シェーグレン症候群に対する当院の治療はまず東洋医学的観点により、機能が低下している臓腑、主に『肺』『脾』『腎』の機能を補うような治療を施していきます。治療前に脈診・舌診・腹診などを用いて、特にどの部分が弱っている可能性があるか問診をいたします。
また、自己免疫疾患の場合でも自律神経の乱れが見られることが多いため自律神経の状態を自律神経測定器で計測してその結果をふまえて自律神経調整治療も行っていきます。
特にドライアイが強く出ている方の場合は、ドライアイの治療を積極的に行っていきます。あわせてドライマウスの施術も頬周辺のツボを使って行っていきます。
シェーグレン症候群の治療期間につきまして体質の変化などを目的に3か月ほどと比較的長めの治療スパンを見ていただいております。最初の一か月ほどは週に2回ほどの間隔で詰めて治療を行い、それから徐々に治療間隔を延ばしていくと効果的です。
シェーグレン症候群は、1930年にスウェーデンの眼科医(シェーグレン)によって報告されたのが最初と言われています。40代・50代の方に多く発症し、特に女性に多く男女比は1対14ほどといわれています。1993年度の政府による自己免疫疾患調査によるとシェーグレン症候群の有病率は10万に約15人程度の割合とされていますが、病院にかかっても疾患の特定に至っていない場合も多いと推察されています。
シェーグレン症候群は、自分の体を自分とは違うものと認識してしまい自分の体を攻撃してしまう自己免疫疾患だと考えられています。自己免疫疾患は、よく知られている病気では関節リウマチや全身性エリテマトーデスがあり、膠原病として一括りにされることもあります。人間の体には、ウィルスや細菌が体内に侵入してきた際にそれを認識して侵入者を攻撃して撃退する機能が備わっています。それを免疫機能と呼びますが、自己免疫疾患では自分の細胞も外からの侵入者も見分けがつかない状態に陥ってしまい見境なく攻撃してしまうのです。
その攻撃する場所が、違うことで疾患が分けられます。主に手の関節の節々を攻撃してしまうのが関節リウマチ、全身の各臓器が攻撃されてしまうのが全身性エリテマトーデスといった具合です。
そして、シェーグレン症候群では全身の分泌腺が攻撃を受けてしまう疾患です。
シェーグレン症候群は、主に2つの症候群に分類されます。
原発性シェーグレン症候群
関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患を併発していない場合、原発性シェーグレン症候群と言われます。日常的にドライアイやドライマウスに悩まされているが、日常生活にまでも支障をきたしていないこともあります。
続発性シェーグレン症候群
原発性シェーグレン症候群とは逆にシェーグレン症候群の他に別の自己免疫疾患を患っている場合を続発性シェーグレン症候群といいます。自己免疫疾患でも様々な病気があるため、それらの診断が非常に難しくなり、病院でも疾患の特定が難しくなる原因となります。
シェーグレン症候群は、主に分泌腺を侵入者と判断して攻撃するため分泌腺のある目や口腔、鼻腔、呼吸器などに症状が出ることが特徴です。
・ドライアイや疲れ目
ドライアイや疲れ目は、パソコンやスマホ操作など目を酷使する現代では非常に多い病気です。それは、画面を集中的に見ることで瞬きが減少して自然と目の表面の涙の量が少なくなることが原因です。しかしシェーグレン症候群の場合はそういったことではなく涙の分泌腺自体が攻撃を受けてしまうため涙の量が減ってしまうのです。
よって日常的に排出される涙の量も減ってしまいますが、感情による涙や玉ねぎを切ったり、目の中にゴミが入ったときなどに出てくる涙も出なくなってしまっている状態なのです。
・ドライマウス
唾液腺も攻撃を受けてしまうため唾液の分泌量も減ってしまいます。唾液には、抗菌・殺菌作用や口腔粘膜の保護、食べ物を潤滑に食道に運ぶ作用などがあります。それらの作用が低下してしまうため、虫歯・口内炎・口腔内が傷つきやすくなる・味覚が低下する・唇がひび割れてしまう・パサつく食べ物が食べられなくなるなどの状態を招いてしまいます。
・呼吸器疾患
鼻や気管支などにも粘液腺という分泌腺があります。それらの機能は外からの侵入者を痰として体外に排出する役割があります。その機能が低下してしまうため肺感染症などの呼吸器感染症にかかりやすくなっていましまいます。
・頭痛
シェーグレン症候群で頭痛に悩まされる方は多いです。吐き気を伴ったり頭ががんがんと痛む激しい頭痛に悩まされてロキソニンなどの鎮痛剤も効果がなく、慢性的な頭痛となり集中力の低下やめまい、精神疾患と発展していくこともあるので注意が必要です。
・その他
自己免疫疾患の特徴でもある血管の壁を攻撃してしまうため気づかないうちに青あざができたり、レイノー現象(寒冷刺激で痺れ感や皮膚が紫に変色する)が起きることがあります。関節にも影響を与えて膝や手首などといった間接に痛みを感じる方は多いです。関節痛につきましてはシェーグレン症候群にかかっている人の半数以上が悩まされているとも言われています。
また、膣の分泌腺も攻撃してしまうため膣炎や性交時の痛みの原因となったり、腎臓にも影響を与えて頻尿をともなうこともあります。
シェーグレン症候群の診断は、主に唾液の分泌量・涙の分泌量・血液検査・生検組織検査などから診断されます。
シェーグレン症候群の診断は、その他自己免疫疾患が絡んでいる可能性があるため難しく慎重となります。下記のような症状が当てはまる場合は一度病院で診断を受けてみましょう。
・一日に3回以上ドライアイ用の目薬をさす
・感動する映画など見ても涙が流れなくなった
・目が特に最近疲れやすくなった
・目が赤く、常にゴロゴロしている
・口の中が乾燥していると感じる
・食事の際に水をよく飲むようになった
・口内炎や口の中が切れやすくなった
・最近味覚を感じにくくなった
シェーグレン症候群の原因はいまだ特定されるまでには至っておらず、根本的な治療法がないのが現状です。
ドライアイには目薬や涙液プラグを入れたり、ドライマウスには人口唾液を用いたりとあらわれている症状によって治療法が異なっています。
シェーグレン症候群の予後は、症状自体は寿命を縮めるというわけではなく、個々の症状に対してきちんと治療していけば重症化することは少ないといわれています。
しかし、間質性肺炎などのその他自己免疫疾患を併発した場合は死にも至る危険性のある怖い病気です。その他、症状が長く続くことで心身ともにストレスを感じて免疫力の低下に繋がったり、うつ病などの精神疾患を患うことがあるので症状に気づいたらすぐに治療を行っていくことが重要となります。最初は対処療法で個々の症状にアプローチしていくことで少しでも心身へのストレスを軽減させていくことはQOL(生活の質)の向上につながるのです。非ホジキンリンパ腫の悪性リンパ腫の発症リスクが高まることが言われており注意が必要です。
症例
50代 女性
一年前から口の渇きが気になり始め、病院へ受診したところシェーグレン症候群と診断された。
病院で処方された唾液の分泌を促す薬を服薬して何とかしのいできたが、他の方法も試してみたいという思いで鍼灸を受けることを決意した。
ドライマウス以外の症状は出ていないが口の渇きはひどく気になり、食事の際は水を飲みながらではないと食べづらさを感じる。特にパンやおせんべいは口の中にくっついてしまい、うまく飲み込めない。
口の渇きがひどいため常に飴をなめて口内を潤している。
緊張したり、精神的ストレスが強くなると口の渇きが一層強くなる。
当院の施術
まず自律神経測定器で、今のお身体の状態を確認していきました。
自律神経の交感神経が優位になっており、副交感神経の働きが弱い状態でした。
交感神経が高くなると唾液の分泌が減少してしまうため、自律神経調節を目的とした施術を行いました。
次に顎周辺の経穴に刺鍼し、そこに低周波の電気を流し唾液腺の分泌を促し、首肩の筋緊張を緩めていきました。
経過
1回目
大きな変化はないが、施術直後は唾液が出てきたような気がする。
2回目
少しずつ口の中が潤ってきた。
3回目
施術した日の食事は楽に喉を通るが、時間が経つと乾いてしまう。
4回目
低周波の周波数を変更した。
いつもより唾液の分泌が感じた。
5回目
パンでなければ、水分補給を全くしなくても食事ができるようになってきた。
6回目
食事が苦痛ではなくなってきた。
楽しく食事ができるようになるまで改善してきた。
・大臀筋
お尻を形成する大きな筋肉で、臀部の筋肉の最も表層部に位置します。大臀筋の作用は主に股関節の伸展動作に働き、その他に股関節を外旋させる作用もあります。歩行や走る動作など全ての日常動作に関与します。
・中臀筋
大臀筋の上部に位置し、一部は大殿筋に覆われている筋肉で、股関節の外転、屈曲、伸展、内旋、外旋といった動きに関与します。直立のとき、小臀筋と共に骨盤を支える筋肉で、例えば歩行中体重が片足にかかった時に逆側に骨盤が傾かないように保持する筋肉でもあります。もし、この筋肉に障害や機能不全が起こるとトレンデンブルグ徴候が見られるようになります。
※トレンデンブルグ徴候とは
立っているときや歩行の際に反対側の骨盤が下がってしまう現象で、股関節障害の検査法の一つです。骨盤が下がることで重心が左右に振られ、側方に揺れるような歩き方になってしまいます。
・小臀筋
小臀筋は臀部上部側面にあり、中殿筋の深部にある筋肉です。作用においては中臀筋とほぼ同じで主に股関節の外転や内旋などの動作に関与します。中臀筋と同じように片足に重心をのせたときの軸足の骨盤の安定にも関与しています。
深層外旋六筋(股関節の外旋動作に重要な働きをする筋肉群)
・梨状筋
大臀筋のさらに深層にある筋肉で、文字通り梨の様な形をした筋肉です。主に股関節の外旋に働く筋肉ですが、深層外旋六筋のうち上方に位置しており貢献度は低いものの股関節の外転にも関与しています。また、股関節の安定にも関わる筋肉です。日常動作では、歩行時に方向を転換する際や、立位など股関節を安定させる全ての動作に関与しています。
梨状筋下孔を通る坐骨神経は梨状筋の絞扼を受けやすいので、その影響で坐骨神経痛が出現する場合があります。これを梨状筋症候群といいます。
・内閉鎖筋
股関節の外旋動作に関わる深層外旋六筋の中で最も強力な筋肉で、日常動作では歩行の安定、歩行時の方向転換時、体の向きを変える際の軸足の動き、直立姿勢での骨盤の安定などに貢献しています。
・外閉鎖筋
外閉鎖筋は内閉鎖筋の裏側にあり、外旋深層六筋の中でも最も深部に位置する筋肉です。作用として股関節の外旋と股関節の内旋にもわずかに関わっています。日常動作には歩行時などの方向転換で体の向きを変える時に動きのサポートと制御に働きます。
臀部の痛みを引き起こす怪我や疾患
・腰椎椎間板ヘルニア
