睡眠障害の鍼灸

 

①睡眠障害に対する当院の鍼灸治療

当院の睡眠障害に対する施術は、まず第一にハリや温熱刺激を施すことにより全身の調整を図り、自律神経のバランスを整えることです。睡眠と自律神経の関係は深く、当院では自律神経測定器で計測した上で施術に入らせていただいております。

睡眠障害の鍼治療

 

鍼灸は、交感神経を抑制し副交感神経の働きを促すばかりでなく、双方の神経の活動量を高めて自律神経のバランスを整えることが研究結果でも出ています

睡眠障害は東洋医学的に診ると「」の不調や「心腎不交」が原因で発症すると考えられているので、鍼灸施術を用いてツボを刺激することで「心」の機能を活性化させたり、「心」と「腎」の相互関係を整えます。また、お灸の治療も積極的に取り入れています。足裏にある『失眠』というツボは睡眠障害に即効性のあるツボだと知られています。

 

睡眠障害のお灸治療

 

その他睡眠障害の患者さんでは日中の頭痛肩こり・慢性的な痛み・のぼせ・めまいなどを訴える方が少なくありません。そういった患者さんには不定愁訴の改善を目的とした治療も並行して行っていきます。
当院の鍼灸治療による睡眠障害の施術目的は、睡眠障害の回復程度を高め、ストレスを取り除くことにより患者さんがより快適に日常生活送れるようにサポートすることです。睡眠障害では日々の睡眠環境が特に重要であり、快適な睡眠をとっていただけるよう睡眠対する基本的なアドバイスも行っていきます。

 

 

 

②睡眠障害の鍼灸治療症例

20代女性

不眠、不安感、手の震え、動悸、吐き気、手足のほてり、冷えで来院される。症状は一か月ほど前から、一か月程前に転職され職場のストレスや環境の変化によるストレスが原因ではないかと仰っていた。
睡眠時間帯が大きく変化した為なかなか眠りにつけず、体の疲れもあまりとれない。それがまたストレスになっている。

 

治療

まず、自律神経測定器で自律神経の状態を測定していきました。交感神経が過亢進しており副交感神経の働きが抑えられている状態でしたので、最初に自律神経を調整する治療を行い、それから東洋医学的観点から施術していきました。また、頚部から背部まで筋肉の強い緊張がみられたため、マッサージと鍼通電、灸を用い筋肉の緊張を緩める施術を行いました。

 

治療経過

一回目

前回よりは良い。たまに眠れない日もあるが手の震えや吐き気、冷えは今は感じない。

二回目

前回とあまり変化は無い。まだ、不眠とほてりが気になる。しかし、鍼をした日はよく眠れたとの事。

 三回目

最近はベッドに入ってから寝付くのが早くなってきた。不安感も軽減された気がする。ほてり以外の症状は感じない。

四回目

少し寝つきが悪いなという日が1週間の内に2~3日になってきた。

五回目

かなり眠れるようになってきた。ほてりもそれほど感じなくなっている。

 

 

 

・40代男性

4年前より子供ができ一緒に眠るようになってから寝つきが悪く、寝ても2~3時間ごとに目覚めるようになってしまった。朝も早く目覚めてしまい、日中も疲労感や倦怠感を常に感じるようになってしまった。仕事は立って接客業に従事しており、仕事にも支障をきたしてしまうようになり、心療内科を受診。睡眠薬を処方され服用すると眠ることができるが次の日の疲れや倦怠感はあまり変化を感じられなかった。自己判断で薬を服用しなくなり、睡眠もうまく取れなくなり当院にご来院されました。

 

治療

仕事では役職も上がり過度な精神的なプレッシャーも感じてしまっている状態に合わせて家庭でもまだ子供が小さく家でも常に世話をしている状態で気が休まる状態ではないとのことでした。自律神経測定器で自律神経の状態を測定したところ交感神経の活動レベルが高く常に緊張状態である印象を受けました。
治療では、副交感神経の活動を上げられるようなリラックスできる施術を心がけ、ツボは五臓六腑の心と腎を中心に施術していきました。睡眠の不具合のほかにも頭痛や首肩こりも感じており合わせて施術していきました。

 

治療経過

 

・1回目
治療後はリラックスできた感覚があったが、その日の睡眠はまだよくなかった。

・2回目
首肩こりは少し楽なり、仕事もいつも以上のつらさは感じられなかった。

・3~5回目
5回目の治療後その日は何年かぶりにぐっすりと睡眠がとれたような気がしたとのこと。その日は体調も良く仕事も快調に行うことができた。

・6~10回目
一週間に半分は睡眠を取れるようになってきた。どうしても眠れない時は睡眠薬を服用。身体の調子はかなり良くなってきたとのこと。治療間隔を延ばしていき定期的に体のメンテナンスを行っていきたいとのこと。

 

 

 

③睡眠障害の原因

睡眠障害の原因として様々な原因が考えられますが、一番はやはりストレスです。精神的ストレスが高まると一時的に眠れなくなるということは誰しもご経験があるのではないでしょうか。
多くの方は、原因となる精神ストレスがなくなると、睡眠障害が解消される場合が多いですが、睡眠障害に対する不安が強すぎる人などは、睡眠自体を強く意識してしまう場合があります。そういった方は、ベッドに入ると眠らないといけないと強く意識してしまって、寝ようとする行為自体をストレスと感じ精神的に緊張します。

