頭痛の鍼灸治療

頭痛の鍼灸治療はWHO(世界保健機構)に適応疾患として定義されています。

WHOの適応疾患について←

頭痛で悩まれている方は日々増加傾向にあります。ストレス社会といわれる現代社会では、ストレスによって頭痛に悩まされている方が多いです。

 

①緊張性頭痛に対する当院の鍼灸治療

 

当院の緊張性頭痛に対する施術は、第一に頸肩部周辺の経穴に鍼をさして刺激することにより頸肩部周辺の筋肉の血行状態をよくします。
頸肩部周囲の筋肉への治療ツボとして僧帽筋や頭半棘筋部の「天柱」「風池」、胸鎖乳突筋や頭板状筋の停止部の「完骨」、肩甲上部では僧帽筋上部線維上の「肩井」、肩甲間部では各筋が交差する「膏肓」などの経穴を主に使用します。

 

また緊張性頭痛は東洋医学的に診ると「」「」「」の不調により気血水がうまく身体に回らないことが原因で発症すると考えられているので、上肢や下肢にあるツボを用いて鍼灸治療を施すことで「腎」の機能を活性化させたり、「肝」の機能低下・過亢進を抑えます。

東洋医学では局所的に診るのではなく、全体的に診ることが特徴のひとつであり、全身治療を行うことにより自然治癒力を高めます
過度な身体的・精神的ストレスは、自律神経を乱して交感神経が優位に働くことで緊張性頭痛の原因となります。そこで当院では自律神経測定器を使い、自律神経の状態を把握した上で施術することで他にはない施術効果が期待できます。

また東洋医学の特徴である全身を診て治療することにより全身をリラックス状態へと導き、交感神経の過亢進を抑制して過度なストレスを和らげます。それは、緊張性頭痛の治療になるばかりではなく、身体全体の調子が上がっていくことが期待できます。実際に当院でも頭痛の治療で「目が疲れなくなった」「便秘が解消した」「ゆっくりと体が休められ、熟睡できた」などといった声が数多く聞かれます。

 

当院の緊張性頭痛に対する施術目的は、緊張性頭痛の回復程度を高め、回復を速めることです。また西洋医学とは違う東洋医学の観点により少しでも緊張性頭痛が回復できる機会を提供することです。それにより、患者さんの仕事の質の向上や生活の質の向上が期待できます。

緊張性頭痛は、痛くてもなんとか仕事をすることができる程ですので、症状が起きても放っておく方が多いのが現状です。しかし、放っておいた時間が長いと症状がなかなか取れません。
痛みが慢性化する場合も多くあるので、早めの治療をお勧めします。

 

頭痛の鍼灸治療

 

頭痛の鍼治療

 

頭痛における鍼灸治療の研究について

頭痛における鍼灸治療の効果についての研究は国内外で行われています。その中で全日本鍼灸学会の報告で

頭痛に対する鍼灸治療の効果と現状
鍼灸治療が緊張性頭痛や片頭痛の鎮痛効果や痛み発作を抑制する可能性があると示唆しれています。

 

また、ある研究では、緊張性頭痛の発症機序や鍼治療の作用機序について、サーモグラフィーを用いて行ったものがあります。

その研究では、頭痛の発症機序は頭周りの筋肉よりも首の後ろの筋肉や、肩甲骨の上または肩甲骨の間の筋肉が過緊張状態が引き起こしている可能性が高いことが示唆され、鍼治療ではこのような筋肉にアプローチすることで筋緊張の緩和や循環を正常に戻すことが結果として出ています。
また、鍼治療では脳の核や中心灰白質に影響を及ぼすことも示唆されています。

埼玉医大東洋医学科の臨床研究では、神経内科等から薬物療法では効果が期待できない難治性の筋緊張性頭痛患者に対して鍼治療を行ったところ鍼治療の有効率は、82.3%だったという高い有効率が出ています。その臨床研究では、鍼治療を行うことで頭痛の改善や首肩部のコリの改善、施術後の患者さんの満足度も上がるという事が示唆されています。