椎間板は繊維輪と髄核でできていて、背骨を繋ぎクッションの役割をしています。その一部が出てきて神経を圧迫すると腰部、臀部痛、下肢に痺れや痛みが放散したり、足に力が入りにくくなります。椎間板が加齢などにより変性し繊維輪に亀裂が起こり断裂して起こります。悪い姿勢での動作や作業、喫煙でヘルニアが起こりやすくなることが知られています。
・梨状筋症候群
スポーツなどによる梨状筋を含む股関節周囲の筋肉が硬くなり臀部に痛みを生じる状態を指します。梨状筋の真下を通る坐骨神経を圧迫すると臀部痛、大腿後面痛などを引き起こします。
・腰部脊柱管狭窄症
脊柱管は背骨の中央にあり、脊髄とそれに続く神経(馬尾神経)が通っています。この脊柱管が何らかの原因で狭くなり中を通る神経を圧迫するのが脊柱管狭窄症です。
臀部、下肢の痛み、痺れ、間欠性跛行などの歩行障害が見られます。脊柱管狭窄症の原因は加齢による椎間板の変性や後方の椎間関節の肥大と考えられています。
・仙腸関節障害
仙腸関節とは骨盤にある仙骨と、腸骨の間にある関節で、周囲の靭帯により強固に連結されています。仙腸関節は脊椎の根元にある関節で3~5mm程度の可動域しかありません。この関節では日常生活の身体を支える働きとして根元から脊椎のバランスをとっています。中腰での作業や不用意な動作、あるいはその繰り返しの負荷で関節に微小な不適合が生じ、周辺の靭帯や筋肉に痛みが発生してしまいます。
症状として片側の陽臀部痛、下肢痛が多く見られます。
・肉離れ
肉離れとは運動やその他日常生活の動作で、筋肉に急激な負荷がかかった際に起こりやすい症状です。筋肉が吸収できないほどの負荷が筋肉にかかると筋肉がダメージを受けて損傷し、患部が腫れたり内出血を起こすなどの症状を起こすこともあります。軽度、中度、重度とあり症状の度合いによっては歩行困難となるほど生活への支障も出やすいのが肉離れです。
臀部の痛みの原因は様々ですが、大きく分けて3つの原因が考えられます。
・肉離れ、打撲などの外傷
・椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの腰部の構造的な変形
・腰と臀部の筋肉との連携に機能不全が起きている状態
肉離れや打撲などの外傷による臀部痛は痛み出したきっかけを本人が自覚している場合が多く、損傷の程度が大きくなければ治癒までの期間を安静に過ごしていればその後長期にわたって痛みが続くことは通常ありません。
鍼灸治療では炎症による痛みでも、患部の血液循環を促進し炎症物質の代謝を早めたり、お灸による抗炎症作用により治癒を早める効果が期待できます。
腰部の構造的な変形の場合は臀部の知覚を支配している神経に圧迫や摩擦といった刺激が加わるとその神経の影響下に痛みや痺れが現れます。そのため腰や臀部、下肢のツボに鍼やお灸で刺激を与え、血液の循環を良くしたり筋肉の緊張を和らげることで神経の圧迫や摩擦を軽減させ症状を抑えるのが目的となります。
筋肉や筋膜、靭帯などの軟部組織に機能不全が起こる原因は様々で、お仕事などで長時間の座位、立位、反復的な負荷などによって臀部の筋肉が緊張していたり、姿勢不良による関節のバランスの崩れ、産後の骨盤の関節のねじれや歪み、スポーツによる使いすぎなどが挙げられます。
鍼灸治療では腰部、臀部、下肢の重要なツボに鍼やお灸で刺激を与え、血液循環の促進と筋肉の過緊張を和らげ関節のバランスを整えます。また、必要であれば鍼に微弱な電気を流すことで痛みを抑制する効果を促していきます。
また、当院では自律神経調整の治療も合わせて行い、内臓機能を高めたり全身的な血行を促進し、免疫力を高めることで、全身的なバランスを整え症状が治癒しやすいお体の状態を整えていきます。
40代 女性
デスクワークで長時間座っていることが多く、1時間程座っていると右側のお尻の部分が痛く太とももの裏に軽いしびれが出るようになってしまった。
接骨院などでマッサージを受けていたがあまり改善されなくなって鍼灸治療に興味を持って当院にご来院されました。
治療
身体の筋肉が固まってしまっている所など触診をしていった結果、腰部と臀部の筋緊張、大腿外側部や鼠径部の筋緊張もみられました。
まずうつ伏せになって頂き腰部や臀部、大腿外側部の筋緊張の見られる部位に鍼を刺して電極を繋げる鍼通電療法を行っていきました。その後、大腿周りの筋肉をストレッチなどでもほぐしていきました。
次に仰向けとなって頂き、鼠径部にも鍼を刺してゆるめるほかに大腿前面と下腿前面の筋肉にもアプローチを行っていきました。
経過
毎週末に1回ほどの治療ペースで2ヶ月ほどご通院して頂きました。
30分~1時間ごとに立たないと臀部の痛みが耐えられない程でしたがだんだんと痛み始める時間が延びてきて最終的にはほぼ痛みやしびれを感じないようになりました
症例 2
40代 男性
もともと腰椎椎間板ヘルニアを患っておりだましだまし生活を送っていたが、ここ2,3週間前から臀部の痛みがひどくなってきた。痛みの感覚は痺れというよりも鈍痛で、少し長い時間の歩行や椅子に座っている時間が長いと痛みが増してくる。
職業は美容師で座位や中腰の姿勢で作業することが多く、コルセット無しでは仕事できない状態。
腰痛もあるが、臀部が辛すぎて腰の痛みは軽く感じる。
当院の施術
初回は仰向けとうつ伏せになると痛みが強くなるため、横向きで施術を行いました。
臀部を触診すると、大殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋といった浅層の筋肉の緊張が強く感じられました。
臀部や腰周囲の筋緊張が強い場所や、トリガーポイントに鍼で刺激し低周波鍼通電で固まった筋肉を緩めていきました。
主訴に対して以外にも全身の血流の改善と自然治癒力を高める目的で自律神経の調節も同時に行いました。
痛みが軽減してきたら、首肩コリや他の症状に対する施術も同時に行っていきました。
経過
1回目
少し痛みが軽減した。
まだコルセットは不安で外せない。
2回目
少しずつ痛みが軽くなってきている。
3回目
徐々に痛みが軽減。施術後は楽になるが、仕事をしているとまた痛くなる。
4回目
痛みがかなり楽になってきた。
筋肉の張りも取れてきた様子。
5回目
ためしにコルセットを外して仕事を一日してみたが、問題なく過ごせた。
当院の視神経委縮に対する治療の目的は、目周辺のツボにハリやお灸を施すことにより目の血行状態をよくします。またハリに電極をつないで微電流を流す場合もあります。
お身体の状態によって目の周りに低周波電流を流します。また、首肩部にも低周波を流して板状筋群や胸鎖乳突筋などの過緊張状態を緩和させます。
神経は電気信号によって情報を伝達しますが、視神経の委縮が起きるとその電気信号は途絶えて周りの神経細胞などにも波及しかねません。低周波はそのような波及を防ぐ目的に繋がります。
また目の周りの筋肉を刺激することで周りの組織の血流改善を促し、萎縮した視神経にアプローチします。
はり治療の有効性としては、内因性オピオイドによる鎮痛効果・自律神経の調整作用による血流・神経系・内分泌系・免疫系の改善が挙げられ、眼科疾患の改善につながると考えられます。ただし、強い炎症性のものや外傷性で間もないものに関しては症状を悪化させる可能性があるので刺激量を調節しながら施術致します。
目の周りで主に使用する経穴は、太陽・攅竹・四白などを使用します。その他はその日の身体の状態を診て使用経穴を判断致します。
また、東洋医学の観点により、視神経委縮は五臓六腑の肝に深く関係しているので肝に関する経穴を用いて肝血を補うことや肝気の巡りをよくします。
その他に当院では、東洋医学の診断方法と自律神経測定器に基づき全身の調整施術も行っていきます。部分的な治療ではなく全身を治療することは東洋医学の特徴でもあり、全身を施術することにより人間が本来持っている自然治癒力を回復します。
当院の視神経委縮の施術目的は、まず視神経委縮の進行を止めて、それから症状を少しずつ回復に向かわせるということです。視神経委縮は進行性の疾患であり、それを食い止めることが最も重要です。眼科と並行して通院していただき、少しでも患者さんのお役にたてるよう努めます。
東洋医学では五臓六腑の肝は目に開竅するといわれており、眼の疾患は肝機能の障害が深く影響していると考えられています。視覚の異常や運動系の異常などは肝血との関係が深く不足するとそれらの症状が見られるようになります。
また肝は精神情緒の安定、自律神経系を介した機能調節もおこなっており、精神的ストレスは肝気を滞らせて巡りを阻害します。
肝血不足や肝気の停滞は眼の障害を引き起こします。それは視神経委縮の原因となります。
40代男性
突然右目の視界が靄がかかったように見えにくくなり、視力が低下して病院に行ったところ視神経萎縮と診断された。様々な病院で様々な検査を受けたが特に原因は分からずに経過観察と言われた。視力の低下の他に視野が狭くなったり色覚の異常も感じられるようになり、病気の進行を止めて少しでも改善をしたいということで当院にご来院されました。
施術
まず、自律神経測定器で自律神経の状態を把握してから施術していきました。この方の場合、交感神経の活動が活発で常に筋や血管が緊張状態にあることが考えられ、それが目にも悪影響を与えてしまっている可能性があったので自律神経の状態も整える施術も並行して行っていきました。その他、東洋医学で視神経の重要な経穴が頸部に存在することや背部兪穴と言いまして、背部にも五臓六腑の重要な経穴が存在することからまずうつぶせの施術で頸部と背部兪穴の経穴を主に施術したのち、仰向け姿勢となり、目の周りの経穴と自律神経系の調整経穴を用いて施術していきました。
施術の間隔としましては、最初の10回ほどは週に2回ほどの施術でそれ以降は週に1回ほどでした。施術開始して1カ月ほどは特に変化が見られず症状が悪くなるということも見られませんでした。それから2か月後の眼科の検診では、一番悪い時の視力が0.07だったの対して0.3までに回復。日常生活ではまだまだ生活しにくい状態でしたが、発症時に比べるとだいぶ楽とのことで施術間隔のペースを落として通院加療中です。
症例2
30代 男性
視界が悪くなり、左目の痛みが発症したため眼科を受診したところ炎症性の視神経萎縮と診断された。発症してから徐々に進行し、色覚の減少や視界の狭窄がみられ少しでも進行を止めたいと思い来院した。
仕事はデスクワークで、もともと慢性的な眼精疲労とドライアイが気になっていた。
目の症状以外には、頭痛や肩こりがあり夜眠れないこともある。
当院の施術
まず、自律神経測定器で自律神経の状態を確認していきました。
交感神経が副交感神経に比べ高くなっており、自律神経の乱れを確認できました。
交感神経の過剰な働きは血管を収縮するため眼の血流を阻害し、萎縮の進行を促進してしまいます。
そのため、まずは自律神経を整える施術を行い、次に首肩の筋緊張を緩めるためにコリに対してしっかり刺激を入れていきました。
最後に目の周囲にあるツボに刺鍼し低周波の電気を流していきました。
また、お灸も同時に行い、炎症を抑えていきました。
