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早期覚醒、目覚めの悪さの鍼灸治療

土曜日, 9月 7th, 2024

早期覚醒と目覚めの悪さに対する当院の鍼灸治療

 

早期覚醒や目覚めの悪さに対する当院の治療方針はまず自律神経を整えることです。

目覚めの悪さ・早期覚醒の鍼灸治療

 

早期覚醒や目覚めの悪さで悩んでいる方の多くは自律神経の日内リズムが乱れています。

通常、自律神経のバランスは、日中に活動的な神経である交感神経が高まり、夕方から夜にかけてリラックス神経である副交感神経が高まります。

しかし、早期覚醒や目覚めの悪さがある方は、この自律神経のリズムが崩れており、日中に副交感神経が高まり、夜にかけて交感神経が高まってしまってる方が多く、日中は倦怠感や眠気があり逆に夜になると頭がさえてきます。また、過労気味の方に多いのが常に交感神経の活動が高くなってしまっていることです。すると、寝つきの悪さや睡眠の質の低下などに繋がり早期覚醒や目覚めの悪さに繋がります。

 

そこで当院では自律神経測定器で自律神経のバランスを測定してその方の自律神経のバランスを把握することでその方に合った施術を選択して行っていきます。

その他、東洋医学的観点より最適なツボを選穴して五臓六腑の調子も整えていきます。快適な睡眠には五臓六腑の『』と『』の働きが特に重要です。心と腎の働きを整え、睡眠の質上げる特効穴なども用いて施術していきます。

目覚めの悪さ・早期覚醒のうつ伏せ鍼灸治療

 

眠りの質上げるツボとして足の裏にある「失眠」というツボがあります。当院ではこの部分にお灸で刺激を入れていき、睡眠の質の改善をはかっていきます。

 

睡眠の質を上げる「失眠」へのお灸治療

 

自律神経測定器
自律神経測定器

 

症例

40代男性

半年ほど前から起床予定時刻よりも2~3時間早く目覚めてしまい、その後もなかなか眠りにつけない状態が続いている。発症以前は7時間程安定して眠れていたが、現在の睡眠時間は5時間程度。良くて6時間。病院で睡眠導入剤を処方されるも、日中の倦怠感が強く出てしまい飲むのをやめてしまった。
出来れば薬に頼らない治療法で治したいという事で、鍼灸治療を試してみようと来院される。
睡眠不足で疲れがとれない為か全身の疲労感があり、集中力も低下している。
主にPCを使う仕事に従事しており、眼精疲労の症状も現れている。

当院での治療
自律神経測定器の結果夜の時間帯にもかかわらず交感神経が過亢進状態でバランスに大きく乱れがみられました。睡眠の質を高めるためのホルモン分泌、概日リズムの正常化、全身的な血行の改善、内臓機能や免疫力の向上による疲労、眼精疲労の緩和を目的とし自律神経系の調整をメインに治療を行いました。
また、下肢の冷え、頭部ののぼせの症状も見られましたので、腹部や下肢を温め、頸部の筋肉の緊張を除き血の巡りを改善する施術と、眼精疲労の改善のため目周囲に鍼やお灸を施しました。

1回目
まだ変化ないが、施術後はリラックスできた感覚はあった。

2回目
疲労感、眼精疲労少し楽になった気がするが、睡眠の方はまだ変化感じられない。

3回目
施術当日はよく眠れたように思うが、やはり二時間ほど前に目が覚めてしまった。しかし、その後は30分程で寝付けることができた。

4回目
いつもより30分ほど長く眠れた日が二日ほどあった。疲労感と眼精疲労は少し和らいだ。

5回目
毎日ではないものの、6時間以上眠れる日が出てきている。首のコリが残っているが肩や腰の張りが取れてきた。眼精疲労も感じにくくなってきている。

6回目
二日に一回は6時間以上眠れている。その後の寝付きもよい。首のコリの範囲が狭くなった。

7回目
七時間ほど眠れた日が一日あった。久しぶりに熟睡出来た感覚。眼精疲労は今はほとんど感じない。首と肩の緊張があるが来院前に比べれば半減くらいはしている。

8回目
6~7時間眠れる日が週に2,3回あった。

9回目~10回目
7時間眠れる日が週の3,4日になってきた。疲労感も抜けてきた。仕事中も集中できるようになっている。

11回目
今は、疲労感、眼精疲労は無くなった。首と肩こりもずいぶん楽になって頭も軽い。睡眠は7時間安定して眠れるようになっている。週に1,2回は少し早く目覚めてしまうこともあるが、その後すぐに眠りにつけるので睡眠不足によるストレスはほとんど感じなくなった。
いい状態が続くようにもう少し治療続けていきたいと思う。

12回目
前回から治療間隔を伸ばしたが安定して眠れている。仕事が長時間の時は目が疲れたり、肩がこる時もあるが眠れば回復するので体調面も安定している。

 

 

症例2

 

30代 女性

出産後から子育てやホルモンバランスが崩れて眠れなくなったのかと最初は思っていたが、子供の夜泣きがなくなってもイマイチな睡眠しかとれなくなり、朝に起きようとすると身体がだるい。アラームは3〜4回目に気づくが起きれない。

薬など色々試したが徐々に効かなくなるので、別の方法を探して鍼灸を見つけたので試してみようと思い来院。鍼灸治療を受けるのは今回が初めて。

当院での治療

自律神経測定での結果から、かなり交感神経が優位になっており、精神的ストレスと疲労度も高く測定された。

問診時に話を聞くと、家族の生活リズムがバラバラでそれが気になり眠れなくなることも多いとのことだった。

身体は全体的に筋肉の緊張が強く、手足も冷えていたため自律神経調整の治療をメインに末端の血流改善の治療も行った。

治療頻度は週2回

 

1回目

治療中に眠れた。リラックスできた。

2回目

朝のだるさは変わらないが、治療後は身体から力が抜けて楽になる。1日で元に戻る。

3〜6回目

夜に途中で起きることが少なくなってきた。朝の感じも変化してきた。治療頻度を週に1回に変更。

7回目

起きたときにあった頭痛が暫くなくなっていることに気がついた。

8回目

3回目のアラームで起き上がることができた。

9〜13回目

睡眠も改善され、身体の調子がとても良い。2回目のアラームで起きれる日が増えてきた。

14回目

睡眠、体調ともに安定してきたので継続治療終了。

 

 

早期覚醒・目覚めの悪さの原因

 

早期覚醒とは「本来起きたい時間よりも早く目覚めてしまう事」で睡眠障害の一つです。

予定していた起床時間よりも数時間早く起きてしまう日が続いたり、いったん起きてしまうと、予定より早い時間であっても再び就寝することが出来ない日々が続くことで十分な睡眠が得られず睡眠不足に陥ってしまったりします。

通常の早起きとして周囲からは大きな問題として扱ってもらえなかったり、年配の方の場合は年齢から起こる早寝早起きと勘違いされる場合もあり、医療機関への受診が遅れたり、症状が深刻化することもあります。

逆に寝起きが悪いという状態になるのは、脳が十分に覚醒状態へと切り替えることが出来ていないために起こります。これは、覚醒すべきタイミングに覚醒出来ない「睡眠慣性」という体の習性に起因しています。

睡眠慣性とは、目が覚めても眠気やだるさが残っているなど、身体が起きているにもかかわらず、脳がまだ眠っている状態の事を指します。睡眠慣性は睡眠の質が低かったり、脳が深い睡眠に入っている時にアラームで強制的に目覚めたりすると起こりやすいと言われています。

睡眠慣性になると脳が覚醒している状態に比べて認知機能が著しく低下した状態になり徹夜明けや、飲酒状態よりも脳機能が低下していると言われています。

朝目覚めてからもしばらくうとうとした状態が治らないのは睡眠慣性から十分に回復できていない為と考えられています。

 

 

 

 

早期覚醒となる要因

 

・加齢によるもの
私たちの身体には夜になったら眠るという仕組みが備わっています。
これを体内時計と呼びますが、加齢とともに体内時計の針は進行しやすくなります。そのため高齢者には就寝時刻が早く朝早く目覚めるという人が多く見られます。加齢に伴って睡眠の質は変化し、睡眠に必要な時間も短くなっていきます。
60歳以上になれば6時間以上眠れる人の方が珍しいと言われるほどです。また、加齢により睡眠導入物質であるメラトニンの分泌量が少なくなることで眠りが浅くなり、睡眠を持続することが難しくなることも原因として挙げられます。

 

・体内時計の変調
夜更かしや夜勤、旅行の時差による活動時間の変化などが引き金になる事があります。

 

・精神的ストレスや自律神経の乱れ
睡眠は身体から分泌される「神経伝達物質」や「自律神経」などが影響を与えています。仕事や人間関係などで強い精神的ストレスを受ける事により、脳が活性化し脳内のドーパミンや乗るアドレナリンなどの覚醒物質が脳を覚醒させ睡眠の質の低下を招きます。

また、自律神経は自分の意志とは無関係に働く神経で、内臓、血管などの働きをコントロールし、体内環境を整えてくれています。自律神経は交感神経と副交感神経の二つで成り立っていますが、交感神経は日中活動時に活発に働く神経で心や体を活発にする働きを持っています。

副交感神経は夕方から夜にかけて主に働く神経で脳や身体をリラックスさせ、体を休ませる神経です。このうち眠るとき優位に立つのは副交感神経です。

何らかの原因によってこの自律神経に乱れが生じることで、体を休める働きをするはずの副交感神経が働きにくくなり睡眠障害を起こします。自律神経の乱れを起こす原因と考えられるものには、ストレスや疲労、環境の変化、温度や湿度の変化、生活リズムの乱れ、ホルモンの変化などが挙げられます。

 

・うつ病などの心の病による早期覚醒
早朝覚醒を含む睡眠の質の低下は、心の病の症状として現れることがあります。
うつ病患者の9割以上が何らかの不眠症状を自覚しているとも言われているほど、うつ病と不眠の関連性は強いです。物事に興味が無くなったり、やる気の低下、気分の落ち込みといった症状が現れてきた場合には早期覚醒の原因としてうつ病が潜んでいる可能性もあります。その他、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や統合失調症などでも不眠の症状が現れる事があります。
うつ病の鍼灸治療について

 

 

・アルコール、喫煙、コーヒーなどのカフェイン摂取過多
アルコールは脳を鎮静させることにより寝つきを良くする作用があるため、眠れない時に摂取する方もいます。

しかし、実はアルコールは寝つきは改善させますが、眠りの質は悪化させます。利尿作用やアルコールが体内から分解される時に離脱症状が生じる為、心身が不快を感じ目覚めてしまうこともあります。

ニコチンやカフェインも興奮作用があるため睡眠に質を下げる原因となります。

 

 

・女性ホルモンのバランス
黄体ホルモンのプロゲステロンが睡眠を浅くすることがあります。そのため、女性ホルモンのバランスが変化する生理前や妊娠中、更年期などは不眠の症状が現れたり、日中の眠気が生じやすくなることがあります。

 

 

早期覚醒と関連のある疾患

 

・不眠症
寝つきが悪い「入眠障害」、夜間に何度も目が覚めて熟睡できない「中途覚醒」、朝早く目が覚めて眠れなくなる「早朝覚醒」などのタイプがあります。
不眠症の鍼灸治療

 

 

・睡眠時無呼吸症候群(SAS)
眠っている時に呼吸が停止したり、喉の空気の流れが弱くなったりする病気です。多くの場合、舌や口蓋垂(のどちんこ)が空気の通り道である気道を塞ぐことで起こります。寝ている間に10秒間以上の無呼吸(呼吸が止まること)や低呼吸(呼吸による換気が50%以下に低下すること)が一時間に5回以上ある場合に睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

 

 

・うつ病
うつ病の原因ははっきりと分かっていませんが、脳の神経伝達物質の働きが悪くなることと同時にストレスや身体の病気、環境の変化など様々な要因が重なって発病すると考えられています。うつ病が「不眠や食欲不振などを含めた特定の書状が2週間以上にわたりほぼ毎日続いている状態」と診断基準が決まっており、気分の落ち込みの他にも精神的、身体的な症状を伴います。
睡眠障害の他にも食欲の低下または増加、疲労、倦怠感、ホルモン系の異常などの症状が現れることがあります。
また、精神症状として他にも喜びや興味の喪失、やる気の低下、抑うつ気分、自責感、気分が落ち込むなどの症状が2週間以上続き、仕事や日常生活に支障が出てくることがあります。

 

 

目覚めの悪さを起こす疾患

・起立性調節障害
自律神経失調症の一種です。若年層、特に中学生に全体の10%にみられ、思春期の女子に多い病気です。身体症状としてめまい、立ちくらみが一番多くみられ、その他にも息切れ、動悸、睡眠障害、食欲不振、腹痛、頭痛、倦怠感など人により様々な症状が現れます。
午前中に体調が優れず、午後になると改善する症状もあります。
起立性調節障害の鍼灸治療について

 

 

・睡眠相後退症候群
昼夜逆転の生活が要因となって体内時計がずれてホルモンの分泌のリズムや体温リズムが崩れてしまう病気です。心の病気とも呼ばれており無理に寝つく努力をして精神的に圧迫されたり、寝付けなくて鬱状態になる場合や登校や出社、家事や育児が出来ない自分を周囲も本人も追い込んでしまう事で余計に悪化させることがあります。

 

・低血圧

早期覚醒と目覚めの悪さの対策法

 

