
https://ci.nii.ac.jp/naid/10031188653
東洋医学では腰痛は体の外から邪気を受けるため発症するものと「腎気」が何らかの原因で損傷して発症するものと考えられています。「風寒の邪気」を受けた時や湿度の高い場所にいた時、長い間体力仕事をした時などに腰部の経絡の気血が滞り、流れなくなって痛みを発症します。また「腰は腎の腑」とも呼ばれており、何らかの原因で腎気が損傷を受けると腰部の経絡は温度を保つ作用や栄養を行き渡らせる作用を失い、腰痛を発症します。
変形性腰椎症の腰痛は、比較的経過が長いなど「湿邪」の症候も著名です。「湿邪」による病理反応は、発汗障害・水分代謝障害・循環障害などが関連すると考えられており、中医学でいう肺・脾・腎の機能が深く関係しています。
変形性腰椎症とは、腰部椎間板の老化によって椎体周囲の骨増殖と変形、椎間の間が狭くなって生じたものであり、そのために神経が圧迫され疼痛や運動制限、姿勢不良をきたす疾患です。
脊柱の機能に最も重要な役割を果たしている椎間板は、上下の椎体を連結することによって脊椎の支持性と運動性を担っており、重荷や衝撃の吸収・緩衝という重要な機能も併せ持っています。よって椎間板は一生を通じて負担がかかる部分です。例えば、椎間板内圧でみると、立位を100%とした場合に上体の屈曲で150%、屈曲位での物の挙上で220%以上にもなります。
変形性腰椎症の最も代表的な症状は慢性腰痛です。起床時に動き出す時や座っていた状態から立ち上がる時など動作の開始時に痛みが強く現れ、動いているうちに軽くなるのが特徴的です。また腰痛があることによって結果的に腰椎の可動域制限が起こります。加齢とともに腰椎の可動域は狭くなるのは当然のことで変形性腰椎症の場合は、さらに痛みが加わることによりさらに可動域が狭くなります。
腰痛以外に症状もみられますが、その多くはどの部分に変性が起こっているかによって異なります。下肢の痺れや痛みなどの神経症状が出た場合は、原因によっては椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症なども疑われます。
また腰椎は正常では軽く前方に曲がっていますが、変形により後ろにまがって後弯したり、横に曲がって側弯などが起こります。しかし、人によってそれら変形があっても症状が出ない場合があり、その場合は問題ではありません。
変形性腰椎症は性別には関係がなく、早ければ30歳代から発症して年齢が高くなるにつれて発症しやすくなります。発症率は50歳代でピークとなります。
※多く見られる慢性腰痛の種類
・椎間板変性症
加齢や繰り返す外傷などにより、椎骨の髄核が水分が失われて髄核の弾力性が損なわれて、圧力の分散が出来なくなってしまい圧一定の箇所に圧がかかってしまってその部分から神経の痛みの原因となってしまいます。椎間板ヘルニアの慢性化したものも椎間板変性症に含まれます。
・骨粗鬆症
骨粗鬆症で骨がもろくなってしまうことで腰椎の微小な骨折が起こってしまって慢性腰痛につながります。症状が進行してしまうと腰部の圧迫骨折を越してしまい、腰が伸び切らない状態へと脊椎が変形してしまいます。圧迫骨折は、筋力の低下した高齢者に多く見られさらに男性よりも女性に多く見られる症状です。また瘦せ型・喫煙習慣も骨粗鬆症になるリスクをあげるともいわれています。その他がんの転移・膠原病腎疾患などのステロイド使用者にも圧迫骨折を起こしやすいと言われていますので注意が必要です。
・腰椎分離すべり症
分離相は子供のころスポーツとの関連がわかっています。腰椎が分離してすべってずれてしまう事で慢性腰痛を引き起こす危険性があります。
④慢性腰痛を引き起こしやすい生活習慣
慢性腰痛との関連性が認められている生活習慣として喫煙と同じ姿勢を長時間継続するが挙げられます。
喫煙者は、タバコを吸わない人に比べてストレスへの耐性が低いと言われています。痛みに対しても敏感に反応するため、通常痛みをして感じることのない刺激を痛みとして感じてしまうのです。痛みを感じると運動量は減ってしまい、腰部の筋のコリや痛みにつながりやすくなります。
同じ姿勢で長時間継続してしまい腰痛を引き起こしている人の特徴として、デスクワークが主な仕事・タクシー運転手・トラックの運転手・硬すぎるマットレスで寝ている・柔らかすぎるマットレスに寝ているなどが挙げられます。長時間座りっぱなしの人は腰に負担をかけやすいです。
特にデスクワーカーに多い姿勢は、骨盤が後ろに傾いてしまい腰椎が後ろに湾曲していることが多いです。この姿勢は、立っている状態よりも座っている状態の方が、腰部への負担が大きくかかります。さらに座っている状態では股関節にも負担がかかり、股関節は常に曲がった状態であるため、股関節を曲げる筋群は常に筋緊張が起きている状態です。特にインナーマッスルとして知られている腸腰筋が過緊張状態で硬くなることが多くなります。
そして、股関節を伸ばす役割のある臀部の大殿筋など伸筋群は、使われていない状態が長く続くことで筋力低下を引き起こしてしまうのです。その他体の姿勢を保つ役割のある背部の筋肉・脊柱起立筋は常に緊張状態にあるため容易に筋疲労を起こしてしまいます。座った状態を長時間続けてしまうとこれらの弊害が生じてしまうため、座った状態を長時間続けずに1時間に5~10分程は立ち上がり、臀部の筋肉や股関節周囲の筋肉のストレッチを行うようにしましょう。
また、睡眠時のマットレスも重要です。硬すぎるマットレスでは荷重面が少なるために特定部分に圧が集中しやすく、身体にかかる圧を分散できないために腰部の筋肉は緊張しやすい状態となっています。逆に柔らかすぎるマットレスでも腰椎の生理的湾曲が崩れてしまうために腰に負担をかけます。脊椎の生理的湾曲が適度に保持できるマットレスを選びましょう。
腰痛は生活習慣が深く影響を与えており、現代では肥満などの身体的特徴が腰痛に影響を与えていないと言われています。一つずつ生活習慣を変えていきことで腰痛予防・再発を防ぎましょう。
腰痛とくにぎっくり腰のような激しい痛みに襲われるとできるだけ安静にして腰に負担をかけないように日常生活を過ごした方がいい、コルセットを常に巻いて腰に負担をかけないようにしたほうがいいなどと以前は言われていました。
しかし、腰痛に対する研究が進んで今では少しずつその考えが変わってきています。
まず重要なのは腰痛は腰ばかりに痛みの原因があるとは限らないということです。腰痛で整形外科を受診したことがある方なら経験があるかもしれませんが、レントゲンなどで検査を受けても少し骨が変形しているだけで特に異常が見られないということが意外にも多いです。しかし、身体は腰が痛いという反応を示しています。
最近の研究では、腰痛の原因の多くは腰痛への恐怖感や不安などのストレスから脳が痛みを感じているということがわかってきています。近年、整形外科学会が発表した腰痛治療のガイドラインでも腰痛の関連のある因子として
・日常生活でのストレス
・日常生活での作業姿勢
・運動不足
・喫煙習慣
・痛みに対する不安感
が挙げられています。
ストレスや痛みに対する不安感が痛みを誘発していると考えづらいかもしれませんが、腰痛を改善していくためには痛くても動かせる範囲で積極的に体を動かすことで、ストレスの軽減や痛みに対する不安感や恐怖感を克服することはとても重要なのです。海外の研究では腰痛があっても安静を避けて仕事や日常生活を続けるようにすることでぎっくり腰の再発の低下や保険請求の減額という結果が出ています。