施術間隔は週に1~2回。
鍼が初めてで少し不安ということもあり、序盤はあまり刺激を入れず、慣れてきたら徐々に刺激量を上げていきました。
経過
1回目
まだ大きな変化はないが、首肩が軽くなった。
2回目
眼の痛みが軽快した。
3回目
眼の状態はあまり変わらないが、頭痛が取れてよく眠れるようになってきた。
4回目
眼の痛みは気にならなくなってきた。
5回目
病院に受診したら炎症は消え、萎縮の進行は抑えられている。
現在も通院中。
視神経委縮とは視神経を侵すいろいろな疾患が進行して、部分的ないし完全に視神経が侵されて視覚が部分的にまたは完全に失われる状態を指しています。
網膜の視細胞から伸びた神経線維は、眼底の視神経乳頭に集まって視神経となり、ここから眼球外に出て頭蓋内に入り、大脳半球の後極に近い視覚領に情報を伝えます。視神経は視覚情報を伝える100万本以上の神経線維を含んでいます。
視神経は網膜に映った物の形や色、光などの情報を脳神経細胞に伝達するという役割を担っているので、視神経が障害されると当然視機能は果たせなくなり、視力の減退や視野の縮小などが主な症状として現れます。
視神経委縮は様々な原因で視神経に障害がおこりその後の変化として現れる疾患です。視神経委縮には単純性視神経委縮、炎症性視神経委縮、緑内障性視神経委縮、遺伝性視神経委縮があります。またその発生原因がわからない場合も少なくありません。
ⅰ)単純性視神経委縮
単純性視神経委縮とは梅毒、頭蓋底骨折、脳腫瘍、内頸動脈瘤、外傷による視神経管骨折などが原因で起こる視神経委縮をいいます。
ⅱ)炎症性視神経委縮
炎症性視神経委縮はうっ血乳頭や乳頭炎、視神経炎の経過の末期であり、それらが原因で起こる視神経委縮をいいます。
ⅲ)緑内障性視神経委縮
緑内障性視神経委縮は緑内障で眼球の中の圧力が高い時に視神経が圧迫されて起こる視神経委縮で視神経乳頭の陥没が見られます。
ⅳ)遺伝性視神経委縮
遺伝性視神経委縮は視神経が正常に発達しなかった場合にみられる視神経委縮です。思春期の男子に多く発症して、両眼性で高度の視力障害が急激に起こるレーベル病のほかに常染色体優性遺伝や劣性遺伝の視神経委縮があります。
橈骨神経とは、頸椎から鎖骨の下部を通り、腋の下を通って上腕骨の外側を回り込み、前腕の筋肉である伸筋に通じる神経で、正中神経や尺骨神経と並び、腕を走る大きな神経の一つで、手首を反らしたり、指を伸ばしたりする神経です。
感覚領域は手の背部で親指、人指し指とそれぞれの水かき部を支配しています。橈骨神経麻痺とはこの橈骨神経が何らかの原因で障害されることを指します。
長時間上腕部に圧迫をかけることで発症することもあって腕枕の状態で発症することもあるため「土曜日の麻痺」や「腕枕症候群」「ハネムーン麻痺」といった通称名も存在します。
上腕部での麻痺の原因は開放創や挫傷(ケガ)、上腕骨骨折や上腕骨外側上顆などの骨折、圧迫などにより生じます。
肘での麻痺の原因はガングリオンなどの腫瘤、腫瘍、骨折などの外傷、神経炎、運動のし過ぎなどによる絞扼性障害によって橈骨神経麻痺の症状が出現します。
しかし、原因が無いのにもかかわらず発症する場合もあります。
橈骨神経は手首や指先の動作に関連した筋肉支配に関与しているため手指や手首を反らしたり伸ばしにくくなります。(下垂手)また、障害部位に応じて親指、人指し指、中指の手の甲から前腕の親指側の感覚が障害されます。
感覚障害の有無や、運動障害をもとにしてなされます。
下垂手や下垂指の所見は重要な判定項目になります。また、神経麻痺では神経が障害を受けた部位を外部から叩くと支配領域に痛みが出現することがあります。
これを「ティネル兆候」といいますが、この所見も診断には重要です。その他、麻痺を生じるようになった原因検索や症状の程度の評価を目的として、レントゲン写真やMRI,エコーなどの画像検査、筋電図検査などが必要に応じて行われます。
外傷や腫瘍などがきっかけとなり発症した場合、観血的な処置(手術など出血を伴う処置)を行うことで原因を排除します。
また、局所の安静のために固定をしたり、ビタミンB12や消炎鎮痛剤の投与などの保存的治療で経過観察を行うこともあります。
また、拘縮(関節可動域制限を起こした状態)を予防するためのリハビリテーションも大切です。保存療法を行っても症状の改善が見られない場合には手術療法が行われることになります。橈骨神経麻痺が進行すると神経障害が持続し、最終的には筋力の低下を呈する危険性もあります。
そのため神経損傷があるものであれば神経剥離、神経縫合、神経移植などが行われます。筋肉の障害が強く、筋力の回復が見込めない場合腱移行手術が選択されることになります。
橈骨神経の走行は、東洋医学で考えられている経絡の走行上で『手の陽明大腸経』や『手の太陰肺経』の走行上と似ています。
東洋医学では、大腸経や肺経の気血が滞ってしまうことでその走行上に痛みや痺れが出てしまうことで橈骨神経麻痺のような症状が出てしまいます。
橈骨神経麻痺走行上の筋肉に鍼を刺して電気を流すことで刺激を与えることで回復を図ります。特に上腕部や肘中央部に橈骨神経の絞扼部があることが多いためその部分の筋緊張を取り除いて神経や血管の滞りを解消させていきます。
筋肉や神経は電気信号で動いています。その筋肉や神経に直接鍼通電療法を施すことによって麻痺の解消を促していくのです。
また東洋医学的観点より、五臓六腑の『肺』や『大腸』のツボを用いて治療をしていきます。その他、頸部や胸部の筋緊張が原因で神経麻痺が起きることもあるためその部分の筋緊張も取り除いていきます。
症例1
50代 男性
経過
6週間ほどまえに左手を下に寝てしまったことで橈骨神経麻痺を発症。整形外科に通院してマッサージや電気治療、ビタミン剤などの処方を受けたがなかなか改善されなかった。普段から手首が垂れないように添木をして対応。左手の背屈動作がほぼできずに親指辺りのしびれも出ている様な状態。
当院の治療
まずうつ伏せで首肩回りの筋緊張を見ていきました。頸部の硬さや左肩甲骨外側の筋緊張が強い状態でした。
うつ伏せの施術ではそれらの筋緊張の緩和やその他腰痛の症状もあり、併せて鍼灸施術を行っていきました。
次に仰向けとなり左上肢を中心に施術。左上腕部や前腕部、肘部外側に特に強い固結があり、それらの部分と左手親指の痺れが強く出ている部分と左タバコかの部分にも鍼を刺して電気を流す鍼通電治療を行っていました。
治療経過
一回目の治療後から少しずつ背屈動作ができるようになってきました。鍼通電治療時にも最初は電気を流しても筋肉の収縮反応が全く見られませんでしたが、少しずつ腕橈骨筋などの筋腫縮反応が見えてきました。5回目の施術後には電気鍼治療時に親指が動く反応が初めて見えました。
日常生活で徐々にですが添木を外せる時間も出てきて上腕部の筋肉痛を感じられるようになってきました。10回の施術で病院で8割ほどに橈骨神経麻痺が回復していると言われある程度の動きが出来るようになってきましたが、まだ力入り具合はよくなく右と比べると握力が明らかに低下していました。
13回目の施術後ほぼ橈骨神経麻痺の症状は完治。まだ筋力は少し低下していましたが後は日常生活をこなしていくことで筋力をつけていくということで施術を終了しました。
症例2
40代 男性
1週間前に、飲酒後左手を枕にし机に突っ伏して3時間ほど寝てしまい、橈骨神経麻痺になった。下垂手と水かき辺りの痺れの症状が出ている。
整形外科ではビタミン剤が処方された。
普段から鍼灸院に通われており、鍼灸治療で症状を改善したいと思い、当院にご来院された。
施術
麻痺が出ている橈骨神経走行上の筋肉に鍼通電を行いました。左手の動きの悪さから、首肩周りの筋緊張が強く見られたため、首肩へも鍼通電を行いました。
また、症状に対する不安感により、眠りが浅い状態が続いていた。自律神経測定器の結果、交感神経優位、疲労度、肉体的ストレスが高い状態が見られた。副交感神経を働かせ睡眠の質の改善、全身の血流改善を目的に自律神経調整も同時に行なっていきました。
来院頻度は1週間に1回。
一回目
施術後は、首肩周りが軽くなった。
二回目
手首の動きに変化なし。眠れるようになった。
三~五回目
以前よりは手首が動くようになっている。
六回目
手首の動きはほとんど回復した。
痺れの感覚も弱くなり、日常生活で回復していくのを待つ。
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
当院の片側顔面けいれんに対する当院の治療は、第一に顔面部・頭部の筋肉の緊張を和らげます。目の周りや顔の筋肉を緩めることで症状緩和につながります。
また、自律神経を整えることにより、疲労やストレスの緩和もはかります。
片側顔面けいれんとは、顔の片側の筋肉が自分の意思に反してピクピクとけいれんを起こす病気です。
はじめは目のまわりのけいれんから始まることが多く、徐々に額や頬、口、あごにまで広がるのが特徴的です。
症状の進行はゆるやかですが、放置して自然に治ることはありません。
症状が強くでると顔がキューッと突っ張って歪んだ状態になったり、筋肉の麻痺が生じることもあります。
特に50〜70歳の中高齢者の女性に多く発症します。
また、仕事などで緊張やストレスがかかる場面で症状が強く出ることが多く、日常生活にも支障をきたします。
片側顔面けいれんは神経血管圧迫症候群のひとつであり、脳の深部で顔面神経が血管の圧迫を受けることが原因であると言われています。
多くの場合、高血圧や動脈硬化により脳の血管が神経を圧迫することで神経に興奮がおこり、顔のけいれんやゆがみとして現れます。
また、ストレス過多な状態は交感神経が活発になりますので、神経が興奮し、よりけいれんを引き起こしやすくなります。
症状の悪化を防ぐ方法としては、
・顔に冷気が当たらないようにする(冷やさない)
・十分な睡眠をとる
・ストレスを避ける
・禁酒
・禁煙
などが挙げられます。
50代男性
15年前に右目の下あたりがピクピク痙攣するようになった。範囲は徐々に頬や口まで広がり現在は右側全体に痙攣がある。脳神経外科で顔面神経の圧迫箇所が見つかりボトックス注射をするも特に変化はない。手術も提案されたが抵抗があるため鍼灸治療を試してみたいとのことで来院された。
1日8時間ほどデスクワークをしており首・肩こり(特に右側)が慢性化している。
首の付け根は雨の日など気圧の変化があるときは頭痛が出る。
人前で話すときに症状が出てしまうことがストレスになっている。
当院の治療
自律神経測定器の結果によると交感神経がかなり優位な状態であることが分かった。
常に神経が過敏になっているため、副交感神経を高め、リラックスできる治療を行う。
側頭筋や胸鎖乳突筋も右側のみ硬結があるため筋緊張の緩和を目的に鍼と灸を行った。
また、慢性的な首・肩こりも症状の原因になるため、全身治療によって症状緩和をはかった。
経過
◇1回目◇
治療後、痙攣の引きつり方が弱まった。
3日後にはもとに戻った。
