緑内障の鍼灸治療

緑内障の鍼灸治療はWHO(世界保健機構)に適応疾患として定義されています。

WHOの適応疾患について←

①緑内障に対する当院の施術

当院の緑内障に対する施術は、第一に目の周辺のツボにハリやお灸の刺激をすることのより目の血行状態をよくします。緑内障は眼底の血流不足で発症するという報告もあり、眼底の血流改善の目的でも施術します。また必要の場合は、電気ハリも用います。緑内障では、眼圧の上昇は症状の進行につながるため眼圧を下げる効果のある経穴に鍼やお灸を用いて刺激していきます。当院の鍼灸施術で、眼圧が低下して安定して緑内障の視野欠損が改善または進行を防ぐことができた方が多くいらっしゃいます。

 

また緑内障を東洋医学的に見ますと五臓六腑の肝と腎が深く関係していると考えられていますので、肝や腎の特に重要なツボも用いてハリやお灸の刺激をしていきます。
東洋医学の特徴である全身を診て治療いくことにより、人間の本来持っている体を正常に戻そうとする自然治癒力を引き出します

緑内障の治療は西洋医学の目薬の治療だけでなく、東洋医学的治療を加えることで症状の改善・症状の進行を防ぐことができる可能性が高まります。病院と並行して鍼灸治療を受けることで相乗効果が生まれることが期待できます。

緑内障の鍼治療

緑内障の原因は眼圧が高くなることが一般的に知られていますが、日本人に一番多いのは、正常眼圧範囲でも緑内障を発症してしまう正常眼圧緑内障です。

緑内障のお灸治療

↑お灸治療も用いて血流の改善を図っていきます。

 

 

②緑内障についての東洋医学的考え

東洋医学では五臓六腑の肝は目に開竅するといわれており、目の疾患は肝機能の障害が深く影響していると考えられています。肝血が不足してしまうと視覚の異常や運動系の異常などがみられます。
また東洋医学では緑内障は瞳孔の疾患と考えられていて瞳は五臓六腑でいう腎に当てはまります。よって緑内障は肝が最も深く関係していますが、腎の疾患でもあります。また肝と腎は相互に依存しており、互いにとても深い関係にあります。

 

様々な研究で明らかになってきた緑内障の発症・進行を食い止める方法

 

緑内障を食い止める

 

緑内障の発症や進行には、眼圧や加齢、酸化ストレスなどさまざまな要因が複雑に絡み合って関与していると考えられています。

・強度近視の人

強度近視の方は、眼軸長が長く楕円形みたくなっている場合が多くただでさえ視神経が障害を受けやすくなっており、緑内障の発症リスクが高いと言われています。よってこれ以上近視が進みにくくするように日常生活で気を付ける必要があります。
スマートフォンやパソコンなどを長時間見ない・一定時間見たら必ず目の休憩時間を取るといったことが重要です。

 

・酸化ストレスをへらす、消去する

体内に取り込まれた酸素のうち数%は活性酸素に変わると言われています。活性酸素は増えて過ぎてしまうと正常な細胞や組織を傷つけてしまうリスク(酸化ストレス)があります。
緑内障の重症度と酸化ストレスを調べた研究では、緑内障が進行している人ほど酸化ストレスが多い傾向があるという結果が出ました。
比較的若い世代にもその傾向が強く、酸化ストレスをへらすことで緑内障の発症リスクや進行リスクを減少させる可能性があります。

酸化ストレスを増やしてしまう要因として、激しい運動や紫外線、精神的ストレス、喫煙習慣、睡眠不足が挙げられます。それらをなるべく控えるようにしてビタミンA/C/Eが豊富に含まれる果物や野菜を摂るようにしましょう。

 

・カロリー制限をすると緑内障の進行予防になる

マウスを使った実験でカロリー制限によって緑内障の進行が抑えられたという結果が出ています。
正常眼圧緑内障を引き起こすマウスに位一日おきに絶食をさせたマウスは、同じように正常眼圧緑内障が発症して通常の食事を摂らせたマウスに比べて視神経の変性が抑えられて見る機能が悪化しにくくなることがわかりました。カロリー制限をすることで活性酸素の発声を抑えることができ、酸化ストレスの軽減に役立ったのではないかと推測されています。