ぎっくり腰の初期などどうしても動くことができない時期もありますが、少し落ち着いたら積極的に動くことで脳に腰痛があっても動けるという意識付けを行わせて不安感や恐怖感を取り除いていくことが重要なのです。
慢性腰痛の鍼灸治療症例
症例1
40代 女性
腰痛歴は20年。ヘアスタイリストの仕事をしているため、普段から中腰の姿勢が多い。
そのため腰に負担がかかり、常に腰が重だるい。
特に、前屈の姿勢で左腰から臀部にかけて痛みが走る。
当院の治療
腰から臀部、太ももの裏側にかけてまで筋緊張が強い。
筋肉の緊張を取るために、腰部、臀部、大腿後面に刺鍼をし、腰や臀部の鍼に電極を繋いで電気刺激療法を行った。
また、腰以外にも首肩のコリも少し感じるという事だったので、首肩の硬結にも刺鍼を行った。
◇1回目◇
少しだけ軽くなったような気がする。
だが、まだ痛みがある。
◇2回目◇
終わった直後は軽快するが、またすぐに戻る。
◇3回目◇
重だるさが消えてきた。
◇4回目◇
前屈時の痛みがさらに軽減。
◇5回目◇
痛みがほとんど感じない。
症例2
50代 男性
4,5年前から長年の腰痛に悩まされている。とくに座位や起床時に立ち上がる時に重い痛みが生じる。
それ以外も重だるい状態が慢性的に続いており、少しでも改善したいと思い来院した。
仕事はデスクワークで、長い時だと1日8時間以上は座りっぱなしになってしまう。
ひどくなると腰だけではなく背中の方まで痛みや張り感が強く感じる。
運動は週に1回ジムでトレーニングをしている。
当院の施術
お身体の状態を確認すると、背中から腰部にかけて強い筋緊張が見られました。
特に腰の下部から仙骨の上部にかけて凝り固まってしまい、持続的な姿勢などで大きな負荷がかかっているように感じられました。
臀部の筋緊張は腰部に比べてまだ強くはありませんでしたが、仙腸関節付近の筋緊張は部分的に強くなっていました。
また、精神的なストレスも慢性的にあり、ストレスにより交感神経が優位になり、より筋収縮を起こしていると考え、まずは仰向けで自律神経の調節を目的とした施術を行っていきました。
次にうつぶせになり、患部である腰部を中心に背中や臀部を含めた筋肉の緊張を緩める施術を行いました。とくに痛みが出ている筋緊張が強い部分には鍼に電極をつなぎ電気の刺激を加える低周波鍼通電療法を行いました。
経過
◇1回目◇
施術直後は楽になったが、また次の日になったら戻ってしまった。
◇2回目◇
腰の痛みがいつもより気にならなかったため、仕事に集中することができた。
◇3回目◇
就寝時に腰の痛みによる中途覚醒は少なくなってきた。
◇4回目◇
長時間のフライトでまた張り感や痛みが出てきてしまった。
施術したら楽になった。
◇5回目◇
以前の比べて長時間座っていても痛みが出にくくなっている。
現在も定期的に通院中
症例 3
40代 男性
半年ほど前から左の腰臀部の痛みと、左太もも裏からふくらはぎまでの放散痛と違和感があった。かがむ動作で痛みが増す。
仕事はデスクワークで座っている時間が長い。
施術
太もも裏からふくらはぎへの放散痛は、腰臀部の筋緊張により坐骨神経が圧迫され痛みが出ていると考えられたため、腰臀部の筋緊張緩和と鎮痛を目的に鍼通電療法を用いました。さらに、太もも裏やふくらはぎの筋緊張もみられたため、鍼とお灸で筋肉を弛緩させ血流を改善するような施術を行いました。
また、全身的な筋緊張緩和と血流改善のため自律神経調整施術もしていきました。
一回目
腰臀部の痛みが少し和らいだ。
二回目
足への放散痛も軽減。
三~五回目
痛みは3割ぐらいまで減った。
六回目
痛みも放散痛もなくなった。
以降メンテナンスでご来院中。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好医院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
当院の眼瞼下垂に対する施術は、第一に目の周辺のツボにハリやお灸を施すことにより鍼目周囲の血行状態をよくします。また眼瞼下垂は五臓六腑の肝に深く関係しているので肝に関する経穴を用いて肝血を補うことや肝気の巡りをよくします。先天性眼瞼下垂の場合は腎に関する経穴に鍼をさして腎気を補います。
眼瞼下垂の方は、全身の倦怠感や不安感・頭痛・肩こりを感じている方が少なくありません。当院では、東洋医学の診断法に基づき、それらを解消するように全身を施術致します。
また、眼瞼下垂は自律神経系の活動とも関連が深いため、当院では自律神経測定器を用いて自律神経の状態を知った上で施術にあたります。それは、上記でもありますが、瞼をあげる筋肉には、動眼神経支配の筋肉と自律神経支配の神経があるからです。この自律神経支配であるミュラー筋は眼瞼を上げる上眼瞼挙筋の補助的な役割がありますが、自律神経が著しく乱れているうつ病や自律神経失調症と診断を受けている方でも瞼が下がっているという方が多くいらっしゃいます。
うつ病や自律神経失調症などの方でも自律神経を徐々に整えていくことで瞼の下がりが改善されたり、視界が明るくなったといわれる方がいらっしゃいます。眼瞼下垂の方でも自律神経を測定して今の状態を正確に把握して、目ばかりでなく体の状態を整えることで他にはない施術効果が期待できるのです。
その他、眼瞼下垂の方には、夕方以降になるとまぶたの垂れ下がりが気になるという方が多くいらっしゃいます。その方々は、パソコン作業などの細かい作業に従事されている方が多く、常に目の周りの筋肉が緊張状態にあり、目の周囲の筋肉の疲労から眼瞼下垂が起きています。
そのような方の場合は、仕事終わりなど目の周囲の疲労が溜まっている状態の時に施術を受けて頂くことがベストです。疲労が溜まっている状態で受けて頂くと鍼灸治療の効果がより実感でき、疲労が明日に持ち越されないことで症状の持続的な緩和がされやすくなります。
中医学では五臓六腑の肝は目に開竅するといわれており、眼の疾患は肝の機能の障害が深く影響していると考えられています。肝血が不足してしまうと視覚の異常や運動系の異常などがみられます。
そのほか肝は運動神経系の調節に関係があると考えられています。眼瞼下垂は、眼瞼挙筋の瞼の開閉のコントロール異常と考えられるので、そのことからも眼瞼下垂は肝に深く関係していることがわかります。
また、肝は精神情緒の安定、自律神経系を介した機能調節もおこなっており、それらの機能低下は眼瞼下垂を引き起こすとも考えられます。先天性眼瞼下垂は五臓六腑の腎と深く関係しています。
50代 女性
当院にご来院される一年ほど前から周囲の人からいつも眠たそうな目をしているということでまぶたの重みを意識し始めた。長時間パソコンやスマホをすると、特に顕著に感じるようになり病院を受診した。検査の結果、はっきりとした原因はわからなかった。医者からは手術を勧められたが、手術による副作用もあることからご本人としては、手術せずに治したいとのことで当院のご来院されました。
当院の治療
眼瞼下垂は、日々の生活の中に原因のある場合も多く、時間をかけて問診させていただく必要があります。この方の場合、下垂が朝はまだ比較的良いが、夕方にしたがってひどくなるとのことでした。パソコンの仕事に加えて、スマホ―トフォンもよく見ることから眼の酷使も考えられました。また、メークをとる時にまぶたを強くこすってしまうこともあるとのことで、軽く拭く程度にしていただきました。