右肩のこりは軽減した。
◇2回目◇
1回目同様、引きつりが弱くなり5日ほど調子がよかった。
◇5回目◇
痙攣はあるが引きつる感じの痙攣はなくなった。
肩こりも気にならない。
◇8回目◇
回数を重ねるごとに痙攣の回数も減っている。
家族からもかなり減ったと言われた。
◇15回目◇
雨の日など体調を崩しやすいときは痙攣が出るが、普段はあまり気にならない程度にまで回復。
今後は施術間隔をあけて治療を続ける。
40代女性
右目下から頬の部分にかけてピクピクと痙攣する症状でご来院。発症して3ヶ月ほど。病院ではMRIの検査を受けたが、特に脳の障害はみられなかったとのこと。
健康診断では、血圧は高くなく、脂質異常は指摘される程度でいつも健康と診断されていました。
3ヶ月ほど前から主に右目下のピクピクとした痙攣が気になり始めて今では1時間に4〜5回程度の頻度で5分間ほど継続する痙攣に悩まされている。病院では、特に治療法は提示されずに葛根湯を処方されて目の酷使を避けるように指導されたのみ。
なにか他に対処法はないかと検索をかけてみたところちょうど当院のホームページを見つけて鍼灸治療で以前腰痛が軽快したことがるので、鍼灸治療には抵抗がなかったため当院にご来院されました。
痙攣は仕事中など集中状態のときはあまり気にならないが家族との食事中や下を向いて顔を洗うときやお風呂に入っているときに必ず発症していた。
問診では仕事や家庭でのストレスも多く、自律神経も乱れがちではとご本人的にも感じておられたため自律神経測定器で測定の上、全身の自律神経のバランスを整える調整施術も行っていき、主に右目周りや右頬中心に鍼やお灸の施術を行っていきました。
経過
1回目の施術後、当日と翌日は痙攣の回数が激減。あまり気にならない状態だったが、時間とともに徐々に痙攣の回数が増えていってしまった。施術3回目辺りまではそのような状態で施術後数日は状態良くなるが戻ってしまう。
4回目以降右目周り中心に鍼通電治療を導入。鍼通電治療を開始して2回ほどで痙攣の回数が1日に2〜3回ほどになるまでに改善。日を追うごとに良くなっていきました。
8回目の施術後、仕事にも支障をきたすことなく、日常生活も普通に過ごすことができるようになったので治療を終了した。
40代 女性
1ヶ月ほど前から左顔面部の痙攣がでるようになった。慢性的な舌の痛みと左側頭部痛にも悩まされている。
顔面部は左のほうれい線から鼻の横、目頭にかけて、時々ピクピクと痙攣する。側頭部は、触れるとピリピリと痛む時がある。右側の舌は違和感とジンジンするような痛みがある。側頭部と舌の痛みは、意識をしなければ、気にならない。
病院の検査の結果、特に問題は見つからなかった。歯医者も受診したが、口腔内の問題もなかった。
不安感が強く、自律神経の乱れも気になるため、当院へご来院された。
施術
1ヶ月前に引っ越しや職場が変わるといった、環境の変化があり、普段よりストレスを感じやすく、心身ともに緊張状態が続いていた。
環境の変化により、自律神経のバランスを乱し、交感神経が優位な状態が続き、顔面の筋肉のけいれんを引き起こしたと考えられる。そのため、自律神経を整え、副交感神経を働かせる施術を行いました。また、側頭部や舌の痛みも、時期によって気になる時と気にならない時があることから、自律神経の乱れによる血行不良や神経伝達の不具合によるものと考えられる。
全身的な自律神経調整施術と、顔面部の血流改善を目的に顔面部の経穴に鍼とお灸を行った。
来院頻度は1週間に1回。
一回目
施術後は、身体が緩む感覚があり、リラックスできた。
二回目
顔面の痙攣の回数が減った。
三回目
仕事で緊張するような場面以外では、顔面が痙攣することはなくなった。
四~六回目
顔面の痙攣は1日1回程度に減った。側頭部と舌の痛みも程度がマシになってきた。不安感が軽くなり、以前より気持ちが明るくなった。
七回目
顔面の痙攣の症状はでなくなった。側頭部や舌の痛みはまだ少し気になる時があるが、以前より楽になった。
・肝うつ
東洋医学ではストレスを発散させるのは五臓の「肝」(肝臓)の働きと考えます。
過剰なストレスで肝が弱ると、ストレスを発散できずけいれんが起こりやすくなります。
また、筋肉は肝が蓄える「血(けつ)」の栄養によって養われるため、肝機能が低下すると筋肉の状態が悪くなりけいれんを起こすこともあります。
・血虚
けいれんは無意識に筋肉の収縮が続いている状態です。
筋肉は「血(けつ)」の栄養によって養われるため、体内の血が不足すると筋肉の状態も悪くなり、けいれんを引き起こします。
また、血には気持ちを落ち着かせる鎮静の働きがあります。
そのため血が不足すると精神のたかぶりを抑えにくくイライラやストレスからけいれんを起こしやすくなることもあります。
・瘀血
片側顔面けいれんは動脈硬化により顔面神経が圧迫されて起こるとされています。
東洋医学では動脈硬化につながる要因を「瘀血」と考えます。
瘀血の原因は食の不摂生、ストレス過多、疲労だと言われています。
瘀血改善には十分な休息とストレス発散が大切です。
・眼瞼けいれん
まぶたがけいれんする、眩しくて目が開けられないなどの症状がみられます。
両目のまぶたにのみ発症し、範囲は広がりません。
・チック症
頻繁なまばたきやしかめっ面などの症状がみられます。
小児期や青年期に多く、自分の意思で一時的に症状を抑えることができます。
部位は移動します。
・眼瞼ミオキミア
片目のまぶたが一部ピクピクけいれんする症状がみられます。
数日から数週間で自然に消えます。
私たちの体内の環境を一定に保つ働きをするのが、自律神経です。
自律神経は交感神経と副交感神経の2つからなり、私たちの意思と関係なく呼吸や心臓の拍動・血圧・体温などを調整しています。
この2つのバランスが崩れると、全身疲労感・頭痛・肩こり・めまい・便秘・下痢・動機・食欲不振・異常発汗などのさまざまな症状があらわれます。
片側顔面けいれんの特徴である目の周りや顔の筋肉の不快症状も、自律神経が乱れることででることがあります。
過度なストレスは自律神経が乱れる原因にもなりますので、日頃のストレスケアが重要です。
・趣味の時間をつくる
・しっかり休息をとる
・湯舟につかる
・深呼吸をする
・適度な運動をする(軽いジョギングなど)
などリフレッシュすることを心がけましょう。
・のみ薬
症状が軽度の場合、薬で経過をみます。緊張がきっかけで起こることもあるため、鎮静薬や抗不安薬を内服します。
・ボツリヌス毒素治療
けいれんのある部位に注射をし、一時的に筋肉を麻痺させてけいれんを和らげる治療です。効果は3~4か月持続し、症状が出現したら再度うつ必要があります。
・手術
薬物療法がうまくいかないときは、異常な動脈と神経との間に小さなスポンジをおく手術が行われます。
スポンジをおくことで神経の圧迫がなくなり徐々に症状が改善しますが、治癒率は100%ではなく、わずかなけいれんが残る場合もあります。
当院の複視に対する施術は、第一に目周囲のツボにハリやお灸を施して、目の血流量を上げて眼筋の疲労を回復するように促します。
眼筋の麻痺によって複視が出ている場合は、当院独自の電気ハリを用いて麻痺している筋肉に刺激を与える場合もございます。
また複視は五臓六腑の肝に深く関係しているので肝に関する経穴を用いて肝血を補うことや肝気の巡りをよくします。複視は、体の疲労度が強い時に症状が悪化しやすいため全身の調整施術も行っていきます。そうすることで、人間本来の自然治癒力で高い施術効果が期待できます。
複視の方は、日々忙しい時を過ごしており、自律神経のバランスが悪い方が多いです。当院では、自律神経の状態をはかった上で自律神経調整療法を行うことで複視との相乗効果が期待できます。お悩みの方はご相談ください。
その他、複視患者さんの場合頸肩の筋が緊張しすぎている場合が多く、頸肩の筋緊張の緩和をすることで複視の治療にも繋がります。
中医学では五臓六腑の肝は目に開竅するといわれており、眼の疾患は肝の機能の障害が深く影響していると考えられています。肝血が不足してしまうと視覚の異常や運動系の異常などがみられます。
そのほか肝は運動神経系の調節に関係があると考えられています。複視は、目を動かす筋肉の麻痺によっても引き起こされるので、そのことからも複視は肝に深く関係していることがわかります。
30代 女性
幼少時代から読書など長時間するため視力が悪く強度の近視で、眼鏡やコンタクトで過ごしていた。社会人となり、パソコン作業をする機会が増えて、近視のほかドライアイなどの症状で悩まされていた。3年ほど前から仕事の量が増えて複視の症状が出るようになってきた。最初は特に目の疲れを感じ始める夕方に複視の症状が出ていたが、最近朝から複視の症状が出るため眼科を受診。
眼科では、様々な検査をしたが、はっきりとした原因はわからず目が軽い内斜視になっているため斜視となっているのではないかと言われた。
内斜視で複視になっている可能性があるためそれを矯正するプリズム眼鏡を眼科医から勧められたが、眼位が安定されていないためプリズム眼鏡は作ることができないといわれたとのこと。薬も処方されず、経過観察と言われて何か治療法はないかと探していたところ当院のホームページをたまたま見つけてご来院された。
当院の治療
・問診
目の疲れに繋がる生活習慣などもあるため詳しく問診していきました。
・自律神経測定
目の動きは、自分の意思とは無関係に働いている自律神経の役割も大きいため自律神経の状態を測定しました。
測定した結果交感神経が高く、精神的ストレスも高い状態という検査結果が出ました。
・治療
まず、仰向けにて自律神経調整治療を行い、うつ伏せで首肩の筋の緊張緩和・五臓六腑の重要なツボを刺激しました。そして最後に仰向けにて目の周りの施術をしました。
・治療経過
◇1回目◇
治療後、すぐに効果を実感したとのこと。普段二重に見えているものが二重に見えずに何か月ぶりかの視界になったと言っておられた。
◇2回目◇
1回目の治療後から2日経つと複視の症状が段々戻ってきてしまったが、悪い時と比べると断然いい状態とのこと。
◇3~6回目◇
治療をして症状が経過して仕事が忙しくなるとまた少し複視の症状が出てくるという状態を繰り返していた。
◇7~10回目◇
段々と複視の状態となることが少なくなってきて、10回目終えたころには、日常生活でほぼ複視を感じなくなった。
症例2
50代男性
外国に出張中にいきなり外の景色が二重に見えるようになった。少し疲れが出て寝れば治ると思っていたが、寝ても複視は消えなかった。帰国後、総合病院で検査を受けて左目の滑車神経麻痺と診断された。病院ではビタミンB12を処方されて経過観察と言われただけで、特に治療されなかった。
インターネットで複視の治療を検索していたところちょうど当院のホームページにたどり着いてご来院されました。
・当院の治療