※参考文献
『鍼灸臨床 最新科学』 医歯薬出版株式会社

 

②緊張性頭痛の東洋医学

 

緊張性頭痛は、東洋医学では「太陽経頭痛」といわれ、後頭部辺りの痛みや肩甲骨周辺の筋肉の痛みを伴います。また、頭痛の症状ばかりでなくイライラ感・不眠・精神不安・目の疲れ耳鳴りなども併発します。
東洋医学では、痛みは常に「不通即痛」あるいは「不栄即痛」によって起こると考えられています。つまり、痛みはどこであろうと「気血水が何らかの影響で滞ると痛みが生じ、さらに進行すると栄養不足となりさらに痛みが加速する」ということです。

頭痛の場合もその過程が当てはまり、頭部を通る経絡の不通と頭部への栄養不足が原因と考えられます。

では、何によって気血水が滞らせるというと大きく二つの原因が挙げられます。

まず一つは気温・天候や飲食物などの体外環境によるものです。気温が低い・湿度が高い・冷たい飲食物の過多摂取による頭痛がこれにあてはまります。
二つ目は、東洋医学でいう「肝」「腎」「脾」の病変により気血津が体にうまく回らず、頭部の経絡の流れが障害されて起こる頭痛です。この3つの臓器は、気血水を循環させるのにとても重要な役割があり、緊張性頭痛の場合は「肝」が大きく影響します。

 

ストレス過多といわれる現代では、日常生活の中でストレスを感じる機会が増えており激しい怒りや不安などを感じる場面が増えています。そういったストレスは特に「肝」に悪影響を及ぼします。
「肝」の疏泄を主るという機能が低下すると体全体の気血水の流れが悪くなり、肩や頸部周囲の気血水の流れも悪くります。すると筋肉への血行が悪化し、筋肉が十分に栄養されません。そのため頸肩部の筋肉にこりや痛みが生じて、脳への血流が低下します。脳へ行く血管は必ず頸肩部を通過するため、頸肩部のこりや痛みによる血管収縮は、頭部への気血水の滞りや栄養不足に繋がり、緊張性頭痛を引き起こします

 

 

③頭痛の鍼灸治療症例

 

症例1

40代 女性
30代後半ごろから慢性的な頭痛に悩まされてきた。仕事はデスクワークで首肩コリの症状が強く出るのと連動して後頭部から側頭部にかけて締め付けられるような頭痛やズキズキと痛む頭痛などが出てその都度市販されている頭痛薬で抑えていた。
しかし、最近頭痛が起こって頭痛薬を服用してもあまり効果が出ずに症状がひどいと吐き気も催すようになってしまった。
病院で検査したところ特に異常は見られずに痛み止めを処方されて服用したが、少し痛みは軽減するもののすっきりと症状が消えないためにほかの対処法はないかと探していたところ知人の紹介で当院にご来院されました。

 

治療
問診時に自律神経測定器を用いて自律神経の状態を測定したところ交感神経の活動が高い状態で自律神経の乱れがありました。また、後頭部から耳裏にかけての筋緊張が強くそれが筋緊張性の頭痛となって症状が出ていると考えられたため、それらの筋緊張を取り除くような施術を行っていきました。
まず上向きとなり腹部や手足の経穴を用いて自律神経調整施術と頸部の筋緊張の緩和のため頸部の前部、後頭部の横に刺鍼していき、次にうつ伏せとなり、頸部や肩部、背部の筋緊張緩和のための刺鍼やお灸を行っていきました。

 

治療経過としまして、一回目の施術後は疲れが体の表面に出てきた感じで次の午前中くらいまで倦怠感が出ていたが夕方程からは体や頭がすっきりして頭痛症状が軽減されたとのことでした。2回目以降も同様の施術を行っていき、4回目の施術後にはほぼ頭痛を感じることがなくなりました。