次に自律神経測定器で自律神経の状態を把握した上で治療に移りました。午前11時ごろに計測したのにもかかわらず副交感神経の活動が高い状態で自律神経の乱れがありました。夜はなかなか寝付けられないこともあり、夜に交感神経の活動が高くなっている可能性もありました。
治療方針としまして
①全身の調整治療で自律神経を整える
②首肩の筋緊張を緩和させる
③目の周りの鍼灸施術により、疲労の緩和・血流改善
この3点を重点的に行いました。
治療経過
◇1回目◇
眼の感覚はあまり変化がみられなかったが、夜ぐっすり眠ることができた。
◇2回目◇
治療後、眼の疲れを感じにくくなった。
◇3回目◇
前回治療後、3日経つとまた目の疲れを感じた。
◇4~6回目◇
以前は夕方4時ごろになるとまぶたの重みを顕著に感じていたが、今は夜になると少し感じる程度になってきた
◇7~9回目◇
眼の疲れを感じにくくなり、眼の重たさもあまり感じにくくなった。仕事が忙しくなると夜に感じる時もある。
◇10回目◇
周囲の人から眠たそうに見えると言われなくなった。目を酷使しないように心がけているとほぼまぶたの重み・目の開けづらさを感じない
40代女性
当院にご来院二か月ほど前から目の重たさを感じるようになった。資格試験のため長時間勉強していて目が疲れてくると特に感じる。症状がひどくなると、目の周りや奥に痛みを感じるようになり頭痛や肩こりの症状も頻繁に出るようになってしまうとのこと。
市販の目の疲れに効くとされていた目薬を点眼したがあまり効果が感じられずに当院を受診された。
当院の治療
まだ一度も病院を受診されていないということで、念のためにかかりつけの病院で検査などをしていただきました。目の重たさや目の奥の痛み・頭痛は、脳の病気など重い病気の可能性もあるのでそれらを発見できないのが一番怖いことです。この患者さんの場合は特にそういった原因が検査をしても見つからなかったため、当院での治療を開始しました。
問診・自律神経測定器で測定したうえで上記の症例①の方と同じ治療方針で治療していきました。
◇1回目◇
治療後、目の周りがすっきりした感じ・目の前が明るくなった感じがした。
◇2回目◇
目の奥の痛み・頭痛が軽減して日常的に気になることが少なくなった。
◇3回目◇
目の重たさが消えて体も軽くなった感じがする
集中的に3日おきに治療を行い症状がだいぶ軽減したとのことで生活上の注意を気を付けていただき、治療を終了しました。その後、体と目のメンテナンスのため一か月に一回ほど通院されています。
20代 女性
約5年ほど前に二重瞼にする埋没法手術をした後から目が開けにくく、まぶたが重く感じることが出てきた。同時に首肩こりも感じるようになりひどい時は頭痛も出て、日常生活でも辛さを感じるようになった。子供の頃から視力もあまりよくなく、視力0.4程で乱視もあると眼科医から指摘されていた。脳の検査など様々な検査をしたがまぶたの重たさの原因はわからなかった。
最近仕事でもパソコンを使うようになり、さらに目の開けづらさやまぶたの重さを感じるようになってきた。筋肉をほぐしてもらおうとマッサージをうけたが、症状はあまり変わらなかったとのことで当院にご来院された。
当院の治療
触診してみると頸部の生理的な湾曲が少なく、ストレートネックになっていたので、まず頸部周辺の筋肉を緩めていきました。また肩こりもひどいということでお灸などを行い、肩部の疲労も取っていきました。うつ伏せでの施術の次は仰向けでお腹・手足のツボを用いて全体の調整施術と目の周りを中心に治療していきました。目にも程よい熱さのお灸をして血流改善をはかります。
◇1回目◇
治療後、少し全身の気怠さが出たとのことだが、その気怠さが取れたら目もすっきりして以前よりも目を開けやすくなった
◇2回目◇
一週間程は目の調子が良かったがそれ以降は以前ほどではないが目の症状が気になるようになった。特に2回目の施術の時は右目が気になるとのこと
◇3回目◇
仕事が忙しく、パソコンを長時間行っていたため首肩がつらい。治療後軽快。今回は右目は特に気にならない
◇4回目◇
まぶたの重たさやか開けづらさは日常の生活であまり目を酷使しなければ、感じないようになってきた
◇5回目◇
まぶたの重たさや開けづらさは、多少仕事で無理をしても感じないようになった。少し目や身体が疲れてきたなと感じたら、早めに休憩を入れるよう心掛けているとのこと。
40代 男性
経過
以前からお酒を飲みすぎた次の日などにまぶたのむくみや重たさを感じることがあったがその日のうちに消えていた。
最近、まぶたのむくみや重たさが残るようになってきて特に夕方から夜にかけてはパソコンやスマホをよく使うせいかまぶたの重たさが強く出て目を開けづらく感じる。
状態がひどいときは、なんとなく視界が暗く感じて物もタブって見えることがある。
眼科や神経内科を受診して診てもらったが特に原因は特定されたなかった。
眼科で眼精疲労とドライアイということで目薬を処方してもらい点眼しているがほとんど効果を感じられず他に手立てはないかと当院に来院されました。
施術
新型コロナの影響で最近はほとんど家でデスクワークをしていて仕事中の姿勢も悪く、首の筋緊張が強く出ていました。
最近、そういった環境の変化からストレスも多く感じており、家でお酒を飲む頻度と量も増えてから目の状態も悪くなっていったとのこと。
首と目の周りの鍼灸施術を中心に背部兪穴や腹部の経穴なども用いて自律神経の状態も診ていきました。
日常生活でも以前は通勤などで歩いたり、階段の上り下りをすることが多かったが最近はそういったこともなくなってい待ったということで朝と晩に30分ずつウォーキングする時間を作っていただき実行していただきました。
食事も緑黄色野菜をボール一杯を1日に食べていただくようにしていただき、お酒を飲む前に必ず野菜を食べいただくことで飲酒量も自然と減少しました。
経過
1回目の施術後の朝は顔やまぶたがスッキリしてむくみが軽減。まぶたの重たさも久しぶりに感じなかった感覚。しかし、まだ効果はもって半日程度。
2回目以降は症状の波はあるものの段々とまぶたの重たさを感じる時間が減っていき、治療開始3週間ほどは週に2回ほどの治療間隔で鍼灸施術を受けていただいていたが、4周目以降は段々と治療間隔を延ばしていきました。
2ヶ月ほどでトータルの施術が終わり、まぶたの重たさやむくみは軽減。仕事で目ばかり使っているとどうしても夕方以降多少重たさや疲れを感じるが以前よりもかなり楽な状態になったとのこと。
20代 女性
2年半ほど前から、まぶたの重さ、おでこのコリ、首肩のコリが気になるようになった。仕事で過度なメイクを行うため、目が疲れやすい。コンタクトレンズ使用。だるさやイライラすることがよくある。
施術
首や肩の筋緊張は頭皮、おでこの筋緊張に影響するため、首肩に鍼通電を行い、筋緊張の緩和を行っていきました。また、おでこと目の周囲にも鍼通電を行い、血流改善と筋緊張の緩和をはかりました。ストレスを感じやすいため、自律神経調整の施術も行いました。施術間隔は、週に1回。
一回目
全体的な症状は少し緩和した。
二回目
まぶたの重たさや、おでこのコリ、首肩のコリがだいぶ良くなってきた。
三回目
前回から少し間が空いたため、また以前と同じようなつらさが戻った。
四回目