早朝覚醒・目覚めの悪さが継続的に起こる場合、自分自身でもいくつかの対策を検討することが重要です。以下は、早朝覚醒に対する一般的な対策です。

・規則正しい睡眠スケジュール

睡眠の質を向上させるためには、なるべく毎日同じ時間に寝て同じ時間に起きることが重要です。不規則な睡眠スケジュールは、体内時計を乱し、早朝覚醒を引き起こす原因になります。土日祝日など仕事や学校がお休みの日でもできるだけ同じ時間帯に寝て起きることが望ましいです。

 

・寝室の快適な環境

寝室を快適な環境にすることが大切です。適切な温度、暗さ、静けさなどを確保しましょう。基本的に室温は低めに設定して真っ暗にすることが深い睡眠に入りやすいと言われています。カーテンも街灯の光も遮るレベルの物を使用することが睡眠には望ましいとされています。

 

・夜の活動制限

寝る前に興奮するような活動や刺激的な体験を避けることが役立ちます。例えば、激しい運動やダラダラとテレビを見ること、コーヒーやアルコールの摂取は控えましょう。

 

・デジタルデバイスの制限

寝る前の1時間ほどはデジタルデバイス(スマートフォン、タブレット、コンピュータ)の使用を避けましょう。これらのデバイスのブルーライトは、メラトニンの分泌を抑制し、睡眠に悪影響を与える可能性があります。活動的な神経である交感神経が活発になって睡眠の質を低下させることがわかっています。ベッドに入ったら絶対にスマートフォンは触らないように心がけましょう。

 

・ストレス管理

ストレスが早朝覚醒の原因である場合、ストレス管理技術を導入すると良いです。深呼吸、瞑想、リラックスした音楽の聴取などが効果的な方法です。日中にウォーキングなど軽い有酸素運動を40分程度行うとリラックス効果があることがわかっています。

 

・朝日を浴びる

朝日を浴びることで、体内時計がリセットされて、目覚めが悪い場合は覚醒が促進されます。窓際で朝日を浴びながら朝支度をするようにしましょう。
また、朝日が昇り始める時間にカーテンが自然と開くような商品もあるのでそのようなものを利用する手段もあります。

 

・深呼吸や瞑想

寝床で深呼吸や瞑想を行うことで、リラックスして眠りにつき、目覚めが良くなることがあります。深呼吸や瞑想は近年の研究でもその効果が実証されており、ゆっくりと呼吸することで副交感神経の活動が高まって深い睡眠ができるようになって早期覚醒や目覚めの悪さの対処法になります。

 

これらの対処法は個人差がありますので、自分に合った方法を見つけることが重要です。

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院

中耳炎の鍼灸治療

金曜日, 9月 6th, 2024

中耳炎の東洋医学と鍼灸治療

 

中耳炎の鍼灸治療は、WHO(世界保健機関)でもその効果が認められている治療法の一つです。

東洋医学では、耳と五臓六腑の『』は深い関わりがあると言われています。東洋医学の腎は西洋医学でのそれとは違いますが、内分泌系・泌尿生殖器系・免疫監視機能など少し似ている部分もあります。

その中で腎は耳に開竅すると言われ、先天的に身体に備わられている腎精というものが十分に満たされていない状態ですと、生殖能力や脳の活動にも影響を与えて聴力も低下すると言われています。

そしてさらに腎の陰液不足の状態になると陽気の相対的亢進に伴って熱証となってしまい、炎症症状が出やすい状態となってしまうのです。これを腎陰虚の病態といいますが、東洋医学では腎と肝は『肝腎同源』と言われ、相互に依存した状態で、腎陰虚の状態が出ると合わせて肝陰虚という状態になりやすくなります。

肝陰虚は肝の陰液が不足した状態ですがその状態となってしまうと陽気は体の上へと昇りやすく耳や目の症状として現れやすくなってしまい、中耳炎の原因となります。

当院の鍼灸施術では、東洋医学的観点により五臓六腑の『』や『』の働きを正常に戻すようなツボを用いて鍼灸施術を施したり、自律神経のバランスを整えることで体の免疫力の向上や自然治癒力を上げる施術を行っていきます。

 

中耳炎の頸肩鍼灸治療

中耳炎ではストレス過多状態睡眠不足で自律神経のバランスが崩れている方が多く、当院では、自律神経測定器で自律神経の状態を把握したうえで自律神経を整え、身体全体の体調を良くしていきます。

また、耳の痛みが強い場合では、鍼通電療法なども用いて鎮痛効果の強い施術も行っていきます。

中耳炎の鍼通電治療

 

中耳炎とは

 

耳は、外耳と言われる外からでも見ることができる部分と聴覚や平衡感覚をつかさどる組織のある内耳、そして外耳と内耳をつなげる役割のある中耳という機能があります。

中耳炎は、その中耳という部分に細菌やウィルスが入り込んでしまい、炎症をきたすことで発症する疾患です。

中耳炎は、子供に多くかかる疾患ということは知られています。3歳までに一度は中耳炎にかかる子供の割合は約8割とも言われていますが、中耳炎は子供にだけかかる疾患ではありません。成人にもかかる危険性もあり、成人の場合重症化しやすく、難聴や耳鳴りなどの原因になったりするので注意が必要です。

 

中耳の役割

中耳は、外耳と内耳をつなげる重要な役割があります。外耳は耳の最も外側に位置しており、目視で確認できる部位で、構造上前方に向かって立っていることや貝殻のような形で広がっていることから音を集めるために適した形をしています。

そして集められた音は、いわゆる耳の穴・外耳道を通って中耳に伝えられます。中耳は鼓膜と耳小骨と言われるツチ骨・キヌ骨・アブミ骨から構成されています。外耳道を伝わった音は鼓膜を振動させて鼓室内にある耳小骨に伝わり、内耳に伝わって内耳内で電気信号に変えられて蝸牛神経を通して脳へと伝わっていくのです。

耳鳴り・難聴 鍼灸治療

中耳の鼓室内は空洞となっており、そこの気圧の調整はとても重要で鼓室内の気圧調整が上手くいっていないと正確に音を振動させて内耳へ伝えることができません。この気圧の調整を任させるのが時間という部分で耳管は、中耳と鼻の奥とをつなげて空気を出し入れすることにより気圧を調整しています。
耳管は開いたり閉じたりして空気の出し入れをして調整していますが、耳管が開きっぱなしにより耳閉感や自分の声が響いて聞こえてしまうなどの症状が出る耳管開放症という疾患もあります

耳管開放症について

 

子供がかかる中耳炎

上述したように子供が中耳炎にかかりと言われていますが、それは免疫力が低いことや耳管の形状など大人との違いがあるからです。子供は3歳ころまでは免疫力が低く、少しの細菌やウィルスでも炎症を発症しやすく、また時間が大人にくらべて短くさらに太いために鼻から耳へと容易に細菌などが侵入しやすくい構造となっているのです。中耳炎が一番発症しやすい時期は生後6カ月から3歳までと言われており、小学生高学年以降は免疫力が備わり、耳管も大人に似た構造となるので徐々に中耳炎にかかりにくくなってきます。

 

子供の中耳炎で注意しなければならないのは、大人がその症状に気づき対処するということです。当たり前と思われるかもしれませんが、子供が中耳炎にかかっても多くの子供は症状を訴えないと言われているからです。子供に多い中耳炎は滲出性中耳炎と言われて痛み症状が出ることはあまりなく、聞こえが悪くなり、呼びかけても返事をしない・テレビの音を大きくしたがるなどの行動が出ます。

3歳ほどまでの音から入ってくる情報はとても重要で滲出性中耳炎のような症状を放っておくと子どもの発達にまで影響を与えてしまう危険性があり、言葉の発達難聴・集中力の低下などにも影響を与えてしまいます。

 

・耳を引っ張る

・耳やその周囲をいじることが多い

・泣き止まない

・呼びかけへの返答が遅い

・テレビの音を大きくする

・集中力が低下している

・理由もなく不機嫌な状態が続く

 

など子どもの変化が見られた場合、耳だれや発熱症状が出ていなくても中耳炎にかかっている危険性があるのですぐに耳鼻科で診てもらう必要があります。

 

 

中耳炎の種類

中耳炎は、主に風邪などの細菌やウィルスが中耳に至って感染して炎症を起こしてしまい発症します。中耳炎は、耳の病気で耳から細菌やウィルスが侵入すると思われがちですが、実はそういうわけではなく、鼻やのどから侵入して耳管を通って発症することが多いです。

中耳炎は、子供にかかりやすいですが大人にもかかることもあり、特に大人が中耳炎にかかる場合は

・ストレス過多状態

・睡眠不足

・過労

 

で免疫力の低下や自律神経のバランス乱れが原因となり、発症することが多いです。

すぐに生活を改善できれば良いですが、なかなか生活を改善することができずに大人が中耳炎にかかってしまうと、重症化して難聴やめまい・耳鳴り・頭痛などのその他の症状が出てしまう危険性もあります。決して中耳炎だからと言って侮ってはいけないのです。

大人が中耳炎にかかるとまず、耳が何となく痛む・頭痛・鼻水が出るなどといった急性中耳炎の症状が出てきます。中耳炎は主に急性中耳炎と3カ月以上中耳炎の状態が続いてしまう慢性中耳炎とがあります。

 

・急性中耳炎

急性中耳炎は中耳が炎症して膿が溜まることで耳の痛み・耳だれ・耳閉感・音が聞き取りづらい・頭痛などの症状が出ます。そして、子供の場合は発熱することも多いです。

そして、炎症が落ち着いてきてもまだ炎症が治まりきらない状態で鼓膜の粘膜から浸出液が分泌されてその浸出液が中耳に溜まってしまい耳が詰まったような感じや音の聴き取りづらさが続く状態を滲出性中耳炎といいます。
鼓膜から分泌された浸出液は通常、耳管を通って鼻から排出されますが、耳管の状態が悪い場合だとうまく排出されずに中耳に溜まってしまうのです。子供場合は耳管が平衡になっているため浸出液を鼻から排出することがしづらいために滲出性中耳炎にかかる危険性が高くなるのです。

 

・慢性中耳炎

中耳炎の状態が3か月以上続いてしまうことを慢性中耳炎と言い、中耳炎が慢性化してしまうと鼓膜に穴が開いて著しく聴力が低下してしまったり、あいた鼓膜の穴から細菌が侵入しやすくなってしまうので頻繁に炎症を起こしてしまい、膿が溜まりやすい状態となってしまうのです。

慢性中耳炎は耳の痛みを感じることは少なく、難聴や耳鳴り・めまい・頭痛症状が長く続きます。

難聴について

耳鳴りについて

めまいについて

頭痛について

 

 

症例

 

30代 女性

仕事の繁忙期が終わった直後に、子供から風邪をもらい高熱がでた。その後、耳に痛みを感じ病院へ行ったら中耳炎と診断された。

現在は熱もさがったのだが耳の痛みは消えず、数日前に耳の中に溜まっている膿をとってもらったがまだ痛みと違和感が残っている。

職業柄移動が多く、今の状態だと仕事ができないので数週間休職している。なるべく早く治して職場に復帰したいので土日で当日予約ができた治療院を探して来院。

 

当院の治療

 

お子様からの感染や中耳炎になる時点でかなり免疫力の低下が見られ、自律神経測定器での結果からもかなりの疲労が蓄積されているとの結果が出た。

うつ伏せでは自律神経の調整と慢性化している腰痛、疲労回復の治療を行い、仰向けでは、耳の周りの血行促進を促す治療をメインで行った。

お子様や病院のご予定もあり、来れる時に来院。

 

治療経過

 

◇1回目◇

治療直後に耳がスッキリした感覚があった。

◇2回目◇

耳の違和感が薄れて唾をのむときの耳の痛みが軽減した。

◇3回目◇

耳の痛みが気にならなくなった。

◇4回目◇

耳の痛みがなくなり、違和感もほぼなくなった。

◇5回目◇

日常生活に戻れる程回復したので、来週から職場復帰することとなった。今後は身体のメンテナンスで通うことになった。

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院

ドライアイの鍼灸治療

金曜日, 8月 30th, 2024

 

①ドライアイの当院の鍼灸施術

当院のドライアイに対する施術は、第一に目の周辺の経穴にハリやお灸の刺激を施し、目の血流改善を促します。涙は血液から作られており、血流が悪いと涙の量も減ってしまいます。

ドライアイの鍼灸治療

ハリ刺激がどうしても苦手という方は、お灸のみの施術を致します。お気軽にお申し付けください。お灸といっても決して痕の残らないものですのでご安心ください。

ドライアイの鍼治療

またドライアイは五臓六腑の肝に深く関係しているので肝に関するツボを用いたり、東洋医学の観点から全身の調整施術を施します。内臓とくに肝や脾がうまく働いていないと全身に栄養ある血液が行き渡りません。

 

自律神経測定

 

そこで当院では、お腹や背部のツボを刺激することで内臓を活性化して全身に栄養ある血液を行き渡らせることができるベースができた上で目周囲の施術を致します。
そうすることで多くの過多のドライアイが改善しました。

ドライアイの自律神経調整鍼灸

 

②ドライアイの東洋医学

 

中医学では五臓六腑の肝は目に開竅するといわれており、目の疾患は肝の機能障害が深く影響していると考えられています。陰陽五行説で、涙は肝に影響すると考えられており、やはりドライアイは肝との関係が深いといえます。

 

③ドライアイの鍼灸治療症例

 