 

症例2

30代 女性

頭痛は慢性的で社会人になった20代前半から悩まされているが、ここ最近頭痛の頻度が増えてきたため来院した。

また、今まで悪化に伴い痛み止めの薬を服用してきたが、薬に頼る事を控えたいという思いもある。

普段はデスクワークのため首肩コリや眼精疲労もひどく、疲労が溜まりすぎると頭痛がひどくなる。

こめかみが強く締め付けられる感覚があり、痛くて仕事に集中できないこともある。

触診を行うと側頭部だけではなく、前頭部、頭頂部の方さも強く、広範囲にコリが拡がっていることが分かった。

 

当院の治療

 

この頭痛の原因は肩こりによる緊張性頭痛のため、うつ伏せで首肩の筋緊張の緩和を目的とした施術を行いました。

その後は、仰向けの態勢で自律神経調節治療と側頭筋、前頭筋、頭頂筋に直接鍼を刺し、そこに電気を流す低周波鍼療法を行いました。

 

1回目

治療直後は頭が軽くなったが、また次の日から締めつけるような痛みが出た。

 

2回目

首肩の方さが軽減。頭の硬さも取れてきた。

 

3回目

最近よく寝れるようになり、疲れが残りにくくなってきた。

 

4回目

治療直後、頭痛が消えた。週末になるとまた少し出てくる。

 

5回目

最近痛みが気にならなくなってきた。

 

現在、月2回のペースでメンテナンスを行っています。

 

④緊張性頭痛とは

 

緊張性頭痛とは、頭痛の7~8割ほどを占めていて日本では成人のおよそ22%がこの疾患に悩まされており、5人に1人が緊張性の頭痛持ちであるといえます。

症状の特徴として鋭い頭の痛みではなく、なんか頭が重たいと感じたり、頭が鉢巻で締め付けられているような何となくダラダラと続く痛みがあります。運動などでの日常生活動作による症状の増悪はなく、頭痛が30分から7日間続く場合や一カ月に15日以上を三カ月以上にわたり続く慢性の場合もあります。

寝込んでしまうような激しい痛みではないので日常生活に支障はきたすことはなく、仕事もなんとか我慢して続けられます。
緊張性頭痛はほぼ男女差がなく、女性にも男性にもみられるが中年以降の方に多いようです。

 

 

⑤頭痛の分類

頭痛は一般的に一次性頭痛と二次性頭痛とに分けられます。一次性頭痛とは、身体にこれといった異常がないのに頭痛を感じる疾患で、二次性疼痛は脳腫瘍やくも膜下出血などの脳や身体に異常があるために起こる頭痛で命の危険にもさらされる危険性のある疾患です。

 

ⅰ)一次性頭痛
一次性頭痛の中でよく知られている疾患としては、肩首のこりなどが原因で起こる緊張性頭痛や数時間・数日間、ズキンズキンと拍動とともに痛みが続くという片頭痛、転げ回るほどの痛みを感じる群発頭痛などがあります。
いわゆる「頭痛持ち」の方の頭痛で命に差し支えることはありません。
片頭痛はとにかく女性に多い頭痛の一種です。男性の約4倍もの人がこの片頭痛で悩まされているともいわれています。
片頭痛の痛みの特徴として頭部の片側あるいは両側がズキズキと痛むことが挙げられます。まれに緊張性ずつのような後頭部に痛みを伴う事もありますが、おもに側頭部への痛みが片頭痛と言われるものです。痛みが起きる頻度としましては、1か月に数回の方もいれば1年に数回程度しか片頭痛が現れない方もいます。

この片頭痛は緊張性頭痛と違い、日常生活に多大な影響を与えてしまうことも特徴です。痛みのために寝込んでしまい仕事や学校に行けなくなるほどの方もいます。片頭痛は筋緊張性の頭痛とは違い、脳の視床下部が何らかの理由により興奮すると脳内の血管が拡張して血管のまわりにある三叉神経を刺激して痛みを感じることが痛みの原因となります。

