ぶどう膜炎の鍼灸治療

ぶどう膜に対する当院の鍼灸治療

 

当院のぶどう膜炎に対する施術は、第一に目の周辺の経穴にはりをさしてぶどう膜の炎症をおさえる作用を促します。また必要であれば鍼に電極をつなげて微弱電流を流します。

ぶどう膜炎の鍼治療

 

ぶどう膜炎は五臓六腑の肝に深く関係しているので肝に関する経穴を用いて肝血を補うことや肝気の巡りをよくします。

また肝の陽気が過亢進して頭の方へのぼっていくことで症状を起こしているとも考えられるので肝の陽気を抑え、なおかつ下げる治療もする必要があります。

 

風熱の邪気によって引き起こされる場合はそれらを体外に出す治療が必要になります。
また東洋医学の特徴である全体を診て治療するという考えから全身の調整施術も行っていきます。
また多くの方は、目の痛みや視力低下のストレスにより交感神経が優位になっており、自律神経が乱れております。そこで当院では自律神経測定器を用いて、自律神経の状態を把握した上で施術していきます。

 

ぶどう膜炎の全身調整鍼灸治療

 

 

ぶどう膜炎の東洋医学的考え

中医学では五臓六腑の肝は目に開竅するといわれており、目の疾患は肝の機能障害が深く影響していると考えられています。

肝血が不足してしまうと視覚の異常や運動系の異常などがみられます。また肝の陰陽のバランスが崩れてしまい肝の陽気の過亢進がおきると次第に陰液を消耗して肝陽が頭の方へ上がっていきます。

するとぶどう膜炎などのさまざまな目の疾患・高血圧・頭痛・自律神経失調症などを引き起こします。また外からの風熱の邪気が体に侵入すると目は侵されやすく、ぶどう膜炎を引き起こす原因にもなります。

 

ぶどう膜炎の鍼灸治療症例

 

30代 女性
当院にご来院される一年前に大学病院の眼科で原田病(ぶどう膜炎)と診断される。視力障害などの症状はまだあまり強く出ていないものの目の痛みや頭痛の症状は出ている。病院でステロイド薬を処方されて服用しているが症状の改善があまり見られないために病院と並行して当院の鍼灸治療を受けたいとのことでご来院された。

 

当院の治療
原田病の原因はいまだわかっておらず、自己免疫疾患のひとつと考えられています。問診で詳しく伺ったところ原田病発症の1年ほど前から生活環境がガラリと変わり、ストレスを多く抱えていたことがわかり、それが一つの原因となったのではないかとご本人もおっしゃっていました。 そこで、当院では自律神経測定器を用いて自律神経の状態を計測させていただいてから治療に入りました。 自律神経側敵の結果、交感神経の活動が活発で、体の疲労度の数値も高い状態でした。

当院では

・自律神経の状態を整える全身調整治療
・首肩の筋肉の緊張をとる治療
・最後に目の周りの治療

この3点を施術しました。

 

治療経過
最初の1か月程は、週に2回と治療間隔を詰めて2か月目から週に1回のペースで治療していきました。治療開始3週間目からステロイドの薬が減り、悩まされていた目の痛みや頭痛も治まってきた。 治療開始3か月目よりステロイドの服用もなくなり、体調も落ち着いてきた。

症例2
50代 男性
3年ほど前に右目の痛みと充血が出て眼科を受診したところぶどう膜炎と診断されて、原因は特定されなかった。その時は、眼科で処方された薬で痛みや充血は良くなったが、それ以降1~3カ月おきに右目に炎症がおきる。だんだんと薬の効果も軽減してきて痛みと充血が長く続くようになってしまったため当院を受診された。ぶどう膜炎の他にストレスで耳鳴りが起きたり、生活習慣病による高血圧症も患っていた。

当院の治療
問診を行っていったところ、夜勤などの勤務もあり生活のリズムがバラバラで睡眠の質も低下していた。寝つきも悪く、自律神経の状態を計測したところ交感神経の活動がとても高い状態で疲れがあまり抜けないとのことでした。
まず自律神経の状態を整えて首肩の筋緊張を緩めてから、右目を中心に鍼通電療法を行っていきました。