症例1

20代 男性
パソコン関係のお仕事をしており、毎日長時間デスクワークをしており、夜12時ごろまで残業することも多かった。そんな日々が続き疲れ目や目の疲れを感じるようになってきた。だんだんとパソコン画面を見ることがつらくなり、₁時間もしないうちに目がつらくなってとても仕事ができるような状態ではなくなってしまった。1か月程仕事を休み、体を休養している時にちょうど当院にご来院された。
眼科の方では、目薬を処方してもらったがあまり効果は見られなかったとのこと。

当院の治療
慢性的な体の疲れや睡眠不足などもあったことから自律神経測定器で自律神経の状態を計測してから治療に入りました。自律神経測定器の結果、交感神経が非常に高い状態で疲労度も高くあまり体を休めることができていない状態でした。視力は左右ともに1.5程と良く、普段は全く目に関して問題を感じていないとのことでした。触診の結果右頸肩部の筋肉の緊張が強く、目の症状も右目の方がつらいとのこと。

当院の治療として

1,自律神経の状態を整える
2,頸肩部の筋緊張を緩める
3,目の周りの筋緊張の緩和・血流改善

主にこの3点を重点的に施術しました。

治療経過

◇1回目◇
鍼灸治療を受けるのが初めてということもあり、弱い刺激の治療からしていき、体の反応をみた

◇2回目◇
一回目の治療により右肩のはり感や右目の症状が以前よりも良くなった。しかし、まだパソコン画面などを見るとすぐに辛くなってしまう

◇3回目◇
徐々にパソコン画面などを見ているのがつらくなくなってきた。ドライアイの目薬をする回数が減ってきた

◇4回目◇
仕事に復帰するため、少しずつパソコン作業にならそうと試しているが、目の状態がさほど気にならなくなった

◇5回目◇
無事、仕事に復帰。最初は身体を慣らすためにも残業をせずに目への負担も軽くしていただいた。頸肩部や目の症状はだいぶ良く、気持ちよく仕事に復帰できたとのこと

◇6回目~◇
どうしても目を酷使する仕事なので長時間作業をしていると目が疲れてくるが、以前のような辛さはなくなった。再発予防のためや体調管理のためにも2~3週間に1回程のペースで治療させていただいています。

 

症例2

40代 女性

パソコンを主に使う仕事をしており、仕事の日はパソコンを1日10時間以上は見るような生活をしていた。普段から目の渇きが気になっていたが、最近特に感じるようになって1時間もパソコン画面を見ていると目が乾いて痛みとゴロゴロ感に悩まされている。眼科で目薬を処方してもらって目薬をひどいと1時間ごとにさしている。
このままずっと目薬をさし続けるのは嫌だということで当院にご来院された。

治療
まず、自律神経測定器で自律神経の状態を測定してから施術していきました。自律神経のバランスも悪く、手足の冷えなどもあり全身の血流が悪い状態でしたので自律神経を整えて首肩のコリも軽減させる施術を行ったうえで目の周りを施術していきました。
治療と並行して仕事場でも目を定期的に休めるようにしてもらい、家ではホットタオルで目を温めるようにしていただきました。治療の感覚は1週間に2回もしくは1回ほど

◇1回目◇
治療後目がすっきりしたのように感じた。次の日の仕事も比較的楽にできるようになった。

◇2回目◇
全身が疲れていたのがすっと楽になりよく眠れて身体が楽とのこと。目の調子も比較的良い

◇3~7回目◇
目の調子は段々とよく、目薬を使う回数が減ってきている。気を抜いて目を酷使するとたまに目の渇きを感じる。

◇8回目◇
目薬を1日10回以上指していたのが、3回程までになってきた。

◇9回目◇
仕事中は、あまり目の渇きを感じにくくなった。

 

症例3

40代 男性

ここ2週間前から、目薬がないと目が乾燥して痛くなってしまう。2、3年前から毎日ドラッグストアで買っている目薬を使っているが、頻度がどんどん多くなってきている。目の調子が悪い時は30分に1回のペースで目薬をさしている。

仕事が忙しくなると、パソコンを一日中凝視することが多く、そんな日は余計に目が辛い。

 

治療

自律神経測定器で計測したところ、かなりストレスと疲労が身体に蓄積されているという結果がでた。また、交感神経がかなり優位になっており、本人も常に緊張状態でいると自覚があるようだった。

このことを踏まえた上で当院では、眼の周りに鍼とお灸で刺激を与え血行を促進する事で涙の生成を促す治療を行う。また、全身の筋肉が緊張状態、疲労の蓄積が激しいので固くなっている筋肉を緩めると同時にリラックス効果も高めていく目的で自律神経の調整治療も行う。

治療頻度は週1回

 

◇1回目◇

治療後は視界が明るくなった気がする。

◇2~5回目◇

治療してからしばらくは眼は見やすいが、症状の変化は感じない

◇6回目◇

目薬をさす回数が減ってきた。身体全体が軽く動く感覚がある。

◇7回目◇

忙しくしていても、仕事中の眼の痛みが軽減したように感じる。

◇8~12回目◇

目薬を使う回数が明らかに減っているのを実感している。家族からも目薬を最近使わなくなったと言われた。

◇13回目以降◇

治療頻度を伸ばして経過観察、現在も来院中。

 

症例 4
50代 女性

20代の頃からドライアイだった。点眼薬を用いているが、まぶたがはりつくような感じがある。特に空気が乾燥する季節は症状がひどくなる。眼科の検査では、右の角膜に傷がついている。涙点プラグ治療を行ったが、効果がなく症状はより悪化した。右の肩のこりが気になる。

当院の施術

目周辺の血流をよくするために、目の周囲へ鍼とお灸を行いました。首肩には鍼とお灸で筋肉を弛緩させるような施術をしていきました。また、全身的な血流の改善、筋緊張の緩和のため自律神経調整も行っていきました。

治療頻度は最初の二か月は週に一回、その後は二、三週間に一回。

一回目
目周りの鍼は少し恐怖心があった。

二回目
ドライアイが少し良くなった感じがある。

三回目
涙の量が増えて、目が潤っている感じがする。

四回目

眼科での検査の結果、右目の傷が良くなってきている。右肩のこりも少しずつ良くなっている。

五回目
まぶたがはりつく感じが少しずつ良くなっている。

六~九回目
ドライアイ、肩こりがほとんど気にならなくなった。

十回目

眼科での検査の結果、左目は傷がなく、右目はほんの少し傷がある。ドライアイ、肩のこりは気にならなくなった。

十一回目以降

季節的にも症状が気にならなくなったため、施術頻度を伸ばして経過観察、現在も来院中。

 

④ドライアイに対する鍼灸治療のエビデンス

 

ドライアイに対する鍼灸治療の効果について個人差はありますが、シンガポールの保健省による共同研究では、点眼薬と鍼灸治療を併用したグループで88%にドライアイが改善したという研究結果も出ています。
Hardly a dry eye in the house thanks to new acupuncture technique

オーストラリア・ウィーンの第一大学眼科学部の患者を対象に行われた研究もあります。対象は、ドライアイ症状が続いている期間が平均で19.3か月で年齢は31才~73才までの25人(女性22人・男性3人)です。涙量が著しく少なく、点眼薬では症状が消失しなかった患者に鍼治療が行われました。

治療期間は10週間で1回の治療時間は週当たり30分程度で目の周りのツボと手足のドライアイに関するツボも用いて施術してきました。

結果、鍼治療の1週間後には15人(60%)の患者で症状が消失しました。ドライアイ時に行われるシルマー試験の数値も改善が見られました。

鍼治療後の12か月後においても13人(52%)の患者で症状が消失しており、ドライアイの治療が必要がないほどになりました。

残念ながら5人(20%)の患者においては鍼治療によって改善は見られなかったと報告されています。

※参考文献 『鍼のエビデンス』 医道の日本社

⑤ドライアイとは

ドライアイとは目を守る役割をする涙の量が足りなくなったり、涙の性質のバランスが崩れたりすることによって目の表面を潤す力が低下した状態をドライアイと呼びます。

日本では、約800万人ものドライアイの患者さんがいると言われています。女性の方が男性よりもドライアイになりやすいと言われており、また歳を重ねるとどうしても涙の分泌量や質が低下するので中年女性に多いと言われています。

 

ドライアイの症状

 

ドライアイの症状として目の乾燥感だけではなく、異物感目の痛みまぶしさ目の疲れ眼精疲労など)など多彩な慢性の目の不快感を生じます。

目を使い続けることによる視力の低下も起こります。
パソコンやテレビゲーム、細かい作業によって目が乾いていると感じるときは、まばたきの回数が減少して涙の量が減っている場合があります。
まばたきの役割は、目の保護や目の休息時間の提供と様々挙げられますが、重要な役割としてまばたきをすることで涙を作れという指令の役割があります。集中して作業をしていると人間の本能的にまばたきの回数が減り、必然と涙の量が減ってしまいます。

そして、乾燥した目は目の表面の細胞に傷ができやすくなります。

涙は眼球の上外側にある涙腺で産生されています。
涙は弱アルカリ性の水性の液で、微生物を攻撃するリゾチームという酵素を含んでいます。
涙腺は1日約1mlの涙を産生しており、涙は眼球表面で油性のマイボーム腺などの分泌物と混じります。マイボーム腺などの分泌物は潤滑を助け、蒸発を遅らせる油膜を作ります。
涙はまだたきにより目の内側に集められ、涙点から涙小管へ排出されます。

 

またドライアイは、涙の量が減ってしまって目が乾燥するばかりではなく、涙がうまく排出できなくて状態の悪い涙があふれ出ている状態で角膜が傷ついてしまうドライアイもあります。これは高齢の方に多い原因です。

 

一見すると涙が今にも零れ落ちてしまいそうな状態でドライアイとは思えないほどですが、ドライアイと同じような症状を呈する場合もあります。

 

⑥ドライアイの西洋医学的考え

ドライアイの大きな原因は眼球表面の涙液が減ることですが、それには涙液の分泌の低下と涙液の蒸発が多くなることが影響しています。

 

ⅰ)空気の乾燥または汚れ
空気が乾燥していると目の表面から涙液が蒸発しやすくなります。このためドライアイの人の多くは秋から冬にかけての季節の変わり目やエアコン、ヒーターを使用している場所などで症状が強くなります。

 

ⅱ)まばたきが少ない
読書、コンピューターの使用、車の運転、テレビを見るなど目を集中的に使う場合にまばたきの回数は減ります。その結果涙液の蒸発が多くなり、分泌は減少して涙の膜は途切れてしまいます。最近は携帯電話やパソコンなどの普及によりドライアイの患者さんが増えています。

 

ⅲ)コンタクトレンズの装着
コンタクトレンズが水をはじくために、目が乾燥することがあります。また角膜が覆われていて感度が鈍くなることやまばたきが不完全になることで涙の分泌が低下します。

 

ⅳ)シェーグレン症候群
シェーグレン症候群は中年女性に多い疾患で目や口、鼻などの粘膜が異常に乾燥する疾患です。涙はほとんど分泌されずに強いドライアイの症状が現れます。ドライアイのほか唾液の分泌が減少することにより味覚や嗅覚が鈍くなって、物を飲んだり食べたりすると痛みを生じます。また虫歯の原因にもなります。
シェーグレン症候群は自己免疫疾患であり、自分の身体の成分に対して免疫反応を起こすことによる疾患です。(シェーグレン症候群について詳しくはこちら

 

ⅴ)マイボーム腺の詰まり
マイボーム腺は油層の成分を分泌する所で、何らかの原因でそれが詰まると油膜の形成が不完全になって涙液の蒸発を防ぐことができません。

 

安易に市販の目薬をさしてはいけません

 

目が乾きやすいといって自分でドライアイと判断したり、眼科でドライアイと診断を受けたとしても、ただ単に目の表面が乾いているだけでそんなに重くない・目薬をさしていれば問題ないと考える方もいらっしゃいます。

 

しかし、ドライアイといいましてもさまざまな目の不調の原因になりえます。目の痛みや目やにの原因に、または光をまぶしく感じやすくなったり視力の低下までつながったりもします。

さらに目ばかりでなく慢性的な頭痛・首肩コリ・自律神経の乱れなどの根本的な原因にドライアイがなっている可能性もあります。

 

ドライアイの症状を感じると安易に良かれと思って市販の目薬をさして症状緩和させようと多くの方がするかと思いますが、それが余計に状態を悪化させてしまう場合もあります。

何回も目薬をさしてしまうことで目の表面をおおっている油分や栄養分・酸素が一緒に流されてしまうために涙本来の役割が果たせなくなってしまうこともあるのです。

また、市販の目薬には防腐剤が多く含まれている場合もあり、それによって眼の表面にアレルギー反応が出てしまったりすることもあるので目薬の使い過ぎに注意が必要です。

 

市販の目薬を使う場合でも防腐剤が入っていないものを選んだり、涙の性質に非常に近い涙液型の目薬を定められた回数さすようにしましょう。目が乾くと言って既定の回数以上に目薬をさすことは控える方がよろしいかと思います。

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院

 

 

嗅覚障害の鍼灸治療

木曜日, 8月 29th, 2024

嗅覚障害に対する当院の鍼灸治療

 

当院の嗅覚障害に対する治療の目的は、第一に鼻の周辺の経穴に鍼をさして鼻周囲の血行状態をよくします。お灸施術も並行して行っていきます。

嗅覚障害の鍼通電治療

 

 