複視の症状が出る前は、仕事が多忙かつ外国ということでとてもストレスを感じていた。睡眠もあまりとれておらず、身体の疲れは溜まっていく一方だったとのこと。自律神経測定器の結果も夜の測定だったのにもかかわらず交感神経の活動が高ぶっていて逆に副交感神経の活動は弱くなっていた。
また、慢性的な肩こりや腰痛もあるということで自律神経を調整する治療の他に首肩腰の筋緊張を緩めてから目の周りの治療を中心に施術していきました。
・治療経過
◇1回目◇
鍼刺激にそれほど敏感ではなかったので、自律神経調整治療・首肩腰の筋緊張の緩和の後、1回目の治療から左目中心に電気鍼療法を行った。
◇2回目◇
まだまだ複視の症状は改善されてはいないが、本人の感覚としては目・身体全体が少し楽になったと感じた。
◇3回目◇
2回目治療後一点を見つめて10秒ほど経つと複視の幅が狭まってくるようになった。
◇4回目◇
3回目治療後5秒ほどで複視のズレが修正されるようになった。
◇5・6回目◇
調子が良くなっていると実感するが、目の症状は4回目からあまり変化が見られない。
◇7回目◇
外出する際はもちろん家の中でもテレビを見る時などは眼帯をつけていたが、家の中では眼帯をつけなくても複視が気にならなくなった。
◇8回目◇
外出していてもあまり怖さは感じなくなり、眼帯をしなくてもよくなった。まだ左右に視線を動かすと少し複視が出る。
◇9回目◇
視線を左右に動かしても複視の症状が出なくなり、日常生活でほぼ不自由を感じなくなった。
症例3
50代女性
当院にご来院される8か月前より複視の症状に悩まされていた。眼科で様々な検査を受けたが、原因は特に特定されずにドライアイを緩和する点眼薬とビタミンB12が処方された。服用していると少し良くなったが、まだ複視の症状がつらく、仕事にも支障をきたしていたため当院にご来院された。
30代より肩こりに悩まされており、肩こりが強く出ると後頭部から左右の側頭部にかけて締めつけられるような頭痛が出ていた。肩こり・頭痛が強く出ていると複視の幅も広くなり、とてもつらいとのこと。特に仕事でパソコンを長時間使った後の夕方以降に症状が強く出る傾向にある。
・当院の治療
治療に入る前に自律神経測定器で自律神経の状態を測定したところ、交感神経の活動が強く出て自律神経の乱れがみられた。治療方針として、
1.自律神経の状態を整えること
2.首肩の筋緊張の緩和
3.目の周りの筋疲労の緩和と血流改善
この3点を重点的に治療していきました。
・治療経過
◇1回目◇
治療後、久しぶりに深い睡眠をとることができて次の日めがすっきりしたとのこと。治療をした次の日は複視の症状が出なかったが、2日目の夜から複視の症状がまた出始めた。
◇2回目◇
治療後、また複視の症状がなくなった。次の治療日までふくしの症状出ていない。目が気にならなくなると首・肩のコリが以前より気になるようになりはじめた。
◇3回目◇
前回治療後から複視にはなっていないが、1回だけ複視になりそうな時があった。
◇4回目◇
仕事が忙しく、こめかみが締め付けられるような頭痛が出た。
◇5回目◇
頭痛と複視の症状は出ないようになってきて、症状落ち着いている
症例4
60代男性
当院にご来院される1年前から複視の症状が徐々に出ていた。パソコンの仕事が中心で目の疲れかと思い、目を休めながらだましだまし過ごしていたがここ1カ月ほど前から物が二重に見える症状が強く出ていた。眼帯をして片目で見ないとつらくて外を出歩けないとのこと。右下を見ると二重の幅がひろくなり、階段を下りるのがこわい。
眼科を受診したところ最初は原因が分からなかったが、検査をしていくうちに眼性重症筋無力症と診断された。
治療経過
◇1~3回目◇
身体は少しずつ楽になっていると感じるが、複視の程度は変わらない。
◇4回目◇
今までは何となく右目が動かしづらいと感じていたが右下の奥の方が動かしづらいことがはっきりとしてきた。
◇5回目◇
ご本人の感覚としては複視の幅がひどい時と比べると半分程度にまでなってきた
◇6~8回目◇
複視の幅が8割程度まで回復。右下を向くと少しぶれる
◇9回目◇
複視の症状はほぼ回復。目が疲れてくると二重に見えるというよりも少しぼやける感じ
◇10回目◇
少し目のピントを合わせづらい感覚はあるがほぼ日常生活には支障はない。
◇11回目◇
目よりも首肩のコリや頭の疲れを感じるようになってきた
◇12回目◇
首肩や頭の疲れも軽減。
◇13回目以降◇
お身体のメンテナンスのために定期的に通院中
症例5
30代 女性
1か月前に軽い脳出血を起こして半身のしびれと軽い麻痺が出ていたが、徐々に回復。物が二重に見える状態も出ていて脳出血の後遺症で右目外転神経が麻痺していると診断された。
当院にご来院されたときには、右目が外側に向かない状態でした。
病院ではまだ見え方に変化がみられているため3~6か月で回復する場合もあるので様子を見ましょうと言われ、早く少しでも治す方法はないかとインターネットで検索されて当院にご来院されました。
初診時、問診を行ったところ飲食業で働いており、夜遅くまで忙しい日が続いて疲れが溜まっていたということでしたので念のために自律神経測定器で自律神経の状態も確認させていただき、施術を行っていきました。
治療方針は右目の電気鍼の刺激量を上げて集中的に眼の周りの施術を行っていきました。その他、交感神経の活動が高い状態でしたので全身調整も並行して行っていきました。
◇1~3回目◇
3回目までは見え方にあまり変化がみられませんでした
◇4回目◇
4回目以降に見え方に段々と変化が見え始め、最初は目に近づけないとスマートフォンの画面が見られない状態でしたが、少し距離をとってもスマートフォン画面が一つに見えるようになってきた。
◇5回目◇
まだ右方向を向くと二重に見えることがあるが部屋の中では眼帯をせずに過ごすことができるようになってきた
◇6回目◇
外の景色や動くものに焦点がまだ合いづらい状態。右目が外側に動くようになってきた。正面時の内斜視気味も改善
◇7回目◇
外でも眼帯せずに過ごすことができるようになった。多少はピントが合いづらかったり、合うまでに時間がかかったりするが日常生活ではほぼ支障を感じない
症例6
40代 男性
3ヶ月ほど前からモノが二重に見える複視の症状が出るようになった。複視の症状が出る前は、仕事が忙しくストレスが多く、睡眠不足な日々が続いていた。仕事はほどんどがパソコン作業で、慢性的に目の疲れを感じている。複視の症状により、細かい文字を読むことや、車の運転に支障が出ている。
病院では画像検査を行なったが、血管や神経に異常は見られず、眼精疲労によるものであると診断された。
施術
複視の原因が慢性的な目の疲れによるものであったため、目の周りの筋肉の疲労緩和と血流改善を目的に、目の周りに鍼通電を行いました。
慢性的な首肩こりにも悩まされており、首肩周りにも鍼通電を行い筋緊張を緩めていきました。
全身的な疲労が溜まり自律神経のバランスの乱し、血流の悪さや中途覚醒の症状が出ていたため、自律神経調節治療も行いました。
来院頻度は1週間に1回。
一回目
複視の症状に変化はないが、目の奥の痛みがなくなった。久しぶりに中途覚醒せずしっかり眠れた。
二回目
複視の程度が軽い時間が増えた。しかし、1日仕事をした後はスマホなど小さい文字は見えにくい。
三回目
いっそう複視の程度はマシになった。睡眠はしっかりとれるようになった。
四〜六回目
日によって複視の程度が変わる。首肩こりが楽になってきた。
七〜十二回目
目を使い過ぎて、疲れが溜まると二重に見える時もあるが、ほとんど気にならなくなってきた。
十一回目
複視の症状は治った。
複視とは一つしかないものが二つに見える状態のことです。複視には片目で見ると一つに見えるのに両目で見ると二つにみえる両眼複視と片目で見ても二つに見える片眼複視があります。
・複視と乱視との違い
物が二重が見える原因は様々なものがありますが、大きく分けて片眼で見ると物が二重に見える片眼複視と両目で見ると複視となる両眼複視とがあります。
片眼複視の場合、白内障など目の病気が隠されている場合もありますが、多くの原因は乱視です。一方、両眼複視の場合は、脳神経の障害や眼筋麻痺、眼筋性の重症筋無力症などがありますが、眼科では原因不明と診断されて当院にご来院される方が多くいらっしゃいます。原因不明ということで眼科では特に治療をされずにビタミン剤などの栄養剤を処方されたという方もいます。
複視の症状は、脳神経の障害などこわい病気が隠れている場合もあるのですぐに眼科や脳神経外科などを受診するようにしてください。その際に複視の症状が出たらまず両目で見て複視となるのか片目だけで見ても複視となるのか自分自身でチェックしてみてください。
両眼複視の原因は目を動かす筋が麻痺する眼筋麻痺で起こる場合がほとんどです。眼球には6つの筋肉が付着しています。この両眼の筋肉の動きのバランスが保たれることによって、私たちはあらゆる方向に目を動かし、焦点を合わせることができるのです。
6つの筋肉はそれぞれ脳神経(動眼神経、滑車神経、外転神経)の支配を受けています。外傷、腫瘍、炎症などの眼の疾患や脳梗塞・脳内出血などによりそれらの脳神経に障害が生じると眼筋麻痺を起こします。眼筋麻痺を起こすと目の動きが悪くなり、斜視の状態となって複視が起こります。
片眼複視の原因は白内障、乱視や水晶体が正常の位置からずれている水晶体脱臼、虹彩離断などがあります。
複視は、片側性・両側性・持続性・ずれの方向により原因がことなります。時間帯や体の疲労度によっても症状の出方が異なる場合があります。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好医院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
後頭下筋群とは、後頭部と首の境目にある筋肉の総称です。詳しくは大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋の4つの小さな筋肉たちのことをいいます。
これらの後頭下筋群は、頭の骨と首の骨を繋いでいる筋肉です。働きは、頭を後ろに傾ける動き(後屈)や首を後ろにそらす動作(伸展)、顔を振り向く時の頭の動き(水平回旋)、頭を横に倒す動き(側屈)をサポートしています。また重要な動きの働きとして、頭が前にカクンと落ちないように後ろで引き留める働きがあります。そのためパソコンやスマホを長時間使う現代では常に働き続けている筋肉たちになります。
後頭下筋群は、首の筋肉の中で1番骨の近くにある筋肉です。後頭下部の皮膚の下の筋肉は、浅いところから僧帽筋、半棘筋があり、1番奥に後頭下筋群があります。そのため後頭下筋群が硬くなると首や頭の動きに直接影響を及ぼします。
また後頭下筋群は脊髄神経によって支配されています。加えて後頭下部の1番奥にあるため延髄に近い筋肉たちです。延髄とは生命を維持する上で重要な中枢が集まっている場所です。心臓や血管などの循環、呼吸、咳、嘔吐、嚥下、唾液分泌、発汗などの中枢が延髄にあります。循環や呼吸などの多くの調節を自律神経が行っております。
