高血圧の鍼灸治療

高血圧に対する当院の鍼灸治療

 

当院の高血圧に対する治療目的は、まず第一に鍼灸治療を施すことにより全身の調整を図り、自律神経のバランスを整えます。中医学では局所的に診るのではなく、全体的に診ることが特徴のひとつであり、全身治療を行うことにより自然治癒力を高めます。

高血圧のはり灸治療

 

また高血圧は中医学的に見ると「心」「腎」「肝」作用不足や相互関係の崩れなどで発症すると考えられているので、鍼灸治療を用いてツボを刺激することで「心」「腎」「肝」の作用不足を補ったり、相互関係の崩れを修復するように治療します。その他高血圧の患者さんでは頭痛肩こり慢性的な痛みを訴える方が少なくありません。そういった患者さんには頭痛や肩こりの解消、痛みの緩和を目的とした治療も並行して行っていきます。

高血圧の背部への鍼灸治療

当院の鍼灸治療による高血圧の治療は、降圧を目的としてそれにより、高血圧の合併症を予防することです。
また西洋医学とは違う東洋医学の観点により少しで高血圧が正常に回復できる機会を提供することです。それにより、患者さんの仕事の質の向上や生活の質の向上、生活習慣病の予防が期待できます。

 

 

高血圧の東洋医学的考え

 

高血圧は、中医学でいう「心」「腎」「肝」が深く関係していると考えられています。

ⅰ)心腎不交
中医学では「心」と「腎」の正常の関係は「心の陽気」が「腎の陰液」を温め養って、逆に「腎の陰液」も「心の陽気」に栄養を与え、陽気が強くなり過ぎないように抑制する相互関係を保っています。しかし、その関係が疲労や慢性病、精神的緊張などで崩れると「心の陽気」を抑えきれずに「心火」に変化して上昇したり、「腎の陰液」を消耗しすぎて「腎陰虚」という病態が発生したりします。
「心腎不交」は高血圧の他に不眠症や自律神経失調症、更年期障害、甲状腺機能亢進症なども引き起こすと考えられています。

 

ⅱ)肝陽上亢
「肝陽上亢」とは「肝」の陰液不足で、「肝陽」を抑制できずに「肝陽」が上昇することです。また「肝」と「腎」の関係はとても深くどちらかが不足した状態になるともう一方も不足した状態になりやすく「肝腎同源」ともいわれます。よって「腎」の異常は「肝」にも影響を与え、「腎陰」不足は「肝陽上亢」の症状を呈する事もあります。
「肝陽上亢」は高血圧の他に上半身とくに顔面や頭部に明らかな熱の症状が見られ、自律神経失調症や更年期障害、慢性肝炎、慢性腎炎、不眠症なども見られます。

 

 

高血圧の鍼灸治療症例

 

70代 男性
数年前より血圧が高く、降圧剤を服用していた。薬を飲み続けると内臓などに負担がかかるということを知人からきいてできれば、薬の服用をやめたいと思い当院にご来院されました。
また、首肩のコリ・慢性的な腰痛の症状もあり、高血圧の治療と並行して行っていきました。
治療は主に自律神経の調整治療と血流の改善、硬い筋肉を緩める治療をして行きました。

治療経過
◇1回目◇
首肩や腰の症状は一回でだいぶ改善されたとのこと。血圧にまだ変化は見られない

◇2~8回目◇
一週間に一回ほどのペースで治療、全身の調整治療をして行きました。毎朝家で血圧を計測していただき、その経過をみていきました。
治療開始から2か月ほど経過した時に徐々に血圧が下がっていき、降圧剤を飲んでいると血圧が低すぎる値にまでなりました。処方していただいている医師と相談していただき、徐々に薬を減らしていくことになりました。

 

60代 男性

約10年前、健康診断で高血圧が分かった。最高血圧165mmHg、最低血圧が120mmHg。

飲酒・喫煙をやめ、食事も減塩をこころがけるなど生活習慣を改善したが、数値は変化なし。運動は毎日2.5キロのジョギングを行っている。

薬の服用に抵抗があるため、鍼灸や漢方で治していきたい。

以前までほかの鍼灸院に通院していたが、5回定期的に通っても変化がみられなかったため当院に来院された。

 

当院の治療

本人は無自覚の身体のこりがあり、自律神経測定器の結果からも交感神経が高く緊張状態が強いことがわかった。また、手足も冷えており血行不良もみられた。

身体が冷えると末端まで血液を送り込もうと心臓のポンプに圧力が加わり血圧があがることもあるため、自律神経の調整と四肢末端の血流改善を行い、心臓の負担を減らすように治療をした。

治療経過

◇1回目◇

特に変化なし。

◇2回目◇

初回治療の翌日150mmHgまで低下した。2日目からはもとに戻った。

◇3回目◇

前回と同様で大きな変化なし。

◇4回目◇

最高血圧150mmHgまで低下。

◇5回目◇

4回目から1か月半あいて来院したが、血圧は最高150mmHgを維持している。

正常血圧を目指して今後も継続して経過をみていく。

 

 

高血圧とは

高血圧とは動脈内の圧力が異常に高い状態のことです。

心臓はポンプのように毎分60~70回くらい血液を血管へと押し出しています。心臓が収縮して血液を押し出した瞬間は、血管に一番強く圧力がかかり、最高血圧といいます。

そして収縮した後に心臓が拡張する時には、圧力が一番低くなり、最低血圧といいます。最高血圧と最低血圧のどちらが高くても高血圧といいます。
血圧は重症度によって分類されますが一般的に最高血圧140mmHg以上または最低血圧が90mmHg以上に保たれた状態を高血圧といいます。日本人では40~74歳の人のうち男性は約6割、女性は約4割が高血圧にかかっていると言われており、日本人に大変多い疾患です。