また嗅覚障害は五臓六腑の『』に深く関係しているので肺に関する経穴を用いて肺機能を補うことや肺の陰液の巡りをよくします。
また腹部や背部の重要なツボをはりやお灸で刺激することで、自律神経を調整する治療を施します。

 

嗅覚障害の鍼治療

 

 

当院では、施術に入る前に自律神経測定器で自律神経の状態を計測してから施術に入ります。自律神経の状態を把握することでそれに合わせた適切な施術が可能になります。鍼灸治療が比較的効果の高いとされるのは、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎によって生じる呼吸性嗅覚障害やストレスによって生じる心因性嗅覚障害です。

自律神経を整えることで身体の回復する力が高まり、嗅覚機能が正常に戻りやすくなると考えられます。 部分的な治療ではなく全身を治療することは東洋医学の特徴でもあります。
全身治療を行うことにより人間が本来もっている自然治癒力を高めます。中国では嗅覚障害に対する鍼灸治療は有効とされています。

 

 

嗅覚障害の東洋医学的考え

 

東洋医学の五行学説五官で鼻は、『』に属すると考えられています。嗅覚障害は何等かの原因により肺が機能低下して生じると考えられます。

東洋医学の肺の役割として
・肺は気を主る
呼吸の機能に当てはまります。体内の濁気を派出して体外の清気を取り込む役割があります。

・肺は宣散・粛降を主り、水道を通調する
気や津液を全身のすみずみまで行き渡らせる役割があります。呼吸や汗によって体内の水分を外に排出する役割も担っています。また津液を全身に行き渡らせるばかりでなく、末梢血管の浸透圧のバランスを調整することで体液のバランスも調整しています。

・肺は皮毛を主り、鼻に開竅する
汗の分泌調整や立毛筋の調整など皮膚表面の温度や体液のバランスを調整しています。また病邪が侵入するのを防ぎ、侵入された場合は抵抗し排除する役割もあります。

・鼻水は肺液である
鼻水は鼻に開竅する肺との関係が深いと考えられています。

肺陰虚
肺の陰液が不足することで慢性の炎症や自律神経系の過亢進などが起こります。嗅覚障害や嗄声、口の渇きの原因となります。

 

 

嗅覚障害の鍼灸治療症例

 

症例 1

50代 女性
◇症状◇
7、8年前に風邪のため発熱を起こした。それと同時に副鼻腔炎が発症し、鼻水が止まらなくなり、徐々に臭いが感じられなくなった。鼻水はサラサラな状態。味覚の感覚も落ちている。耳鼻科には副鼻腔炎の症状が出ると通院しているが、嗅覚の異常までは改善しないため当院に来院した。

◇当院の治療◇
鼻粘膜にある嗅細胞が炎症によって機能不全に陥っているので鼻粘膜や副鼻腔への血液循環を向上させ炎症を回復させるために、鼻周りのや目の周りに刺激をして低周波電気を流していきました。
それに加えて自律神経の調節治療を行うことにより自己免疫力を向上させて回復力を高めていきました。また、頸肩のコリが強いため心臓から頭部への血流を阻害していることがわかり、同時に頸肩の治療も行っていきました。

・1回目
施術後まだ変化は見られなかった。

・2回目
頸肩のつらさは軽減されたが、鼻の症状はまだ変化は見られない。

・3回目
以前に比べると鼻の通りが良くなった感じがするとのこと。

・4回目
鼻水の状態が漿液性のものから粘液性のものに変化した。匂いはまだ感じられない。

・5回目
鼻水の量が少なくなってきた。鼻の調子はいいが、匂いはまだ改善されていない

・6回目
鼻水が出なくなり、匂いを感じられるが出てきた。

・7回目
鼻の調子が良く、いい匂いが少しずつではあるがはっきりと感じられるようになってきた。

・8回目
前回からあまり変化なし。いい匂いは感じるが、臭いにおいは感じられない。

・9回目
カビのにおいなどの臭いも少しずつ感じられるようになってきた。

・10回目
いい匂いは、意識しなくても自然と感じられるようになってきた。

 

症例 2

2ヶ月前に鼻風邪引き、風邪症状は3日ほどで落ち着いたが、嗅覚だけがもとにもどらない。

うすい匂いは全くわからず、コーヒーやカレー、ラベンダー系のアロマのみ、なんとなくわかる程度。

もともと鼻炎もちではあるが、風邪のあとにここまで匂いが感じなくなったのは初めてで原因がよくわからない。

匂いがわからないため食事も楽しくなく、体重は3キロ落ちた。

心身ともに疲れているので、嗅覚と身体のケアもしていきたい。

当院の治療

自律神経測定器で自律神経の状態を確認したところ、交感神経が優位で精神的ストレス値がかなり高い状態だった。

自律神経の乱れは身体に様々な不調をもたらし、特に目や耳、鼻などの感覚器は影響をうけやすい。

風邪を引く前は仕事が多忙でストレスが強かったことから、今回の嗅覚は自律神経の乱れが少なからず関与していると考えられる。

鼻周囲のツボを用いて機能の改善を図るとともに、自律神経の調整を行った。

 

◇1回目◇

特に変化なし

◇2回目◇

前回施術後、ローズマリーの香りがわかるようになった。

変化が出たことで気持ちがすこし楽になった。

◇5回目◇

アロマで少しずつ匂いの分かるものが増えてきた。

食事の際も毎回ではないが味が分かることもあって嬉しい

◇10回目◇

うすくではあるが、嗅覚が戻ってきた感じがする。

薄味のものはまだ難しいが、ほかは平気で食事も楽しめるようになった。

まだ完全に戻ったわけではないので今後も続けて様子をみたい。

 

 

症例 3

50代 男性

約1年ほど前から、匂いがわからないことに気がついた。嗅覚障害になる半年前にはコロナにかかった。咳がでたり、むせるような後遺症がある。鍼灸院に通われたが効果はなく、耳鼻科で手術を勧められたが抵抗があったため当院にご来院された。にんにくなどの強い匂いであれば、たまに感じることができる。

当院の施術

コロナ感染により、匂いを感じ取る嗅粘膜にある嗅神経がダメージを受け匂いを感じ取ることができなくなっている状態だと考えられるため、嗅神経への血流を促し回復を図るよう鼻周りに低周波電気を流していきました。また、自律神経測定器の結果、交感神経が過剰に優位であったため、自律神経調整や自己免疫力を高めていく施術を行いました。

一回目

施術中、お灸の匂いを少し感じた。

二回目

前回の施術後、身体が軽くなった。匂いの感じ方に変化はない。

三回目

前回より少し刺激のある匂いが感じられるようになってきた。

施術後、外に出ると色々な匂いを感じることができた。

四回目

匂いの感じ方は50パーセントぐらい戻った。匂いを感じることを思い出している。

五回目

日によって、匂いの感じ方が変わる。

六回目

だいぶ匂いが分かるようになった。

コロナ後遺症の咳やむせることがなくなった。

 

嗅覚障害とは

 

嗅覚障害とは、においを感じにくいまたはまったく感じないという嗅覚機能の低下あるいは、本来いいにおいとして自覚されるはずのにおいを悪臭だと感じたり、ちょっとしたにおいでも耐えられない嗅覚の異常が挙げられます。

また嗅覚は味覚をとても深い関係にあります。味覚は舌の味蕾という細胞で識別されて脳に送られて嗅覚の情報とともに脳で情報処理されるのです。嗅覚が障害されても苦みや甘味などの大雑把な味はわかりますが、複雑な味は嗅覚とともに脳で処理される必要があるため複雑な味覚はわからなくなるのです。

嗅覚が障害されると今までの食事の味の感覚も変わり、それがストレスとなり精神的な病気にかかる可能性もあります。

最近では、ストレスによる嗅覚障害発症が増えています。感覚器官は自律神経とも深くかかわっているため嗅覚もストレスによって自律神経が乱されると障害が起きるのです。

嗅覚障害

 

嗅覚障害には主に3種類あります。

 

・呼吸性嗅覚障害

臭細胞のある部分が慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などによる粘膜の腫れやできものなどにより塞がれて臭いの元となる分子がにおいを感じ取る部分に到達できない状態です。
先天的な鼻腔の形成異常や外傷などによって鼻中隔が湾曲することによっても起こります。

 

・末梢神経性嗅覚障害

鼻の粘膜が障害される場合と嗅神経が障害される場合とがあります。鼻粘膜が障害される原因としてインフルエンザウィルスなどのウィルスが鼻粘膜に炎症や萎縮を起こさせることで鼻粘膜が変性を起こしてにおいを感じ取りにくくするのです。
風邪を引いたり、インフルエンザに罹った時に臭いを感じにくくなるのはこのためです。嗅神経が障害される場合は、頭を打った時などの外傷性のものが多く、頭を打った衝撃で嗅神経が切れてしまうために起こります。

 

・中枢神経性嗅覚障害

大脳などの脳の部分が障害を受けることで起こる嗅覚障害です。頭部外傷・脳梗塞・脳腫瘍や初期のアルツハイマー病・パーキンソン病などによっても嗅覚障害が起こります。
鼻炎や風邪に罹ったわけでもなく、においの感じ方が普段と違うと感じた時はすぐに病院で検査を受ける必要があります。

 

主にこの3つが挙げられます。

 

 

 

嗅覚障害の原因

嗅覚障害の原因として鼻道の異常神経の異常脳の異常があります。

慢性鼻炎などにより鼻がつまった状態だと鼻の内側にある嗅覚を感知する受容体に臭い分子が到達することができないためにおいを感じられません。風邪を引いて鼻炎になるとにおいを感じにくくなるのはそのためです。

またウィルス感染によって嗅覚受容体が障害されると数日から長いと数か月においを感じることができない場合もあります。

嗅覚障害が長く続く場合は、嗅神経という脳神経が障害を受けている可能性があります。嗅神経が障害される多くの原因は交通事故などでの頭部外傷や頭を打った時による骨折が原因となります。またアルツハイマー病やパーキンソン病でも嗅神経が変性を起こして障害されることがあります。

 

嗅覚障害では原因がはっきりとわからない場合もあります。多くは心因性と考えられます。

 

嗅覚が過敏に反応する嗅覚異常では、うつ病副鼻腔の感染症などが原因となり、一般的には妊婦もにおいには敏感になります。

 

日常生活での注意点

嗅覚障害はストレスなどとの関わりも深く、普段の日常生活を注意すると予防や症状が緩和されることが多くあります。

・十分な睡眠
十分な睡眠時間を確保して体の疲れをためないように注意しましょう。

・栄養バランスのとれた食事
栄養バランスのとれた食事をとって体の抵抗力や自然治癒力を高めることは重要です。

・鼻のケア
できるだけ鼻への刺激を避けて、鼻をかむ時でも勢いよくかむのはしないようにしましょう。風やインフルエンザにかかってしまうと嗅覚障害がさらに治りにくくなってしまうのでマスクなどして風邪予防や鼻部の保護をしましょう。

・ストレスを溜め込まない
ストレスをため込んでしまい自律神経が乱されると人間が本来持っている免疫力が低下して症状改善が難しくなります。有酸素運動などの適度な運動や趣味をする時間などを設けてリラックスできる時間をつくりましょう。

 

肘の痛みの鍼灸治療

火曜日, 8月 27th, 2024

肘関節とは

 

肘関節とは、上腕と前腕の間にある関節で、上腕骨と前腕の橈骨と尺骨の3つの骨によって形成されています。

3つの骨の間にはそれぞれ関節があるため、肘には3つの関節が含まれ、共通の関節包で覆われています。関節面は軟骨の層で隔てられており、関節のスムーズな動きは潤滑油の役割をする滑液によりもたらされています。

肘関節を形成する骨同士をつなぐ複数の靱帯があり、関節の安定性に関与しています。

また肘関節は曲げる(屈曲)、伸ばす(伸展)、内側にひねる(回内)、外側にひねる(回外)といった動きができますが、同時に手首を返して捻るなど、ほかの関節と連動して動くこともできます。

 

肘が痛いときに疑われる病気

 

肘の痛み

 

・上腕骨内側上顆炎

上腕骨内側上顆炎は一般的にリトルリーガー肘、ゴルフ肘とも呼ばれています。野球の投球動作やゴルフのダウンスイングを繰り返し行うことが原因です。その他仕事で毎日ハンマーを振るなど、手の動きを繰り返した結果、発症することもあります。

上腕骨内側上顆炎は肘の内側に沿って痛みが生じます。特に手首を手のひら側に曲げる動きや物を持つことが、痛みの引き金になることがあります。繰り返して首を曲げたり、指を握ったりして動かすことで上腕骨の内側に付着する筋肉の腱が炎症を起こすことが原因です。

治療は保存療法として安静、固定、氷冷、消炎鎮痛薬、湿布、注射、リハビリテーションなどが挙げられます。保存療法でも改善がみられない場合、手術療法を行います。

・ゴルフ肘の鍼灸治療について

 

・上腕骨外側上顆炎

上腕骨外側上顆炎は、別名テニス肘と呼ばれます。ラケットを使いスポーツをしたり、またハンマーを打ち付けたりするなどの、ラケットを使ったスポーツと同じような動きをする特定の腕の動きを繰り返しているとこの症状を生じることがあります。