次に後頭下筋群の特徴として、筋紡錘とゴルジ腱器官が多数内在していることが分かっています。これらは筋肉の緊張(張力)や長さを感知します。よって後頭下筋群は頭の位置や傾きを敏感に感知して、頭の平衡を保ち、倒れないようにしています。
他にも眼球運動に伴って筋収縮を起こすことも特徴のひとつです。
〈眼の症状〉
眼の奥の鈍痛やだるさ
眼のかすみ
ピントがぼける
頻繁に眼を長時間使うことで眼の周りの筋肉(眼輪筋・雛眉筋)や眼を動かす筋肉(上斜筋や下直筋など)への血液の巡りが滞るため眼の症状が出てきます。眼を動かす筋肉と連動して筋収縮が起こる後頭下筋群にコリや痛みがあると眼の症状が出やすくなります。
〈頭の症状〉
後頭部の鈍痛
前頭部や眉あたりの痛み
頭皮の硬さ、薄毛
後頭下筋群の表層には僧帽筋があり、僧帽筋は後頭骨上項線で後頭筋に接します。後頭下筋群のコリや痛みが僧帽筋や後頭筋に影響することで後頭部の鈍痛を引き起こします。
後頭筋は帽状腱膜により、前頭筋・側頭頭頂筋と繋がっています。そのため慢性的に後頭下筋群のコリがある場合は影響が頭全体に及び、前頭部や側頭部の痛み、薄毛などの症状が現れます。
〈自律神経の症状〉
身体がだるい、疲れやすい
手足が火照る
胃膨満感、便秘下痢
後頭下筋群に多数存在する筋紡錘とゴルジ腱器官は、常に真っすぐ前を向けるよう頭の位置を感知しているとともに、筋の緊張も感知しています。そして筋紡錘は自律神経支配を受けているとされています。他の筋肉より筋紡錘が多い後頭下筋群が緊張していると、自律神経の働きが乱れやすくなります。また後頭下筋群の近くには延髄があり、内蔵や他の組織からも多くの自律神経が集まっている場所です。後頭下筋群の緊張は内蔵や血管、呼吸など全身の自律神経に影響を及ぼすため、全身のだるさや疲れやすさだけでなく、胃や腸の不調をきたします。
現代社会で最も後頭下筋群の過緊張を起こす原因は、パソコン・スマートフォンの使用です。パソコンやスマートフォンの操作では、頭頚部を動かさずに少ない眼球運動のみを長時間行っています。眼の筋肉に疲労が溜まって負担が掛かるとともに、後頭下筋群も眼に伴って収縮するので筋疲労を起こします。
またパソコンやスマートフォンを操作する時の姿勢にも問題がある場合が多いです。パソコンを使う多くの方が、首が前に出ており、肩が内に入って、背中が丸まっている状態で操作しています。この姿勢は首元が強制的に圧迫される姿勢のため、後頭下筋群に圧迫のストレスが掛かり続けます。またスマートフォンを使う姿勢では、首が常に下を向いている状態が続きます。この姿勢は後頭下筋群が引き伸ばされるストレスが掛かり続けます。
こうしたストレスが毎日何時間も掛かり続けることで慢性的に後頭下筋群にコリや過緊張を起こします。
後頭下筋群の鍼灸治療では、首の後ろの痛みだけでなく、眼の症状・頭の症状・自律神経の失調症状を伴うことが多いため、それぞれに合った鍼灸治療をしていきます。
始めに自律神経測定器を用いて自律神経の状態を計測していきます。
後頭下筋群に痛みがある方は交感神経が過活動になっている場合が多く、交感神経の過活動を抑えて副交感神経とのバランスを図ります。
東洋医学的な考え方では自律神経の乱れは全身の気の巡りに不調をきたすと起こると考えられるため、疏泄(気を巡らす働き)を司る「肝」の機能を補うツボを使って治療していきます。
「肝」は五行色体表では眼と繋がりが深く、眼の症状がある場合も「肝」を補うツボを使っていきます。眼の症状がある場合はさらに眼の周りにあるツボも使い、眼輪筋や眼を動かす筋肉の血行を促します。
頭に症状がある場合には首の後ろだけでなく、前後頭部・側頭部にも鍼を行い、頸部の胸鎖乳突筋や肩部の僧帽筋などにも施術していきます。
痛みが発生する原因が日常の生活にあるため、慢性的に症状がある場合が多く、定期的なケアが必要になります。
症例
40代 男性
何年も前から首のコリに悩まされており、特に頭と首の間の所が辛くてたまらない。
指で押しても患部に届いている感覚がなく、深部の筋肉が凝り固まっている感覚がある。
ひどくなるとこめかみから後頭部にかけて締め付けられるような痛みが数日続くこともある。
横を向いたり、上を向くと首の付け根で引っかかるような嫌な感覚があり可動域も制限されている。
マッサージやストレッチではどうする事も出来ないため、鍼灸に藁にすがる思いで来院した。
普段はデスクワークが中心で、1日に8時間以上はパソコンに向かって仕事をしている。
当院の施術
まず、仰向けの状態で自然治癒力や血流を促すために自律神経の調節を行いました。
自律神経が乱れてしまうと血流が悪くなりコリができやすくなります。
また、交感神経が過剰に働くと筋肉を収縮してしまうため、副交感神経を働かせ心身ともにリラックス状態にしてから後頭下筋群に対してアプローチをしていきました。
体位をうつ伏せの状態に変え、後頭下筋、首、肩と背部や腰部に刺鍼し筋緊張を緩めていきました。
とくに患部である後頭下筋群(大、小後頭直筋、上、下頭斜筋すべて)に対してはしっかり深部まで鍼を刺入し、深部のコリを刺激していきました。
経過
1回目
施術終了時からとてもすっきりして、すがすがしい気分になった。今まで手が届かなかった深部のコリを刺激してもらえたのでよかった。辛さも軽減した。
2回目
前回後からかなり辛さがなくなった。
忙しいとまた硬くなる。
3回目
ほとんど気にならない。
快適に過ごせている。
鍼灸治療では、肺の機能を高めることと、自律神経を整えて身体の免疫を上げることを目的にします。
喘息や咳の症状は東洋医学でも五臓六腑の『肺』が深く関係していると考えられています。肺には「気を主る」という体内で「気」を生成して全身のさまざまな機能を発動させる機能や「水道を通調する」などの機能があり、それらに機能低下が起こってしまうと喘息や咳の症状があらわれやすくなってしまうのです。
「肺気虚」
肺の陽気が不足してしまうことで呼吸器系の機能が低下してしまうことによって咳やぜんそくなどの呼吸器系の症状や水道を通調するという機能が弱くなることで痰が多量に出ます。咳やぜんそくの他にも疲れやすい・息切れ・風邪をひきやすい・風邪などの症状が出てしまいます。
「肺陰虚」
肺陰虚は、肺の陰液が不足してしまうことで慢性病に栄養障害などの他に陰液不足によって引き起こされる乾咳・無痰・ノドの乾燥感・口の渇きなどがおこります。咳やぜんそく症状の他にも慢性気管支炎や気管支拡張症・肺結核・肺炎にかかってしまう危険性があります。
その他上記の病証が2つ同時に起こる場合があり、それを「肺気陰両虚」といいます。どちらか一方の症状が治らず長引いてしまうとこの2つの病証が同時にあらわれてしまうことが多いため、注意が必要です。
当院の鍼灸治療では、東洋医学的観点である五臓六腑の肺の機能と乾燥による熱などを対象に治療します。身体の中の水や全身に送り届ける機能が弱まったために症状がでると考えますので、肺、脾、腎を中心に治療します。その他肺経は大腸経ととても深い関係があるため大腸経の経穴も用いて治療していきます。東洋医学では「肺」と「大腸」は表裏の関係にあると言われています。
主に使用する経穴は
肺兪・脾兪・腎兪・合谷・尺沢・二間・太谿・天突
などです。
自律神経治療では、当院の自律神経測定器により交感神経と副交感神経のバランスを調べます。自律神経はバランスがとれている状態で最大限の自然治癒力と免疫力が発揮されます。
自律神経を整えると全身の循環機能や代謝機能が高まり免疫力を向上させることができます。鍼灸治療はこの自律神経のバランスを整えるのに優れた治療です。
喘息をお持ちの方は他にも首、肩、腰などに痛みや不調を合わせもっていることが多いです。これは互いに関係していると考えて身体全体を調整する経穴を選び治療をしていきます。鍼とお灸を使い身体全身を小一時間治療する頃には効果を実感していただけると思います。
治療間隔は、症状の緩和と自律神経測定器による体質改善ができるまでは一週間に一度の来院頻度が理想です。症状の重さによっては来院頻度をもう少し詰めていただくこともあります。症状の緩和がみられた後は二週間に一度、一か月に一度と広げていきます。
喘息とは、気管支などの気道が炎症によって狭くなる病気です。喘息の人は症状がなくても常に炎症を起こしている状態で、正常な気道であれば刺激されない冷たい空気やタバコの煙、ホコリ、ストレスなどで敏感に反応して気道が狭くなる疾患です。
発作性にゼイゼイ音が聞こえるような喘鳴や咳を繰り返す疾患です。症状がひどくなると呼吸が苦しくなり座らなければ呼吸ができなくなる起坐呼吸になります。重症の場合は呼吸器症状が特に激しく発現し、死に至ることもあります。小児の喘息では、10万人に対して0.5人が亡くなる割合で思春期に起こる喘息のほうが死亡率が高くなることが言われています。
喘息は、炎症を放っておくと気道の粘膜に変化が起こる場合や気道の壁が肥厚するなどで狭くなった気道が元に戻らなくなってしまうため早期から治療をするのがいいです。
日本全国では気管支喘息をお持ちの小児が5~7%で成人は3~5%程いると言われています。小児では男女比が1.5対1と男子に多いもので、都会で南日本にお住いの方が割合は高いです。喘息は症状がなくなったから完治したとは言えず成人になって再発する可能性もあります。身体の成長により肺や気管支なども大きくなることから大人になるにつれて治ってしまうことが多いのですが、なかには一割程の人が成人になっても喘息が治らないことがあります。
咳喘息とは、乾いた咳などが長く続く症状のもので、特に呼吸が苦しくなるわけでもなく喘鳴もないです。気管支喘息は、気管支が細くなる病状ですが、咳喘息は気道が狭くなる疾患です。女性に多く風邪などから併発して発症することもあります。
咳喘息は慢性的に乾いた咳が続く病気で、長いと一年以上続くものもあります。咳が続いておかしいと思っても咳喘息の場合は熱や痰など風邪の症状がでないため不安感になりやすいです。気道が細くなる病状ですので、気道が敏感になりたばこの煙や飲酒、ストレス、ハウスダストなどが発作の原因になります。
咳喘息は夜から明け方に咳き込むことが特徴です。主な理由はわかっていませんが、寒暖差や自律神経の関係だと考えられています。
喘息がおこりやすいものとしてアレルギーや発作を引き起こす刺激にふれたとき、季節の変わり目や天候が悪い時、夜間から早朝にかけて、風邪を引いた時などにおこりやすい傾向があります。
喘息は重症度により症状はさまざまです。代表的なのは咳き込むことや息苦しさ、痰、喘鳴などです。呼吸困難がひどくなると前かがみにすわって呼吸をしなければならなくなります。重い症状の場合は意識消失やチアノーゼ、脱水症状をきたすこともあります。
喘鳴を伴いわい咳が続くことや痰などを伴わない空咳が特徴です。他の病気がなく数か月のように長期的に咳が続くことがあります。
