不眠の原因の一つに自律神経の乱れがあります。交感神経と副交感神経のバランスが乱れているために脳にある睡眠のスイッチが作動しづらくなるというものです。
当院では、自律神経のバランスを測る器械があります。交感神経と副交感神経のバランスを調べることや身体的ストレス、精神的ストレスなども測れます。
このデータを元にその方その方にあった治療方法で施術していきます。
鍼灸治療は自律神経のバランスを整えるのに優れた治療法です。
また、不眠に効果のあるとされるツボも刺激していきます。例えば、『百会』や『失眠』というツボは、不眠症に効果があると良く知られたツボの一つです。
百会への鍼治療
失眠へのお灸
その他、背部兪穴と言われる五臓六腑の調子を整えるツボも用い施術していきます。
それらの治療を組み合わせて鍼とお灸を使い小一時間程の施術後には効果を実感していただけると思います。
東洋医学では不眠と五臓六腑の『心』が深い関係にあると言われています。五臓六腑の『心』は西洋医学の心臓の機能と似ている部分もありますが、異なる点も多くあります。似ている点では、「心は血脈を主る」という点です。
「血脈を主る」とは心臓の拍動による循環の維持を意味しています。心臓のポンプ作用による血液の運搬と人体各部の新陳代謝をを指します。
その他、東洋医学の心では、「心は神を主る」と言われ、思考や分析、判断力や脳の情報処理能力などの意識や思慮活動などの西洋医学でいう大脳皮質の高次脳機能も心が役割を担っています。この部分が、不眠と深い関係にあり、心の機能が低下してしまうと不眠にかかりやすくなってしまうのです。寝つきが悪くてなおかつ眠りが浅い、夢をよく見る場合は、『心血虚』という状態が考えられます。
また、東洋医学で『心』と『腎』は深い関係にあり、『心腎相交』と言われます。心と腎はお互いに助け合って、活動の元となる心火と腎水を活性化しあってその役割を担っているのです。その心と腎の関係が悪くなり、お互いの活動ができない状態を『心腎不交』といい、この状態となってしまうと不眠は重症化しやすくなってしまいます。
不眠の東洋医学的治療では、まず脈診や舌診などで心の状態を見て正常に活動できているか診ていきます。そして、次に腎の状態も診て正常に戻させるようなツボを選定していきます。
40代 男性
仕事で夜勤があり、夜通し働いて一日休んでまた夜通し働くというサイクルを繰り返していた。夜勤中は仮眠をとれることもあるが、もちろん深い眠りにつくことができずに仕事から帰ってから寝るという生活をしていたとのこと。30代の頃はそういった生活でもなんとか体は健康で持ちこたえていたが、最近重労働の作業なども加わり、腰痛や肩の痛みがひどくなってからなかなか寝付くことができなくなってきた。
一日寝つくことができずにまた仕事に行くということもあったとのこと。するとめまいや立ちくらみ、目の痛みなどの症状が出て仕事にも支障が出るようになってしまっていた。病院を受診したところ、特に検査では異常が見られなかったため、現在も仕事を続けている。
腰痛・肩の痛み・睡眠を改善したいという目的で当院にご来院されました。
当院の治療
まず、自律神経測定器で自律神経の状態を把握していきました。検査の結果や張り自律神経が乱れている状態で体の疲れや精神的ストレスも高い状態でした。自律神経を整える治療を中心に首・肩・目の症状改善を目的に治療していきました。
治療経過
◇1回目◇
治療後いくらか体がすっきりしてその日はよく眠ることができた。その次の日からまたあまり寝つきがよくなかったとのこと。
◇2回目◇
腰や肩の痛みは一番つらかった時と比べると4割くらいは楽になったとのこと。
◇3回目◇
治療に専念するとのことで会社に2週間の休みをもらって治療に専念した。
◇4回目◇
仕事のストレスから解放されたからか嘘のように腰・肩・目は楽になり睡眠の質もよくなっていると感じた。
◇5~8回目◇
休職中、体は楽で症状はほぼ改善された。
◇9回目◇
職場に復帰し、また元の生活に戻ったが睡眠の質は悪くなっていないとのこと
60代 女性
更年期症状の一つとして不眠症になり、1年前に食道がんが見つかり全摘手術をしたことでより症状が強くなった。
