胸鎖乳突筋とは、耳の後ろの乳様突起と呼ばれる部分から首の側面を通り鎖骨、胸骨にかけて繋がる筋肉で、顔を横に向けた時に浮き出る筋肉です。
首を上下左右に動かす、回す、傾ける動作などに使われます。胸鎖乳突筋の後ろには頸椎から分かれた細い神経が通っており、これらの神経は頚神経や腕神経と呼ばれ後頭部、耳、首、肩や腕、指先の感覚や運動を支配しています。
胸鎖乳突筋は物理的な疲労(頭を支えるなど)以外にも、自律神経の不調や精神的ストレスでも筋肉を緊張させ様々な不調の原因となる筋肉です。
胸鎖乳突筋が緊張すると
・首肩こり
・頭痛
・首や顔のむくみ
・めまい
・耳鳴り
・耳閉感
・不眠症
・動悸
・手の痺れ
・うつ病
・パニック障害
・自律神経失調
・更年期障害
などの様々な症状が現れることがあります。これまでも多くの疾患の元になるのが胸鎖乳突筋です。
胸鎖乳突筋のすぐ下には脳や耳などにつながる血管や腕の方へと伸びる神経・血管が通っているため胸鎖乳突筋が過緊張状態で固まってしまっているとその下を通過する神経や血管を圧迫することで循環が悪い状態となってしまいます。
循環の悪い状態が長く続いてしまいますと脳や耳、上肢などの器官に栄養ある血液を送り届けることができずに機能低下を起こしてしまうのです。
また、循環が悪くなることでブドウ糖が乳酸などの疲労物質や発痛物質に変化してしまい痛みやコリの原因にもなります。
胸鎖乳突筋の過緊張状態で起きる頭痛はこめかみなどの側頭部に締め付けられるような痛みが生じてしまうことが特徴です。一般に筋緊張性の頭痛と呼ばれますが、筋肉の緊張している部位によっても頭部の痛みが出る部分が変化してきます。
・筋緊張性頭痛の鍼灸治療について詳しくはこちら←
胸鎖乳突筋の過緊張状態は、耳への循環低下を起こしてしまうことで聴覚への影響や耳の内耳にある三半規管にも影響を与えてしまうためめまいや耳鳴りの原因にもなります。
・めまいに対する鍼灸治療について詳しくはこちら←
・耳鳴りに対する鍼灸治療について詳しくはこちら←
胸鎖乳突筋の過緊張によって腕の方へと伸びる血管や神経が圧迫されてしまうことで痛みや痺れの原因となります。特にデスクワークでパソコン作業が主な人に多く発症する症状です。
うつ病や自律神経失調症など自律神経の乱れが原因で症状が現れやすい方は、胸鎖乳突筋の過緊張がほとんどの方に診られます。
胸鎖乳突筋の過緊張による脳への栄養供給の滞りが原因で精神症状が現れるとも考えられています。
単なる首コリや肩こりだと放置したままですとこれら心療内科系疾患にかかってしまう危険性があるため注意が必要なのです。
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・自律神経失調症に対する鍼灸治療について詳しくはこちら←
うつむき姿勢
胸鎖乳突筋の過緊張状態の原因で一番多いのが長時間のうつむき姿勢(PC作業、スマートフォンの操作、家事など)です。
うつむき姿勢の状態は、重い頭部が前に傾きそれを支えるために頸部の筋肉には通常時の何倍もの負担となってしまいます。
姿勢を保持する姿勢筋は、その耐久性に優れた筋肉であるため少しの疲労では、感じにくくなっています。パソコン作業で頸肩がこってしまうということは、相当にその筋肉に負担がかかっている証拠です。
自律神経の乱れ
自律神経の乱れでも胸鎖乳突筋の過緊張状態が引き起こされます。主に交感神経の活動が活発になりすぎると胸鎖乳突筋が緊張しやすい状態となります。
交感神経とは活動的な神経で日中など仕事や勉強などしている時に主に働く神経で血管や筋肉などを緊張させて覚醒させる神経です。通常は夜なると活動を抑えて逆にリラックス神経である副交感神経の活動が活発となります。
しかし、夜遅くまで仕事やスマートフォン操作などをして交感神経の活動が活発のままですと自律神経が乱されやすいです。
夜になっても交感神経の活動が活発なので筋肉は休むことができずにコリや痛みの原因となってしまうのです。
喰いしばり
喰いしばりによる胸鎖乳突筋の緊張も多い原因です。意外と意識していなくても何か集中して作業している時に歯を食いしばっている方が多いです。
一度力強く食いしばってみると理解できるかと思いますが食いしばると頸の筋肉も引っ張られるように緊張していることがわかります。
喰いしばりの状態が長く続いてしまいますと胸鎖乳突筋のコリの原因となってしまうのです。
胸鎖乳突筋の鍼治療では、鍼をピンポイントに痛みやコリの原因となっている部分にアプローチをすることが可能です。
また、刺した鍼に電気刺激を加えて強制的に筋肉に収縮・弛緩のポンプ運動を起こさせることで血液循環の改善をして疲労物質や発痛物質を流してあげることで痛みやコリを取り除きます。
また、自律神経が乱れが胸鎖乳突筋のコリや痛みとなることもあるため全身的な調整鍼灸施術も行っていきます。
当院には自律神経測定器が常備されていますので自律神経の測定をしてその方に合わせたツボを用いたオーダーメイド鍼灸治療を行っております。
症例
20代 女性
10代から食いしばりが強いため顎の張り感に悩まされてきた。
酷い時は顎の痛みが数日続く事があり、マウスピース治療を受けている。
ここ最近になって顎の張りだけではなく、首の前側から耳の下あたりまで左右とも突っ張る症状が気になるようになってきた。今は顎の張りよりも首の張りや痛みの方が気になるようになり、当院に受診した。
ストレスはあまり感じる方ではないが、無意識に噛みしめたり、体の力が入ってしまう自覚は昔からあり、改善しようと意識はしているが難しい。
普段はデスクワークがメインだが重いものを持つこともあり、首に過剰な力が入っている感覚がある。ひどくなると、側頭部の重だるさや鈍痛が起こる。
首の側屈の可動域に制限がかかっている。
当院の施術
この方のような食いしばりによる胸鎖乳突筋の筋緊張は精神的ストレスが大きな原因になります。ストレスを感じなくても無意識に蓄積している場合があり、気がついたら慢性的な筋肉のコリが強くなっていることがあります。そのため、筋肉の緊張に対する施術だけではなく、自律神経の調節が根本的な治療になります。
まずうつ伏せで、背中、肩、肩甲骨、首の後面に刺鍼し筋緊張を緩和していきました。
次に、仰向けで自律神経調節治療、患部である胸鎖乳突筋、関連する咬筋、側頭筋に低周波電気鍼療法を行ってきました。
鍼灸治療は未経験という事で少し緊張もされていたため、慣れるという意味でも初回は刺激量を落とし負担を最小限に抑えた施術を行いました。
経過
◇1回目◇
体全体の緊張がとれ、とてもリラックスできた。
首の緊張も少し柔らかくなった気がして楽になった。
◇2回目◇
首の張りが以前より気にならなくなってきた。
夜の睡眠の質も良くなったような気がする。
◇3回目◇
忙しい日は眠りが浅くなるためか、首の張りが気になる。
◇4回目◇
前回よりも張り感がとれ、気にならなくなってきた。
夜も熟睡している。
◇5回目◇
今はほとんど気にならない。
たまに辛くなることもあるが、鍼治療を受けるとすぐに緩和する。
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 16:34 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)