治療経過
最初の施術後、痛みは半分ほどに軽減されたが、充血は変わらず起きていました。それから5回程治療を重ねて痛みと充血は抑えられていきました。
ご本人もお仕事で忙しく、その後一か月後にまた来院され、また以前ほどではないが痛みと充血が起きていました。今度は3回程の施術で痛みと充血は治まっていきました。その後、体のメンテナンスも兼ねて定期的(2~4週間に1回程)に鍼灸施術を受けられていますが、ぶどう膜炎再発はしていません。

症例3
40代 女性
35歳の頃に目の痛みが強く出た。その時は単なる目の使い過ぎで痛くなったと思い、痛みに耐えながら生活して2日後には痛みが治まったがまた1か月後に前回の目の痛みよりも強い痛みを感じた。その時は目の痛みばかりではなく頭痛や首の痛みも感じたため、眼科を受診した。眼科では、ぶどう膜炎と診断された。その際にステロイド剤が入っている点眼薬を処方されて点眼すると目の痛みは治まった。
しかし、また目の痛みが1~2か月後に起こり、ステロイド剤の目薬を点眼して症状を抑えるような状態が続いていた。ステロイド剤を使っていると目の眼圧も高くなってきており。眼圧が左右20mmHg程にもなってしまった。これからも目薬を使って眼圧が高くなるのがこわいとのことで鍼灸治療をご希望された。

治療
首肩の筋の緊張も強く出ておりいましたので、まずうつ伏せ施術で首肩の筋緊張をとってから、仰向けとなり目の周りや腹部・手足の経穴を用いて施術していきました。

◇1回目◇
治療後、目の痛みはやや軽減。VAS6

◇2回目◇
1回目の治療後から3日ほどたって痛みが強く出たのステロイドの目薬を点眼。

◇3回目◇
前回治療後のVAS3。

◇4回目◇
目の痛み落ち着く。これまでは3~4日のペースで施術を受けられていたが1周に1度ほどに変更

◇5回目◇
たまに違和感程度の痛みを感じることもあるが落ち着いている。目薬もしていない

◇6~10回目◇
たまに痛み出るがすぐに落ち着いてくる状態を続けていたが、10回目終えるとそれもなく快適に過ごせているとのこと

◇11回目以降◇
予防・再発防止のため3~4週間に1回程のペースで施術を受けられている。

 

 

症例4

40代 女性

数年前からぶどう膜炎を発症。発症するたびにステロイドの点眼剤で治めてきた。ぶどう膜炎の症状はまぶしさや視界の濁りはなく、炎症初期は痛みが強く視力も低下するが、炎症が治まると症状も回復する。

当院にご来院される1か月前からぶどう膜炎が再発。普段は2~3週間で炎症が治まることが多いが今回は症状が長引いている。左目のみ発症。まだ痛みと赤みが少し残っていて視界不良。

子育て等の疲れや睡眠不足、首肩の筋緊張も強くそれらも影響しているかもとご本人は考えている。

施術

目の症状のほかにもめまいや不眠等の自律神経症状もあったことから自律神経測定器で自律神経の状態を測定したのちに鍼灸施術を行っていきました。

うつ伏せで首肩の筋緊張の緩和・背部兪穴なども用いて肝や腎の状態を治していき、次に仰向けとなり目の周りを中心に施術を行っていきました。

鍼のみでのお身体の反応も良く今回は電気鍼治療は使わずに行っていきました。治療のペースは5回ほどは週に一回ほどのペースで6回目以降2~3集会のペースで行い、計9回施術を行いました。

経過

2回の治療の後、眼科で炎症の状態を診たところ、炎症のレベルが下がってステロイドの強さがワンランク下がったとのこと。施術5回目くらいまでは左目の痛みは何となく出ていて症状にも波があったがそれ以降は段々と痛みも落ち着いてきた。

施術8回目の後眼科を受診。炎症はほぼ消失しており、ステロイド点眼治療も今残っている薬で終了しても良いとのこと。

 