まぶたは重さを感じるが、おでこや首肩のコリは楽になった。
五回目
まぶたの下垂はだいぶ良くなった。おでこや、首肩のコリは気にならない。
眼瞼下垂とは正面視にて上まぶたが病的に下垂して瞳孔領域まで覆う病態を総称します。眼瞼下垂は、先天性または後天性理由により上眼瞼の機能障害が生じてまぶたが開きにくくなる疾患のひとつです。重度の下垂となると上眼瞼縁が瞳孔中心線より下になって視野がかなり狭くなります。
眼瞼下垂になりますと視界が制限されてしまうため無理に視野を確保しようとします。眉毛を挙上してまぶたを開こうとするため、あるいは下顎を挙上するために頭痛や肩こりを併発することがあります。眼瞼挙筋の収縮で目の開閉がコントロールされています。筋肉の動きが弱かったり、ほとんど機能していない状態の多くは先天性眼瞼下垂と呼ばれています。また眼瞼挙筋にはミュラー筋と呼ばれる小さな筋肉が付随しており、上眼瞼挙筋は随意神経である動眼神経支配でミュラー筋は自律神経である交感神経が支配しています。交感神経が緊張することでミュラー筋が縮んで、まぶたを持ち上げる動作の補助をします。(動眼神経麻痺について)
眼瞼下垂になると、それまで以上にミュラー筋を収縮させてしまうために、交感神経が常に興奮してしまうことがあります。そのために動悸がしたり、体を支える起立筋が過緊張するため首筋や肩の筋肉が凝ります。
また不安感や疲労感を感じやすくなるなど眼瞼下垂になると自律神経失調症状が現れることもあります。
※眼瞼下垂が自律神経を乱す原因に
前述した通り、まぶたを上げる働きを補助するミュラー筋は交感神経の活動で動いています。年を重ねるとどうしても筋力が低下しますが目の筋肉も例外ではありません。加齢による筋力低下はミュラー筋を過度に緊張させる原因になり、交感神経の過緊張状態を作り出してしまうのです。
すると、高齢者の抑うつ感・不眠・肩こりなどの不定愁訴に繋がります。また、まぶたを上げる筋肉が低下することでおでこにある前頭筋やあごをあげることでそれをカバーしようとするため前頭筋や頸部の筋は物を見るために常に緊張状態となってしまいます。
すると、筋緊張性の頭痛や首の痛みに繋がってしまい、その痛みがさらに自律神経を乱して悪循環に陥ってしまう危険性もあります。その悪循環に陥ってしまうと、治療を開始して治っていく過程も長くなっていってしまいます。早期に治療を開始することが重要なのです。
☑最近まぶたの重みを感じる
☑昔の写真などと見比べても鏡に映った自分の瞼が下がっているように感じる
☑最近、常にまぶたが落ちて眠たそうと言われる
☑おでこに常にしわが寄っていて老けたと言われるようになってしまった。
☑夕方ごろとなると視界が狭くなり、物が見えづらくなった。
眼瞼下垂生まれた時から筋肉や神経に何らかの障害を伴った先天性眼瞼下垂と筋肉や皮膚の弛緩によって生じる後天性眼瞼下垂と偽眼瞼下垂に分けることができます。
ⅰ)先天性眼瞼下垂
生後一年以内に上眼瞼が垂れ下がった状態が先天性眼瞼下垂です。眼瞼挙筋の形成不全などで起こります。
片眼性のことが多く、遺伝的な問題も指摘されています。眼瞼下垂の約8割は先天性眼瞼下垂で眼瞼挙筋の局部の筋原性発生障害に起因します。先天性眼瞼下垂に合併する斜視は約15%程度と高頻度に発生します。
先天性眼瞼下垂の場合は完全な視野障害を生じることは少ないですが、数日から数週にわたる視野障害がある場合は弱視に至ることがあります。
ⅱ)後天性眼瞼下垂
後天性眼瞼下垂は筋力がないということでなくて加齢による筋力の低下や皮膚の弛緩などでおこります。最近では目を酷使するパソコンの長時間使用などの行為やアトピーなどのアレルギー疾患によってまぶたを擦ったり、過剰なメイクにより目を擦る行為によって著しく皮膚が弛緩してしまいます。
そうすることにより瞼板と挙筋腱膜とがはずれてしまうことによって開瞼状態が悪くなります。しかし体には視野が妨げられると自然に眉を持ち上げたり、顎軽く上げたりしてそれを補おうとする作用が働くため判断が難しくなります。
片側の眼瞼下垂の場合は比較的簡単に判断できますが、両側性の場合で形成的な異常が伴わない場合は判断が困難な場合もあります。
また頭部外傷などで腫瘍ができて動眼神経麻痺が起こることで眼瞼下垂が起こることもあります。
今眼瞼下垂で悩まれている方に多い原因としてコンタクトレンズの着用が挙げられます。コンタクトレンズ特にハードレンズを長時間使っている方に多いのですが、ハードレンズを使っていると眼瞼が上に上がっているとレンズの位置もずれてきてしまいます。またレンズが外れそうになるのを防ぐために眼瞼は下がり気味に自然となってくるのです。さらに、コンタクトレンズの度重なる刺激がまぶたの裏側に炎症を起こしてしまう危険性もあります。この炎症が上眼瞼挙筋に波及してしまうと上眼瞼挙筋は正常に機能するのは難しくなってしまい、眼瞼下垂となってしまうのです。
その他、毎日のコンタクトレンズの着用・取り外し動作によっても眼瞼下垂になってしまうとも言われています。コンタクトレンズの着用・取り外しの際にどうしてもまぶたを上に引っ張り上げます。その動作により上眼瞼挙筋の炎症や微細な断裂が起きる危険性があるのです。
ハードレンズばかりでなく、ソフトレンズの場合でも着用・取り外し動作により眼瞼下垂となってしまったり、目に合わないコンタクトレンズを着用していると瞼裏や上眼瞼挙筋に炎症が起きる危険性もあるので注意が必要です。眼瞼下垂が気になり始めたら眼科医と相談の上、コンタクトレンズの着用を控えた方がいいかと思います。
ⅲ)偽眼瞼下垂
顔面神経麻痺などによって前頭筋が麻痺すると眉毛が下がって上眼瞼が下垂してみえることがあります。また高齢者の眼瞼はしばしば皮膚弛緩および筋肉や結合組織の脆弱化のために特に弛んだ上眼瞼が重力で垂れ下がるため視野障害、眼瞼下垂、や眼瞼炎を引き起こしやすくなります。
眼瞼下垂が進行して悪化した状態となってしまいますと回復するのに時間がかかったりまたは手術でしか改善しなくなってしまうこともあります。
瞼の垂れ下がりを感じ始めたらすぐにまぶたに刺激を与えない・目を酷使しないなどの生活習慣の見直しが重要です。
まぶたへの強い刺激は避ける
眼瞼下垂の原因で最も多いのが、日常的にまぶたに強い刺激を与えてしまってまぶたを上げるのを支える腱膜が伸びてしまうタイプです。
花粉症などで目がかゆい場合に目を強くこすらない、コンタクトレンズを装着する場合強く引っ張らないなどが特に重要です。
その他、女性ではアイメイクを落とす際に強く拭かない・つけまつげを付ける際にも強く引っ張らないなど化粧時には十分に注意する必要があります。
目を酷使しない
パソコンやスマートフォンなどの画面を長時間集中的に診る行為は目の筋肉にとても負担となります。まぶたを上げる筋肉にもそれは例外ではなく、疲労がどんどんと蓄積されていってしまいます。
こまめに目を休める休憩を取って目を数分閉じたり遠くのものにピントを合わせるようにしましょう。
十分な睡眠
まぶたを上げる筋肉であるミュラー筋は、自律神経支配の筋肉であり、特に睡眠時間が少ない場合機能不全を起こします。すると上眼瞼挙筋に大きな負担となり、眼瞼下垂を加速させます。
五十肩の鍼灸治療はWHO(世界保健機構)に適応疾患として定義されています。