マウスと同じように一日おきの絶食はほかの弊害が起こる場合もありますので腹八分目に食事を抑えるなどして食事量を減らすことを心がけると酸化ストレスを抑えられて同様の効果が得られる可能性があります。

 

③緑内障の鍼灸治療症例

50代 女性
10年ほど前から緑内障を患っており、一番症状がひどい時は眼圧が24mmHg程と高かった。現在は眼圧が20mmHgと少し下がってはいるものの薬を点眼し続けているため副作用も出てきて本人としては薬を使わないようにしたいとのこと。小さい時から強度の近視で先天性の白内障や網膜剥離も患っており目の疾患は今までも多かった。
目の症状の他に首から肩甲間部にかけて硬く、つらい。睡眠の質が悪く朝すっきりとしないことや冷え性、下痢など自律神経症状もみられる。

 

当院の治療
目ばかりでなく、全身の症状を時間をかけてじっくりと問診した後、自律神経測定器で自律神経の状態を計測しました。
治療方針として
1.自律神経の調整
2.首肩の筋緊張の緩和
3.目の周りの筋緊張の緩和

この3点を重点的に行いました。
この患者さんの場合は鍼灸治療が久しぶりということもあり、最初は刺激量を抑えて鍼も細い鍼を使用し、鍼灸治療の刺激を徐々に体に慣らしていくように施術していきました。

 

治療経過
◇1回目◇
自律神経測定器の結果、交感神経が過亢進の状態でしたので、まず心地よい程度の熱さのお灸で体をリラックス状態に持っていき、副交感神経の活動を上げる施術を重点的に行った。

◇2回目◇
1回目の治療後体が温まった感じが続いて長年の手足の冷えが良くなったと感じたとのこと

◇3回目◇
手足は継続して温かいと感じる。目の状態はあまり変化が見られない

◇4回目◇
首や肩の症状がいくらか和らいできた

◇5回目◇
見えづらさなどの目の状態が少しずつ改善されてきた。

◇6回目◇
眼科で眼圧を測定したところ眼圧が14~15mmHgと下がっていた。このままの眼圧だと薬の量を将来的には減らしていけるとのこと。

 

症例2

40代 男性

 

◇症状◇

3年前ほど前にたまたま検査を行った際、眼圧が高いことが発覚した。正常眼圧が平均14、15ぐらいなのに対し、両目とも25であった。自分で生活面での改善を行った結果、19まで落ちていたが、このままの状態が続けば視野傷害が出現する恐れもあり、それを鍼灸治療で食い止めたいという思いから当院に来院した。目のかすみが若干あるが緑内障自体の症状はまだない。

 

◇当院の治療◇

まずは自律神経測定器にて現在の身体の状態を計測。自律神経の乱れもあり、血管の働きも低下していたので、自律神経調節の治療を行った。房水の排出を狙い目の周りにあるツボに刺鍼をし、そこに低周波を流した。デスクワークが多く目への血流の妨げになっていると考えられる首肩周りの緊張を取るため首肩、肩甲骨まわりにも刺鍼。

 

・1回目
施術後、目の疲れが軽くなったが、目のかすみがまだ目立つ。

・2回目
目の疲れがだいぶ取れてきた。かすみも薄くなってきた。

・3回目
眼科で精密検査を行ったところ、眼圧が19のままであった。

・4回目
かすみがさらにとれてきている。

・5回目
かすみが取れてきて、目も疲れにくくなってきた。

・6回目
再び検査を行った結果、眼圧が16まで下がっていた。

 

 

症例3

50代 男性

 

1年前にかすみやドライアイが気になり始め、半年前から視界が一部黒くなった事に気がついた。急いで病院で受診したら緑内障と診断された。

眼圧は当初、右眼が40、左目が20と右眼が特に異常に高い状態だった。

右眼の手術を受けて正常範囲内まで下がったが、また一時的に40まで上昇し、現在は両目25前後で落ち着いている。

正常範囲内まで眼圧を下げることを希望して来院した。

高眼圧の影響で常に頭痛に苦しめられている。

また、デスクワークやストレスの影響で首肩、背中の筋緊張が強く見られた。

 

当院の施術

 

