月経前不快気分障害(PMDD)の鍼灸治療

当院の月経前不快気分障害(PMDD)に対する鍼灸治療は、自律神経のバランスと女性ホルモンのバランスを整え、身体の冷えを取り除き全身の血流を良くすることにより、症状の改善を促します。

治療手順

1問診

しっかりと問診をして原因がありそうな部分を特定していきます。

 

2自律神経測定

自律神経測定器を用いて現在の身体の状態を把握します。

自律神経測定器

 

3仰向け治療

腹部・手足のツボを用いて自律神経の調節を行います。

冷えのある部分にはお灸も行います。

顎関節症の自律神経調整鍼灸

このとき婦人科系のツボも用いて、女性ホルモンのバランスも整えていきます。

 

4うつ伏せ治

背部兪穴という五臓六腑の状態を調節するのに重要なツボがありますので、その部分に刺激をいれていきます。

主に「脾」「腎」「肝」のツボを用います。

神経性(心因性)嘔吐症の背部兪穴の治療

また、下肢・骨盤周囲にも施術を行います。

骨盤内血流が増加することで子宮内膜が健康な状態になるため、乱れていたホルモンバランスが整いやすくなります。

 

月経前不快気分障害とは

 

月経前不快気分障害(PMDD)とは、月経の数日前から精神症状を引き起こす病気です。

主な症状は、気分の落ち込み、不安感、緊張感、イライラ、悲しみなど様々で、日常生活に支障をきたしてしまう重度なものです。

この重い精神症状は、生理の7~10日前に現れ、生理が始まるころに消失するのが特徴です。

 

月経前不快気分障害(PMDD)と似た症状で月経前症候群(PMS)が存在します。

月経前症候群(PMS)も、生理前に心身ともに不調が現れ生理開始とともに良くなる、という点ではとてもよく似ていますが、月経前不快気分障害(PMDD)は月経前症候群(PMS)と比べて精神症状がより重症であると言えます。

閉経が近づくにつれ症状が増すこともありますが、閉経後には症状は消失します。

 

月経前不快気分障害(PMDD)の原因

 

月経前不快気分障害(PMDD)の原因はいまだ解明されてはいません。

 

しかし、生理前に増加する黄体ホルモンの影響が大きいことは分かっています。

通常であれば月経が近づくにつれて黄体期に増加した黄体ホルモンの量は、1週間程度で徐々に低下していきます。しかし、月経前不快気分障害(PMDD)症状が強い場合、黄体ホルモンは月経の数日前に急激に減少するため精神状態が不安定になってしまうのです。

 

また、もう一つの女性ホルモンである卵胞ホルモンとのバランスが乱れることも原因のひとつであると言われています。

いずれにせよ女性ホルモンの乱れが大きく関わっていると考えられます。

 

他にもストレスや姿勢、睡眠、食生活、低血糖、自律神経の乱れなども大きく作用すると言われています。

 

月経前不快気分障害(PMDD)の西洋医学的治療法

 

・SSRI

セロトニンなどの働きを高め、気分を安定させる作用があります。

うつ病に対してはこれらの薬の効果が現れるのに数週間かかりますが、月経前不快気分障害(PMDD)には即効性があると言われています。

特にイライラや怒りの感情などを抑えるのに効果的です。

 

・漢方薬

東洋医学的には月経前気分不快症状には瘀血治療を基本とします。

瘀血とは血の流れが滞った状態をさします。

このとき血の流れだけでなく気の流れも滞っていると考えられるため、気・血の流れを良くする漢方薬が効果的です。

 

また、精神症状に加えて心身症状もみられる場合は鎮痛薬や便秘薬などが処方されます。

 

東洋医学からみた月経不快気分障害(PMDD)

 

東洋医学では子宮を「女子胞」と称します。

女子胞は「脾」「腎」「肝」と深く関与しています。

 