当院の五十肩に対する治療の目的は、第一に頸部や上肢付近のツボや痛みの強い部位に鍼をさして微電流を流したりお灸をすることにより血行を良くし、老廃物を取り除くことや筋肉や骨に栄養が行き渡るように促します。また鍼を刺すことにより筋肉の弛緩を促し、鍼の刺激により痛みを感じる閾値を上げて痛みを感じにくくする作用を促します。
五十肩の進行状況によっても治療は変わってきます。急性期では肩関節周囲の炎症が強く出ている為、炎症を早く収まるような鍼灸施術を用いて炎症を早く抑えるような施術をしていきます。この時期では、運動療法などの可動域を広げる施術などは行わずに肩関節をとにかく安静に保つことが重要です。五十肩での一番重要な時期は、急性期から拘縮期に変わる移行期です。
この時期は何をしていなくても激痛が走るようなことがだんだんと治まってきて限局された痛みではなくぼんやりとした痛みや動かすと痛みが出るという状態となります。この時期に肩関節が痛いからと言ってあまり安静に保ち過ぎると肩関節は固まって固定されてしまうためなかなかその後も可動域範囲を正常に戻すことが難しくなってしまいます。
この時期に痛みの管理と肩関節拘縮させない運動療法を行っていくことで回復する程度とスピードは格段と上がります。
うまく拘縮期を乗り越えて回復期に入ると今まで動かせていない部分の筋肉は筋力低下を起こしてしまっている為、筋力をつけていくことが重要となってきます。また回復期に入ると今まで肩の痛みで気にならなかった肩甲骨周囲の痛みや張り感が気になり始めることが多いです。それらを取り除くことも肩甲骨がスムーズに動くことで肩関節への負担の軽減となるため積極的に施術していきます。
東洋医学で考えると五十肩は五臓六腑の「肝」と「腎」と「脾」に深く関係しているので肝と腎と脾に関するツボを用いて肝血や腎気を補うことや脾の作用不足を正常に戻すように促します。また「風寒」や「湿」の邪気によって引き起こされる場合はそれらを体外に出す治療が必要になります。
東洋医学の診断方法に基づき全身の調整治療も行っていきます。五十肩は、全身性の疲労や気血の滞りが原因の場合もあるので肩背部だけの部分的な治療ではなく全身を診て治療していきます。それは中医学の特徴でもあります。全身治療を行うことにより人間が本来もっている自然治癒力を高めます。五十肩の鍼灸治療はWHO(世界保健機関)でも有効とされています。
また、慢性的な痛みは、交感神経を過亢進の状態に導き、自律神経の乱れに繋がります。当院では、自律神経測定器を用いて自律神経の状態を把握することで他ではない治療効果を得られるのです。
症例報告1
50代 女性
3か月前から右肩の痛みが出るようになった。整形外科を受診したところ、肩関節周囲炎と診断されて湿布薬と鎮痛薬を処方されてとにかく痛みが強いうちは安静にと指導された。初めのうちは夜間痛もあり、あまり睡眠をとることが出来なかった。1か月程すると夜間痛は消えて腕を上げたり、ブラジャーのホックを止めようとすると痛みが出る程度。そのような状態が1か月程続いたころつまづいて転倒しかけたところとっさに右腕を使ってしまいまた夜間痛が出るようになってしまった。しばらくしたら落ち着いてきたがまだ安静時に右肩が痛む。
治療
まず、炎症を早く治める施術と鎮痛効果が期待できる鍼通電療法を用いて施術していきました。ある程度痛みが治まってきたら、鍼灸施術に加えてマッサージなどの手技療法で筋肉の過緊張状態を取っていき、可動域を広げるような手技療法も行っていきました。
◇1~4回目◇
炎症を抑える施術・鎮痛効果の鍼通電療法を中心に施術。段々と安静時痛は取れてきた。4回目を終えるころにはぐっすりと眠るこができるようになった。
◇5~8回目◇
肩関節周囲の筋緊張をとる施術と可動域を広げる施術を行っていきました。腕が肩より上に上げることが出来なかったのが少しずつ上げられるようになってきた。後ろにも手を回せる範囲が広がってきた。
◇9~14回目◇
まだ若干動かすとこわさがあるが日常生活ではほとんど気にならない程度まで回復。
症例報告2
50代 男性
日常的にゴルフに行ったり、ジョギングしたりと体は動かしていた。
ある時ゴルフのスイング中に右からの痛みを感じるようになってそれからというのも日常的に痛みを感じるようになって、上のものを取ろうとしたりするときなど腕上げる動作で痛みを感じるようになり、お風呂でも頭を洗う際には右手をほとんど使えない状態に。
整形外科で肩関節周囲炎いわゆる五十肩と診断。眠れないほど痛みが強い日もあったため注射を打ってもらったり、痛み止めの頓服薬でなんとか過ごしていた。
タイミもだいぶ治まってきて整形外科でリハビリをしていたが、そこでは鍼治療をやっていなかったため、当院で鍼治療を受けたいということでご来院されました。
経過
主に右上横向きで肩周りに鍼をさして電気を流す『鍼通電治療』を中心に施術を行っていきました。
三角筋の筋緊張や内側の腱板付近の筋緊張にアプローチしていき筋緊張の緩和や鎮痛効果の鍼灸施術を行い、肩甲骨周りの柔軟性を高めるストレッチも合わせて行うことでさらに右肩の可動域を上げていきます。
整形外科のリハビリとも並行して通院していただき日常的にも痛みの出ない範囲でアイロン体操などの肩周りの運動なども行っていただきました。
痛みが強く出ていたせいか筋肉の拘縮もつよく3ヶ月ほど施術にかかりましたが、可動域はほぼ戻りました。ゴルフのスイングも怖さもなくできています。
症例3
50代 女性
1年ほど前に右手を使いすぎた後から右腕が痛むようになり、半年ほど前から右肩が痛むようになった。蓋を空けるような動作や、食器を洗う動作がうまくできない。また、シャンプーや高いところの物を取るような、肩を上げる動作がしにくく、生活でストレスを感じる。就寝時ズキズキとした痛みで目が覚める。頭痛が起こることもある。
整形外科で一度リハビリを受けたが、痛みが強くなったため中断、湿布薬と痛み止めの頓服薬が処方されている。
施術
痛みの強い腕や肩周囲の筋肉の筋緊張の緩和、そして血流改善、抗炎症、鎮痛を目的に患部に鍼とお灸を行いました。鍼通電が苦手なため、鍼通電は行いませんでした。
また、肩や腕の痛みによる日常生活動作でのストレスから交感神経優位になっていたため、自律神経調整も行った。
来院間隔は、最初の5回は3日置きに、その後は1週間置き。
一回目
治療後2日間はよく眠れた。
二回目
肩の屈曲、伸展、外転の可動域が広がった。結帯動作はまだできない。夜間痛は、今までは腕肩全体だったのが、肩前方のみになった。
三~六回目
肩の可動域がさらに広がり肩が上げやすくなってきている。
七回目
腕や肩の痛みはだいぶ楽になり、痛みで弾けていなかったピアノが弾けるようになった。日常生活もしやすくなった。まだ可動域に制限はあるが、動かしやすくなった。
中医学では五十肩は体の外から邪気を受けるため発症するものと東洋医学でいう「肝」と「腎」と「脾」が何らかの原因で損傷して働きが弱まって発症するものと考えられています。そういった原因で肩背部付近もしくは上肢の気血が滞り、それが痛みや痺れの原因となると考えられています。
体の外からの邪気として一番五十肩が発生しやすいのは、寒く風のあたる場所にいた時などに体に悪さをする「風寒の邪気」を受けた時です。次いで湿度の高い場所にいて「湿邪」を受けた時などです。
また長い間重いものを背負っていた時や長い間腕を上げながら作業していた時などに気血は滞り、それが肩背部付近であった場合に五十肩を発症する可能性が高くなります。
