腰痛 ぎっくり腰の鍼治療

①ぎっくり腰に対する当院の治療

当院のぎっくり腰に対する治療の目的は、第一に腰部のツボや痛みの強い部位に鍼をさして微電流を流すことで鎮痛効果を促します。
また痛みの強い個所にお灸を施すことで炎症を抑える効果が期待できます。急性腰痛を起こしてしまうとそれを誘発したと考えられる動作に恐怖心を覚えて鋭い痛みがなくなった後でも周りの筋肉が緊張して慢性的な腰痛や筋肉のコリにつながりかねません。

当院では、急性腰痛の痛みが一旦和らいでも動作の恐怖心が和らぐ間は少し定期的に施術を受けられることをお勧めしております。

ぎっくり腰を東洋医学的観点からとらえると、腰は五臓六腑の「」に深く関係していると考えられております。よって腎に関するツボを用いて「腎気」を補うことや腰部の気血の流れをよくします。また「風寒」や「湿」の邪気によって引き起こされる場合はそれらを体外に出す治療が必要になります。

中医学の診断方法に基づき全身の調整治療も行っていきます。ぎっくり腰は全身性の疲労や気血の滞りが原因の場合もあるので腰だけの部分的な治療ではなく全身を診て治療していきます。それは東洋医学の特徴でもあります。全身治療を行うことにより人間が本来もっている自然治癒力を高めます。

また当院独自の自律神経調整療法により持続性の高い施術効果が期待でき、多くの方の支持を得ています。

 

アメリカでの腰痛治療のガイドライン

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28192789

アメリカ内科学科が公表した腰痛治療に対してのガイドラインでは、急性腰痛に対してまず第一に鍼灸や温熱療法などの非薬物治療を最優先させるべきであるということが書いてあります。慢性腰痛に対しても鍼灸や運動、ヨガなどを第一選択とし、薬物療法は非薬物療法の効果が不十分であった場合に処方されるべきとされています。
アメリカでは、オピオイド系の薬物依存が社会問題となっている背景があるためかと思われますが、日本よりもアメリカの方が鍼灸治療などの代替医療が世間一般に知れ渡っています。

②ぎっくり腰の東洋医学的考え

中医学では腰痛は体の外から邪気を受けるため発症するものと腎気が何らかの原因で損傷して発症するものと考えられています。

寒く風のあたる場所にいた際に「風寒の邪気」を受けた時や湿度の高い場所にいて「湿邪」を受けた時、長い間体力仕事をした時などに腰部の経絡の気血は滞り、流れなくなって痛みを発症します。

また「腰は腎の腑」とも呼ばれており、何らかの原因で腎気が損傷を受けると腰部の経絡は温度を保つ作用や栄養を行き渡らせる作用を失い、腰痛を発症します。

 

 

 ③症例

・主訴
30代 女性 急性腰痛

・症状
当院に来院する前日に斜め前の物を腰を捻らせながら取ろうとした時に急に腰に痛みが走った。
寝てもしばらく痛みは引かずにずっと痛みが続き、あまり寝ることができないくらいだった。
翌朝早くに当院に来院。

・当院の治療
事務職でずっと座っているせいか慢性的な腰痛はありました。痛みが強い時は、近くのマッサージ院で対応していたとのこと。
今までぎっくり腰の経験がなく、お風呂で温めれば治ると思い、湯船で温まりその後にまた症状が悪化してしまった。
まず炎症を早く引かせるような鍼灸施術を施して、最後にアイシングをしました。また周りの筋肉が痛みによって硬くなっていたのでその部分を軽くほぐす治療をしました。

・経過
◇1回目◇
治療前は仰向けになるだけで腰に痛みが出ていたが、治療後は軽快。腰部を前屈・回旋させるとまだ痛みは出るが、治療前より可動域は広がった。

◇2回目◇
1回目の治療後から2日後に来院。だいぶ痛みは取れたがまだ可動域はせまく、前屈回旋動作で痛みが出た。治療後それほど痛みの程度や可動域に変化なし

◇3回目◇
前回から3日後に来院。前回治療した翌朝腰の痛みは少なく、前屈回旋動作はほぼ正常に動かせるようになった。まだ少し腰部に違和感は残っている状態。炎症はほぼ引いてきたと考え、お灸で温める治療や軽いストレッチで筋肉を弛緩させ、血流を改善させる施術を施しました。