これら3つのバランスが崩れることで子宮の血液循環が滞り瘀血に繋がります。

①脾の機能失調により肝や腎精が不足する

脾の機能が低下すると、腎精や肝血を十分に化生できないため腎精不足や肝血虚になります。

 

②肝腎精血不足

腎精不足になると血を十分に化生できず肝血虚がおこります。

また、不足した肝血を化生するために腎精が消耗されると腎精不足がおこります。

 

症例

 

30代女性

 

4〜5年前から、生理前になると気分の落ち込み、パニック、集中力の低下などの症状が現れた。

基本的に梅雨の天気が安定しないときや、秋から冬の気温の低下がある際に出現していたが、1年前の出産を期に悪化し、生理2週間前から上記の症状が毎月でるようになった。

生理前はメンタルが安定せず、家事と育児をこなすことで精一杯でイライラしたり、悲しくもないのに涙が止まらなくなるときもある。

日常生活に支障がでるため、弱めの精神安定剤を服用している。

もともと婦人科系は弱く、生理不順でピルを服用していたが、肝臓の数値が悪化したため現在は服用を中止している。

手足の冷え、気圧頭痛、首肩こりは慢性化している月の半分は体調が悪いため、疲労もなかなかとれない。

病院にいっても薬をもらうだけで改善はみられず、家族のすすめもあり今回はじめて鍼灸治療を行うことにした。

 

当院の治療

初診時は生理後で比較的安定していたため自律神経に大きな乱れはなかったが、疲労度が高く、自律神経調節能力の低下がみられた。

PMDDは自律神経が大きく関わってきているため、まず自律神経の調節を行い、婦人科系のツボを用いてホルモンバランスを整えるように治療した。

また、触診したところ、首肩・背部の筋肉の張りが強く、手足・下腹部に冷えが強くでていた。

張りが強い場所には鍼を用いて筋緊張の緩和、冷えが強い部位には鍼とお灸を行い血流改善をはかった。

 

治療経過

◇1回目◇

治療後身体がぽかぽかして眠気がでた。久しぶりにリラックスできた。

◇2回目◇

前回治療後、調子は良かった。

昨日気圧頭痛があり、痛み止めと精神安定剤を服用したところ副作用でだるさが強い。

自律神経の調節と首肩の緊張をとることで、だるさはなくなりスッキリした。

◇3回目◇

身体の余分な力がぬけて、日常的にあった重だるさは減ってきた。

慢性的な首肩こりはまだある。

生理予定1週間前だがメンタルは安定している。

◇4回目◇

生理2日目。メンタルは安定しており、イライラも悲しみもない。

生理痛は強くあったため、腰・臀部に鍼とお灸を行い骨盤内の血流を良くする治療をした。

◇5回目◇

全体的に調子がいい。薬を飲まなくてもメンタルが安定するようになった。

首肩こりもまだあるが、そこまで気にならない程度になった。

治療間隔を少しあけて今後も継続していく。

 

日常でできる対処法

 

月経前不快気分障害(PMDD)の特徴として、生理の数日前から精神症状があらわれ生理開始とともに症状が消失するのが大きな特徴です。

つまり、ある程度の病状を予測できることになります。

この点を生かして、生理前にはできる限り仕事のピークや心身に負担のかかるイベントを避けることが第一です。

 

また、症状が出た際は下記の内容を日常に取り入れてみるのがよいでしょう。

 

①発症時も無理に通常と同じ効率を求めない

症状がでているときは、普段当たり前に出来ていることが出来なくなる場合がほとんどです。

いつもと同じ生活を求めると新たなイライラを生むため、「いつもの60%くらいの力で仕方がない」くらいの気持ちで過ごしましょう。

 

②休日や睡眠時間を確保して心身ともに余裕をもつ

ホルモンバランスを整えるためにも、十分な睡眠をとりリラックスする時間を作ってストレスを緩和させることが大切です。

ゆっくりお風呂につかったり鍼やマッサージを受けたり、身体を休めることを意識しましょう。


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 16:21 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)

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