東洋医学でいう「肝」は血を貯蔵して必要に応じて供給・消費する作用や自律神経系の作用を通じて血管を収縮あるいは弛緩させて、体内各部の血液量を調節する作用があります。「腎」は人体の生命活動の基礎となる物質を貯蔵しており、「脾」は筋肉や軟部組織に栄養を供給しています。「肝」・「腎」・「脾」のそれらの機能が弱ると全身的に血や体液が不足し、筋肉や骨などの様々な器官に栄養を送ることができず、さらに上記のような条件が加わることで五十肩がおこりやすくなります。
いわゆる五十肩といわれるものは、50代を中心として40代後半から60代前半にかけて発症する肩の痛みと運動制限を主とする疾患です。五十肩は、原因に関していろいろな諸説があり、一種の症候群とみられています。より医学的な名称としては、「肩関節周囲炎」といいます。
五十肩は、40代後半から60代にかけて徐々に発病する肩周囲の疼痛と運動制限です。疼痛は、寒冷によって増悪し、また、夜間に強くなる傾向があります。最初は、肩関節付近に鈍痛が起こり、上腕の可動域の制限が起こります。次第に痛みは鋭いものとなり、急に腕を動かす場合などに激痛が走るようになります。腕を上まで上げられなくなったり、後ろへほとんど動かせないような運動障害が起こります。
重症になると生活にも支障をきたすようになり、洗髪や髪をとかす、歯磨き、洗濯物を干す、電車のつり革につかまるなどの行為が不自由になります。
しかし肩の局所の熱感や発赤、腫脹は顕著なものはありません。もしそうした症状があって、疼痛が激しい場合には、五十肩よりも石灰沈着性腱板炎を疑います。また五十肩の場合は発症早期の段階においても関節の運動制限が認められるが、もし運動制限が認められない場合には五十肩よりも腱板断裂や上腕二頭筋長頭腱障害を疑います。
痛みは片方の肩だけの場合と一方の肩が発症してしばらく経つともう片方の肩にも発症してしまう場合とがありますが、片方の肩が発症してしまうともう一方も発症する確率が高いようです。また痛みのピーク時には肩の痛みに加えて腕全体にだるさや痺れを訴えることもあり、常に腕をさすっていないと我慢できないという方もいらっしゃいます。
五十肩の経過は主に4つの時期に分けられます。
Ⅰ.急性期
一般的に急性期は1カ月ほど続くと言われています。この時期は痛みが強く安静に寝ていても夜に痛みで目覚めることも多く、日常生活でも肩を動かすたびに痛みが走り支障をきたします。痛みの部分も限定されてここが痛いとピンポイントで示すことができます。
この時期は肩を安静に保ってなるべく負担をかけないようにして炎症が早く収まることを心がけましょう。治療でも炎症が早く収まるような施術を施していきます。仰向けで就寝するときは痛いほうの肩の下にタオルを挟んで肩を浮かすようにすると夜間痛も出にくく眠れることができます。
Ⅱ.移行期
痛みはだんだんと治まってきて局部の炎症がだいぶ取れてきた状態です。この移行期となると痛みが限局されずにぼんやりとした肩周囲の痛みへと変わっていきます。
この期もまだ肩を動かした際に痛みが出ます。移行期は2~3か月続くと言われています。この時期となると拘縮期の期間を短くさせるために肩の上げ下げ運動など無理のない範囲で動かしていくことがポイントです。治療では、痛みを抑制させる効果が期待できる鍼通電療法などを行っていきます。
Ⅲ.拘縮期
炎症が治まり、痛みはだいぶなくなるが、肩関節周囲の筋緊張が強く、肩を動せれる範囲が限定されます。この時期でも日用生活の何気ない動作、高いものを取ろうとする・ブラジャーをつける・髪を乾かすなどの動作で不自由を感じます。治療では、痛みを抑制させる施術と並行してストレッチなどの手技療法で可動域を広げていきます。
Ⅳ.終息期
肩関節の痛みと可動域制限が少しずつ解消されて治癒に向かいます。長くなると五十肩を発症して終息期を迎えるまでに1年もかかることもあると言われています。様々な時期を見極めてその時期にあった対処をして治癒までの期間をできるだけはやめることが治療のポイントとなります。
従来は腱板損傷や石灰性腱炎なども含めて五十肩と呼んでいたが、近年では原因の明らかな疾患は五十肩に含めません。よって次の条件を満たすものを五十肩と呼びます。
I. 肩に疼痛と運動制限がある
II. 患者の年齢が40歳以降である。
III. 明らかな原因が無い。
年齢的要素は大切なポイントです。また明らかな外傷などの原因がなく、疼痛と関節運動の制限があれば五十肩を疑います。関節の運動制限が「帯を結ぶ」動作や「髪を結う」動作で著しく、そういった動作はすなわち肩を横に上げながら腕を内や外に捻るという動作の組み合わせです。
また炎症が長期化した場合に筋収縮は持続的になります。交感神経系の活動も高まって筋肉内の微小血管も収縮して、筋は虚血状態になります。筋肉乳酸が蓄積し、発痛物質が産生され、これらのために筋肉自体の痛みが原因となり、痛みの増悪により関節の運動が制限されます。そして肩の筋肉のみならず関節包などの周囲組織までも影響を与えます。
肩の疼痛症状で肩関節周囲炎の他によく見られる代表的な疾患としまして石灰沈着性腱板炎や化膿性関節炎などがあります。その中で40~50代の女性に好発するのが石灰沈着性腱板炎で当院にも多くの患者さんがご来院されています。石灰沈着性腱板炎は石灰が腱板周囲に沈着してしまうことによって、激痛が伴います。症状がひどい場合は、夜間痛で夜もまともに眠ることが出来ません。また可動域制限も顕著で少し腕を上げようとしたり腕を伸ばして物を取ろうとする動作などをすると激痛が走り、腕を動かすことがこわくなり、さらに筋肉が硬くなっていきます。石灰沈着は棘上筋腱での発症が多く、石灰沈着が大きい場合は、注射器による石灰の吸収やステロイド薬での鎮痛が必要となってきます。
石灰沈着性腱板炎の場合、一度病院で注射などの処置を受けた後に鍼灸治療をお勧めする場合もあります。石灰がある程度吸引されてから鍼灸治療で鎮痛効果や炎症を早く治める施術をしていくと効果的です。またある程度痛みが軽減されてきたら、可動域を徐々に広げていく施術なども行っていきます。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好医院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
一般的には水分の多い液状便、またはそれに近い状態の便をたびたび排泄する状態を「下痢」と呼んでいます。
正常な有形便の水分含有量は70~80%です。水分量が80~90%になると泥状、90%以上になると水様になります。
下痢には四種類のパターンがあります。
<浸透圧性下痢>
過度なアルコール摂取や脂質の多い食事が習慣化することによって起こる下痢です。
暴飲暴食による腸への負担、食べ過ぎ)栄養の過剰摂取)で腸の吸収機能を弱め、水分電解質などの吸収が十分できなくなることが要因です。
<分泌性下痢>
分泌性の下痢は腸粘膜から腸液などの分泌が過剰に行われることで起こります。また、腸粘膜障害、細菌性毒素などにより腸管内の塩類と水分の分泌が促進される場合もあります。
<腸管運動性下痢>
腸の内容物を肛門まで運ぶ運動のことを蠕動運動といいます。腸の筋肉が伸び縮みを繰り返し水分を吸収しながらゆっくりと肛門まで送り込むのです。