◇4回目◇
前回から一週間後に来院。ほぼ日常生活での腰部の違和感はなくなった。しかし、長時間事務作業をしていると、少し腰がつらくなってくるとのこと。前回の治療よりも少し鍼やお灸の刺激量を増やして施術しました。

◇5回目◇
前回から一週間後に来院。来院当初の痛みはなくなり、急性腰痛はほぼ完治したと判断。普段の仕事の疲れからくる慢性的な腰痛に対してアプローチしました。

・考察
ぎっくり腰は様々な種類がありますが、ほとんどは腰部の炎症が起きています。炎症がひどい時に温めることをするとさらに炎症が悪化して痛みが強くなる場合がありますので、ぎっくり腰になった時は、湯船に長時間入らない方がいいです。この方は慢性的な腰痛持ちで、それが引き金となったと考えられます。普段から長時間のデスクワークを避けて、1時間に一回は席を立って軽いストレッチをしていただくようにアドバイスしました。

 

④症例2

・主訴
30代男性 慢性腰痛

・症状
以前より腰痛があったが、当院にご来院される一週間前より痛みが増してきた。本人としては、特に痛みが強くなった原因がわからない。座っていたり、立って腰を前にかがめると特に痛みが強く、常に腰が重だるい感じがするとのこと。
病院でCTを撮ったが特に原因はわからず少し腰椎の並びが曲がっていると言われて湿布薬を処方されたとのこと。症状はあまり変化がみられずに当院にご来院された。

・経過
◇1回目◇
腰の痛みが強く全身を手技療法などで軽くほぐした後で鎮痛効果のある通電気療法をしました。治療後は痛みが少し軽快。

◇2回目◇
一回目終わったあとから痛みがまた戻ってしまった。特に腰を前にかがめると痛む。今回は刺激量を増して腰部の鍼通電気療法と鼠径部の鍼通電気療法を施しました。

◇3回目◇
2回目の施術の効果がかなりあったとのことで腰を前にかがめる動作が楽になった。2回目同様の施術をした

◇4回目◇
腰の重だるさはまだ残ってきているが腰は全体的に楽になった。

◇5回目◇
腰の痛みや重だるさは引いたが、背部や腰部の筋肉の硬さが見られたのでそれらの筋緊張を緩和するため施術を行った。

 

 

⑤症例3

40代女性

 

ゴルフでフルスイングした際に腰に違和感を覚え、翌日から腰痛が出現。背中を反らすと痛みが増悪する。また、歩けはするが走ると腰に響くような痛みが出現する。特に右腰が痛む。患部に熱感と圧痛あり。普段はデスクワークでほぼ座って仕事をしていて、運動は週末にヨガやジムで汗を流している。

治療方針

まず、うつ伏せで下肢の筋肉の筋緊張をマッサージで緩め、炎症があるとみられる部分に消炎、鎮痛を目的とした鍼通電、お灸を用いて施術しました。また、患部の血流改善と消炎を促すため臀部から下肢にも鍼と灸を用いて施術しました。

2回目以降は患部の熱感が消えてきたので、最後に仰向けで大腰筋に鍼をし股関節部のストレッチを行い、可動域を段々と広げていきました。

治療経過
◇1回目◇

前回よりは痛みは軽減し、歩くのも少し楽になったとの事。まだ腰に痛みの余韻があり、歩くのもこわごわ。

◇2回目◇

前回と同じくらいの痛み。小走りをするとまだ腰に響くような痛みが出現するが、歩く分には問題ない。

◇3回目◇

また、少し痛みが軽減した。しかし咳をすると腰に響く。

◇4回目◇

押されると痛みはあるが、だいぶ動くのが楽になってきた。歩行も軽快。日常生活で普通に生活している分にはほぼ痛みを感じない。

 