現在の平均睡眠時間は2〜3時間程度。睡眠導入剤を飲んでようやく眠れるが、2時間ほどで目が覚めてしまう。
一度目が覚めると眠れなくなる。
食道がないため食べるものに制限がかかり、好きなものが食べられないストレスもある。
せめて5〜6時間は眠れるようになりたい。
睡眠不足と栄養不足による体力・免疫力低下で身体のあちこちが痒くなるのも合わせて改善したい。
当院の治療
自律神経測定器の結果で交感神経が優位であることがわかった。人間関係のストレスが強く、考え込んだり不安になることが多い。
何も考えずゆっくりする時間が少ないため、副交感神経に働きかけるツボを用いてリラックスできる治療を行った。
首肩の慢性的なコリがあるとそれだけで眠りの質は低下するため、首肩の治療も併せて行う。
治療経過
◇1回目◇
鍼灸治療は初めてだったので弱めの刺激で治療した。
施術後は眠気がつよくふらつく感じがあった。
◇2回目〜6回目◇
施術当日は、2時間ごとに起きて合計で6時間眠れるようになった。
首肩のコリを感じられるようになったたるめ、首肩の筋肉を緩める治療を追加した。身体の痒みが落ち着いてきた。
◇7回目〜9回目◇
施術当日は一度も起きず5時間眠れるようになった。
肩の痛みはとれた。首コリは以前よりは楽になった。
調子が悪い時は身体の痒みがでるが、それ以外は痒くならなくなった。
◇10回目◇
まだ波があるが、1週間のうち5時間以上眠れる日が2〜3日はある。今後も継続して経過を観察する。
不眠症とは、寝ようと思ってもなかなか寝付けなかったり、睡眠してもすぐに起きてしまい睡眠を維持できない状態を言います。
昼と夜が逆転して日中に眠気に襲われる・集中できない・疲れが取れない・食欲低下などの不調が起きます。
日本では、5人に1人が良質な睡眠を得られていないという調査結果があります。不眠症は、若い人より中年期以降の方に多い症状です。加齢とともに増加するので60歳以上では、3人に1人の割合になるそうです。男女差では、男性よりも女性に多いと言われています。
季節では、梅雨や季節の変わり目に不眠になる方が多いようです。気温差や日照時間などの影響で、体温調節が難しくなることや睡眠リズムが変動するためだと言われています。
睡眠不足になると体内の疲労物質などが上手く除去できないため疲労が溜まりやすく日中に身体や頭が重だるく感じます。人の身体は、睡眠時に血圧や血糖が下がるため、寝ていない身体や睡眠障害の方は、糖尿病や高血圧などの原因になります。
不眠には、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害があります。
入眠障害・・・寝付きが1時間以上など長く寝付けないのが入眠困難のタイプが入眠障害です。
中途覚醒・・・眠りついても途中に何度も目が覚めて熟睡できないのが中途覚醒です。
早朝覚醒・・・早朝に目が覚めてしまうことや、予定する時刻よりも早く目が覚めて寝られなくなるのが早朝覚醒です。
熟眠障害・・・起きてもぐっすり寝た感じがないのが熟眠障害です。
不眠症の原因には、環境・身体・精神状態・生活習慣などが主な原因としてあげられます。
生活習慣では、昼夜が逆転することや寝るタイミングが1週間の中でバラバラなど毎日のリズムが違う人は体内リズムも乱れるため不眠症にかかりやすいです。
心の病気には不眠を伴うものが多いです。悩み事や精神的ストレスも不眠の原因として多いです。ストレスを多く感じると脳内の自律神経中枢に影響がでて不眠になります。
身体的要因では、頻尿や慢性的な痛み、男性より女性、加齢によるものがあげられます。
暑くなったり急に寒くなると身体の体温中枢が上手く機能しないため不眠になりやすいです。季節の変わり目や寒暖差によっても起こります。時差や場所によっても原因となります。
上記以外にも睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群、うつ病など病気や症候群によっても不眠になります。これらは、二次性の不眠症となります。原発性は医学的にも薬にも影響されずにおこるものを言います。
朝日を浴びる・・・朝に太陽の光を浴びると体内時計がリセットされて夜に眠気がくるようになります。