まず、自律神経測定器でお身体の状態を確認しました。

運動習慣がなく、食生活も脂質が多いものを好むという事のためか、血管の弾力性が低下しており、血管年齢が20歳も実年齢を上回ってました。また、交感神経と副交感神経の割合が9:1とバランスがかなり乱れており血流低下、自然治癒力の低下など身体の機能が正常に活動していないことが予測されました。

 

施術内容としましては、自律神経調節治療、首肩、背中の筋緊張緩和、眼の周囲に刺鍼し低周波で刺激する鍼通電療法を行いました。この3つを組み合わせることにより、眼の血液循環が改善し、房水が排出されるようになります。

通院間隔は最初の1週間は1回~2回、眼圧が正常範囲内で安定してきたら、2週間~4週間に1回とメンテナンスとして通っていただいています。

 

経過

 

◇1回目◇

身体がリラックスできて、眼もスッキリした。

◇2回目◇

とても眠れるようになったが、忙しいと心身ともに疲労感が強くなる。

◇3回目◇

身体の疲労感が取れ

◇4回目~10回目◇

定期検査で右14、左13まで眼圧が低下していた。

◇11回目~15回目◇

視野狭窄の進行が止まっており、眼圧も前回の検査と同じ数値だった。

◇16回目~20回目◇

繁忙期や気温の急激な低下など複合的な要因があり、眼圧が右16、左15と少し上昇した。

◇21回目~25回目◇

また眼圧の低下がみられ、両目とも13で落ち着いている。

現在は月に1回の頻度で定期的に通院中。

 

 

④緑内障の日常生活での注意点

緑内障は症状が進行すると失明にまで至るとても怖い病気です。視野欠損や中心暗点の症状に気づいた時点で症状がかなり進行していることも多いので、普段の日常生活で日ごろから緑内障にならないように予防していく必要があるのです。
日常生活で緑内障を予防するために

・糖分を控える
糖分を過剰摂取すると血液中の糖分が増えて血液はドロドロ状態となりやすくなってしまいます。眼の血管は細かい血管が多く血液がドロドロ状態ですと詰まりやすくすぐに血行不良の状態へと陥りやすくなります。眼底の血流不足は緑内障の原因となるとも言われるため日常生活での糖分の過剰摂取は控える必要があります。

・アルコールを控える
過度なアルコール摂取は、眼圧を高くすると言われ緑内障の原因になる可能性があります。また東洋医学的に診ても目と肝は関係が深く、アルコールにより肝が痛めつけられて目の症状が出やすい状態となってしまいます。

・目の疲れを溜め込まない
普段、パソコン作業やスマートフォン操作で多くの時間を費やす方は特に目の休息を意識して目を休める時間を確保するように心がけましょう。近くのものを見るということは人間の目にとってはとても負担の大きいものとなります。作業に合間で遠くのものにボーっと視点を合わせるようにして目の筋肉を休息させましょう。

・適度な有酸素運動
有酸素運動は高まりすぎた交感神経の活動を抑制させて副交感神経の活動を高めるリラックス効果があります。すると、全身の血行は良くなり、緑内障の予防となります。

 

 

⑤緑内障とは

緑内障とは何らかの原因で視神経が障害されて視野が狭くなる疾患です。緑内障では一般的に自覚症状はほとんどなく、知らないうちに病気が進行していることが多くあります。視野障害の進行としてまず目の中心を少しずれた場所に暗点ができます。
実際にはその暗点は両目で見ることにより補われたり、目を動かすことにより気付かないことが多いようです。症状が進行してくると暗点は徐々に拡大していきます。視野はさらに狭くなって、ついには日常生活に支障をきたすようになり、さらに放置すると失明に至る場合も少なくありません。緑内障は糖尿病性網膜症を抜いて一番の失明の原因となっています。

 