アスリート以外に、シェフ、大工、自動車修理工、配管工、音楽家なども上腕骨外側上顆炎を起こしやすいです。上腕骨外側上顆炎では肘の外側にある腱が影響を受けています。

肘の外側に沿って痛みや熱感などの症状が現れます。また、握ることに問題が生じることがあります。

治療は保存療法として安静、ストレッチ、薬物投与、装具着用などがあります。保存療法で改善しない場合手術が検討されます。

・テニス肘の鍼灸治療について

 

・変形性肘関節症

変形性肘関節症は、関節内に存在しクッションの役割を果たしている軟骨が侵される病気で、軟骨が摩耗する結果、クッションを失った関節が損傷を受けます。変形性肘関節症では、肘の怪我や関節炎などによって引き起こされる場合があります。

主に肘の内側では、骨棘と呼ばれる骨の過剰な突起物ができ、そのために肘の動きが制限されます。また、骨棘が折れてしまうと関節内で遊離体となり、関節の動きを止めてしまうこともあります。(ロッキング)

肘の痛み、肘の曲げ伸ばしが困難になる、肘の曲げ伸ばし動作が急に制限されてロックされる、肘を動かすときの異常な音、肘関節の腫れなどの症状を認めます。進行すると肘部管症候群と呼ばれる肘の内側にある尺骨神経が圧迫される状態になり、薬指と小指の感覚の力が入りにくくなり、感覚も鈍くなります。

治療は通常、固定具を用いた安静、消炎鎮痛薬の使用などの薬物療法、理学療法で治療を開始します。しかし、重症の場合は人工関節置換術を含む手術が行われます。

・肘部管症候群の鍼灸治療について

 

・肘頭滑液包炎

肘を曲げたときにできる肘の後方の出っ張りが肘頭ですが、この肘頭の皮下に存在するクッションの役割を果たしている滑液包に生じる炎症です。

肘への直接の打撃、長時間肘をついて肘に圧力をかけていた場合、感染症、リウマチなどの内科疾患などが原因となっています。

局所の腫れが最初の症状です。腫れが大きくなってくると、滑液包が大きくなり周囲の神経を刺激するために痛みを感じるようになります。感染症の場合、発赤や熱感が生じることがあります。適切に治療が行われないと徐々に肘を動かすことも難しくなってきます。

治療として感染症が原因であれば、抗菌薬の内服が必要です。滑液包の内部の液体が多い時は、注射により液体を抜きます。感染症が原因でない場合はアイシングや圧迫、非ステロイド性消炎鎮痛薬の内服で管理します。重症な場合は手術が必要になることもあります。

 

肘の痛みに対する東洋医学的考え方

 

関節痛は東洋医学では「痺証(ひしょう)」として考えられます。「痺証」とは生気の弱りがあり、それに加え、外邪(風邪、寒邪、湿邪、熱邪など)が入ってくると、関節部や筋肉にしびれや痛み、こわばりが出ることをいいます。

肘の痛みもこの「痺証」にあたります。また、経絡的にいうと「肺経」「大腸経」「肝経」が関係が深いです。

 

肘の痛みに対する当院の鍼灸治療

 

肘の痛みに対する鍼灸治療

肘周囲の重要なツボに鍼やお灸で刺激を与えることで、肘関節周りの血流を良くして十分に血液が負傷部位に供給できるようにしていきます。そうすることで疼痛物質の吸収、代謝を高める作用や筋や靱帯の炎症を鎮静する作用、患部の修復作用を促し、症状を改善していきます。

鍼通電治療法なども用いましてより鎮痛効果を引き出す施術も行う場合があります。

また、東洋医学的観点から症状に対し重要な経絡のツボや気血の流れを整えるツボを用いて治療を行います。

 

症例

40代 女性

昔からテニスをしており、今も練習を週に3~4日ほど行っているが、2週間前から右ひじの内側に鈍痛が走るようになった。

整形外科に受診したところ、上腕骨内側上顆炎と診断された。練習の中止を指示されテーピングや湿布などの処置をされたが、なかなか改善されず当院を受診した。

きっかけは男性を相手にプレーを行い、相手の重いサーブや返球を受け続けたことで痛みが発症した。

当院の施術

まず触診や徒手テスト法でお身体の状態を確認していきました。

患部は若干熱感があり、腫れもみられたため、患部に直接お灸を行い抗炎症を促しました。また、前腕の筋肉は過剰に緊張しており肘に大きく負担しているため、腕の筋緊張も緩め痛みを軽減するために低周波鍼通電法を用いて施術を行っていきました。

その他に、首肩のコリに対する施術や自然治癒力を高めるために自律神経を調節する施術も加えました。

治療間隔は週に1~2回ペース。

 

経過

1回目

痛みは少し軽減したが、腫れや鈍痛はまだある。

2回目

腫れが引いてきた。安静時の痛みはなくなったが、動かすと痛い。

3回目

動かすだけなら痛くないがタオルを絞る動作や、重いものを持つと痛みを感じる。

4回目

タオルを絞る動作や重いものを持つ動作での痛みは軽減してきた。

5回目

軽くテニスボールを打ってみたが、痛みはあまり出なかった。

強く打つとまだ痛む。

6回目

日常生活ではほとんど気にならなくなったが、長時間練習すると痛みが出てくる。まだ無理ができない状態。

7回目

軽くラリーをしてみたが、痛みは気にならなくなった。

8回目

ほとんど気にならないまで改善した。

定期的にメンテナンスに通っている。

顎関節症の鍼灸治療

火曜日, 8月 27th, 2024

顎関節症に対する当院の鍼灸治療

顎関節症に対する当院の鍼灸治療は、

 

・痛みの緩和
鍼を刺して通電療法を行うことで患部の痛みを緩和させること。その他、腕の顔面部の痛みを軽減させる効果のある「合谷」と「曲池」というツボも鍼通電を行うこともあります。患部との併用して行うことで鎮痛効果がさらに期待できます。

顎関節症の鎮痛鍼灸治療

・筋緊張の緩和
物をかむ際に使われる側頭筋や咬筋などの咀嚼筋の筋緊張緩和。それらの筋肉が過緊張状態ですと、顎関節に負担が大きくかかるため顎関節症の原因ともなります。

顎関節症の鍼灸治療

・自律神経調整治療
心因性の顎関節症に代表されるように精神的なストレス、自律神経の乱れによっても顎関節の痛みとなって現れることもあります。特に交感神経が優位が続いてしまうと交感神経は筋や血管を収縮される作用があるため筋肉のコリや発痛物質が留まってしまうことによって痛みの原因となってしまうのです。また、過度にストレスが溜まっている状態ですと気付かないうちに喰いしばり状態となって顎関節症の原因となります。そこで当院では自律神経測定器で自律神経を計測してその人に合ったオーダーメイド施術を行うことで顎関節症にも効果が期待できます。

顎関節症の自律神経調整鍼灸

 

・頸肩の筋緊張の緩和
特に歯のかみ合わせが悪かったり、喰いしばり動作が多い状態ですと首や肩の筋緊張が強く出ている方が多いです。頸肩の筋緊張を施術によって緩和することで咬筋の筋緊張も緩和されやすくなります。

 顎関節症の頸肩への鍼灸治療

この4点を主な柱として施術していきます。痛みの強く出ている時期では3~7日ほどの間隔で集中的な施術を行って痛みが軽減してきたところで施術間隔を延ばしていきます。

 

顎関節症に対する鍼灸治療の効果について

外傷性のものなど器質的な原因で起きている顎関節症では、あまり有効性はみられないが、特に器質的に異常が見られない場合、鍼灸治療の有効性が著効にあらわれたという研究結果も出ています。
全日本鍼灸学会
『顎関節症に対する鍼灸治療』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/36/4/36_4_250/_article/-char/ja/

この研究では、顎関節症の鍼灸治療で有効率が75%あったという報告がされています。

 

 

顎関節症のセルフケア

 

顎関節症は、嚙み合わせや咀嚼筋の疲労、精神的なストレスが溜まって起こるなど多岐にわたります。鎮痛薬でその場だけ凌いでもそれまでと変わらない生活を続けているとまた同じような痛みやその他の首こり・肩こり・精神的な症状などさまざまな症状に波及しかねません。まずは顎関節症の原因となりやすい生活習慣を見直して改善していきましょう。

・急性期は患部を冷やす
顎関節症で痛みが強く出て間もない時期は、炎症を拡大させないためにも痛みが出ている患部を氷水などで冷やすようにすると良いです。痛みが出てもそのままにしておいてしまうと症状が長く続いてしまう危険性があります。すると、痛みが慢性的となってしまいさらに咀嚼筋などの周囲の筋肉が緊張しやすい状態となり回復も遅くなってしまいます。

・日中の食いしばりに注意する
何気ないパソコン作業での仕事中などでも自然と食いしばることがあり、それが顎関節症の原因となり得ると考えられています。集中してしまうとどうしても自分が食いしばっているか気が向かないかと思いますので仕事中など目のつく場所にメモ書きを貼っておいて自分が食いしばっているか確認すると良いでしょう。

・硬いものや咀嚼回数の多いものは控える
顎関節症の症状が出ている場合は、硬い食べ物が咀嚼回数の増える食物はなるべく控えるようにしましょう。顎関節に負担をかけてしまうと回復も遅くなります。痛みが出いる時はなるべく負担をかけないように注意しましょう。

・ストレスの軽減
ストレスが溜まって自律神経が乱れている状態ですと血流や筋肉の状態も悪くなってしまうためストレスを溜め込まないということは顎関節症の改善にもとても重要です。

 

 

 

顎関節症とは

顎関節症とは咀嚼したり、口の開閉をする際に、咀嚼筋(顎を動かす筋肉)に痛みや違和感を感じる咀嚼筋群の機能障害と顎関節に伴う痛みや雑音を伴う可動域制限の総称です。
顎の痛みの他に咀嚼や大きな口を開ける時にカックンとかガリガリといった関節音が生じたり、顎の関節が変形して下顎頭と直接、または間接的に擦れ合うとシャリシャリ、グニュといった軋轢音が生じる事もあります。また、顎の痛みの他にも長い間喋ったり食べ物を噛んだりすると顎がだるく疲れたり、顎が引っ掛かったようになり動かなくなる、

顎関節症の原因は様々で、
・かみ合わせの異常
(不正咬合)
・頸椎の異常
・筋肉の緊張
・外傷
・精神的ストレス
・疲れ

を蓄積させる生活習慣などが挙げられますが直接的には歯ぎしりや食いしばりによる影響が最も大きいと考えられます。歯ぎしりや食いしばりがあると咀嚼筋に疲労が蓄積すると顎関節にも過剰な負担がかかり咀嚼筋や顎関節の機能障害(口を大きく開けられない、硬いものが噛めないなど)が現れます。顎関節症の発生頻度は歯科受診患者総数の約10%で20~40代の女性が多いと言われていますが最近では若年者の患者が増加しています。

 

このような顎関節に直接かかわる症状の他に身体の各部位に様々な症状が見られる場合もあります。

耳と平衡感覚
耳鳴り難聴めまい、耳閉感、立ちくらみなど

鼻と喉
鼻閉感、喉の閉塞感、鼻やのどの圧迫感など


充血、涙目、視力低下など

その他
肩こり頭痛、全身のだるさ、疲労感、頸椎ヘルニア、手足のしびれや痛みなど

 

 

 顎関節症の分類

顎関節症は障害を受け入ている部位によって四つに分類されます。

 

・顎関節円板(がくかんせつえんばん)障害
顎の関節である関節円板がずれてしまっている状態です。顎関節症患者の6~7割がこの顎関節円板障害だといわれています。

 

・咀嚼筋痛(そしゃくきんつう)障害
咀嚼筋という筋肉が噛みしめなどによってダメージを受ける事によって起こります。

咀嚼筋とは何かを嚙むために下顎を動かす筋肉の総称で、側頭部にある「側頭筋」や顎関節の外側にある「咬筋」などが含まれます。咀嚼筋は大きな筋肉で頭部、肩や首につながっているため、咀嚼筋痛障害になると首や肩の痛みやこり、頭痛などを感じる事があります。

 

・顎関節痛障害
顎関節に強い力が加わり、顎関節がねじれている状態です。主に歯のかみ合わせが悪い状態で食事を行う事により起こります。顎を動かすと顎関節に強い痛みを感じます。

 

・変形性顎関節症
長期間あごの骨に負担がかかり続ける事によって、下顎の骨が変形してしまった状態です。変形性顎関節症は長い間顎関節症を患っている人が多いため年齢層が高い傾向にあります。

 

 

顎関節症に含まれる疾患

 

外側翼突筋の障害
就寝時の歯ぎしりなどにより外側翼突筋が断続的に強く収縮し筋肉が強く疲労することで障害を受けることがあります。軽症の段階では筋肉疲労の状態ですが、重症化すると腱鞘炎に移行する事があります。

変形性顎関節症
顎関節を構成する軟骨や骨の変性性疾患で診断はX線写真により、関節結節が擦り減ったり、骨が刺激により増殖する骨棘の形成、軟部組織の骨化などが認められるとこの疾患名が付けられます。主に対症療法が中心で予後は良くないといわれています。

心因性の顎関節症
顎関節症の症状があるのにかかわらず、診断することが出来ない場合、この疾患名が付けられることがあります。心理的、精神的原因によりものとされるため、一般的に精神科医へ診察を依頼する事になります。うつ病自律神経失調症も併発している危険性があります。

 

症例

 