ぶどう膜炎とは

ぶどう膜とはぶどう膜の一部または全体が炎症を起こす疾患です
ぶどう膜は血管に富む組織であり、炎症が起こりやすく、特に全身的な炎症の一部分として発症することがあります。眼球の外壁は外側から角膜・ぶどう膜・網膜という3層の膜からなります。ぶどう膜は虹彩・毛様体・脈絡膜の3つの部分に分けられます。
虹彩は角膜を通して日本人ではふつう茶褐色に見える部分です。その色には人種差があり、白色人種はメラニン色素が少ないので青色に見えます。虹彩の中央には瞳孔があり、目に入る光の量を調整しています。

 

ぶどう膜炎の主な症状

 

毛様体はぶどう膜の前方部分である虹彩と後方部分である脈絡膜との間にあってチン小帯で水晶体をつり下げています。毛様体は房水を生産して角膜と水晶体を栄養しています。また毛様体筋という筋肉があり、この働きによって水晶体の厚さがかわることで網膜にはっきりした像が結ばれます。

脈絡膜は強膜の内側に接しており、メラニン色素が多いために黒く見えて虹彩とともに瞳孔以外からの余分な光線が眼球内に入らないようにする役目を果たしています。また脈絡膜には血管が豊富で眼球内特に網膜外層に栄養を補給しています。
最もよく現れる症状としては、霞みがかったように見えたり、明るい光に対して過敏になったりします。その他視力低下眼痛眼の充血飛蚊症などの症状もみられます。片眼もしくは両眼に症状が現れます。または両眼交互に症状が現れることもあります。

ぶどう膜炎の初期症状は軽度のものから重いものまでさまざまで、眼が急速に障害されることもあります。黄斑部の腫れ緑内障白内障といった合併症が長期間にわたって続き、視力を低下させることもあります。

 

 

ぶどう膜炎の原因

 

ぶどう膜炎の原因はさまざまで、眼そのものに原因がある場合もあれば、全身性の疾患が原因の場合もあります。日本で多いぶどう膜炎はベーチェット病・サルコイドーシス・原田病によるぶどう膜炎です。
この三大ぶどう膜炎のほかにも、膠原病関節炎腸疾患皮膚疾患脳神経疾患耳鼻科疾患糖尿病・あるいは血液疾患や悪性腫瘍などがぶどう膜炎の原因になっていることもあります。原因不明のぶどう膜炎も多く、その割合は30~50%と言われています。原因不明のぶどう膜炎は特発性ぶどう膜炎と呼ばれています。

 

ⅰ)ベーチェット病
ベーチェット病はぶどう膜炎、口内炎、陰部潰瘍、皮膚の赤いしこりなどが主な症状です。そのほか関節炎、消化管症状、神経症状、血管炎を起こします。
ぶどう膜炎は再発性で両眼性であることが多いです。長期間におよぶ発作の寛解と再燃を繰り返して、様々な症状は一度に出てくるわけではなく、長い年月をかけて症状がそろい初めてベーチェット病と診断される場合も少なくありません。原因は分かっていません。

 

ⅱ)サルコイドーシス
サルコイドーシスは全身性の疾患であり、全身に肉芽腫(炎症を起こした後に治癒の過程でできる塊)ができる病気で慢性的なものです。眼の病変として両眼に慢性結節性ぶどう膜炎を生じます。ぶどう膜炎以外に皮膚や肺、リンパ節、心臓などにも病変を起こすこともあります。原因は分かっていません。

 

ⅲ)原田病
メラニン細胞を標的とする自己免疫疾患と考えられています。両眼に急激で高度の視力障害が起こります。虹彩毛様体炎、脈絡膜炎のほか全身症状が生じます。初期には頭痛耳鳴りめまいなどを伴うことがあります。発病から1~2ヵ月後には皮膚や頭髪の色素脱失が現れます。

 

ⅳ)交感性眼炎
一眼に窄孔性の外傷を受け、ぶどう膜が損傷されると1~2ヵ月後に両眼に強い虹彩毛様体・脈絡膜炎が起こります。外傷を受けた眼の炎症が増悪するのと同時に健康な眼にもぶどう膜炎が起こって高度の視力障害を起こします。

 

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好医院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 11:12 / 院長コラム ぶどう膜炎の鍼灸治療 への2件のコメント

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