この睡眠に対するストレスはさらに睡眠障害を増悪させ、悪循環になります。

ストレスの原因は様々なものが考えられます。以前は見られなかった会社や学校での人間関係によるストレスや家庭内環境によるストレス、騒音やパソコン・テレビなどの環境ストレスまたは体の病気や痛みなどによる身体的ストレスも睡眠障害の原因となります。
こういったストレスは睡眠障害の原因になるばかりではなく、高血圧心臓病胃腸疾患免疫機能疾患うつ病などの精神疾患など様々な疾患の原因になることが知られています。

 

 

 

⓸睡眠不足が続いてしまうと

睡眠の一番の重要な役割は、『心身の疲労回復』にあります。

もう50年以上も前にスタンフォード大学のデマント氏が提唱したもので「睡眠負債」という言葉があります。睡眠負債は今でもその考えが臨床試験でも多くな影響を与えています。

睡眠負債とは、睡眠時間の少なさ量を借金にたとえた造語です。睡眠負債の怖いのは、気づかないうちにどんどんと借金が積みあがっていくことです。

1日30分ずつの睡眠負債であってもそれが、1年・2年と続いた場合に借金は返せないほどになり身体の病気となってあらわれます。

スタンフォード大学が行った系統的レビューで過去に出たあらゆる睡眠研究をまとめたものがあります。

その中で専門家の意見が一致した「良質な睡眠」のサインは下記の通りです。

 

・眠りに落ちるまでの時間が30分以内

・夜中に目覚めるのは一回以内

・もし夜中に目が覚めてしまった場合でも20分以内に再び眠ることができる

・そう睡眠時間の85%以上を寝床で寝ている

 

この4つの条件をすべて満たしていることが良質な睡眠の最低条件だと考えられています。

そして睡眠時間は7~9時間以内におさめることがあらゆる研究から結果が出ています。

 

⑤快適な睡眠を取るための準備

快適な睡眠を取るためには、自律神経のリラックス神経である副交感神経の活動が優位になることが重要です。

 

・睡眠前の準備

睡眠前に仕事などでパソコン作業をする・スマートフォン操作をする・強度の強い運動をするなどは脳が覚醒状態となり交感神経の活動が優位になってしまいます。するとなかなか寝付くことが出来なかったり、深い睡眠がとれない状態になってしまいます。睡眠に入る2時間ほど前には脳が覚醒してしまうような行動は避けて静かな音楽や読書をしたりゆったりと過ごすことが重要です。

 

・アイマスクと耳せんを使う
快適な睡眠のためには寝室はできるだけ暗くする必要があります。特に都会では外からのちょっとした光でも睡眠の妨げになると言われています。一級の遮光カーテンを使うのが理想的ですが、難しい場合はアイマスクを用意しましょう。
そして耳せんも同時に用意をしてアイマスクと耳せんを同時に使用すると睡眠中のストレスホルモンの数値が下がって逆にメラトニン量が増えるという研究結果もあります。

 

・体温の状態

人間は体温が下がり始めると自然な眠気が来るようになっています。体温を下げさせるには、その前に一時的に体温を上げてあげる、38℃ほどのぬるま湯にゆっくりと半身浴をする・温かい飲み物を飲むなどをして体温を一時的に上げることでその後自然と眠気が起こることが期待できます。

 

・体内時計

体内時計を整えることは夜にしっかりと睡眠を取ることにとても重要になります。体内時計が乱れてしまっている状態ですと夜間のメラトニンの分泌量が減少してしまい、睡眠のリズムが崩れてしまい睡眠障害となってしまいます。

体内時計を整えるのには、朝日を浴びることがいいと言われています。朝に光を浴びることで体内時計がリセットされて睡眠ホルモンといわれるメラトニンの分泌が止まります。
そして、メラトニンの分泌はリセットされてから14~16時間後くらいに脳からの指令でまた分泌されるような仕組みになっています。

⑥定期的にキャンプをしてみる

 

定期的なキャンプで睡眠改善

睡眠の改善において一番重要なのが『自然』ということがわかってきました。

人類は太古の昔から豊富な自然の中で木々などに囲まれた生活をしてそこで眠っていました。

人類の歴史から見ると現代のような睡眠環境になったのは本当につい最近です。

人間は、自然の中にいるだけで睡眠の質が上がるようになっているのです。

2016年コロラド大学が行ったおもしろい研究があります。被験者に光もないような冬山で寝起きするように指示をしました。すると、被験者は2日後には、被験者全員のメラトニン量が増加する結果が得られました。

メラトニンとは体内時計をコントロールすることで私たちを自然の睡眠につかせてくれるホルモンです。

人工照明で夜も明るい部屋で過ごしている現代人ではメラトニンの分泌量が少ないと言われています。

それが、たった2日そういった生活を離れるだけで回復したのです。

太陽の光・いわゆる自然光を浴びるのも体内時計を正常に戻すために重要です。

 

 

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年
鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年
おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年
中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年
渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年
三軒茶屋α鍼灸院を開院


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 16:00 / 院長コラム 睡眠障害の鍼灸 への5件のコメント

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