うつ病の鍼灸治療

2018年10月29日

①うつ病に対する当院の鍼灸治療

当院のうつ病に対する施術は、第一に自律神経測定器を用いて自律神経の状態を把握した上でハリやお灸を施していきます

交感神経優位か副交感神経が優位かによって施術法が異なり、様々な施術により全身の調整を図り、自律神経のバランスを整えます。うつ病にかかると首や肩に硬くなっている肩が多く、首肩部にハリを刺して微電流を流す場合もあります。

うつ病の鍼通電治療

 

東洋医学では、症状を局所的に診るのではなく、全体的に診るということがとても重要な考えで全身治療を行うことにより自然治癒力を高めます。またうつ病は東洋医学的に見ると「気」の作用不足や「気」流れの滞りが原因で発症すると考えられているので、ハリやお灸を用いてツボを刺激することで「気」を補ったり、「気」の流れの滞りを解消させるように促します。

うつ病の自律神経調整お灸

その他うつ病患者さんでは頭痛肩こり慢性的な痛みを訴える方が少なくありません。そういった患者さんには頭痛や肩こりの解消、痛みの緩和を目的とした治療も並行して行っていきます。
当院の鍼灸治療によるうつ病の施術目的は、西洋医学とは違う東洋医学の観点により少しでもうつ病が回復できる機会を提供することです。患者さんが社会復帰ができるように一緒になってサポートしていきます。

うつ病の鍼治療

 

うつ病に対する鍼灸治療の効果について

うつ病の薬は、依存性があるものもありなかなか薬の服用を辞めることが出来ない場合があるため、うつ病に対する鍼灸治療の効果についての研究が国内外で行われています。

鈴鹿医療科学大学のラットによる研究
『水浸ストレスによるうつ病ラットにおける鍼刺激の影響』では、水に浸からせて軽度鬱状態をラットに作り、そのラットに頭部にある百会というツボと眉間にある印堂というツボを鍼刺激することで抗うつ薬と同じようにうつ状態が明確に改善されたという研究結果が出ています。

 

また、神奈川県立精神医療センターでは東洋医学研究室というものがあり、そこでうつ病に対する鍼灸治療の研究が盛んにおこなわれています。海外の研究では、SSRIによる治療に鍼灸を追加することで抗うつ効果を高めてなおかつ薬の副作用を抑える可能性があることが分かっています。
参考サイト
神奈川県立精神医療センター 東洋医学研究室

 

②うつ病の東洋医学的考え

うつ病は、東洋医学でいう「」が大きく関係していると考えられています。「気」は、体内を流動する精微物質のひとつであり、人体の各種の生理的機能に相当します。「気」は中医学でいう脾胃や肺によって生成され、心または肺の作用によって全身に行き渡ります

そして肝や腎の作用によって量を調節されます。「気」の基本的機能としては、生長、発育、代謝の推進、推動の維持及び体温の維持・調節、病邪の防御または排除などがあります。うつ病はそういった作用を持った「気」が不足したり、流れが滞ったりすることで発症するものと考えられます。

「気」の作用不足による症候では臓腑の機能低下や抵抗力の減退などがあらわれ、元気が出ない、気力がない、無力感、声に力がない、動きたがらない、食欲不振などの全身的な虚弱の症状が出ます。とりわけ心の気の不足(心気虚)ではうつ病の症状が出やすく、不安感や胸苦しいなどの精神面または循環系の症候がよく見られます。

精神的ストレスや飲食の不節制などにより「気」の流れが滞ると自律神経系の緊張や過亢進による症候があらわれると考えられています。とりわけ肝の気の流れが滞ると精神的な素因に関係する症状があらわれ、憂うつ感、怒りやすい、胸脇部の張った痛みなどの症状が見られます。また肝の流れが滞る状態が長く続くと、自律神経系の過亢進に伴って、頭痛、のぼせ、胸やけ、難聴、不眠などの症状をあらわします。

・うつ病に見られる主な病証
心脾両虚
過度な思い悩みは心や脾の気血を身体のすみずみまで行き渡らせようとする作用が低下して脳など身体のすみずみまで気血が行き渡らずに身体に様々な症状をもたらします。気分が落ち込みやすく、物忘れもひどくなります。その他の症状として寝つきが悪い・不安感・めまい・動悸などがみられます。

肝血虚
長期間の精神的ストレスにより肝の機能が弱まり、肝の血を蔵して排泄・排出する調整する作用が低下します。するとイライラ感が強く出たり、かすみ目・ドライアイ・手足の痺れ・毛髪異常などの症状が出やすくなります。

