手根管症候群の治療

①手根管症候群に対する当院の鍼灸治療

 

手根管症候群の鍼灸治療ポイント

 

当院の手根管症候群に対する治療の目的は、第一に手首付近のツボや痛みの強い部位に鍼をさして微電流を流すことにより血行を良くします。手のひらは痛点が多く存在するためはり施術に伴う痛みを感じやすく、お灸刺激で対応する場合が多いです。

橈側手根屈筋の腱は手根管を通るので橈側手根屈筋に圧痛が出る場合が多く橈側手根屈筋をねらって鍼をさします。また鍼を刺すことにより痛みを感じる閾値を上げて痛みを感じにくくする作用を促します。

手根管症候群は五臓六腑の「」と「」に深く関係しているので肝と腎に関するツボを用いて肝血や腎気を補うことや手首の気血の流れをよくします。

また「風寒」や「湿」の邪気によって引き起こされる場合はそれらを体外に出す治療が必要になります。

手根管症候群を患っている方は、仕事や家事を多く抱えており、過度な精神的なストレスを抱えている方がほとんどです。また、50歳代女性では、親の介護が加わったり、女性ホルモンの変化により自律神経が乱れやすくなっています。

そこで当院では、自律神経測定器で自律神経の状態を測定して患者さんに合った的確な施術が可能です。他にはない効果が生み出せるのです。

手根管症候群の鍼灸治療

 

②手根管症候群の東洋医学的考え

 

中医学では手根管症候群は、手首付近の気血の運行がスムーズにいかずに気血が滞り、それが痛みやしびれの原因となると考えられています。
寒く風のあたる場所にいた際に「風寒の邪気」を受けた時や湿度の高い場所にいて「湿邪」を受けた時、長い間手首を使う仕事をした時などに気血は滞り、それが手根管付近であった場合に手根管症候群を発症する可能性が高くなります。

また中医学でいう「肝」と「腎」の機能が弱ると全身的に血や体液が不足し、筋肉などの様々な器官に栄養を送ることができず、さらに上記の条件が加わると手根管症候群がおこりやすくなります。

両者の関係は深いので「肝腎同源」とも言われており、「肝」と「腎」の症候が同時にあらわれることが多いです。

 

■肝血虚
肝血虚とは中医学でいう「肝」が血を貯蔵して必要に応じて供給・消費する機能と自律神経系の作用を通じて血管を収縮あるいは弛緩させ、体内各部の血流量を調整する機能が異常をおこして発症します。
筋のけいれん・手足のしびれ・目の乾燥感や女性では、月経のおくれ・月経血の過少・無月経などがみられることが特徴です。

 

 

 

③手根管症候群の鍼灸治療症例

 

症例1

50代 女性
数日前から右手の親指から人差し指にかけて痺れを感じるようになってきた。常に痺れるというわけではなく、パートでのパソコン作業や介護でのちょっとした動作で痺れと痛みを感じる。朝起きてから30分ほどしびれが強く感じる。整形外科を受診したところ手根管症候群と診断され、湿布薬と飲み薬を処方されたが、改善されずに当院にご来院されました。 最近、パートでの仕事と母の介護が加わり、とても多忙な生活を送っていたことが一つの原因と考えられるとのこと。

 

当院の治療
自律神経測定器の結果自律神経の乱れ・特に交感神経の過亢進状態でしたので最初に自律神経を整える施術をしてから頸部・肩部・右手首を中心に施術いたしました。親指のしびれが特に強い状態でしたが、首や肩のこりも症状として強く出ており、そちらのほうのアプローチも重要だと感じました。

また、仕事や介護でストレスが溜まり、体の回復力も低下しており、本題の治療に入る前に自律神経を調整する施術を行ってからの方が治療効果が上がると考えます。

 

治療経過
◇1回目◇
治療後手のしびれは、さほど症状に変化がなく、逆に少ししびれを強く感じた。血流が良くなった好転反応と考えられる。

◇2回目◇
前回と同様の体が起こった。

◇3回目◇
首や肩のこりを感じにくくなった。痺れもいくらか落ち着いてきた様子。

◇4回目◇
体に元気がとり戻ってきた自分自身感じ、手のしびれもそこまで気にならない。

◇5回目◇
日常生活でほぼ支障なく生活できる。

◇6回目◇
前回の状況とは変わって、気温低下とストレスによって痺れ症状が強く出た。

◇7回目◇
痺れの辛い症状は治療後すぐに消えてきて、体が軽くなった。

◇8回目◇
日常生活でほぼしびれを感じなくなった。首・肩こりも楽になった。

 

症例2

30代女性

妊娠6か月でのご来院。ホルモンバランスの変化やむくみやすくなっているせいか右手首の痛みや指先のしびれを感じるようになって整形外科を受診したところ手根管症候群の診断を受けた。

妊娠中のため薬は処方されることなかったため、インターネットで鍼治療で良くなることがあるとのことで当院で鍼治療を受けにご来院されました。

午前中に一番症状が強く、痺れや痛みで日常生活でも支障が出てしまう。

治療

仕事や家事で右手首をよく使う・手首をかばって作業をしているせいか肘周りや肩周りもコリを感じて痛む時があるとのことで右上側臥位でまず首肩回りや肩甲骨周りの筋緊張を緩和させていきました。

鍼治療が初めてということもあり、刺激量は抑えつつ治療回数を重ねるごとに段々と鍼通電療法などを使うなどして刺激量をあげていきました。

一回目の治療後、首肩回りなどが軽くなり、なんとなく身体が楽に。しかしまだ右手首は変化がみられない状態。

2回目・3回目も身体は楽になるが手首の変化はまだ見られませんでした。

4回目以降、手首の鍼通電治療なども用いて刺激の量を上げていき、徐々に右手首の痛みが緩和。痛みが取れてきて段々と痺れ症状も良くなっていきました。

最後指先だけ少し痺れが残りましたが日常生活では全然気にならなくなってとのことで治療を終了。

 

 

④手根管症候群とは?

