鍼灸の鍼の皮膚接触刺激とお灸による燃焼刺激で血液中の各種白血球が2~3倍に増加したという実験結果もあります。
施術直後に白血球が増加し2~3日持続して数週間続けるとリンパ球も増えます。
また白血球の血管の流れるスピードも速くなり貪食力も上がります。
つまり鍼灸治療をすることによって『白血球やリンパ球が増加する→免疫力が高まる→風邪や病気になりにくい身体を作る“未病治”(未だ病まざるを治す)』ということになるのです。
当院が鍼灸治療をする上で自律神経の状態を把握することはとても重要だと考えております。今、体の状態がどちらが優位な状態となっているのか把握することで治療法なども変わってくるのです。そこで当院では、急性の患者さん以外のほとんどは自律神経測定器で自律神経の状態を測定してから治療に入ります。
ここで今まで治療症例を2件ほどご紹介させていただきたいと思います。
・足三里
膝下外側にあり、免疫力を高めるほか下肢のだるさ、また胃経に属するため胃の不調がある時にも有効です。
・合谷
合谷は万能ツボとも言われ、様々な疾患の時にも用いられます。
とくに免疫力を高めるためや眼の疲れ、歯痛、抑うつ気分の時などに用いられます。
・関元
おへその下、指4本分にあるのが関元というツボで免疫力を高めるほかに頻尿や更年期障害の時にも有効とされます。
・中かん
おへそから上5本分にあるのが中かんというツボで免疫力を高めるほかに胃の不調や食欲不振などの時に用います。
アフリカ大陸の東側に位置するウガンダでは命をも奪う危険性のある疾患に対してお灸が施されることがあるそうです。
近年、NHKの番組でもその活動内容が取り上げられて注目されています。
その命をも奪う危険性のある疾患はなと結核です。結核はアフリカでは年間数十万人もの死者を出すほどの重篤な病気です。結核は、栄養不足や免疫力の低下などによって結核菌が体内で増殖して発症する病気です。
結核の患者さんに足三里という膝下外側に位置するツボにお灸をすることで免疫力が上がり症状が回復することがあり、ウガンダの病院では少しずつお灸を使用することが広がっているようです。
臨床研究では、足三里にお灸をすると血中のヘモグロビン値が大きく増加したという研究結果が出ており、それによって免疫力向上の効果が高いという結果が出ています。
この足三里にお灸をすると免疫があがることが論文に記されているのは、1929年に原志免太郎医師が発表した論文内にあります。当時、日本では結核が流行しており、お灸の研究をしていた原志免太郎医師が結核に感染しているラットにお灸を施したところラットの結核菌に対する抵抗力が高まったという結果が出ています。
しかし、一回お灸をしたからと言って免疫が上がるという事ではなく、6カ月間お灸する群としない群に分けて血液検査の免疫機能を果たす細胞の増減を調べたとのことです。日々の積み重ねが、免疫・健康を維持するポイントの様です。
今は自分でできる簡易的な台座灸が一般の薬局でも販売されており簡単に手に入ります。また、当院でも販売されています。
台座灸は、紙の台座の上にもぐさがのせてあるもので台座の裏にはシールがあり肌と固定できるため安全に使用することが出来ます。お灸の熱さも様々な種類があるため調整できます。
基本的に1日1回程度を目安に1~4か所ほど行うと良いでしょう。
50代 女性 主婦
主訴
肩こり・腰痛・不眠・目の疲れ
症状
10年ほど前から肩こりや腰痛の症状が続いていました。なんとか日常生活に支障なく生活できていましたが、最近お孫さんの世話をするようになり夜も痛みで起きるほどとなってしまいました。朝も肩こり・腰痛症状はつらく、少し動き出すと症状が和らいでくるという状態です。パソコンやスマホをすることでストレスの解消となっていましたが、長時間使用することで目の疲れやドライアイの症状も強く出てきました。
当院の治療
治療を行う前に自律神経の状態を測定すると、交感神経が優位な状態でした。よくよく話を伺ってみると寝つきも悪く、食欲不振で便秘美味とのことでした。交感神経優位の状態が長く続き、体の状態にも相当影響を与えていると判断し、自律神経のバランスを整えることが先決だと思い施術にあたりました。副交感神経が優位となり、体がリラックスな状態となったところで肩や腰の筋加えて目の周囲の筋肉をほぐすような施術をいたしました。
経過
1~3回目
最初の3回ほどは、自律神経の状態を整えることに重点を置いて施術しました。
4~7回目
自律神経の状態が少しずつ落ち着いてきたと判断した上で肩こりや腰痛症状に対してアプローチしました。
痛みが少しずつ取れてきて、夜も眠れる日が増えてきたとのこと。
8~10回目
眼科鍼灸で目周囲の筋肉にもアプローチしました。
目が楽になり、肩こりの方も自然と軽快してきた
考察
症状が強く出ていたため、7回目までは3日置きに施術しました。症状が軽快してきて目処が立ったところで治療間隔を1週間に1度ほどに延ばしていきました。自律神経の乱れが顕著だったため、自宅などでもゆっくりお風呂につかることや軽い運動をしてもらいました。まだまだお孫さんのお世話をしていかないということで今でも定期的に通院されております。
20代 男性 建築業
主訴
頭痛・首肩こり・不眠
症状
2年ほど前に建築業に就職してから日々の過酷な労働により頭痛・首肩こりを感じるようになってきました。1か月ほど前から夜勤と日勤の日が休みなく続き、一日中働いているような状態でした。頭痛の症状も悪化してきて横になっていてもつらい状況で会社も休みがちとなり、当院に来院されました。