腎虚
腎精は先天の精と言われ、年を重ねるごとに腎精は減少します。それに加えて慢性疾患などが重なるとさらに腎精は不足します。すると物忘れが激しくなり、感情の変化も激しくなります。その他、耳鳴り・下肢や腰の重だるい痛み・脱毛などの症状が出やすくなります。

またうつ病を東洋医学的に見て行くと、大きく分けて「急性期」と「慢性期」にも分けられます。特にうつ病は、「気」というエネルギーや「血(けつ)」という栄養が全身を巡らずに停滞していたり、その「気血」が不足している事で様々な症状を引き起こすと考えられます。

 

 

東洋医学では、うつ病の急性期と慢性期とで不調の出ている五臓六腑が違ってきます。

急性期
その中でも急性期に関しては、「気」の巡りが悪く停滞し始めた時期を指します。そしてその「気」を巡らすのが、「肝」という臓器です。
この「肝」は体にかかる様々なストレス(肉体的なストレスや精神的なストレス)に対して敏感に察知し、ストレスに対して抵抗してくれます。
この時期に現れてくる症状として、
・肩や首のコリや張り
・情緒不安定
・怒りっぽい
・イライラしやすい
・ため息
・ゲップ
・わきや胸の張り
・お腹の張った痛みや膨満感
・胸焼け
・めまい
・耳鳴り
・頭痛
・喉の異物感
などがあります。

こういった症状を出す事で、身体の状態がこれ以上悪化しないようにアラームサインを出しているのです。そしてこの時期は急激に状態が悪化する可能性があり体調が変動しやすいので、特に注意が必要です。
体の状態によって治療に用いるツボは異なってきますが、基本的には「気」を巡らして全身の流れを改善するような治療を行なっていきます。
また「肝」に不調が起こると、「脾」や「腎」といった臓器にも影響を及ぼし、それぞれの不調を引き起こします。

 

慢性期
慢性期や慢性的にうつ症状が出ている場合、その背景に「肝」以外の臓器の不調が出ている事が多く見られます。
特に「脾」や「腎」の不調が関係しています。

(1)脾の不調
「脾」は食べ物を消化して、「気」や「血」を作り出しますが、「脾」が弱っていたり栄養不足が続くと、その「気血」が不足しうつ症状やそれに伴う様々な症状が出てきます。うつ病の原因の一つとされる、セロトニンというタンパク質の不足などもこの状態に含まれます。
そして先ほど出て来た「肝」の不調は「脾」の不調を引き起こします。「脾」の不調がもともとある時に「肝」の不調が重なる事で、うつ症状は慢性化していきます。
・浮腫
・倦怠感
・話すのが億劫
・食欲不振
・軟便
・息切れ
などの症状が出てきます。

この状態の場合、「肝」や「気を巡らす」治療だけでは改善していきません。
同時に「脾」の治療や「気血」を補う治療が必要になります。

(2)腎の不調
「腎」は体の生命エネルギーを蓄えている臓器で、歳を重ねるごとにそのエネルギーが低下し、「気血」の素が不足してうつ症状を引き起こします。また「肝」と共にホルモン分泌にも深く関与しています。栄養が偏っていたり、手術や服薬、炎症が起きていると腎のパワーは落ちていきます。
そこにストレスによる「肝」の不調が重なると「肝腎」ともに弱っていき、慢性化していきます。
副腎疲労と呼ばれる症状もここに当てはまります。
・精力減退
・耳鳴り
・難聴
・足腰の重だるさ
・頻尿
・免疫力低下
・不眠
・無気力

などの症状を伴います。

「脾」と同様に、「腎」の不調がある場合、やはり「腎」の治療や養生法が必要になっていきます。

 

③うつ病の治療症例

40代 男性
10年ほど前から仕事での人間関係や過労からうつ症状が出ていたが、抗うつ剤を服用して仕事を何とかこなしていた。しかし当院にご来院する2週間前から仕事が忙しく、気分がふさぎ込んでうつ症状が強く出るようになった。特に朝がつらく、仕事に行こうと思っても身体が重たくなり、仕事に行けなくなってしまった。仕事を休職状態にすると症状はさらに悪化して睡眠が浅くなったり、買い物などで買い物をするのも億劫となってきた。
薬でもなかなか改善がみられず、仕事に早く復帰したいという思いから当院にご来院されました。