 

手根管症候群の主な症状

手根管症候群とは、手首を通っている正中神経が手根管という部位で炎症・骨折・奇形・腫瘍などにより圧迫されて痛みを生じる病気です。
正中神経は、上腕動脈とともに上腕の深い所を通って前腕を経て手根管に入って、手に至ります。手首を曲げる動作や腕を内側に捻る動作、手指を曲げる動作の筋肉を支配して、皮膚感覚としては手のひらで薬指を境として親指側を支配しています。

手根管とは、手首の手のひら側で、骨と靭帯に囲まれたトンネル状の部位のことをいいます。手首の骨は凹のアーチ形に並んでおり、その表面を幅2~3cmの屈筋支帯という靭帯が橋渡しをして、その下に手根管をつくります。

その手根管の中を手首を曲げたり親指側に倒す橈側手根屈筋の腱や親指を曲げる長母指屈筋の腱と親指以外の指を曲げる浅・深指屈筋の腱が通ります。手根管の中を走る腱は摩擦が少なく円滑に動くことができるように滑液鞘で包まれています。

また手根管の狭い管内を多くの腱とともに神経(正中神経)が通過します。主に手根管症候群とはこの正中神経が何らかの理由で圧迫されて発症する神経障害の一種です。

症状としては知覚障害運動障害などがあります。
手根管症候群

知覚障害
初期には人差し指や中指がしびれて痛みがでて、最終的には親指から薬指の親指側半面の3本がしびれます。症状は明け方強く、目を覚ますと手がしびれ痛みがありますが手を振ったり指を曲げ伸ばしすると楽になります。

運動障害
進行すると親指の付け根の母指球筋という筋肉が痩せてきて、細かい作業が困難になります。母指球があることでできていた親指が他の指と向き合う運動(対立運動)ができにくくなり、鉛筆を落としたり、OKサインのような指の形などもできにくくなります。またつまみ動作がしにくい、ボタンをかけにくい、箸が扱いにくいなどの細かい作業もできにくくなり、日常生活に支障が出てきます。

通常、手根管症候群は利き腕の片側性に発症しますが、50%の方には両側性にも同疾患があり、発症年齢は20~90歳代にわたります。50歳代の女性に一番発症しやすく、女性ホルモンの乱れが原因とも考えられています。
簡単な診断法として手根管症候群の方は手首を打鍵器などでたたくとしびれや痛みが指先にひびきます。また手首を直角に曲げて手の甲を合わせて保持し、1分間以内にしびれや痛みがが出るかどうか見ます。

 

 

⑤手根管症候群の原因

手根管症候群は特別な原因が見当たらないことが多いのですが、手の使い過ぎや肥満、妊娠などの他に糖尿病、甲状腺機能低下症、痛風、それに慢性関節リウマチなどの全身疾患が原因と考えられています。近年では、長期血液透析に伴う患者が増えています。

ⅰ)手の過度の使用による手根管症候群:手を酷使する人の腱消炎
ⅱ)むくみなどによる手根管症候群:妊娠や肥満
ⅲ)圧迫による手根管症候群:骨折や腫瘍による手根管の圧迫
ⅳ)アミロイド沈着による手根管症候群:血液透析によるアミロイドという物質の沈着

 

日常生活上での注意点

手根管症候群で炎症症状が強く出ている場合はまず安静にして炎症を引かせることが重要です。さらに炎症が強い急性期の場合では、氷水で炎症部位を冷やしてアイシング治療を行うことも早く炎症を冷やすのに効果的です。何もしてなくても手首が痛む場合や夜間痛がひどい場合では炎症が強く出ている危険性があるのでアイシング治療が有効です。

痛みの強く出る急性期が過ぎたら手指や腕にかけての筋肉をほぐしていきましょう。ストレッチや軽く自分で筋肉をもみほぐすことで手根管内の圧力を軽減させる効果が期待できます。注意点としまして痛みが出ない程度に行うことで、痛みの出ている周囲の筋肉をほぐすことです。

 

あまり過度に揉んだりストレッチでほぐしたりしてしまうと周りの組織が傷ついてしまい、炎症が起きる危険性があります。

その他日常生活では手根管に負担をあまりかけないように心がけましょう。手首にサポーターを巻いたり、片手で重いものを持たないようにしましょう。それに加え現代はパソコン作業による手首への負担で手根管症候群かかる人も多いです。パソコンの打ち込み作業では、手首の下に丸めたタオルをかませて手首をまっすぐにするようにすると手首への負担が軽減されます。

 

 


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 09:59 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)

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