 

血圧を調節しているのは、無意識下に体内の代謝などを調節する神経系の一部、自律神経系の交感神経と腎臓です。何らかの脅威に対する体の生理的反応が起こると、交感神経はいくつかの方法で一時的に血圧を上昇させます。腎臓も血圧の変化に直接的に反応し、血圧が上昇すると、腎臓が塩分と水分の排出量を増やすので、血液量が減り、血圧は正常に戻ります。
また血圧が低下すると、腎臓はレニンという酵素を分泌して血圧を上昇させます。

 

血圧は運動後やカフェインが含まれている飲み物を飲んだ時、たばこを吸ったりすると上がり、安静時には下がります。また時間によっても変動して、朝が最も高く、夜寝ている間が最も低くなります。

血圧は変動しやすく、また病院や診療所で血圧を測るときだけ高血圧を示す場合もあり、一回の測定で高血圧を示すことが問題なのではなく、血圧の高い状態が続いた時に問題となります。

最近では家庭血圧計が普及していますが、家庭でリラックスした状態で測定した血圧値のほうが、診察室で医師によって測定された血圧よりも将来の脳卒中や心筋梗塞の予測に有効であるという疫学調査結果が出ています。

高血圧に自覚症状はほとんどなく、人によっては高血圧と診断される直前から肩こりがひどくなった、頭痛がするようになったなどと訴える場合もありますが、これは高血圧の特有の症状ではないので、症状だけでは高血圧を見つけることはできません。

高血圧は、症状がほとんどないままに、長年にかかってひそかに血管を蝕んでいくため「サイレント・キラー」とも呼ばれています。

高血圧

 

高血圧の合併症

血管を流れる血液の圧力が高くなると、つねに血管に刺激がかかって、血管内皮から血管収縮物質が分泌される事で、血管内皮が障害されます。またこの修復過程で動脈硬化の原因となる物質が形成されます。それと同時に血液を高い圧力で送り出しているのは、心臓なので、心臓が多くのエネルギーを必要として疲れやすくなります。

ⅰ)脳卒中

脳梗塞脳出血は、高血圧ととても深い関係にあります。高血圧により動脈硬化となると、それは全身に広がって血液の流れを悪くしますが、時に多くの血液を必要とする臓器である脳や心臓に害が及びます。動脈硬化により脳血管が硬くなると血液の流れが悪くなり、そこに血の塊ができて血管がつまりやすくなります。これが脳梗塞です。

一方、硬くなった細い血管はもろくもなりやすく、そこに高い圧力がかかると脳の血管が破れて、脳出血がおこります。

ⅱ)虚血性心疾患

心臓の筋肉に酸素と栄養を運ぶのは冠状動脈と呼ばれる血管で、これが硬くなると血液の流れが滞ってそこに血の塊ができやすくなります。そして血管が詰まって心筋が血液不足になり、狭心症心筋梗塞などを引き起こします。

ⅲ)腎障害

高血圧は脳卒中や心臓病以外にも腎臓も影響を大きく受ける臓器です。腎臓は、血液の中からいらない老廃物や有害なものをろ過してとりだして尿にし、体外に出すという大きな役割を担っています。
そのため腎臓の本質部分は、糸球体という毛細血管の集合体になっており、動脈硬化がおこって血液の流れが悪くなると、腎臓の働きは低下します。糸球体は再生しないため、最終的には腎不全となり、人工透析などの治療を受けなければならなくなります。

ⅳ)心臓肥大・心不全

高血圧が長い状態続くと、心臓の仕事量が増えてそれに対応しようとして心筋が肥大していきます。肥大した心筋はさらに高血圧の負荷によって拡張し、最終的には心不全に陥る可能性があります。

ⅴ)高血圧脳症

これまで述べてきた慢性的な影響とは別に急激な高血圧により、脳圧が亢進し、頭痛・視力障害などの急性症状を引き起こした状態を高血圧脳症と呼びます。

頭痛

 

 

高血圧の種類

高血圧の原因は様々なことが考えられるが、その中ではっきりと原因がわかる高血圧は、全体の1割にも満たしません。日本人の高血圧の大部分は原因が特定できない高血圧なのです。

ⅰ)本態性高血圧

本態性高血圧は、原因がはっきりと特定できない高血圧で日本人の高血圧のほとんどがこれにあたります。両親からの遺伝素因に加えて、生後の成長過程、日々の食事、ストレスなどの生活習慣が複雑に絡みあって生じると言われています。

ⅱ)二次性高血圧

二次性高血圧は、原因がわかっている高血圧で、原因として次のような疾患があげられます。

  • 腎疾患(慢性糸球体腎炎・糖尿病性腎症など)
  • 内分泌疾患(クッシング症候群・褐色細胞腫・甲状腺機能亢進症など)
  • 血管病変(大動脈縮窄症など)
  • 薬剤症(ステロイドなど)

 

⑦高血圧の生活上の注意点

  • 食塩摂取量を制限する(1日6g未満)
  • 適正体重を維持する(BMI22程度)
  • アルコール摂取量を適量にする
  • 適度な運動療法をする(一日30~45分程度)
  • 禁煙
  • 脂質の摂取量を制限する

 


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 15:21 / 院長コラム 高血圧の鍼灸治療 への5件のコメント

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