◇1回目◇
治療後、身体が楽になりその日は久しぶりに深い睡眠がとれた。治療後2日後辺りからまた以前と同じような状態。

◇2~4回目◇
治療をすると体調は良くなるが、2日経つとまた体調が悪化する状態を繰り返す。

◇5回目◇
睡眠が以前よりだいぶ改善されていると感じているとのこと。深い睡眠がとれている

◇6回目◇
睡眠時間が安定して確保できていることから日中も少しずつ活動ができるようになってきた

◇7回目◇
仕事復帰のめどが立ち、来週から仕事復帰予定

◇8回目◇
最初は仕事時間を短くしてもらっているが、ちゃんと仕事で来ているとのこと。身体のつらさはあまり感じない

◇9回目◇
仕事で張り切り過ぎたか少し風邪気味だが、その他は体調崩れていない

◇10回目◇
仕事の時間を休職前と同じようにしても身体の不調、憂うつ感は起きていない。

 

 

症例2

20代 女性

◇症状◇

3カ月前ぐらいから人間関係による強いストレスを受ける事が続き、原因不明の不安感や抑うつ状態が続いている。特に夜間に強くなる傾向があり、ワケも分からず泣き出してしまう事がある。動悸もして吐き気を催す時もある。食欲も出ず眠りも浅く感じる。肩こりがひどく頭痛もある。心療内科で処方されている薬を飲んでいるが改善されず、何とか今の状態を打破したいと思い当院に来院した。

◇当院の治療◇

まず、強いストレスを受け続けていたという事もあり、自律神経の乱れが気になったので自律神経計測器で今の身体の状態を調べた。測定した結果、交感神経が過剰に活動している事が分かった。日ごろから交感神経が過剰に働くと夜になっても副交感神経への切り替わりがうまくできなくなり、動悸や心の不安定の原因になる。また、うつは脳から分泌される神経伝達物質エストロゲンの減少が原因であり、首肩のコリは脳への血流の低下を起こし、エストロゲンの減少に結びついてしまう。
そのため、鍼とお灸を使って自律神経のバランスを整える治療と、首肩の緊張を緩める治療を行った。

・1回目
前回の治療終了後から気持ちが安定していて、ボランティア活動にも積極的に参加できた。動悸はまだ続いている。

・2回目
夜泣くことも減った。動悸を起こす事も少なくなり食欲も出てきた。睡眠の質も改善し良く眠ることが出来ている。

・3回目
動悸は無くなったが、パソコン作業が多くなったせいか目の疲れや肩こりがひどく、吐き気を伴なう頭痛がする。最近たまに夜になると涙が出ることがある。

・4回目
精神的な不安が治まってきた。

 

 

 

④うつ病とは?

うつ病とは、抑うつ気分趣味・喜びの消失不安感焦燥感精神活動の低下食欲低下不眠などを特徴とする疾患です。人は誰でも生活の中で様々な出来事がきっかけで気持ちが落ち込んだり、憂うつな気分になったりすることがありますが、このような気持ちの落ち込みや憂うつな気分は、その原因となる事柄が解決したり、あるいは解決しなくても気分転換したり、時間が過ぎることで自然と回復に至ります。

 

ところがうつ病の場合は、原因が解決しても気分が回復せずに強い憂うつ感が長く続いて普段通りの生活を送るのが難しくなったり、重度の場合は自殺にまで追い込まれるケースも少なくありません。
うつ病やうつ状態と躁状態とをくり返す双極性障害を含む気分障害の患者数は、すべての年代で増加しています。特に就業世代については、長引く不況や経済状況の悪化、失業率の上昇などを背景にうつ病の原因となりうる要因が増加しており、近年大きな社会問題となっている高い自殺者数との関連が指摘されています。

ある調査によると日本人の15人に1人が一生のうちで一度はうつ病にかかると言われています。さらに最近ではうつ病とは無縁であった10代~30代など若い世代もうつ病にかかる人が目立つようになりました。また著しい高齢化社会の進展に伴ってうつ病の好発年代である高齢者層の人口増加や高齢者を介護する人がうつ病にかかってしまう介護うつなど、もはやうつ病は珍しい病気ではなく、誰もがかかる可能性のある病気です。

そういった意味合いで『うつ病は心の風邪』と表される場合があります。「誰でもかかる可能性がある」「患いやすい」といった意味であり、決して「うつ病は放っておけば簡単に治る」ということではありません。うつ病は風邪とは異なり、体の抵抗力により自然と治癒していくというものではなく、きちんと治療をしていくことが重要です。
うつ病の症状には大きく分けて「精神症状」と「身体症状」があります。気分の落ち込みや趣味・喜びの消失などといった精神症状だけではなく、身体の調子も悪くなるのがうつ病の特徴です。またこれらの症状が、朝方調子が悪く夕方には元気(日内変動)や季節的に春と秋に悪くなる(季節変動)もうつ病の症状の特徴です。

