当院の耳鳴りに対する治療目的は、まず第一に鍼灸治療を施すことにより全身の調整を図り、自律神経のバランスを整えることです。鍼灸治療は、交感神経を抑制し副交感神経の働きを促すばかりでなく、双方の神経の活動量を高めて自律神経のバランスを整えることが研究結果でも出ています。
また内耳の血流不足を改善するという点から頸肩部周辺や耳周辺の経穴に鍼を刺して電気を流します。当院独自の治療選穴により高い治療効果が出ております。耳周辺の治療穴として「翳風」「耳門」「聴会」「聴宮」などの経穴を用いてその方の状態に合わせて首や頭の経穴を決めます。
めまいは東洋医学的に診ると「腎」の不調が原因で発症すると考えられているので、鍼灸治療を用いて経穴を刺激することで「腎」の機能を活性化させます。
また過度な身体的・精神的ストレスは、自律神経を乱して耳鳴りの原因となります。さらに耳鳴りがストレスとなり、睡眠障害やうつ病などにかかりかねません。
そこで当院では、東洋医学の特徴である全身を診て治療することにより全身をリラックス状態へと導き、交感神経の過亢進を抑制して過度なストレスを和らげます。
また身体全体の調子が上がっていくことも期待でき、実際に当院でも耳鳴りの治療で「目が疲れなくなった」「便秘が解消した」「ゆっくりと体が休められ、熟睡できた」などといった声が数多く聞かれます。東洋医学では局所的に診るのではなく、全体的に診ることで自然治癒力を高めるといわれ、様々な効果が期待できます。
耳鳴の鍼灸治療効果は、論文としても報告されています。
明治東洋医学専門学校 鍼灸学科
『耳鳴に対する鍼治療の効果;症例集積による検討』
この研究では、耳鳴り患者46症例の内鍼治療を5回以上継続できた31症例について分析されています。耳鳴り症状で悩んでいる期間は、1ヶ月以上が81%を占めて、10年以上の方も16%占めていました。鍼治療の間隔は週に1回を5回単位の間隔で行い、鍼治療終了時にVAS(Visual Analogue Scale )や自覚的表現検査などで評価していき、頭頚部の圧迫時に耳鳴りが変化した6症例では全例で改善がみられたとのことです。頭頚部圧迫時に耳鳴りが変化しなかった場合でも改善57%、不変14%、悪化29%でした。
首回りの筋緊張の緩和は耳鳴り改善では特に重要かもしれません。
海外での耳鳴りに対する鍼治療のエビデンス研究
海外でも耳鳴りに対する鍼治療の研究報告があり、症例集積研究で鍼治療によって自覚症状が軽減して、耳鳴りの感じる音が軽減されたという報告があります。
2006年のブラジルの研究では、76例の耳鳴り症状の患者さんに頭鍼を行ったところ主観的な耳鳴り症状が軽減されて鍼治療が有意に効果があったと報告されています。
また、2007年の中国の研究でも90症例の耳鳴り患者さんに対して20分間の鍼治療を30回行ったところ薬物療法よりも有意に効果があったと報告されています。
その研究では、鍼刺激によって耳音響放射()が変化すると報告しています。耳音響放射とは静かな場所で誰しもが聞こえる単調な高音のことで生理的耳鳴りとも言われます。
耳音響放射は内耳から発生する音だと知られており、それらが変化したということで鍼刺激が内耳の外有毛細胞に影響を及ぼして、内耳機能を制御させることで耳鳴りが軽減されたと考えられています。
鍼治療は耳鳴りの発生源である内耳やストレスなどで機能が乱された中枢に作用して耳鳴りの有用な治療方法となることが示唆されています。
※参考文献
『鍼灸臨床最新科学』
医歯薬出版株式会社
東洋医学では、五臓六腑の「腎」と耳が深い関係にあると言われています。
「腎は耳に開竅する」と言われており、聴覚が東洋医学でいう腎臓と深いかかわりがあるということを示しています。
東洋医学の「腎」は、西洋医学でいうそれとは違った役割を持っています。
東洋医学の「腎」の役割は、主に生長・発育・生殖・水液代謝を主ることです。その中でも腎の精気は、聴覚と関係が深く、多ければ聴覚機能は正常に働き、逆に少なければ聴覚機能は減退してしまいます。
腎の精気は、年を重ねるごとに減少していく傾向にあり、高齢者の聴覚は衰えていきます。
また腎の水をつかさどるという役割は、耳鳴りにも影響を及ぼします。耳鳴りは耳の中のリンパ液が関係していることが多いことから、腎の水をつかさどる(体液代謝全般に対して腎が根本的な調節作用を行う)という機能が減退していると考えられます。