⑥ぎっくり腰とは

ぎっくり腰とは、重い物を持った時や急な体幹の捻転時に起こる急激な痛みのことで、場合によっては激痛のため脂汗が出て歩けなくなるような発作性の腰痛症です。

ぎっくり腰は海外では「魔女の一撃」とも呼ばれており、何かのきっかけで急激に発症した腰痛のことで、内臓疾患によるものではなく、レントゲン写真を撮っても脊椎に異常が見られないものの総称です。

ぎっくり腰は、簡単にいえば腰が炎症を起こしている状態であり、痛み方に特徴があり、焼けるような・脈打つような痛みを感じることが多くあります。

ぎっくり腰は、重いものを中腰で持った時、体幹の捻転時や前にかがんだり長く座ったりして血行状態が悪くなった時に急に痛みを発症します。ぎっくり腰や腰部椎間板ヘルニアにかかる人に重労働の人は意外と少なく、デスクワーカーや車好きに多いと言われています。

座った状態では体重が腰にかかり、椎間板への負担は増大して血液循環も悪くなります。そうなるとどうしても腰や骨盤の筋肉、筋膜、靭帯も損傷しやすく、ぎっくり腰になる可能性も高くなります。

ぎっくり腰は骨盤の仙骨と腸骨の二つの骨よりなる仙腸関節に付着する軟部組織に特に多く発症します。この関節が何らかの原因によって開くことで、腸骨が後下方にずれる場合が多いです。

腸骨がずれる原因として骨盤を支える筋肉が弱くなること仙腸関節を構成する軟部組織の機能低下により仙腸関節の支持する能力が低下して、ずれると考えられています。また腰部の骨と骨とを連結する椎間板というクッション材が捻挫を起こして、ぎっくり腰を発症してしまうのが腰椎捻挫と言われるものです。

腰椎捻挫は重いものを持ち上げようとするような腰に大きな負担をかける動作だけによって引き起こさるわけではなく、体をひねって後方の物を取る動作や膝を伸ばした状態で床の物を拾う時、またはくしゃみをした際などでも起こることがあり、日常生活の動作によって起こってしまうのです。そうした場合は腰の中心部分が痛むことが多くなります。

腰背部の筋や筋膜の損傷によるぎっくり腰の場合は損傷を受けた筋やその筋膜が一番痛むことになります。また腰椎椎間板ヘルニアでもぎっくり腰のような鋭い痛みが走る場合もあるので注意が必要です。

 

ぎっくり腰

⑦ぎっくり腰にかかった際の応急処置

日々の生活でどんなに気をつけていてもぎっくり腰にかかってしまうこともあります。もしぎっくり腰にかかってしまった際の応急処置としまして温めることは禁物です。ぎっくり腰は腰椎の捻挫や筋肉の挫傷、ヘルニアの場合が多いです。そのような急性の症状の際に温めてしまうとかえって症状が悪化してしまう可能性があります。もし足首を捻挫した場合、温めることはしないかと思います。

ぎっくり腰にかかってしまったらまず患部を氷水で冷やすことです。氷水で冷やすことで炎症を早く引かせる効果があり、症状が早期に回復します。湿布やコールドスプレーも効果はありますが、一番持続的に冷やすことができるという点で氷水を使うことが1番良い方法かと思います。
氷水をつくる際の注意点としまして、水と氷は1:1の比率で氷嚢や袋に入れてください。氷を入れる際は表面を一度水で洗いましょう。冷蔵庫などで凍らせておくと化学物質が表面に付着しており、それによって氷水にした際に温度が下がり過ぎてしまい、患部が凍傷になってしまう危険性があります。氷水を当てる時間は15分ほどで5分間隔で3回程繰り返してください。

そして何よりも安静にすることです。無理に動いてしまうと患部の炎症が悪化してしまう可能性もあるのです。1~2日は極力動かないようにして安静にしましょう。

 

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 17:55 / 院長コラム 腰痛 ぎっくり腰の鍼治療 への7件のコメント

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