一般所見・・・聴診で呼吸音や笛声音などで判断します。
呼吸機能検査(スパイロメトリー)・・・一秒間で吐き出した空気の量で重症度を測ります。
胸部X線検査
喀痰検査
気道過敏性検査
アレルギー検査・・・皮膚反応テストや血液検査、吸入誘発テストで調べます。
気道の炎症と狭窄を治すことを目的とした薬を処方されると思います。
吸入薬には発作が起こらないように毎日使用する長期管理薬と発作が起こったときだけに使用する発作治療薬があります。
・吸入ステロイド薬
・β2刺激薬
・経口ステロイド薬
・抗アレルギー薬
・抗コリン薬
・テオフィリン製剤
症例
60代 女性
2か月前に風邪をひき、それがきっかけで咳が止まらなくなっている。
風邪自体は治まったが、咳の症状だけ残ってしまい、緩和と悪化を繰り返している。
夜になるとひどくなることが多く、咳が出はじめると止まらなくなり、睡眠の妨げになって寝不足がかなりつらい。
咳の種類は湿性咳嗽で、痰が絡む事もよくある。
病院で処方された薬で多少は改善したが、まだまだつらい状態なのでそれ以外の方法を試したいと思い当院を受診した。
当院の施術
風邪がきっかけで慢性化している症状は自然治癒力の低下が原因になりますので、まずは自律神経を整え自然治癒力を高める施術を行いました。
長く続いている咳のためか肩や肩甲骨周辺の筋肉も強く緊張していたため、首肩背中周りの筋緊張を緩めるために直接刺鍼し呼吸の負荷を少しでも軽減させる目的の施術も行いました。
最後に、喉周りの経穴に鍼で刺激し、抗炎症を促す施術も行いました。
施術間隔は、週に1~2回。
経過
1回目
呼吸がしやすくなり、少し喉がすっきりしたように感じる。
咳はまだ出る。
2回目
日中の咳は少し落ち着いてきた。
夜になるとひどくなる。
3回目
夜間の咳も以前よりは軽快してきた。
少しゆっくり眠る時間が増えてきた。
4回目
まだ咳は出るが、かなり落ち着いてきた。
よく眠れる。
5回目
咳が出る頻度が少なくなってきた。
6回目
咳はほとんど出ない。
快適に眠れるようになった。
当院の後頭神経痛に対する鍼灸治療はまず第一に痛みの強い部分に鍼灸施術を施して鎮痛効果を促します。
また痛みが慢性化している場合に自律神経も乱れている場合が多いので全身の緊張を緩めて自律神経を整えることによって精神を安定させる施術も施します。
首肩耳周囲のツボとして頸肩部周囲の筋肉への治療ツボとして僧帽筋や頭半棘筋部の「天柱」「風池」、胸鎖乳突筋や頭板状筋の停止部の「完骨」、耳周辺の「角孫」「翳風」、肩甲上部では僧帽筋上部線維上の「肩井」、肩甲間部では各筋が交差する「膏肓」などの経穴を主に使用します。
また後頭神経痛は、東洋医学的に考えると「腎」「肝」「脾」の不調により気血水がうまく身体に回らないことが原因で発症すると考えられているので、上肢や下肢にあるツボを用いて鍼灸治療を施すことで「腎」の機能を活性化させたり、「肝」の機能低下・過亢進を抑えます。
東洋医学では局所的に診るのではなく、全体的に診ることが特徴のひとつであり、全信を整えることによって自然治癒力を高めます。
全身を施術することにより、睡眠の質の向上・目の疲れの解消・便秘の解消・血圧の安定・倦怠感の消失など様々な効果が期待できます。
後頭神経痛は、痛みが慢性化してしまうと脳がそれを記憶して痛みをさらに悪化させてしまう可能性もあり、ひどくなると仕事や日常生活の活動に支障をきたす恐れのある侮れない疾患です。
早めの治療・対応をすることで慢性化させないことが特に重要といえます。
50代 女性
3年ほど前から後頭部から頭部上部にかけてチクチクとした痛みを感じていた。病院で診察を受けたところ大後頭神経痛と診断された。痛み止めのお薬を処方されて痛みの強い時にその場しのぎで服用していた。しかし、最近痛みが段々と強くなってきて薬の効き目の弱くなってきた。デスクワークを主な仕事としており、ひどい場合は頭を前に曲げる動作だけでもチクチクとした痛みが増幅して吐き気をもよおすこともあった。
なんとかこの痛みを和らげたいとのことで当院にご来院されました。
当院の治療
痛みで寝つきが悪く、浅い睡眠が続いたということで自律神経測定器で自律神経の状態を測定していきました。測定した結果、交感神経が高い状態でした。そこでまず自律神経を整える全体施術を施した上で首や肩を重点的に治療していきました。頸部には鍼に電気を流して痛みを抑える施術をしました。
治療経過
◇1回目◇
一回目の治療後、後頭部の痛みは半減された。頭を前に倒すことができるようになった
◇2回目◇
治療効果は継続されている。まだ仕事などでデスクワークが長時間続くと痛みは出る
◇3回目◇
激しい痛みで夜目覚めることがなく、熟睡できるようになり、身体全体の調子は上向いている
◇4回目◇
たまに痛みが出る時もあるが直ぐ軽快してくる。痛み止めの薬を服用することがなくなってきた。
◇5回目◇
痛みがほぼ出なくなり、日常生活の中で痛みを気にすることがなくなり、体調も整ってきた。
症例2
50代女性
一週間前から左側の首から後頭部・頭頂部に激痛がはしり、日に日にひどくなっている。
痛み止めを飲むも一時的にしか楽にならず、夜は2時間おきに痛みで目が覚めてしまう。
既往歴として脳挫傷があるため、脳外科で検査をするも特に異常はなかった。
極寒地域への海外出張が続いていて全身の疲労、デスクワークによる肩こりが強くあった。
一週間ほどで落ち着くと病院で言われたが変化がないため当院へ来院された。
症例 3
20代 男性
1か月前から右の後頭部から耳の後ろにかけてチクチク刺すような痛みが起きるようになった。
痛みが続いたため、病院に受診したところ後頭神経痛と診断された。
病院で処方された薬を服用しているがあまり軽快されず、他の治療を試したいと思い当院に来院した。
首肩のコリが慢性的にあり頭全体を締め付けられるような緊張性頭痛も起こることがある。
仕事は基本的にデスクワークで、仕事以外もパソコンやスマートフォンを使用していることが多い。とても緊張しやすく、ストレスを溜めやすい。
当院の施術
まず、お身体全体の状態を触診で確認していきました。
首と頭の付け根がの筋肉が非常に強い緊張を起こしていました。また、肩や背中の筋肉も張っているため呼吸が浅くリラックスしにくい状態と感じました。
呼吸が浅くなると交感神経が活動的になりやすく、筋肉を緊張させてしまいます。
特に首肩の筋肉は交感神経の活動に影響されやすく、後頭神経痛の発症の要因になってきます。
そのため、まずは仰向けで自律神経を整える施術を行い、リラックスに関わる副交感神経の働きを高めていきました。
次に、うつぶせの状態で背中や首肩の筋緊張、特に右側の首と頭の付け根から後頭部にかけての筋肉に対してしっかり刺激を入れ緩めていきました。
経過
◇1回目◇
施術後から、少し痛みが軽減したように感じた。
時間が経つとまた痛みが戻ってきた。
◇2回目◇
大きくは変わらないが、初回より良くなってきているような気がする。
◇3回目◇
気が付いたら、痛みが気にならなくなっていた。
首肩のコリも軽くなっている。
◇4回目◇
日常生活に全く支障がなく過ごせている。
当院の施術
何日も激痛が続き、心身ともに疲弊している状態が見受けられた。まずは鎮痛を促す治療を第一とし、痛みが最も強い箇所への鍼治療を行った。神経が過敏になっており軽く触れるだけで痛みがでるため、浅い表面の筋肉から徐々に緩める。また、頭に鍼をしている間に、腹部や手足の副交感神経を高めるツボに鍼と灸を用い、リラックス作用が期待できる治療を行った。
大後頭神経痛のほとんどは、肩こり・首こりによって筋肉が硬くなり、その部位を通過している後頭神経(主に頭皮に分布する)が刺激されることが原因で痛みを生じる。
この患者様は極寒地域への海外出張で体全体がこわばっている状態にあり、デスクワークによる慢性的な肩こりも強いため、首肩の筋緊張の解消する施術も行った。
症状が強いため3日おきの治療を勧めた。
◇1回目◇
治療前の痛みを10とすると治療後の痛みは7まで低下。
鍼を刺している間はリラックスできた。
◇2回目◇
痛みは初回の半分くらいで、5まで低下。
表面が緩んできたので、すこし深めの筋肉を刺激しそこに微弱な電気を流す治療を行った。
◇3回目◇
痛みの程度は2まで低下。
睡眠がしっかりとれるようになった。仕事にも集中できる。
◇4回目◇
全く痛みが無い日と、軽く痛む日と、日により差がある。痛みの程度は2くらい。
◇5回目◇
ほぼ痛み無し。こめかみが重い感じがあったが、治療後にはなくなった。
後頭神経痛の東洋医学的考えは、痛みの出る部分によって問題となる経絡が違ってきます。
後頭部の痛み
後頭部の痛みは東洋医学では『太陽経頭痛』と言われます。太陽経頭痛の場合は後頭部の頭痛に加えて背部の痛みや肩甲骨周辺の筋肉の痛みも伴うこともあります。
側頭部の痛み
側頭部の痛みは東洋医学では、『少陽経頭痛』と言われます。少陽経頭痛の場合は、耳周りにも痛みが出ることもあります。ホルモンバランスの変化が原因で起きることもあります。
痛みについて東洋医学では、気・血・津液が滞ることによって滞っている部分が栄養不足となり痛みを発症すると考えられています。後頭神経痛の場合に関しましても後頭部あるいは側頭部を通る経絡の気・血・津液が滞ることによって神経痛の症状を起こしてしまっていると考えられます。
なぜ気・血・津液が滞ってしまうのかと言いますと天候や気温などの外部的環境と東洋医学でいう「肝」「腎」「脾」の病変による内部的環境が影響します。
ジメジメした湿度の高い日や急に寒くなった日・風の強い日などは特に滞りやすいです。またストレスや飲食物などによって「肝」「腎」「脾」が損傷を受けても滞りやすくなります。
後頭神経痛とは、耳の後ろや後頭部にズキズキとした痛みが発作性に起きる疾患です。
首や頭部の筋緊張によって起きる緊張性の締め付けられるような頭痛とは違い、後頭神経痛は神経痛独特のチクチクとした皮膚表面の痛みが特徴です。
後頭神経痛を起こす原因となる神経は主に3つあります。
・小後頭神経
小後頭神経は、第二頚神経と第三頚神経の前肢で構成されており、胸鎖乳突筋と僧帽筋との間を斜め上に頭頂に向かっていく神経です。
・大後頭神経
第二頚神経の後枝から起こり、僧帽筋の上から出て後頭部や頭頂部の皮膚に伸びていく神経です。
・大耳介神経
第二頚神経と第三頚神経から起こり胸鎖乳突筋と広頚筋の間を上に向かって進みます。耳下腺部の皮膚や耳介の後方部の皮膚に分布します。
後頭神経痛の痛みの感じ方は人それぞれでデスクワークなど首肩に負担がかかっている時だけに強く感じる人や横になっている時でさえも強い痛みで眠ることができずに悩んでいる方もいます。
痛みが突発的にあらわれて痛みが急に引くこともあります。後頭部や耳の周りがひどく痛むと目の奥が痛いと感じることや目の疲れも感じます。
また障害されている神経によって症状が出る部分にも変化が出ます。