耳鳴り 渋谷区 男性 40代
・症例
2週間前より突然の耳鳴り・聞こえづらさを訴えて、耳鼻科を受診。
ステロイド剤・血流改善薬・筋弛緩剤などを処方されたが、一向に改善されず、一週間後には寝つきが悪い・仕事もやる気にならない・常にイライラしているなどの精神的な症状も出てきたとのこと。
心療内科も受診して薬を処方してもらっている。
・経過
◆1回目
耳鳴り少しおさまり、耳の詰まった感じも軽減。
◆2回目
耳鳴りが少しずつおさまってきた。
◆3回目~10回目
症状あまり変わらず、良くなったり悪くなったりしている
◆11回目
耳鳴りまだ気になるが、寝つきもよく不安感がなくなってきた。
◆12回目~16回目
症状だいぶ軽減。まだ仕事などで忙しかったり、イライラしたことがあると耳鳴りを感じることがある。
◆現在も通院中
・考察
この患者さんは、仕事も忙しく、家庭内でもストレスを感じていたため普段から寝つきが悪かったり、全身の倦怠感などもあったとのこと。
当院の自律神経測定器で自律神経の状態を測定したところ交感神経が優位な状態でした。
全身の自律神経を整える治療を施し、耳鳴りの治療もすることで治療効果をえられたと考えられます。最初の一か月間は週に2~3回来院していただきました。
耳鳴りとは、体の外に音源がないのにも関わらずに耳の中や頭の中で音がしているように感じることです。
日常的に誰もが経験する耳鳴りとして、飛行機に乗った時や高いビルにエレベーターで上った時などに耳がキーンとする・静かな場所にいるとシーンと聞こえてくるなどがあります。
誰もが経験することですが、耳鳴りで悩んでいる方は、そういった音が常に聞こえていたり、耳の中の炎症や腫瘍などにより音が大きく聞こえたりします。
そして耳鳴りで悩んでいる方の多くは、その音をストレスに感じて、眠れなくなったり、うつ病にかかってしまったりと耳鳴りの症状ばかりでなく様々な症状に悩まされている方がほとんどです。
耳鳴りには大きく分けて二つのパターンがあり、自分にだけ音が聞こえる自覚的耳鳴りと他の人にも音が聞こえる他覚的耳鳴りとがあります。
自覚的耳鳴り
体の中にも外にも音源がなく、耳鳴りが他の人には全く確認できず、本人にしか聞こえない耳鳴りを自覚的耳鳴りといいます。
耳鳴りの症状で悩んでおられる方の大半はこの自覚的耳鳴りといわれています。耳鳴りの音は、人それぞれで「セミが鳴いているような音」「リンリンと虫が鳴いている音」「ブーンといった低い音」など様々です。
自覚的耳鳴りの多くは、耳の構造(外耳・中耳・内耳)や音が脳に伝わるまでの過程で問題があるために起こることが多いです。
他覚的耳鳴り
耳鳴りの音が他の人にも確認できる耳鳴りを他覚的耳鳴りといいます。
他覚的耳鳴りの場合は、音源が特定されることが多く、脈の鼓動と共に拍動音が聞こえる場合や呼吸をするたびに「スー、ハー」と聞こえます。
音源がはっきりしている場合はそれを取り除けば、治るわけですから手術などの処置をすれば耳鳴りが聞こえなくなる場合が多いです。
耳には、平衡感覚をつかさどる器官と聴覚をつかさどる器官があるため、耳鳴りの症状と併発して、難聴とめまいの症状も出る場合がほとんどです。
耳鳴りはストレスが原因で生じる場合も多く、耳鳴りを感じ始めたら体の重要なシグナルだと受け止めて早めの対処が重要になってきます。
難聴と耳鳴りとの関係
難聴と耳鳴りが併発することが多いことが知られています。その原因としては、内耳の音を電気信号へと変換させて脳にその信号を送り届ける発信点である有毛細胞が何らかの不具合で音が正常に脳に送り届けることができずに耳鳴りとなってしまったり、音が聞こえづらくなるためです。
特に高齢の方は、老人性難聴といって耳が遠くなることが多いですがそれは内耳の有毛細胞の機能が低下して音が脳に伝わりにくくなってしまっている状態です。そのような状態ですと脳は音が聞こえないなと音信号への感度を上げようとします。誰しも周りに音がない状態ですとキーンと音が鳴っていると感じたことがあるかと思いますが、その状態が高齢の方の場合常態化してしまい老人性耳鳴りを発症する危険性が高くなります。よって老人性難聴と老人性耳鳴りは併発して起こることが多くなってくるのです。
耳鳴りの原因は、様々なものが挙げられており、原因を特定できない場合も少なくありません。耳鳴りの原因を特定するには、どういった音がするのか・どういったタイミングで起きるのか・その他の症状があるかということが重要となってきます。