ところが、ストレスなどが原因でこの蠕動運動が過剰に働いてしまうと、十分に水分や食物が消化・吸収できないまま腸管を通過し下痢が生じます。また、逆に蠕動が障害されて便が滞った場合も、増殖した腸内細菌の刺激によって下痢が起こります。
<滲出性下痢>
潰瘍性大腸炎やクローン病など、腸に炎症があることによって起こる下痢症状を滲出性下痢といいます。腸の粘膜から血液成分や細胞内の液体が流れ出てしまうことによって、便の水分量が多くなってしまいます。また、炎症によって水分吸収能力が低下することも要因として挙げられます。
・感染性胃腸炎
感染性胃腸炎の代表的な病原体はノロウイルスです。激しい下痢と嘔吐に悩まされます。
・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
潰瘍性大腸炎は、下痢や血便の症状が併発します。軽い微熱や、渋り腹といったスッキリしない排便も見られます。長期化すると大腸がんを合併することがあります。定期的な大腸内視鏡検査が必要です。
・虚血性腸炎
大腸に栄養を送る血管の血流が阻害されることで大腸の粘膜障害が起き、炎症によって粘膜のただれや潰瘍などが生じる病気です。虚血性腸炎の3大症状として、腹痛(左側腹部~下腹部)、下痢、血便の3つがあげられます。
・過敏性腸症候群(IBS)
お腹の張りなどの便通異常が慢性的に(3か月以上)続いている場合、過敏性腸症候群が疑われます。下痢と便秘を繰り返すことが多く精神的なストレスから発症する場合もあります。
・慢性膵炎
慢性膵炎は進行すると、体重減少や下痢などの痛み以外の症状も出てきます。膵臓からの消化酵素の分泌が低下することで、主に脂肪分の消化がうまくできなくなり、液状の白っぽい脂肪便が見られる場合があります。
・大腸がん
大腸がんの兆候として「繰り返す便秘と下痢」の症状が挙げられます。大腸がんが進行し、大腸の管腔が狭くなることで誘発される症状です。
検査・診断
下痢の原因は様々なので、まずは問診を行い、症状、既往歴、服薬中の薬、摂取した食べ物などを確認します。そのうえで必要に応じて血液検査、腹部エコー検査、大腸カメラ検査などを行います。
治療方法
下痢の場合、ウイルス・細菌感染による胃腸炎が原因で起こることが多いので、整腸剤を使って治療するほか、必要に応じて抗生物質を投与します。
慢性下痢の場合には、大腸カメラ検査などの各種検査を行い原因を判明させたうえで、適切な治療を行います。また、病気が原因の場合はその病気の治療を行います。原因となる病気が見つからない場合、過敏性腸症候群(IBS)が考えられるため、生活習慣の改善やストレスの解消などをアドバイスして治療していきます。
東洋医学では感染性の下痢を「痢疾(りしつ)」、一般的な下痢を「泄瀉(せっしゃ)」といい、泄瀉は水分のとりすぎや冷房、夏バテや食あたりなどが原因で、体に余分な「湿」が溜まった状態である「水毒」により胃腸機能の低下を招いたものと考えられています。また、下痢と関係のある臓腑は「脾胃」「肝」「腎」です。
下痢は、実証と虚証の二つのタイプに分けられます。
<実証のタイプ>
①寒証
冷たいものの取りすぎや冷房によって体を冷やしたことが原因で、胃腸の機能が低下して水分代謝が滞り、下痢が起こるもの
寒証の症状
下痢、食欲不振、口の粘つき、むくみ、胸のつかえ、吐き気、腹痛など
②熱証
暴飲暴食や食あたり、細菌やウイルスの体への侵入により、消化不良を起こし、熱性の下痢が起こるもの
熱証の症状
下痢(便の臭いが強く回数も多い)、消化不良、黄疸など
<虚証のタイプ>
過労やストレス、生活の不摂生や虚弱体質などが原因で気のエネルギーが不足して、胃腸機能が低下する「脾気虚」や脾気虚の長期化や冷え、加齢などによる「腎」の機能低下による「脾腎陽虚」があります。
また、「肝」は気の流れをスムーズにし、精神面の調整において重要な臓腑ですが、普段から情緒不安定やストレスがあると肝気の流れが悪くなり、消化機能に影響を与え下痢を引き起こすことがあります。
脾気虚の症状
下痢(泥状便)、疲れやすくいつもだるい、顔色が悪い、食後すぐ眠くなる、食後お腹が張りやすい、ゲップなど
脾腎陽虚の症状
下痢(水様性の便)、みぞおち当たりの痛み、むくみ、尿が出にくい、尿の色が薄いまたは透明で多量に出るなど
当院では、消化器官などの働きを調整している自律神経のバランスを機械で測定し患者様のお身体の状態を把握したうえで治療へ移ります。
自律神経系の調整施術を行い、消化器官の機能を整えるとともに内臓機能や免疫力を高め、全身的な血流を促進し、自然治癒力を高めることで症状が治癒しやすいお身体の状態へ整えます。また、東洋医学的観点から「脾胃」「肝」「腎」をはじめとした五臓六腑を整えるツボや、気の流れを整えるツボを選択していきます。
さらに、腹部や腰背部などにある消化器系に関係するツボに鍼やお灸で刺激を与えることで消化器系の機能を整えていきます。
症例
40代 男性
年末の忘年会で週7で飲み会があり、そこからお腹の調子が悪くなってしまった。仕事中、プライベートに関わらず腹痛に襲われ下痢をしてしまう。
もともとお腹はゆるい方だったが、数日もすれば気にならない程度には回復していたが、今回は3ヶ月たっても良くならなかった。原因は食べ過ぎ、飲み過ぎのため病院には行っておらず、いつも飲んでいるドラッグストアの胃腸薬で誤魔化してきたが、同僚に紹介されて来院。
治療頻度は週に1回
当院の治療
胃腸の調子が悪くなってからお肌の調子も悪い、顔面、背中、腕に湿疹があり、赤くなり痒みも出ているとのこと。腸のダメージは肌にでやすいので、かなり内臓系が弱っていると予想し内臓の回復の為の自律神経の調整治療、血行促進の治療、消化器系と関わりのある経絡経穴に刺激を与える東洋医学治療をメインで行った。
経過
◇1回目◇
身体は軽くなった、お腹の変化はなし。
◇2回目◇
肌の痒みが軽くなった、お腹の変化はなし。
◇3回目◇
腹痛が軽くなった、トイレに行く回数等は変化なし。
◇4~8回目◇
治療回数を重ねるごとに腹痛、肌の湿疹が改善していった。
◇9回目◇
腹痛はほぼなくなった。
◇10回目◇
昨日の飲み会のあと、家系ラーメンを食べたら腹痛が戻ってしまった。治療後に落ち着いた。
◇11回目◇
便はゆるいが、おなかの調子が悪くなる前の状態にほぼ戻ってきた。
捻挫とは関節にかかる外力によって非生理的運動が生じ、関節の正常可動域を越えることで起こる、靭帯や関節包などの軟部組織の損傷です。
足関節捻挫のほとんどが、足先が内側なか入り込んで痛める、内反捻挫です。足関節外側の靭帯にある前距腓靭帯が損傷します。
足関節捻挫での注意する点は、慢性化・再発しやすいことです。放置して自然治癒させたり、不適切な治療により症状が長引いたりすると、関節の不安定性が残ってしまうことがあるため、発生直後の応急処置や初診時が、とても大切になります。
足関節捻挫はスポーツ現場では非常に多くみられる疾患ですが、日常生活中にもたくさん見られます。階段や小さな段差、歩行時でも躓いた際に足首を捻り生じます。
この疾患は非常に多く、学生時代にスポーツをやっていた方なら自分自身か周りに足関節捻挫になった人を一度は見たことがあると思います。
症状も、軽く捻り関節包を痛めた程度の軽症から、靭帯を切ってしまうもの、骨折を伴う重度のものまで損傷程度さかなり広いです。靭帯の断裂や骨折を伴う、関節の不安定性が大きい捻挫の場合は鍼灸治療の適応外になりますが、靭帯損傷までであれば、鍼灸治療で治癒促進や筋力強化の予防まで診れます。