20代 女性

一か月前から硬いものを食べるとあごに痛みが生じるようになり、最近は痛くて口が開けなくなった。開口時には、軋むような音が鳴る。

仕事でのストレスの影響で睡眠時の食いしばりが強く、朝起きたらあごの筋肉が痛い。日中も気が付いたら食いしばっているため夕方になるとあごの痛みが強くなる。

強度の肩こりがあり、酷い時は頭痛も出る。

 

当院の施術

営業のお仕事をされていて、慢性的な強いストレスを感じるという事でしたので、自律神経測定器でお身体の状態を確認したところ、交感神経が非常に高く、休日にもかかわらずリラックス出来ていない様子でした。

運動習慣もなく、休日は日頃の仕事の疲れで寝ていることが多いという事でした。

まず自律神経、とくに副交感神経を働かせる施術を行い、首肩の筋肉にも刺鍼をし、筋緊張緊張緩和を目的とした施術を行いました。

顎の患部に関しては、「カクッ」というクリック音ではないため関節円盤の障害というよりも、顎周りの咬筋の緊張による障害と判断し、顎や首の前面にある胸鎖乳突筋、こめかみの筋肉といった顎の動作に関わる筋肉の硬結に電気鍼療法を行いました。

治療間隔は1週間に1回のペースで、一回一回状態に合わせて刺激量を変えていきました。

 

1回目

鍼灸治療は初めてで、緊張されていた様子だったので、初回は鍼に慣れて頂く事も踏まえてソフトな刺激量で行った

2回目

痛みや開口障害にまだ大きな変化はないが、心身共にリラックスできた

3回目

鍼に慣れてきたので、少し刺激量を上げた

4回目

少し痛みが軽減し、口も開けるようになってきたが、硬さはまだある

5回目

口がスムーズに開きやすくなってきた。

6回目

口は開くが、痛みは変わらず。

今回から同様の施術に加え、さらなる鎮痛作用上昇を目的とした鍼麻酔方式を取り入れた。

7回目

痛みが軽減。大きく口も開くようになった。以前の様な軋む音も頻度が減少

8回目

硬いもの食べると多少痛みはあるが、それ以外ではほとんど気にならない

9回目

ほぼ気にならなくなって、日常生活に支障がないまでに改善

 

症例2

 

20代 男性

1ヶ月前から口を開くと顎に痛みが出るようになり病院の診察を受けた結果、顎関節症と診断された。

もともと食いしばりがあり、歯が欠けることもあった。

顎の痛みに加え、開口時のパキッというクリック音やギシギシ軋む音が聞こえる。

普段はシステムエンジニアとして1日中パソコンに向かっていることが多く、精神的ストレスや肩こり、慢性的な疲労を感じている。

 

施術

患部は右顎で食いしばりのためか、右の顎のほうが少し筋肉の盛り上がりが目立ち、触診しても過剰な筋緊張がみられました。

側頭部もかなり硬さがあり、首肩の筋緊張も強い食いしばりが原因の一つと感じました。

まずうつ伏せで首肩の筋緊張を緩和を目的とした施術を行い、次に横向きで顎や顎周辺の筋緊張と痛みの緩和を目的とした施術を行いました。

施術の頻度は週1〜2回のペース。

状態に合わせて電気鍼も行いました。

 

経過

1回目

まだ大きな変化はない

2回目

顎筋緊張が取れた感じがする。痛みが少し軽減した

3回目

以前より大きく口を開くことができるようになってきた

4回目

口を開くと音はまだなるが、痛みは軽くなってきている

5回目

痛みはほぼなく、音も出なくなった。

日常生活で気にならない程度まで改善した

 

症例3

20代 女性

2か月前から起床時に顎の張りが気になるようになり、日が経つにつれて痛みに変わってきた。放っておけばそのうち治ると思い最初は気にしていなかったが、徐々に痛みが強くなり口が開けないほどに悪化してきている。開口時のクリック音は無いが、筋肉がガチガチに硬直して顎の部分が盛り上がっている。日中の食いしばる感覚はないが、就寝中の食いしばりの自覚はある。

顎の筋緊張から側頭部や首肩のコリも強く感じるようになってきた。

当院の施術

転職して環境が変わってストレスを感じていたということだったため、問診、触診に加え自律神経測定器で現在の状態を確認していきました。

測定の結果、交感神経が8、副交感神経が2の割合になっており、交感神経の働きが過剰になっていることが分かりました。

この方の根本的な原因が交感神経の過剰な高まりによるものと考え、当院では

①自律神経の調節治療

②顎周辺の筋緊張や疼痛を軽減する目的で低周波鍼通電療法

③首肩コリの緩和

以上を中心とした施術を行いました。

週に1~2回の感覚で通院していただきました。

経過

1回目

顎の痛みが少し軽減した。

口も開きやすくなったが時間が経つと元に戻ってしまう。

2回目

顎の痛みが和らいできた。押すとまだ痛みが出る。

食事も以前より楽になってきた。

3回目

顎の硬さはまだ感じられるが、痛みはほとんど気にならない。

4回目~6回目

口も以前のように開けられるようになり、痛みも気にならない。

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院

夏バテに対する鍼灸治療

火曜日, 8月 27th, 2024

 

夏バテの東洋医学

 

夏バテの東洋医学

 

夏の疲れの原因は発汗による気の流出、暑さによる睡眠不足、冷房による陽気の不足、冷たいものの摂り過ぎによる脾胃の不調など様々ですが、東洋医学では夏バテは気虚、陰虚、湿邪の三つのタイプに分類されます。

 

気虚

暑さによって体力が消耗し、力が出ない状態

 

食欲の低下、元気が出ない、だるさ、めまいなど

 

陰虚

汗など体内の水分を失い、脱水症状に近い状態

 

手足のほてり、のぼせ、イライラ、口の渇き、食欲不振、頭痛など

 

湿邪

冷たい食べ物や飲み物の摂り過ぎで胃腸の消化吸収や水分代謝が悪いことが原因になりあます。新陳代謝が悪くなることで、体内に水分が溜まり、夏太りやむくみを引き起こします。

 

だるさ、むくみ、下痢など

当院の夏バテに対する鍼灸治療

 

夏バテの鍼灸

 

当院の夏バテに対する鍼灸治療は、まず第一に自律神経を整えることです。自律神経の状態を正常に機能させることで、睡眠の質の向上や胃腸の機能回復、免疫力のアップなどにつながります。

夏バテの自律神経調整治療

 

そこで当院では、自律神経測定器で自律神経の状態をチェックして一人一人の自律神経の状態・体質などを見極めてその方に合った施術を行っていきます。

また東洋医学的観点より、特に気虚・陰虚・湿邪の病態を改善していきます。その他夏に多いむくみ症状や足の冷え、頭痛・肩こりに対してもその症状に合わせた独自のツボを用いて施術していきます。

夏バテのうつ伏せ鍼灸治療

 

症例

50代女性

暑くなり始めた7月中旬辺りから徐々に体調不良に。朝の通勤時の電車や社内は冷房がきいていて寒さも感じて胃の辺りがキリキリと痛むことがある。足周りの冷えは感じるが、頭は火照った感じで額や頭からよく汗は出る。
何となく日中体のだるさを感じて仕事のやる気がおきづらく、夜も寝つきが悪くなってきた。食欲はあり。

漢方など普段から服用することもあり、東洋医学に興味があり、鍼灸治療を受けてみたいということで当院にご来院されました

施術

自律神経測定器では、日中の測定にも関わらず副交感神経の状態が優位で日中夜が逆転しているような自律神経のバランスでした。夜の寝つきも悪いとのことでおそらく夜は交感神経の活動が上がってしまうタイプだと考えられ、自律神経のバランスは良くない状態です。

東洋医学では、気虚・湿邪タイプだと考えられ特に五臓六腑の『』や『』に異常が出ていると考えれます。

鍼灸治療では、自律神経のバランスを整え、腎や肝のツボで気を補いつつ湿邪を体外に排出するようなツボを用いて治療していきました。

経過

合計4回ほど施術を受けていただきました。治療のペースは3~4日に一回ほどです。

徐々に睡眠が改善されてきて日中のだるさと冷えも感じづらくなっていきました。

日常生活では、運動習慣がなかったため血行改善や日中の交感神経の活動を高めるためにも朝に軽いジョギングの有酸素運動と日中にスクワットの無酸素系の運動を行うようにしていただきました。

 

 

症例2

20代 男性

10代のころに比べて夏のだるさが気になるようになってきた。特に今年の夏は今までで1番だるさを強く感じる。だるさ以外にも、食欲不振、不眠や、頻度は少ないが下痢をすることもある。

社会人になってから環境が変わり、生活習慣の乱れやストレスによって自律神経の乱れが気になっていた。

ここ最近夏場の平均睡眠時間は5時間程度で、長い日は6時間、短い時は4時間しか眠ることができない日もある。

身体のだるさや疲労感から仕事に集中することが難しくなってきており、体調を整えて今年の夏を乗り切りたいと思い来院した。

当院の施術

問診、触診に加え、自律神経測定器で現在の自律神経やストレスの状態を確認していきました。

測定の結果、交感神経の働きが弱く、副交感神経の働きが強くなっていました。

測定した時間は日中のため、交感神経が優位になっているのが正常ですが、副交感神経の働きが強いので、自律神経の働きが乱れていることを確認できました。

まずは仰向けで腹部、腕、足、頭部の経穴に鍼で刺激し、自律神経の調節を促す施術を行いました。

次にうつぶせになり、背中や首肩の筋緊張を緩める施術を行いました。

経過

1回目

施術した日はよく眠れた。

次の日からまた眠れなくなったため、まだだるさは取れない。

2回目

徐々に眠れる日が多くなってきた。

3回目

熟睡できるようになってきて、身体の疲れも軽快してきたような気がする。

4回目

睡眠の質、時間共に改善傾向。

だるさも軽くなった。

夏バテとは

 

夏の暑さに身体が対応できなくて不調が出ている状態の事を、夏バテといいますが具体的な定義はありませんし、「夏バテ」=病名ではありません。室内外の急激な温度変化や日中の暑さから体温調節中枢である自律神経のバランスが崩れることで様々な症状が現れます。夏バテの代表的な症状は全身のだるさと疲労感です。何となく体がだるく、疲れが取れにくい日が続きます。暑さによって睡眠不足になる事も少なくありません。

また、日中の暑さによって体の中の温度が高くなると胃腸への血流が少なくなったり冷たいものの飲食が増える事で胃腸に負担がかかり胃腸の働きが低下し、食欲不振便秘下痢を引き起こす事もあります。睡眠不足で疲労が回復されない事での疲労の蓄積や、食欲不振での栄養不足、これらが引き金となってなんとなくだるいといった全身の倦怠感に繋がります。

夏バテは体力や免疫力の低下を起こすので、そこから風邪に繋がることもあります。

夏バテの原因と症状

 

・自律神経の乱れ

自律神経とは自分の意思とは関係なく、無意識のうちに働いている神経で交感神経、副交感神経の二つの神経が心臓や血流、呼吸、消化、代謝などの働きを活動、抑制しバランスよく機能する事で私たちの身体を調節しています。しかし、高温多湿の環境が続く事や、室内外の温度差、冷房での体の冷やし過ぎなどで体温調節や発汗中枢の役割である自律神経を酷使する事でバランスが乱れたり、うまく機能しなくなる事で胃腸の不調や全身の倦怠感、食欲不振、のぼせ、めまい、頭痛など様々な症状を引き起こします。

自律神経失調症について
めまいについて

・下痢や便秘などの胃腸の不調

冷たい飲食物の摂りすぎなどによって胃腸に負担がかかり、胃腸の機能が弱まる事で消化機能の低下や下痢、便秘、食欲不振などを引き起こします。

 

・睡眠不足

熱帯夜など特に夏は寝苦しい日が続くことがあります。睡眠が十分にとれない日が続いてしまうと体の疲労が取れずに日中の疲労感を感じやすくなってしまいます。また、夜に交感神経が高まりやすく逆に日中に副交感神経が働いてしまい通常の自律神経のバランスと真逆になってしまう危険性もあり、それが原因で自律神経の乱れに繋がることもあります。

睡眠障害について

・食欲の低下

胃腸の不調にも関係しますが、暑いとどうしても冷たい飲み物や食べ物を多く摂取してしまい、胃腸が正常に機能しなくなってしまうことが原因で食べ物を体が受け入れづらくなってしまいます。また胃腸の働きは自律神経の活動がつかさどっているため自律神経の乱れは食欲の低下にもつながります。

食欲不振について

・免疫力の低下

免疫機能は自律神経が司っているため、自律神経が乱れることによって免疫機能が低下して普段は排除できるウィルスや細菌なども体が防御することができずに風邪などをひきやすくなってしまいます。また、夏風邪は長引きやすいと言われますが、免疫力の低下も一因として挙げられます。

 

・熱中症の初期

吐き気、下痢、めまい、頭痛などといった症状は熱中症の初期症状でも見られます。熱中症は暑さによって体内の水分や塩分バランスが崩れて起こります。夏バテと熱中症の症状は似ていますが熱中症は重症化すると命の危険性もあります。
熱中症はⅠ度(軽度)、Ⅱ度(中等度)Ⅲ度(重度)に分類されており、めまいはⅠ度に含まれ、立ちくらみが起こる状態で「熱失神」とも呼ばれます。運動を終えた直後に起こりやすく顔面蒼白、脈が弱くなって速くなる、呼吸の回数が増えるなどの症状が見られます。
吐き気、頭痛、下痢はⅡ度に含まれ他にも倦怠感、虚脱感、判断力や集中力の低下などがみられます。Ⅱ度は従来「熱疲労」と呼ばれていた状態で放置したり対処が適切でない場合などは重症化する危険性があります。