 

うつ病と聞きますと、気分の落ち込みや抑うつ感や不安感、気分の落ち込みなど精神面の症状が思い浮かぶかと思いますが、意外にも気分症状よりも体の不調を感じてそれからうつ病を発症するという方も少なくなありません。最初は、何となく腰痛や首肩こりを感じて、それから体が重だるく感じて体が動かせないと訴えます。

そして仕事や家事が手につかなくなり、精神的な症状も徐々に出てくるというケースです。本人としましては体の症状だと思っているので内科の病院などを受診して検査などしても異常な数値が出ないのでかかりつけ医が心療内科への受診を促してうつ病が発覚するということも多いです。うつ病の人の多くは責任感が強く完璧主義者も多く、体調不良や気力の低下の状態が続いて仕事や家事ができないと自分のせいだと考えて不安感が増幅してまたさらに気力の低下につながるという悪循環に陥りやすくなってしまいます。

精神症状
ⅰ)感情面
気分が憂うつになる、理由もなく悲しい・寂しい、なんも希望がない、不安や焦りを感じてイライラする、無感動になる、死にたいと思うなど色々な感じ方があります。これらの感情が一時的なものではなく、2週間以上続くのが特徴です。うつ病の一番厄介な症状はこの感情面の症状だと考えれれています。好きなことも手につかず何事にも無気力な状態となってしまいます。様々な感情、喜び・気分・意欲・興味など心のすべての働きが低下して何もできなくなってしまうのです。

ⅱ)思考面
考えが進まない、頭がさえない、集中できない、決断力や判断力が低下するなど頭が呆けてしまったと感じる場合があります。さらに自分は悪い事をしたので罰を受けなければならないと信じ込んだり、不治の病にかかったとなどと信じ込んだりするというのが特徴です。

 

 

身体症状
ⅰ)睡眠障害
睡眠障害には不眠と過眠があり、うつ病の症状としては一般的に不眠がほとんどです。しかしなかには異常な眠気で1日中寝て過ごすということもあります。不眠では寝つきが悪い、途中で目が覚める、熟睡できないなどがあります。

ⅱ)食欲異常
うつ病では腹痛や胃部不快感などにより食欲不振に陥ったり、または過食となる場合もあります。

 

ⅲ)易疲労
うつ病では、何か作業をしているとすぐに疲れてしまうということがあります。仕事や勉強に全く身が入らず、抑うつ感も感じてさらに症状が悪化してしまう場合もあります。

 

ⅳ)頭痛や肩こり
うつ病では頭痛や肩こりを訴える患者さんが少なくありません。一般的な頭痛や肩こりとは少し異なり、頭を鈍く締めつけられているような頭痛や頭から背中にかけての重だるさを訴える人が多いようです。最近では、頚部や肩部の筋の過緊張が脳血流量を低下させてうつ病の原因となるとも言われており、当院ではうつ病の治療と並行して頚部・肩背部の治療も行っていきます。

 

ⅴ)眼科症状
目の症状でも様々な検査を受けても原因が特定できない場合、うつ病が隠れている場合も少なくありません。目の痛みや物が歪んで見える、急激な視力の低下などで眼科で検査を受けても特に原因が特定できないこともしばしばです。そのような場合、うつ病の身体症状である、体重の変化(1か月で5%以上の変化)・睡眠障害(特に不眠)・疲れやすさなどが併発していたり、うつ病の精神症状である抑うつ感・不適切な自責感・興味の喪失などがあれば、うつ病が疑われます。目の不調があっても眼科で原因が特定できない場合、一度心療内科を受診してみても良いかもしれません。

また、目は自律神経の影響を受けやすい器官と言われています。瞳孔の開閉は自律神経が担っていますし、まぶたを上げる役割のあるミュラー筋は交感神経支配です。うつ病で自律神経の状態が乱れていると視力の低下が顕著になったり、まぶたの下がりが気になる眼瞼下垂の症状が出現する場合もあります。パソコンやスマートフォンを夜遅い時間まで使っていると明るい光を目から受けることで交感神経の活動が高まり、不眠となってそれがうつ病の原因となることも多いので注意が必要です。

 

 


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸整骨院|眼精疲労 at 18:46 / 院長コラム うつ病の鍼灸治療 への11件のコメント

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