※眼圧が低いと…
緑内障は眼圧が高くなってしまい眼球が視神経を圧迫してしまうことにより視神経細胞を傷つけて視野欠損や視力の低下を招く疾患です。では、逆に眼圧が低すぎる場合は、目に何か不具合を生じさせるのでしょうか。
眼球内の硝子体の中には房水と言われる液体が入っています。房水は毛様体で生成されて硝子体内に排出されます。硝子体内には欠陥が存在しないために房水は、硝子体内の一定の圧力によって循環することで栄養を運ぶ役割や眼球の形を保つ重要な役割があります。この圧力を保てないと房水の働きが十分にできなくなってしまったり眼球の形を正常に保つことが難しくなってしまうのです。もちろん眼圧が高くなってしまっても視力や視野に影響を与えてしまいますが低すぎてもダメなのです。
眼圧が低すぎる状態は、眼球の形を一定に保つことが難しくなるためピントを合わせずらくなってしまうのです。すると視力が低下するばかりでなく物が歪んで見えたり、ひどいと歩くこともままなくなり日常生活に大きな支障をきたしてしまうのです。
正常な眼圧の範囲は、一般的に10~20㎜Hgと言われており、眼圧が10㎜Hgを下回ってしまった場合注意が必要です。ちなみに眼球はまぶたを閉じれば自分でその硬さを知ることができます。眼球を抑え過ぎるのは目に良くないことですが、自分の眼球の硬さを知ることは病気の早期発見に役に立ちます。

目の構造

 

②緑内障の原因

緑内障は眼球における房水の流出路が障害されて起こると考えられています。目の中には血液のかわりとなって栄養などを運ぶ、房水とよばれる液体が流れています。
房水は毛様体で生成されてシュレム管から排出されます。隅角はその経路の一部であり、緑内障にとってとても重要な場所です。眼の形状は房水の圧力によって保たれていてこれを眼圧といいます。緑内障はその眼圧が上昇することによって視機能が障害される疾患でもあります。緑内障の種類は5つあります。

ⅰ)原発閉塞隅角緑内障
虹彩の根もとが前に押し出されて隅角が狭くなり、房水の流出が悪くなって緑内障が起こります。中高年の女性に多いとされています。急性型と慢性型があります。急性型は眼圧が急に上がった状態で眼痛とともに頭痛や吐き気、嘔吐などがしばしば合併しますので内科疾患と間違えられる場合があります。
他覚的所見として瞳孔は散大して結膜の充血も強くみられます。慢性型は症状が軽い時は、頭痛や眼のかすみ・軽い痛みがあります。重い時は急性型の症状が現れることもあります。

ⅱ)原発開放隅角緑内障
隅角は狭くないが、その機能が悪く、房水の流出が障害されるもので慢性に経過します。正常よりも眼圧がやや高い状態が続いて、そのため視神経が障害されて、次第に視野が狭くなって視力も低下していきます。
そして視神経までも委縮してついに失明に至る場合もあります。また頭痛・軽い眼痛や眼のかすみといった症状を訴えることもあります。

ⅲ)正常眼圧緑内障
眼圧は正常範囲(10~21mmHg)であるが、視神経が障害されて視野の狭窄が見られるものをいいます。緑内障は、眼圧が高くなることが原因だと知られていますが、実は日本人で一番多いのが、この正常眼圧緑内障です。
視神経の障害を起こさない眼圧には個人差があり、人によっては低い眼圧でも視神経障害を起こすことがあります。眼圧が正常であること以外は原発開放隅角緑内障と同じ症状が現れます。

ⅳ)続発緑内障
ぶどう膜炎・ステロイド薬の長期点眼・外傷・眼内腫瘍・網膜疾患などでも緑内障の症状が起こる場合があります。

ⅴ)先天緑内障
隅角の形成不全による房水の流出障害で起こります。角膜が混濁するほか、乳児の場合は眼球の伸展性あるため眼球全体が大きくなります。自覚的に羞明や混濁などの症状があります。

Ⅵ)薬の副作用
薬の副作用でも緑内障が起こることが知られています。特に抗精神薬や抗不安薬、睡眠導入剤において目の副作用として原発性閉塞隅角緑内障があります。日本緑内障学会が行った調査によりますと有病率は決して多くないとされていますが、緑内障の急性発作が起こる危険性があると示されています。また多くの精神疾患に関する薬には目に対する副作用があると報告されています。ムスカリン性アセチルコリン受容体遮断作用による調節障害により目のかすみ症状が起きることがあります。その他の精神疾患薬の副作用として首や顔・眼球の筋肉にゆっくり持続的な異常収縮が起こることがあります。目ではまれに眼球上の瞼のけいれんが起こることがあり、注意が必要です。

 

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好医院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 17:00 / 院長コラム 緑内障の鍼灸治療 への5件のコメント

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