Ⅲ度に分類されるのは意識障害やけいれん、ショック症状、過呼吸、手足の運動障害などです。

頭痛について

西洋医学的治療

最近では夏バテ外来を設ける病院も増えてきましたがまだまだその数は少ないようです。夏バテをそのまま放置しておいてしまうと免疫力なども低下して体に隠れていた思わぬ疾患が出てくる危険性もあります。

内科などで行われる夏バテ治療としまして夏に不足しがちなミネラルやビタミンを補給する注射やニンニク注射などが行われたり、または最近は漢方薬を処方するところもあるようです。

 

夏バテを予防する生活習慣

 

食事の工夫

暑いからと言って麺類などあっさりしたものばかり食べいては、体力がなくなってしまいます。肉や魚、野菜、果物など良質なタンパク質、ビタミン、ミネラルを補給しましょう。栄養バランスのとれた食事が大切です。
また、ショウガやワサビ、コショウなどの薬味や香辛料や、しそ、ねぎ、みょうがなどの香味野菜には食欲を増進させる効果がありますから上手く食事に取り入れるのも良いでしょう。決してたくさん食べる必要はありませんので、少量でも栄養価の高い食品を一日三回の食事で摂りましょう。

 

適度な運動

ウォーキングや軽いジョギングなど適度な運動を行うと自律神経の働きが整えられて夏バテが解消されやすくなります。朝や夕方の日差しが弱い涼しい時間帯に行い無理なく続けられるようにすると良いでしょう。
外で運動する時間がなかなか取れないという方はストレッチやスクワットなど室内で出来る運動を取り入れてみましょう。

 

十分な睡眠

夜遅くまで起きていると一日の疲れが残ってしまいます。早めに就寝して睡眠時間を十分にとり一日の疲れはその日のうちにとるようにしましょう。
竹素材やゴザのシーツを使ったり除湿を行うなど出来るだけ涼しく寝られるよう配慮しましょう。

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院

 

みぞおちの痛み、呼吸が浅い方の鍼灸治療

月曜日, 8月 5th, 2024

みぞおち(上腹部)の痛み

一般的にみぞおちの痛みは、胃の問題が考えられます。みぞおちの奥には外腹斜筋、腹直筋、腹横筋の三層の筋肉があります。さらに奥に腹膜、胃が存在します。心窩部深くにある胃で異常が起こるとお腹の筋肉は緊張し硬くなり表面が張っていきます。また胃の容積が増えて膨らむことでもみぞおちが張ります。

腹痛

浅い呼吸(息切れ)

呼吸は、胸部が膨らむ胸式呼吸と腹部が膨らむ腹式呼吸があります。胸部が膨らむ為には肋骨がよく動く必要があります。首・胸・背中・ウエスト周りの筋肉の柔軟性が必要です。

また、浅い呼吸になっている状態では交感神経が過剰に活動します。交感神経が過活動的になると筋肉は緊張し、さらに呼吸が浅くなる悪循環に陥ります。加えて交感神経過活動では、胃痛・動悸・発汗・持続的な疲労感や倦怠感を起こします。

息苦しさ

東洋医学における考え方

東洋医学では臍から上の腹部を胃脘といいます。そして胃脘で起こる痛みを胃脘痛といいます。胃脘痛の原因には食滞肝気犯胃脾胃虚寒の3つがあります。

○食滞による胃脘痛・・・暴飲暴食などで胃に重く負担がかかった場合に、胃脘部に気が滞り痛みをおこします。食滞では胃脘痛の膨満感、食欲低下、げっぷ、嘔吐、呑酸などを伴う場合があります。

○肝気犯胃による胃脘痛・・・精神的ストレスにより気持ちが不安定になることで肝の作用(気を巡らす作用)に異常をおこし、胃の気が滞ってしまうことで痛みをおこします。肝気犯胃では季肋部(肋骨とお腹の境)が張る、食欲不振、呑酸、溜息、げっぷを伴う場合があります。

○脾胃虚寒による胃脘痛・・・過労や睡眠不足、不摂生な生活により、脾胃(胃腸の機能)を損傷することで痛みをおこします。脾胃虚寒では喜温喜按(温めたり手で押さえたりすると軽快する)、手足お腹の冷え、空腹時痛、疲労感、倦怠感、気力の減少を伴う場合があります。

呼吸は呼気と吸気に分かれ、呼気は「肺」吸気は「腎」が司っているため、肺と腎の機能低下によるものと考えられます。肺は身体の中で一番始めに外部環境の影響を受けるとされています。季節の変わり目に風邪をひきやすいのは、冷えや乾燥によって肺を損傷するためです。腎は生命活動において根源的な役割を持ちます。吸気で息を吸い、酸素を充分に取り込むために腎の働きが欠かせません。

PMS(月経前症候群)のお腹への鍼灸治療

当院での治療

始めに起きている症状、それによって仕事や日常生活で困っていることなどを包括的に伺います。

みぞおち(上腹部)の痛みと呼吸が浅く感じる場合、自律神経の交感神経と副交感神経が不均衡になっている場合が多いため自律神経測定を行います。

当院では自律神経測定器を導入しており、指先に測定器を装着しておよそ3分間安静にしていただき測定します。自律神経の過活動が見られれば抑制させるように、反対に低活動であれば働きを促進させるように治療していきます。より患者様の困り事、悩み事を最善の形で解決できるようご相談し、治療方針を決めます。

治療内容は、まずうつ伏せになり背部兪穴の「肺」や「腎」に関係するツボ、首から腰の筋肉の硬結に鍼灸を行います。特に首・肩・背中の筋肉の緊張が緩和すると呼吸が深くなります。

次に仰向けになり、手足にある肺や腎の要穴、腹部の痛みを緩和させる鍼灸を行います。胸部には鍼をすると気胸になる可能性がある部位があるのでお灸を主体に施術します。

みぞおち(上腹部)の痛み、呼吸が浅い方に考えられる疾患

・胃炎

・胃十二指腸潰瘍

・急性膵炎、慢性膵炎

・胃がん

・膵癌

・狭心症

・心筋梗塞

・心膜炎

・気道内異物

・喘息

・気管支炎

・気胸

・肺線維症

・鉄欠乏性貧血

・過換気症候群

急に痛み出した、急に呼吸がしづらくなったなどの急性症状は医療機関を受診ください。

 

 

症例

20代 女性

学生の頃から呼吸が浅く、体育の授業等で走るとすぐに息が切れてしまう。数ヶ月前から急にみぞおちが痛くなりはじめた。最初は数秒間ほどで治まっていた痛みが、今では平均10分間続いている。長い時で20分間続く時もある。

病院に行って検査をしたが原因不明と言われ、痛み止めしかもらえなかった。

日常生活や仕事は辛うじてこなせるが、今よりも痛みが強くなるか、時間が長引くと生活に支障が出てきてしまうので、その前に改善するために来院。

 

当院の治療

脈診、腹診をしたところ、かなり緊張が強い状態が続いていることがわかった。緊張状態が続くと交感神経が優位になり、自律神経の乱れにつながるため自律神経調整治療をメインで行う。これと同時に身体全体の筋肉が緊張し、硬くなっていたので血行促進治療も行った。

鍼は初めてとのことで、痛みに対して抵抗感があり、刺激量はかなり抑えての治療を提案した。

回数を重ねて慣れてきたら少しずつ刺激量を上げる。

治療間隔は週2回

 

治療経過

◇1回目◇

特に変化は感じない。

◇2回目◇

来院前に痛みがでた、痛みの強さや時間に変化は感じない。

◇3回目◇

痛みが少し弱く感じる時が数回あった。

◇4~7回目◇

治療を受けるたび痛みが軽くなっていった。

◇8~12回目◇

仕事の繁忙期に入り症状が強くでる日が増えた。だが、以前より痛みがある時間が短くなったとのこと。

◇13回目◇

仕事が落ち着いたら症状も落ち着いてきた。治療頻度を週に1回に変えて経過観察することにした。

◇14回目◇

日常生活のなかでほぼ痛みがでることはなくなった。

◇15回目以降◇

みぞおちの痛みから首肩回りのコリを目的として治療を継続することになった。

 

緊張型頭痛に対する鍼灸治療

日曜日, 8月 4th, 2024

頭痛で悩んでいる人は日本人の3人に1人と言われるほどです。
しかし頭痛について知っている方は案外少ないものです。

緊張型頭痛、「頭痛」とはなにか見ていきましょう。

【頭痛の種類】

頭痛にはさまざまな種類があります。一般的な種類として、片頭痛緊張型頭痛群発頭痛などが挙げられます。
片頭痛は一側の頭痛で、頭痛とともに吐き気や光過敏、音過敏が起こることがあります。
緊張型頭痛は両側の頭痛で、長時間続く鈍い痛みが特徴です。
群発頭痛は非常に激しい一側の頭痛で、発作が集中して起こり、周期的に再発する特徴があります。

【各頭痛の原因とメカニズム】

片頭痛の原因は脳の血管の異常や神経の知覚異常にあるとされています。特定の刺激(例えば気圧、ストレス、食物、睡眠不足など)によって脳血管が拡張し、神経の過敏化が起こります。これによって血管拡張に伴う炎症物質が放出され、痛みを引き起こすと考えられています。前駆症状として閃輝性暗点(突然視野の中に稲妻のようなギザギザの光の波が現れ、徐々に四方に広がり、その場所が暗くはっきり見えなくなる現象)
がみられます。
緊張型頭痛の原因はストレスや筋肉の緊張が関与しており、筋肉の緊張が血流を制限し、酸素不足が起こることで痛みが発生します。主な原因となる筋肉は僧帽筋や後頸筋群、菱形筋の過緊張があり発生します。
長時間のPC業務やスマホ動画視聴により、眼精疲労をともないます。首・肩が凝る、背中が張っているなどの自覚症状がある場合が多いです。
群発頭痛の原因はまだ明確ではありませんが、神経の異常機能やホルモンの関与が考えられています。結膜充血や鼻汁前頭部発汗など自律神経症状が伴います。

【病院で行う頭痛の治療】

病院で行われる頭痛の治療は、まず正確な診断が重要です。診断には患者の症状や生活状況の詳細なヒアリング、神経学的な検査、画像検査などが行われます。治療の方法は頭痛の種類により異なりますが、一般的な治療法としては、薬物療法が挙げられます。片頭痛の場合、痛みを和らげるための鎮痛剤や三叉神経阻止剤が処方されることがあります。また、予防的な薬物療法も行われることがあります。

【頭痛の東洋医学的な考え】

まず東洋医学は局所的に診るのではなく、全体的に診ることが特徴のひとつです。全身治療を行うことにより免疫力・自然治癒力を高めます。

頭痛において東洋医学では、気や津液(血液)の滞りやバランスの乱れが原因とされています。体のエネルギーである気が滞ることで緊張型頭痛が起こると考えられています。また、気と津液(血液)の流れが円滑でないことが片頭痛の原因とされています。東洋医学では外因と内因の2つに二分でき、頭痛の多くは内因によって発生しています。特に頭と関係の深い肝・腎・脾の3つに異常をきたすと頭痛が起きます。
肝は血液の流れやストレスに対応する能力と深い関係にあります。頭部への血流を調節する働きやストレスで身体が病まないようにする働きがあります。
腎は精神的・身体的な活動において根源的な活力「気」を司ります。過労になると腎が機能不全になり倦怠感や脱力感といった症状が現れます。気は血液を正常に全身に送る働きを持ちます。そのため気が不足すると頭部への血流が減り、頭痛が出ます。
脾は消化吸収と水分の運搬の働きがあります。脾の機能が弱まると、頭がむくみ、頭重感や頭痛が出ます。また脳は身体の中で1番エネルギーを消費する場所です。消化吸収不良による栄養素の不足は、脳疲労・頭痛に繋がります。

・気血両虚による頭痛:胃腸不良による栄養の欠乏している場合、首肩周りの筋肉が硬くなり血行が不充分な場合、過度な疲労で気を消耗している場合など現代でとても多い頭痛です。

・痰濁による頭痛:頭部の浮腫による頭痛です。低気圧や暴飲暴食(脂っこい食べ物、甘い食べ物の過剰摂取)により起こります。

【頭痛の東洋医学的な治療】

緊張型頭痛では、後頸部にある僧帽筋や頭半棘筋上の天柱・風池、胸鎖乳突筋や頭板状筋停止部上の完骨、肩甲上部にある僧帽筋上部繊維上の肩井、肩甲間部上にある肺兪・厥陰兪・心兪、肩甲骨上角付近の肩中兪・肩外兪・天髎を治療部位として用いる。そうすることで肩甲骨と頸部周囲の筋肉の緊張が緩み、頭痛が緩和します。

気血両虚による頭痛の治療では、脾胃の気虚を補うことと養血を促すことが必要になります。主に用いる経穴は、足部で三陰交・陰陵泉・足三里・血海、腹部で中脘、背部では脾兪です。また頭部の百会・上星に刺鍼することで気血の巡りを促します。

痰濁による頭痛では、身体に滞っている湿痰(余分な水分)を巡らせて身体の外に排泄できるようにすることが必要です。そのため水の運搬を司る脾胃の能力を高めます。主に用いる経穴は、陰陵泉・豊隆・脾兪・胃兪です。