当院の治療
まず自律神経の状態を測定したところ副交感神経がとても優位な状態でした。日中も眠たさやだるさを感じて仕事がままならないこともしばしばあったとのこと。しかし、夜は目がさえてくるような状態でしたので自律神経が乱れていたと思います。また、首肩の筋緊張が顕著に出ていたため自律神経を整える施術をしたから筋緊張をとっていきました。
経過
1~2回目
鍼やお灸の刺激も敏感だったため、鍼やお灸を使わない手技療法で対応しました。
3~5回目
3回目からは身体の状態も少しずつ落ち着いてきたため、鍼やお灸の施術も加えていきました。
6~8回目
日中も気怠さを感じることが少なくなってきた。朝は症状はつらいとのことだが、夕方は症状が軽快
9~12回目
朝もつらさが軽減してきた。痛みどめや睡眠導入剤なども服用していたが、量が減ってきた
考察
仕事が忙しいため、1~2週間のペースで来院していただきました。治療で補えない部分は、貼るタイプの置き鍼で対応していただき、ストレッチも怠らないようにしていただきました。
70代 男性
数年前にコロナにかかってから風邪を引きやすくなった。ワクチンを6回打っても2回コロナにかかり、どちらもかなりの光熱がでた。
そこから常に身体のだるさや、咳など常にある状態になり、いろんな病院で検査を受けたが異常は出なかった。
病院では、コロナの後遺症や老化だと説明も受けたが自分ではあまりにも体調が悪いし、なんとかしてほしい。今でも自分の会社を経営しており、後任もまだ頼りないため、まだまだ現役で働いていたい。
また、最近は体調が悪いため趣味の庭の手入れができないのが辛いし、このまま体調が悪くなり年齢的にも歩けなくなることを考えると不安なため来院。
当院の治療
自律神経測定器で測定したところ、日中にも関わらず副交感神経優位の状態になっておりました。副交感神経が高くなりすぎてしまうと、身体がだるくなってしまったり、集中力の低下にもつながることを説明しました。
また、自律神経が乱れると疲労が取れにくくなり、免疫力の低下にもつながりやすくなるとお伝えしました。
施術は自律神経の調節をメインで行いました。また、免疫系と関わりのある経穴に刺激を与え、より回復が速くなるように致しました。
鍼灸治療は初めてとのことでしたのでソフトな治療で行っていきました。
治療経過
◇1~3回目◇
変化は感じない。
◇4回目◇
治療後に体が軽くなった気がする。
◇5~7回目◇
朝起きる時のだるさが軽くなってきた。
◇7~15回目◇
治療を受けるたび、体が楽になってきた。
◇16回目◇
咳は完全には無くならないが、日常生活に支障が出ないくらいには治まってきた。
◇17回目◇
来院頻度を減らしてメンテナンスしつつ様子をみる。
自律神経には“交感神経”と“副交感神経”の二つがあり、両者バランスをとりながら働いていることによって健康の状態を保っています。
現代社会において「自律神経」が乱れてくることにより身体に様々な不調が現れています。
例えば自律神経の乱れによる主な症状として
このように自律神経の症状は多岐にわたります。
自律神経のうちの“交感神経”が働くと
良い意味でも悪い意味でも活動的な状態になります。
逆に副交感神経が働くと脳と体もリラックスします。副交感神経はリラックス神経とも呼ばれ睡眠とも深く関連があります。
日中の活動的な状態は交感神経が優位に働き、体を休める夜に副交感神経が優位に働きぐっすり寝られることが良い状態と言えます。
交感神経優位 | 副交感神経優位 |
瞳孔 大きくなる 器管 広がる 血圧 高くなる 胃腸 活動を抑える 心臓 脈拍が早くなる 顆粒球 増加 |
瞳孔 小さくなる 気管 狭くなる 血圧 低くなる 胃腸 活動が進む 心臓 脈拍が遅くなる リンパ球 増加 |
病気から身を守る防衛システム免疫系は主に血液中の白血球(リンパ球、顆粒球)が中心的役割を果たしています。白血球は血液循環をしながら体外から侵入してきた細菌などの異物を排除する役割があります。白血球の中にはリンパ球と顆粒球とがあり、それぞれに役割分担があります。顆粒球は細菌や細胞の死骸などを処理してリンパ球はウィルスなど比較的小さな異物に対して抗体をつくって対抗しています。
いわゆるこのリンパ球の働きが、『免疫』と言われるものです。このリンパ球は副交感神経の支配下にあり、逆に顆粒球は交感神経の支配下にあります。自律神経のバランスが良い時には、リンパ球と顆粒球のバランスも保たれており免疫力も十分な状態です。
しかし、現代では過度なストレスから交感神経優位の状態の方が多く、顆粒球の過多状態と陥りやすくなってしまうのです。顆粒球も免疫機能の約やりを担っていますが、過度に増えすぎてしまうと常在菌までも攻撃してしまい、炎症を起こしてしまう危険性があり、胃炎や虫垂炎、腎炎、肝炎などの原因となってしまう可能性があるのです。また交感神経の過緊張状態が続くと、血管は収縮して血流を阻害して心臓病や高血圧の原因となったり、新陳代謝も低下することから老廃物が溜まりやすくなり、痛みや筋肉のコリの原因となってしまうのです。
このように白血球の数や働きは 自律神経の影響を受けています。
つまりは自律神経の乱れは免疫力の低下となるわけです。
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 15:37 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)