大後頭神経が障害されると後頭部から頭のてっぺんに痛みが走り、前頭部まで痛みが達することがあります。
大耳介神経が障害されると耳の後ろが主に痛みが出て耳周辺全体が痛くなることもあります。
小後頭神経が障害されるとちょうど大後頭神経痛と大耳介神経痛に出る痛みの範囲の中間、側頭部分に痛みを生じます。
後頭神経痛と同じような痛みを生じさせて重篤な病気にくも膜下出血があります。
くも膜下出血とは、脳の外側から覆われている硬膜・くも膜・軟膜の3つの膜のうちくも膜の内側の脳脊髄液に出血が起こる病気です。
発症してすぐに適切な処置をしないと死に至る可能性の高い怖い病気です。くも膜下出血は、急に今までに経験したことのない激しい頭痛に襲われて吐き気や嘔吐、首のこりなども感じます。その場合はすぐにでも脳神経外科などを受診しなければいけません。
くも膜下出血は急に起こることが多いですが、前兆症状なども見られることもあります。前兆症状として
・めまい
・血圧の乱高下
・吐き気
・複視
・目の痛み
・まぶたが下がる(眼瞼下垂)
・ろれつが回りづらい
・急な頭痛
などがあります
そのような症状が見られたら念のため一度病院で検査をうけましょう。
後頭神経痛の原因は、未だはっきりとした原因はわかっていません。有力な説として、ストレスやパソコン作業、スマートホン操作の姿勢によって首肩の筋緊張が強く出て後頭神経を圧迫することによって起きるといわれています。
また神経に潜伏していたヘルペスウィルスが体力や免疫力が弱まった時に活性化して神経に炎症を起こして痛みを誘発するという説もあります。
歯ぎしり「ブラキシズム(口腔内悪習慣)」は、歯を擦り合わせたり、過度に歯を噛みしめたりする動作です。寝ている時に起こる場合と、目覚めている時に起こる場合とにより睡眠時ブラキシズムと、覚醒時ブラキシズムとに分けられます。
歯ぎしりや噛みしめは無意識に行っている人がほとんどで、睡眠中の歯ぎしりは一緒に寝ている人や暮らしている人の指摘で症状に気付くことが多いです。これは歯を噛みしめる力が強い場合に歯ぎしりをした音が周りに聞こえるためです。
しかし、実際は睡眠中の歯ぎしりは音を立てていない人の方が多く、音が出ないタイプも含めると日本人の約7割もの人が歯ぎしりをしているとも言われています。
通常、上下の歯の間には2mmくらいの隙間が空くのが安静時の正常な状態であり、一日の間で上下の歯の接触は生理的範囲で約17分といわれています。人間の噛む力は40~60kgと自分の体重ほどもあり歯ぎしりや噛みしめはその頻度や強さ、持続時間によっては歯や身体の病気の原因になります。
「噛み続け癖」と呼ばれることもあるこの癖は食べていない時にも不必要に上下の歯を接触させ続けてしまうというものです。
歯ぎしりや噛みしめと違い、意識せずに上下の歯が触れている状態の事を指します上下の歯の接触時間が長くなると、筋肉の緊張や疲労、顎関節の負担が増え、顎関節症や顎の疲労感、歯の違和感、口が開きにくいなどの症状を引き起こすことがあります。
また、頭痛、首肩こり、腰痛、顎の痛み、耳鳴り、めまい、息苦しさなど不定愁訴の原因になることがあります。
・グラインディング
上下の歯をこすり合わせる歯ぎしりのことです。多くの人がしてる歯ぎしりはこのグラインディングタイプの歯ぎしりになります。寝ている時に下顎を左右に動かす動作を繰り返すことで「ギリギリ」という嫌な音が出るのが特徴です。
・クレンチング
音が出ないタイプの歯ぎしりのことで、上下の歯を強く噛みしめる癖のことです。同位置で歯を強く食いしばるのが特徴です。
・タッピング
上下の歯を続けてぶつける歯ぎしりのことです。下顎をリズミカルに素早く動かし、上下の歯を噛みしめるため「カチカチ」といった音が出るのが特徴です。
歯ぎしりの原因は詳しくは解明されていませんが、メンタリティが関わってる場合が多いと言われており不安、緊張、心配などのストレス、遺伝や飲酒、喫煙、カフェイン摂取、交感神経活動の亢進、服薬、かみ合わせなどの関与が指摘されています。
歯ぎしりは浅い眠りの時に起こることが分かっています。
人間は深い眠りと浅い眠りを交互に繰り返しており、深い眠りの時には筋肉の動きは抑制されています。(副交感神経の亢進、交感神経の低下)
そして眠りが浅くなるとその抑制が解け(交感神経の亢進、副交感神経の低下)、その拍子に咬筋(頬の筋肉)が動き、歯ぎしりが起こると考えられています。
飲酒、喫煙、カフェイン摂取、ストレスなどは睡眠を浅くする要因であり、特にストレスは歯ぎしりの7~10%に関与していると考えられています。また、特定の遺伝子型の人は他の人の約5%歯ぎしりをしやすいことが分かっています。また、睡眠時無呼吸症候群、逆流性食道炎などの疾患も眠りが浅くなるため歯ぎしりが起こりやすいといわれています。
ストレスによる緊張や、何かに長時間集中している時、PCやスマートフォンなどの操作の少し俯き加減の姿勢などが考えられています。
・歯が擦り減る、割れる
歯ぎしりによって歯に非常に大きな力がかかります。個人差はあれど歯ぎしりの力は、ガムを噛む力の数倍~10倍といわれており大きな力がかかり続ける事で上下の歯が擦り減ってしまいます。
歯が擦り減るとエナメル質が破壊されて知覚過敏を起こします。また、詰め物が取れたり壊れたり、歯そのものが欠けたり割れたりする場合もあります。
・歯周病が発症、進行する
歯ぎしりによる過剰な力は、歯だけでなく歯茎にもダメージを与えます。歯茎が弱ると歯周病菌が繁殖しやすくなり、歯周病が発症、進行するリスクが高まります。
・歯の位置が移動する、歯並びが変化する
歯と歯が強く擦れあったりぶつかり合ったりすると歯が揺れ動きやすくなるため歯並びが悪くなったり、歯の位置が動くことがあります。
・顎関節症の発症
歯ぎしりをすることで、顎の関節や筋肉に負担がかかり、顎関節症を発症することがあります。
顎関節症に対する鍼灸治療
・咬筋(顎のえらの部分)の肥大
咀嚼筋である咬筋に強い負荷がかかることで、咬筋の緊張状態が続くと咬筋が発達し肥大することがあります。
・その他
顎の痛みや疲労感、肩こり、頭痛、めまい、耳鳴り、睡眠障害など様々な二次障害が歯ぎしりによって引き起こされているといわれています。
自宅で出来る予防法として節酒や禁煙、カフェイン飲料を飲むことを減らすなど睡眠が深くなるような生活を心がけましょう。
また、不必要な昼寝は避けて生活習慣を整えることや、寝る前にストレッチをしたりぬるめのお風呂にゆったり入るなどストレスを軽減する工夫も必要です。
一般的には歯科医院にて治療が行われます。
治療方法としてマウスピース(スプリント)、かみ合わせの調整、矯正治療、睡眠衛生、行動療法などが挙げられます。
歯ぎしりは東洋医学では噛歯(ごうし)といわれています。
歯ぎしりは心因的な感情が根底にあると捉えられ、五臓六腑の「肝」の不調に関わりがあると考えられています。「肝」は神経や感情をコントロールする役割があると考えられており、ストレスなどによりこの「肝」の働きが乱れると感情のコントロールがうまくいかなくなり、不眠、怒りっぽい、焦燥感などの症状が現れることがあります。精神的な緊張は筋肉が過緊張を起こす原因になります。
また、風、寒、湿、熱邪などの外邪などによって顎関節周囲を通る足の陽明胃経、手の少陽胆経、手の太陽小腸経の経絡の滞りなども原因となる場合があります。
当院では自律神測定器にて自律神経のバランスを測定し、お身体の状態を把握した上で治療に移ります。
自律神経は交感神経、副交感神経の二つに分けられ、交感神経は日中活動時に活発に働く神経で、副交感神経は夕方から夜にかけて優位に働くリラックス神経です。この二つの神経がバランスをとりながら無意識下で全身の器官を調整しています。ストレスや疲労、生活習慣の乱れなどからこのバランスが乱れると心身の不調をきたす原因になります。
自律神経は睡眠の質や筋肉の緊張にも大きく関わっており、特に交感神経の過亢進は精神の緊張、全身的な筋緊張を招きます。
そのため自律神経系のバランスを整えるツボや東洋医学的観点から肝、心に関わるツボに刺激を与えます。
また、歯ぎしりや噛みしめ影響による顎や首や肩の筋肉の過緊張を除き、顎関節へかかる負担を軽減する治療を行います。また、顎関節周囲の胃経、胆経、小腸経のツボも用います。状態によっては鍼に微弱な電気を流すことで鎮痛作用や筋緊張の緩和、血液循環を促します。
30代 女性
歯ぎしりがひどく、歯科でマウスピースを作ってそれを付けて夜は睡眠をとっていました。それでも朝になるとあご周りが痛く、首や肩にまで波及している状態でした。
普段からも気が付くと歯を噛みしめている場合もあり、それが原因で首回りも緊張しているのではないかとのことでした。
当院の自律神経測定器で自律神経の状態を測定したところ交感神経の活動が異常に高く逆に副交感神経が低い状態で常に緊張状態が長く続いていてなかなかリラックスできていないことわかりました。
問診時にも仕事や家庭内でのトラブル最近ストレスが溜まっているとのこと
治療
首肩や肩甲骨周りの筋緊張を鍼灸施術で緩めてから仰向けとなり顎周りの施術で筋緊張を緩めてお腹手足のツボを用いて自律神経の状態を整えていきました。
治療した次の日の朝は顎周りが少し楽で日常的にも首肩が楽でしたが2~3日で元の状態と戻ってしまっていました。
数回の治療後は、治療効果も延びて朝目覚めもすっきり起きられてる様になっています。
自律神経測定器の結果も交感神経の活動が下がり良好の状態となりました。
症例2
50代 女性
睡眠時にかなり噛みしめていると歯医者で指摘され、マウスピースを作ったが顎周りの痛みは軽減しなかった。
顎の痛みで目覚めることが多く、数ヶ月間寝不足気味が続いている。
今も毎晩マウスピースをはめて眠っているが、擦り切れて穴が空きそうなくらい酷使されている。自分で顎の筋肉を触ると、ゴリゴリしているのが気になっている。
このままだと、顎以外のトラブルもおこりそうだと感じて来院。
当院の治療
自律神経測定器で計測したところ、かなり交感神経が優位の数値がでた。精神的なストレスも高く自律神経の乱れがみられたので、自律神経を調節する治療をメインで行なった。また同時に顎の周りだけではなく、首肩の筋肉も筋緊張が強いため血行を促進させて筋肉を緩ませる治療も行った。
治療頻度は月に2回
治療経過
1回目
変化は感じない。
2,3回目
痛みはあるが、少し眠りやすくなった。
4~7回目
治療していくと、顎の筋肉のゴリゴリが小さくなっていくのを感じている。
7~15回目
朝になって起きた時の顎の疲れが少しずつ軽くなった。
16回目
痛みで眼が覚めることがほぼなくなった。
17回目
まだマウスピースを付けて寝ているが、マウスピースのすり減っていくスピードが遅くなった。
18回目
来院頻度を月に1回と少なくして経過観察をすることになった。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院