よって片頭痛が起きている時に過度な運動や飲酒、入浴は血管を拡張させて痛みを増幅させる危険性もあるので注意してください。その他、光や音などの外界の刺激にも敏感になっている場合もあり、それが引き金となって痛みを増長させることもあります。

群発性頭痛もひどい頭痛に悩まされます。頭痛の中でも群発頭痛はごく少数ですが、発症してしまうとのたうち回る程の痛みが襲い、痛みが顔面部までに及ぶこともあります。痛みにより睡眠の妨げとなり、睡眠障害や自律神経失調症なども併発する危険性もあり、注意が必要です。

ⅱ)二次性頭痛
二次性頭痛は、脳腫瘍やくも膜下出血など脳内に異常があって起こる頭痛や癌や免疫不全・精神疾患など身体が原因で起こる頭痛があります。二次性頭痛は命の危険がある場合があり、発症したら出来るだけ早く脳神経外科や神経内科などにかかる必要があります。

二次性頭痛を疑うのは、
・突然の頭痛
・今までに経験したことのないような頭痛
・50歳以降に初発の頭痛
・癌や免疫不全の疾患を患っている方
・精神症状を患っている方
・発熱・項部硬直などを訴える方
・悪心・嘔吐・意識障害

などがあります。

 

 

⑥緊張性頭痛の原因

緊張性頭痛は、後頭部周りの筋肉の緊張によって血管が収縮し、血液の流れが滞ることによって起こると考えられています。筋肉の過緊張は、筋肉内部の血流が悪化し、老廃物である乳酸ピルビン酸が溜まってしまいます。この老廃物が、痛みの神経を刺激して頭全体を締め付けるような頭痛を引き起こすのです。

目の周囲にある眼輪筋や眼瞼挙筋や頸肩部にある僧帽筋などは、頭を覆う前頭筋や後頭筋にも影響を与えるため肩こり疲れ目は緊張性頭痛の原因にもなります。例えば、悪い姿勢や一定の姿勢を続け、パソコンなどを長時間行い目を酷使すると緊張性頭痛になりやすくなります。

またその他に身体的・精神的ストレスも緊張性頭痛の大きな原因になります。枕の高さが合わない・常に頸肩部が緊張状態にある・頸部の筋肉が弱く頭部をうまく支えられないなどといった身体的ストレスや不安感の強い人・うつ状態の人などによる精神的ストレスが原因となる場合が多くあります。精神的・社会的ストレスは、大脳辺縁系に作用して痛みを感じやすくさせ、頭痛が誘発させるといわれています。

過度なストレスは、自律神経系を乱して主に交感神経が優位になることにより、血管の収縮が起こってしまい老廃物を溜めこみやすくします。また筋肉に栄養を送れなくなり、痛みがさらに強くなる場合があります。その痛みを身体がストレスと感じてしまい、また痛みを誘発するといった「痛みの悪循環」となってしまうのです。

女性に多い頭痛の一つとして挙げられるのがダイエットなどによる過度な食事制限です。過度な食事制限は低血糖状態となってしまうため頭痛の症状が起きてしまうのです。人間生きていくためには、必要最低限のエネルギーが必要となってきます。エネルギー不足は必要な栄養の代謝活動が悪くなるために血行が悪くなります。血行が悪くなると、新陳代謝が悪くなり、痛みを発生させる発痛物質や老廃物質が留まりやすくなるため痛みの原因やコリの原因となってしまうのです。
また、身体は冷えて肩こり頭痛の原因となってしまうのです。そういったことが起きないような無理な食事制限は控えてバランスよく食事をとって有酸素運動で体の脂肪を落とすような運動をしたり、筋力トレーニングなどで筋力をつけるようにして基礎代謝を上げる運動をおりまぜることが健康的に痩せる第一歩となります。

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 19:38 / 院長コラム 頭痛の鍼灸治療 への9件のコメント

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