足は合計26個(片足)の骨で成り立っており、捻挫を起こす足首は上方は脛骨と腓骨で構成され、中央は距骨、下方は踵骨で関節をつくります。足関節の動きとして外側に腓骨の外果(外くるぶし)がある為外側の可動域は制限されますが、内側(内くるぶし)の方はストッパーとなる骨がない為、外側と比べて可動域が大きくなります。そのため、内反捻挫が多くなるのです。
損傷される可能性が一番高い靭帯は、外くるぶしと足の骨である距骨を繋いでる前距腓靭帯で、足関節を内反させる時に一番テンションがかかるためです。次いで踵腓靭帯、二分靭帯、後距腓靭帯など、内反を強制されて伸びる靭帯が損傷されやすいです。
外側につく靭帯
・前距腓靭帯
・踵腓靭帯
・後距腓靭帯
・前脛腓靭帯
・後脛腓靭帯
・二分靭帯(Y字靭帯)
内側につく靭帯
・三角靭帯
靭帯は一般的に『伸びた』と表現されますが、靭帯が伸びる事はありません。そもそも靭帯は、ヒモ状の組織によって骨同士を繋いでおり、ズレたり動きすぎてしまうことを防いでいます。
靭帯の損傷は、第一度の靭帯損傷、第二度の靭帯の部分断裂、第三度の靭帯の完全断裂に分かれます。足関節の不安定性は第二度の部分断裂から起こります。
・第一度:靭帯の損傷・・・靭帯を構成する線維の何本かが切れるが、靭帯としての機能は失われない。
・第二度:靭帯の部分断裂・・・靭帯としての機能がかなり失われ、不安定性が出現する。
・第三度:靭帯の完全断裂・・・靭帯としての機能は完全に失われ、体重をかけることなどが困難となる。
靭帯の治癒までの期間
・第一度の軽度の損傷であれば1〜2週間程度
・第二度の部分断裂であれば1ヵ月程度
・第三度の完全断裂であれば数ヶ月程度
治療は重症度により異なる場合があり、第一度と第二度の損傷では、基本的に保存療法が選択される。第三度の損傷では手術療法ならびに保存療法が選択される。
足関節の靭帯の損傷を確めるテストです。他動的に動かし、誘導方向の動揺の大きさにより靭帯の損傷が判別されます。
これからのテストは、強く引き延ばし損傷を悪化させてしまう可能性も含めて損傷時の腫れた足には行わず、炎症や急性の症状がある程度落ち着いた回復過程に行い、損傷レベルを確めます。
・内反ストレステスト・・・一方の手で脛骨の下方を固定し、他方の手で踵を包み込むように把持する。足部を内側に捻るように動かす。その時に、痛みが発生したり動揺が健側に比べ過度に大きかった場合に陽性となる。
調べる靭帯:前距腓靭帯、踵腓靭帯
・外反ストレステスト・・・一方の手で脛骨の下方を固定し、他方の手で踵を包み込むように把持する。足部を外側に捻るように動かす。その時に、痛みが発生したり動揺が健側に比べ過度に大きかった場合に陽性となる。
調べる靭帯:三角靭帯
・前方引き出しテスト・・・脛骨の下方を一方の手で固定し、他方の手で踵を包み込むように把持し、踵部を前方へ引き出す。その時に、痛みが発生したり、前方への動揺が健側に比べ過度に大きかった場合に陽性となる。
調べる靭帯:前距腓靭帯
整形外科での治療法
受傷直後は応急処置としてRICE処置が行われます。
Rest:安静
Icing:氷で冷却
Compression:圧迫
Elevation:挙上
保存療法ではギプス固定や弾性包帯など固定材は損傷程度により異なります。
足関節捻挫には、急性期の場合は病院と同じようにRICE療法を行い、テーピングなどで幹部の固定し、痛みや腫れを緩和させることを第一として治療します。
腫れが引いてからは、損傷部位や損傷程度を調べ損傷周囲に刺鍼を行い血液循環を良くしていきます。また、鍼灸の鎮痛作用を利用し、痛みを和らげ、筋肉の緊張を緩和し、損傷患部にはお灸を用いて炎症の引きを早くしていきます。
そして、靭帯損傷の治癒促進と捻挫の繰り返しを予防する為に、前脛骨筋や腓骨筋、下腿三頭筋などの比較的大きな筋肉にも鍼灸を用いて治療していきます。
足関節捻挫で腫れが引いてしばらく経っても痛みや違和感がでる方が多くみられます。これは、足関節の距骨が正常な位置に定まっていないことが原因として考えられます。
距骨は踵骨や舟状骨、脛骨や腓骨など様々な骨に挟まれるように存在し、距骨には筋肉が付着しておらず独立した緩衝材のような役割をもつ骨なので、筋肉の緊張の影響を受けやすくなります。前後、左右の動きも悪くなるとより正常な位置に戻りづらくなる為、筋肉の緊張や違和感を引き起こし、いつまでたっても足首の痛みが治らない状態になります。
その為、関連する他の筋緊張があれば筋肉に対して鍼を行うことで筋緊張を取り除きます。また、関節面の潤滑がうまく行えていない場合は矯正も行うなど、それぞれの状態に応じて施術を行っていきます。
日常生活では、インソールなどで足裏の環境(アーチ)を整える事も大切になってきます。
当院では自律神経のバランスを重要として考えており、治療方針の中に取り入れています。自律神経が整えることで、自然治癒力を最大限に引き出し、免疫力をあげて病気やウイルスから身体を守ってくれるため、自律神経を整えることはとても大切です。
当院では、自律神経を測定できる自律神経測定器があります。これにより交感神経と副交感神経のバランスを調べることができます。自律神経以外にも身体的ストレスや精神的ストレスも調べ、より多角的に症状を捉えてアプローチしていきます。
鍼灸治療は自律神経を整えるのに優れた治療法です。
自律神経のバランスを調整する事で筋肉の緊張を緩和し、血行を促進して症状を改善し、再発や悪化を防いでくれます。
足関節捻挫や足関節捻挫後の痛みでお悩みの方は、東京α鍼灸院へお越しください。
症例
40代 女性
昔からバレエをしていて、今も週3~4日程練習をしている。
バレエの練習中に左足を挫いてしまい、すぐにアイシングで対処したがみるみる腫れ上がり痛みも増してきた。少しでも早く復帰したいと思い当院を受診した。受傷部分は足関節の外側で過内反により捻挫した様子。歩行時に痛みがあり腫れが強いため念のため整形外科でX線検査を受けたが骨には異常が見当たらなかった。徐々に安静時にも鈍痛が強くなってきた。
捻挫は今回で2回目で、以前も左足の同じ所を痛めた経験がある。
当院の施術
患部の状態は、内出血が見られ腫脹が強い状態でした。受傷した当日ということもありまだ炎症状態なので、初回は患部の周囲に軽めの刺激で刺鍼し、腫脹が強い部分に直接お灸をし炎症を抑える施術を中心に行っていきました。炎症を抑える施術は2日連続で行い、その後3日空けて来院していただきました。炎症が治まってきたタイミングで次に患部に直接刺鍼しそこに電気で刺激する低周波鍼療法を行うのと同時に、関節拘縮を未然に防ぐために筋肉や靭帯の緊張を緩和する施術も行っていきました。
経過
1回目
まだまだ腫れがひどく、歩行時に痛みが出る。夜就寝中も鈍痛が起こる。
2回目
昨日捻挫したばかりなので、痛み、腫脹ともに変わりない。
3回目
腫れが引いてきた。痛みも以前より軽快してきたが、まだまだ歩くと痛む。
4回目
痛みが前回より軽くなってきた。歩行時にはあまり気にならないが、足関節を曲げると痛い。腫れは少し残っている程度まで改善。
5回目
足関節の曲げ伸ばしに痛みが生じるが、痛みの強さが軽減してきた。腫れはほとんどない。
6回目~8回目
足関節の曲げ伸ばしや歩行時はほとんど痛みはない。圧痛が多少気になる程度まで改善。
練習を再開できるようになった。