なぜ耳鳴りが発生するのかははっきりとは分かっていませんが、耳鳴りを引き起こすほとんどの原因が内耳の問題だといわれています。
また、脳腫瘍や聴神経腫瘍、脳動脈瘤、高血圧、動脈硬化、糖尿病などによっても耳鳴りが引き起こされる場合があるため耳鳴りを感じたらすぐに耳鼻咽喉科や内科を受診する必要があります。
突然発症する耳鳴り
耳鳴りの多くは難聴を伴う場合が多く、突然耳鳴りや難聴を感じたら突発性難聴や外リンパ腫の可能性があります。
徐々に発症する耳鳴り
徐々に感じる耳鳴りとして加齢に伴う老人性の場合や自律神経の不調によって起こる場合があります。特に65歳以上の高齢者は30%以上の方が耳鳴りを感じているとも言われています。
耳鳴りが強くなったり弱くなったりする
耳鳴りが強くなったり弱くなったりする場合にメニエール病の可能性があります。
メニエール病は、耳鳴りのほかに難聴やめまいも感じる場合が多く、めまいの症状が強く出て耳鳴りがあまり気にならないことも多いようです。
しかし、めまいの症状がおさまった時に耳鳴りの症状を強く感じて、不眠症やうつ病など様々な症状に繋がることも少なくありません。
頭を動かすとコロコロと耳鳴りがする
じっとしている時は、音がしないのに頭を動かすとコロコロと耳鳴りがする方は、耳の中に耳垢や砂、小石などが外耳道に入りこんでいる可能性があります。耳鳴りの他に音が聞こえづらい・耳が詰まったように感じることもあります。
耳鳴りを発症した場合すぐに耳鼻科などで検査を受けて原因を特定する必要がありますが、耳周りや脳の腫瘍など検査で調べて分かる場合とわからない場合があります。当院にご来院される方の多くの場合は後者にあたり、耳鼻科で検査を受けてもわからない方がほとんどです。
そのような方に多く見られるのが自律神経の乱れや首周りの過度な筋緊張(主に胸鎖乳突筋)が原因です。自律神経測定器で計測すると交感神経が過亢進状態であったり、逆に副交感神経が過亢進状態の場合もあります。二つの場合に言えるのが自律神経のバランスが悪いということです。自律神経が乱れると血流が悪い状態と逆に血流が良すぎる場合とがあり、言うなれば血流が安定しない状態が続きます。首周りの筋肉が過緊張状態が続いている場合も耳への血流は不安定な状態が出やすくなってしまうのです。こういった方々たちの場合、症状は耳鳴りだけにととどまらずに寝つきが悪いや睡眠が浅い・頸肩こりや痛みなどの症状を訴える場合も多くあります。
・肩の痛みについて
・耳鳴りとストレスとの関係
耳鳴りとストレスは深い関係にあると言われています。前述通り耳鳴りは自律神経との関係が深いですが、その自律神経との関係が深いのがストレスなのです。特に現代はストレス社会とも言われ、ストレスがとても多くかかる時代とも言われます。ストレスは、身体的・精神的なものが挙げられますが、仕事や家庭でので人間関係のストレスの他にも騒音や空気汚染・寒暖の変化・食品添加物・パソコンなどの異常な光なども体はストレスとして受け止める場合もあります。そういったストレスが引き金となって耳鳴りとなってしまうのです。
自律神経には交感神経と副交感神経の2つがありますが、現代社会では交感神経の活動がより活発な人が多い印象を受けます。交感神経は、血管を収縮させて体を動かす活発的な行動をする際にはとても有効な神経ですが、その状態が長く続いてしまうと内耳や脳の血流の状態に異常をきたしてしまう場合があるのです。それが耳鳴りの原因となるとも考えられているのです。
そして耳鳴りの症状が出てしまうとその音を身体は異常な騒音と感じてしまいさらに自律神経を乱してしまう悪循環を生んでしまう危険性があります。だからと言って現代社会を生きていく中でストレスを減らしていくことは容易なことではありません。そこで当院では、自律神経測定器を用いて自律神経の状態を把握したうえで自律神経を整える施術を行い耳鳴りの改善を行っていきます。もちろん、自律神経を整える施術の他にも耳鳴りに関する東洋医学的に重要なツボも持ちて施術をしていきますので高い施術効果が実感できるのです。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 11:38 / 院長コラム 耳鳴りの鍼灸治療 への2件のコメント