運動習慣をつけましょう・・・適度な運動は疲労感がでて睡眠を誘います。全身の筋肉が柔軟になるほど血液循環は良くなり体調を整えやすくなります。
睡眠にこだわらない・・・寝よう!寝よう!と思う程寝つきが悪くなる時があります。睡眠は人によって変わるものですが、1日動けるものであれば必要最低限の睡眠は取れていることにもなりますので、寝るときはなるべく考えないようにしましょう。
寝る前はリラックスして目に刺激的なものは控える・・・寝る前に緊張するようなことやスマホを長時間使うなどの脳が興奮するようなことは控えましょう。寝る前にお酒を飲むのは止めたほうがいいです。脳が興奮しやすく深い眠りがへるため翌日に身体が重くなりやすいです。
寝る前はしっかり寝る準備を・・・眠りやすい環境を作ることも大切です。身体をストレッチして全身の血の巡りをよくしたり、眠る1~2時間前から部屋の照明を暗くする、温度や湿度にも注意すると眠りにつきやすいです。
近年の睡眠の研究で深部体温を下げれば眠くなるということがわかっています。さらに皮膚温度と深部体温の差が縮まると眠りやすくなるという研究データがあります。皮膚温度と深部の体温との差を縮めるためには、皮膚温度を上げて熱を放散させて深部体温を下げる必要があるのです。そのためにできることは、まず入浴時間を調整することが挙げられます。ある実験では、40℃のお風呂に15分入った後だと入浴前よりも深部体温がおよそ0.5度上がったという結果が出ています。
深部体温は上がった分だけその後に下げようとする体の性質があります。それは自律神経の働きでホメオスタシスと呼ばれ、体外の温度に左右されることなく体温を一定の状態に保とうとする力が働くのです。よって入浴により、一時的にあげられた体温はその後下げようとする力が働き、その働きを利用してスムーズに入眠できるようになるのです。入浴によっておよそ0.5℃上がった深部体温が元に戻るまで約90分かかり、入浴前よりさらに下がっていくのは90分よりもあとになります。
そのように考えますと、入眠する前の90分前にはお風呂を済ませておくとその後さらに深部体温が下がって皮膚温度との差も縮まることで入眠がスムーズになるのです。
世界共通で使われているアテネ不眠尺度(AIS)という、不眠症判定法のチェックシートがあります。
過去1か月以内の状態で、週3回以上あてはまるものにチェックをして判定する方法です。
A.寝つきにどれくらい時間がかかったか?
0 寝つきは良かった。
1 少し時間がかかった。
2 かなり時間がかかった。
3 非常に時間がかかった。または全く眠れなかった。
B.夜間、睡眠の途中で目が覚めましたか?
0 問題になるほどではない
1 少し困ることがある
2 かなり困っている
3 深刻な状態か、全く眠れなかった。
C.希望する起床時間より早く目が覚めて以降眠れない
0 そのようなことはなかった。
1 少し早かった。
2 かなり早かった。
3 非常に早かった。または全く眠れなかった。
D.睡眠時間は足りていますか?
0 充分である。
1少し足りていない。
2 かなり足りない。
3 全く足りていない。または全く眠れなかった。
E.日中の気分はどうですか?
0 いつも通り
1 少し滅入った。
2 かなり滅入った。
3 非常に滅入った。
F.睡眠の質についてどうですか?
0 満足している。
1 少し不満。
2 かなり不満。
3 非常に不満。または全く眠れなかった。
G.日中の眠気はどうですか?
0 全くない。
1 少しある。
2 かなりある。
3 激しい。
H.日中の身体や精神の活動状態はどうですか?
0 いつも通り。
1 少し低下した。
2 かなり低下した。
3 非常に低下した。
以上の項目の数字を合計したもので判断します。
1~3点・・・睡眠がとれています
4~5点・・・不眠症の疑いが少しあります
6点以上・・・不眠症の可能性が高いです。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好医院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 16:25 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)