【家庭でできる頭痛の予防法】

家庭で頭痛の予防に取り組むことも重要です。まずは十分な睡眠をとることや、ストレスを軽減するためのリラックス法(例: ヨガ、瞑想)を取り入れることが効果的です。また、適度な運動やバランスの良い食事を心掛けることも大切です。加えて飲酒やタバコの過度な摂取を控えることも頭痛の予防につながります。定期的な休息やストレッチは緊張型頭痛の予防に役立つので、日常生活に取り入れることをおすすめします。

 

症例

 

40代 男性

先月自分の会社を売り、諸々の手続きが多く数ヶ月間まともに休むことなく働いていた。元々の性格でイライラしやすいと自覚はあったが、忙しい日々を送る中で次第に余裕がなくなっていき常に頭痛がおきるようになった。

仕事柄パソコンを朝から晩まで見ていたが、オンラインでのやり取りが増えたことと、自宅での作業が増えたことで、更にリラックスする時間と場所が無くなったように感じている。

一番気になるのは頭痛だが、眼の疲れも慢性的にあるので、一緒に治療して欲しい。

 

当院の治療

自律神経測定器で検査したところ、交感神経がかなり優位になっていた。また、ストレスの数値と疲労度の高い数値ででていたため、肉体的な疲労回復と、自律神経の調整治療、そして特に筋肉が硬く緊張している側頭筋を重点的に頭、首、肩、肩甲骨周りに鍼とお灸で刺激を与えて血行促進を目的とした治療を行った。

治療間隔は週に2回

 

治療経過

◇1回目◇

治療中に深い睡眠が取れた。肩の力が抜けた気がする。

◇2回目◇

よく寝たら逆に頭痛が悪化した。首を中心的に治療し、頭の血流を改善した。

◇3~6回目◇

治療後に好転反応で痛みが強くなることを繰り返しながら、少しずつ痛みが軽くなってきた。

◇7回目◇

深い眠りについても頭痛が起こらなくなり、日中も気にならなくなってきた。

治療頻度を週に1回に変更

◇8回目◇

頭痛をほぼ感じなくなってきた。

◇9回目◇

これからは眼精疲労が気になった時にメンテナンスとして来院することになった。

 

外転神経麻痺の鍼灸治療

水曜日, 7月 31st, 2024

①外転神経麻痺に対する当院の鍼灸治療

外転神経の鍼灸治療

 

当院の外転神経麻痺に対する施術は、目の周辺の重要なツボにハリを刺して微電流を流すことで麻痺した神経にアプローチします。

外転神経麻痺の鍼灸治療

 

また外転神経麻痺は五臓六腑の肝に深く関係しているので肝に関する経穴を用いて肝血を補うことや肝気の巡りをよくします。

東洋医学の診断方法に基づき全身の調整施術も行っていきます。東洋医学では、症状が出ている場所ばかりに注目するのではなく、その裏に隠された内臓であったり、下肢などの気血になにか問題がある部分に注目して治療していきます。
例えば人間の体は、出血しても時間がたてば塞がれますし、骨が折れても固定しておけばくっつきます。人間は本来、すごい力の自然治癒力を持っています。はり灸はその自然治癒力を呼び覚ますとても有効な施術法です。

当院にご来院される方は、特に外転神経麻痺にかかってしまった前後に仕事などで多くのストレスを感じていたり、多忙な生活を送って体調を崩してしまって発症される方がほとんどです。全体の体調を整えていくこと、自律神経の状態を整えていくことも治癒への大事な一歩となります。問診や自律神経測定器で現在のお身体の調子を把握して、生活習慣なども見直していく必要があります。

自律神経調整治療

当院のはり灸施術の目的は、外転神経麻痺の回復程度を高めて、回復を速めることです。また西洋医学とは違う東洋医学の観点により少しでも外転神経麻痺が回復できる機会を提供することです。それにより、少しでも患者さんのお役にたちたいという思いで施術しております。

 

 

②外転神経麻痺の東洋医学的考え

中医学では五臓六腑の肝は目に開竅するといわれており、眼の疾患は肝の機能の障害が深く影響していると考えられています。肝血が不足してしまうと視覚の異常や運動系の異常などがみられます。そのほか肝は運動神経系の調節に関係があると考えられています。

外転神経麻痺は、外側直筋を麻痺させるので、そのことからも外転神経麻痺は肝に深く関係していることがわかります。

③外転神経麻痺の鍼灸治療症例

30代 男性
朝起きると急に物が二重に見えていることに気づいた。少し時間を置けば良くなるだろうと思い、そのままにしておいたが、逆に二重の幅が広くなっていることに気づき会社を早退して眼科を受診した。右目が内側によっている斜視と診断されてその日のうちに脳神経外科を紹介されてCT・MRIの検査を受けた。特に原因特定されずに外転神経麻痺と診断された。仕事はそれから休んでいる。
当院には発症して一か月後に来院。少しずつ複視の幅が狭くなってきたがここ1週間ほどは停滞している。

当院の治療
複視の症状が出る前までは仕事が忙しく、夜遅くまで残業していることが多かった。仕事は主にパソコン仕事で目を酷使する生活が続いていた。複視になる前日に身体の疲れや右目の腫れぼったさや違和感を感じていたとのこと。当院の治療方針として
1.自律神経の調整治療
2.首肩の筋緊張の緩和
3.右目周囲を中心に鍼を刺して電気を流して神経及び筋肉に刺激を与える

治療経過

◇1回目◇
治療後、複視の幅は変わらなかったが体は楽になっている。

◇2~4回目◇
4回目の治療後、通勤時に電車の中の風景にダブりが少なくなっていることに気づいた。

◇5~8回目◇
調子の良い時はダブりが少なくなってきたが、週に半分くらいはまだ調子が悪い。

◇9回目◇
だんだん週の半分以上は目の調子が良くなってきた。

◇10回目◇
複視の症状が消えて身体の調子も良くなった。仕事などたまに忙しくなると少し物が二重に見えることがあるため月に1~2回ほどのペースで治療を受けている。

 

 

症例2

40代女性
当院にご来院される2カ月半ほど前に物が二重に見える複視の症状が出た。最初は目の疲れで視力が落ちて物がダブって見えているだけと思い、何もしなかったが徐々に複視の幅が広くなって日常生活を送るのも不自由となってしまった。眼科を受診したところ特に異常は見られずに脳神経外科を紹介されてそこで外転神経麻痺と診断された。しかし、特に脳の異常もみられなかったので経過観察で特に治療はされなかったとのこと。
日常生活では常に眼帯をしていないと物が二重に見えて生活できないため、常にどちらかの目に眼帯をして生活していた。医師によるとどちらの目も外転神経麻痺を起こしているとの診断でした。

 

当院の治療
仕事は主にデスクワークで頸肩のコリは強く出ていたため、初めに首肩を施術して筋緊張をとった後に目の周りの施術と自律神経調整治療も行っていきました。施術前に自律神経測定器で自律神経のバランスを計測したところ自律神経が乱れている状態でした。
首肩と目の周りは共に鍼を刺した後通電して筋や神経に刺激を与えていきました。

◇1回目◇
特に複視の変化は見られなかった。

◇2回目◇
治療後、若干複視の幅が狭くなったように感じたが、眼帯なしでの生活は送れない

◇3回目◇
朝に手を伸ばした先位の距離はぼやくなくなった。遠くを見るとまだ依然として二重に見える。特に目が疲れてくる夕方以降は調子が悪い

◇4回目◇
日中、家の中だと眼帯を外して生活できるようになった。近くはダブりが少ない

◇5回目◇
近くはいいが、遠くに視点を持っていくと複視になる。特に人混みの中だとつらい

◇6回目◇
段々と遠くに視点を合わせてもダブらなくなってきた。ぼやける程度

◇7回目◇
6回目の施術以降、ほとんど眼帯をせずに生活できるようになってきた。仕事で目を酷使した夜などは眼帯をつけることもある

◇8回目◇
真っ直ぐをみているとほぼ問題なく見える。左右に視点を移すとぼやけることがあるため自然と目線だけでなく、顔も横を向けるようになっているとのこと

◇9回目◇
横のダブりもだいぶ少なくなった。夕方以降でも複視の状態にならない。日常生活ではほぼ支障なく生活できる

 

症例3

60代 男性

経過

夕方仕事の時に物がぼやけて見えるようになった。最初は目の疲れだと思い、気にせず作業をしていたが次の日の朝にテレビを見ていたら物が二つに見えることに気が付いた。

だんだんと二つに見える幅が離れていったため、こわくなって病院をすぐ受診。脳の検査など行っていったが原因は特にわからずに外転神経麻痺と診断された。

6ヶ月くらいかけて治っていく場合があるから様子見でどうしてもつらかったらプリズム眼鏡を処方するが、6か月間は症状の変動が見られることが多いため基本そのままで対処すると言われた。

以前から漢方治療など東洋医学にも興味があったため外転神経麻痺を治せるところがないかとインターネットで検索して当院にたどり着いたとのこと。

 

治療

主に目の周り特に眼球の外側に強めの鍼通電治療を行って筋肉や神経に刺激を与えていくことで改善をはかっていきました。

複視症状のほか物が二重に見えるため階段の上り下り時などにめまいやパソコン作業時の目の疲労感も強く感じるとのことでそれらの症状にもアプローチしていきました。

首肩周りの筋緊張の緩和、背中やお腹の経穴を用いた自律神経のバランスも整えて治癒しやすいお身体の状態にしていきます。

 

経過

来院当初は、複視で歩行が困難なため片目に眼帯をして複視症状をおさえてご来院されていたが、4回目の施術後に眼帯を外しても怖さを感じにくくなったためほぼ眼帯を外して生活。だんだんと複視の幅が狭くなっていった。

治療開始1か月後8回目の治療後には、階段上り下りもそつなく行えるようになってきて日常生活もだいぶ楽に。近くのものパソコン作業時などはほぼ一つに見えるとのこと。まだ遠くの景色は二重に見える。

2か月目以降は治療間隔を週に2回から1回に延ばしていきました。

2か月終了時には、複視症状がほぼ消失したため治療も終了。

 

症例 4
30代 男性

一週間前、起床時から右目が外側に動かなくなった。眼科を受診したところ、原因不明の外転神経麻痺と診断された。脳神経には異常がなく、自律神経かスマホの使いすぎかと言われた。複視がでているため、モノがダブって見える。

発症前は、仕事が忙しく就寝前までスマホで仕事をしていた。

当院の施術

触診では、強い首肩のコリはなく、手足の末端が異常に冷たい状態だった。仕事の忙しさなどから、自律神経のバランスを乱していることや、目の使いすぎによる目の周りの筋緊張で血液循環が悪くなり、神経の働きが麻痺したものと考えられる。

全身への鍼灸施術による自律神経の調整と、血流を促進させるために目の周りへの鍼通電を行った。

一回目

施術後は体が暖かく感じた。

二回目

前回の施術後から、体が温かくなった。目の麻痺は少しマシになり動きがでてきた。

三回目

体は温かい。目が外を向くようになり、外側の視野が広がっている。治療の次の日は目の動きがよくなる。

四回目

だいぶ目が外側に動くようになった。近くのピントも合うようになり、文字が読めるようになった。遠くのものを見る時は、まだピントが合わない。

五回目

目の動きは正常に戻り、遠くのものを見る時もダブることがほとんどなくなった。

 

④外転神経麻痺とは

 

外転神経麻痺の症状

 

外転神経麻痺は脳底の動脈瘤腫瘍髄膜血管梅毒糖尿病外傷などで起こり、眼筋麻痺のなかでもっとも頻度が高い疾患です。外転神経は橋の後縁から出て上眼窩裂を通って眼窩に入り、外側直筋を支配します。

そして、外側直筋を収縮させて眼球を外側に向かって水平に動かします。よって外転神経が麻痺すると眼球は外転できなくなり、正常よりも内側を向くようになります。すると両眼の視線が見たい場所で交わらなくなり、ものが二つに見えたりします(複視)。眼球運動にかかわる神経は外転神経以外に動眼神経滑車神経があります。

 

外側直筋
眼球の奥の総腱輪から出て眼球の外側に停止する筋肉です。外側直筋の主な役割は、眼球を外側に向ける役割があります。外転神経が支配しています。
外側直筋は眼科の中にあるため、触ることができない筋肉です。この筋肉が何らかの原因で機能しないと、目を外側に向けることができなくなり、正視していても内側に向いてしまうより目の状態となってしまいます。
外側直筋が機能しないと目のピントを合わせる能力が低下して焦点が合わなくなり、二重に物が見える状態・複視の状態となってしまいます。

複視

 

 

⑤外転神経麻痺の原因

 

外転神経麻痺を突き止めるのは容易ですが、原因を突き止めるのは容易ではありません。CT検査やMRI検査で腫瘍があるか判断したり、脊髄搾刺では頭外内圧が上昇していないか診断されます。
原因が判明しない場合は、神経に血液を運ぶ動脈の閉塞や一過性脳虚血発作による神経の障害が考えられます。

これらの異常は、高血圧糖尿病アテローム動脈硬化がある患者に多く見られます。

当院にご来院される多くの方は、外転神経麻痺と眼科などで診断されたもののその原因が精密な検査を重ねてもわからないという方がほとんどです。原因がわからないと西洋医学では対処が難しく具体的な治療は施されません。当院ではそのような方々でも東洋医学の観点から施術することで複視の状態が改善していったという方が多くいらっしゃいます。

 

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好医院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院

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