アレルギー性鼻炎に対する鍼灸治療では、鼻まわりの施術がメインとなります。
鼻炎症状を抑える特効穴として「迎香」「上迎香」「神堂」「神庭」があり、それらを経穴に鍼を刺していきます。
迎香と上迎香は鼻翼の横にあり、神堂は眉間部分、神庭は頭部にあります。
鍼を刺すばかりでなく、人によっては鍼に電気を流す『鍼通電療法』も用いて症状改善をはかる場合もあります。
その他、アレルギー反応は免疫機能異常ともとらえ、免疫機能をつかさどる自律神経の乱れが原因で起きると考えられています。
当院では鼻まわりへの特効穴への施術に加えて全身の自律神経のツボも刺激することで自律神経を調整してまいります。
今までで国内でアレルギー性鼻炎の自覚症状を指標とした症例集積研究が行われています。
その中で頭頸部や後頭部、前傾部、腕などに鍼灸治療を行ったところ鼻炎症状が軽減されたとする報告がされています。
通年性アレルギー性鼻炎の患者さん13例を対象に行われた研究では、鍼灸治療群と何も治療をしないグループとに分けて臨床研究が行われました。
その報告では、鍼灸治療群の鼻症状や鼻粘膜所見の改善が見られて、鼻汁好酸球や非特異的IgEの減少が見られたと報告されています。
ドイツでもアレルギー性鼻炎に対する鍼灸治療の大規模な研究が2008年に行われています。アレルギー性鼻炎患者5237名に対して通常の医療を受けたグループと通常の医療に加えて鍼灸治療を行った2つのグループに分けて鍼治療の有効性を検討しました。
3か月間25分間の治療を行い、3か月後と6か月後にQOL質問票と健康関連包括的尺度によって評価したところ、鍼灸治療を取り入れたグループは対象群と比べて明らかな改善が見られました。
鍼治療をもう行っていない6か月後の評価でも鍼治療を行っていたグループの方が症状の改善が見られたことからドイツではアレルギー性鼻炎患者にとって鍼は有効で安全な治療法の選択肢として考えることができると報告されています。
東洋医学ではアレルギー性鼻炎の原因を水分の代謝障害「水滞」もしくは「水毒」と捉えます。
普段から冷たい飲食物を摂り過ぎたり、過労やストレス、または虚弱体質などにより胃腸の働きが弱まり消化吸収力が低下すると飲食物がしっかり代謝されずに体内に残ることがあります。
この余分な水分は体の生理機能に影響を与え、鼻や喉の症状に関わるとされる五臓の「肺」の機能低下を引き起こします。
そのため肺経のツボも多く用いて施術を行っていきます。肺経のツボは上肢に多く存在しており、主にお灸の施術で治療を行っていきます。
また、東洋医学では鼻水の質によっても見方が変わってきます。
鼻水の色が黄色っぽく粘性が高い状態では炎症性の熱をもっている状態ですので熱をとる治療を行いますが、色が透明で水っぽく流れ出るような鼻水の場合、体の冷えが原因と考えられているため冷えを除く治療を行います。
また、鼻閉や眼球の充血が見られる場合、鼻粘膜の充血や鬱血がみられます。東洋医学ではこれを「瘀血(おけつ)」と捉えます。
この「瘀血」の病態としてのぼせや、イライラなど「気逆」の状態が一緒に現れることがあります。その場合瘀血や気逆状態を正常に正すツボも用いて施術を行っていきます。
「アレルギー」とは体の免疫システムが関係して起こる症状で、ある特定の物質に対して起こる防御反応が過敏に起こる体質の人に多く見られます。
「アレルギー性鼻炎」とは鼻の粘膜に入った異物を除去しようという働きが過剰に起こり主に鼻炎状態が続く状態をいいます。風邪の合併症としても同じような症状が見られますが、風邪の症状の原因はウイルスであるのに対し、「アレルギー性鼻炎」の原因は花粉やハウスダストなどが多いといわれています。
原因物質はたくさんありますが、抗原にさらされることでアレルギー性鼻炎が出現する点は共通しています。
アレルギー性鼻炎は一年中症状がある通年性アレルギー性鼻炎と、一定の季節に限局して生じる季節性アレルギーに分類されます。
通年性アレルギー性鼻炎の原因
ハウスダスト、ダニ、動物の毛、フケ、蛾などの虫等があります。
季節性アレルギー性鼻炎の原因
アレルギー性鼻炎の原因(抗原)として最も多いのが花粉で、成人患者の約90%が花粉症といわれています。中でも多いのがスギ花粉症、ヒノキ花粉。次いでイネ科花粉症、ブタクサ花粉症の順になっています。
くしゃみ、鼻水、鼻づまりが主な症状です。
その他に頭痛、頭重感、発熱、食欲不振、喉、目のかゆみなどの随伴症状が起こることがあります。
・頭痛に対する鍼灸治療について
・頭重感に対する鍼灸治療について
・食欲不振に対する鍼灸治療について
診断のためには問診と診察を行います。症状や発症年齢、症状が出やすい時期、家族歴や他のアレルギーの有無などを確認します。診察は直接鼻の中の観察を行います。
アレルギーの原因物質を探る検査として、血液検査でアレルギーに関連性の深い好酸球やIgEなどを測定します。鼻汁の好酸球を顕微鏡で確認する場合もあります。
また、原因として疑われるアレルギー反応が誘発されるか確認するプリックテスト、皮内テストなどがあります。
アレルギー性鼻炎に対し行われる治療として症状を抑える対処療法と根本的な体質改善が期待できるアレルゲン免疫療法があります。
対処療法として薬物療法が一般的です。内服薬として抗ヒスタミン薬と抗ロイコトリエン薬、鼻に直接投与する噴霧薬、ステロイド点鼻薬などがあります。
アレルゲン免疫療法としてアレルゲンのエキスを少量から体内に投与する「皮下免疫療法」と「舌下免疫療法」があります。
症例
30代 男性
植物の花粉で鼻炎が起こることが多いが、季節の変わり目、気温の変化でも鼻炎になってしまう。最近の寒暖差で鼻水が止まらなくなってしまい、平日は薬で誤魔化して乗り切ったが、鼻だけでなく目にも症状がではじめ来院。
学生の頃はアレルギー性鼻炎はなかったが、社会人になり上京して生活のリズムが変わった頃からなってしまった。
鍼に恐怖心はあるがサイトに「痛くない」と書いてあり、鼻も辛いので勇気を出して予約した。
当院の治療
鼻周りの局所治療だけでなく、東洋医学的な水分の代謝障害に対する治療をおこないました。
また、社会人になり体質に変化があったとのことでしたので、内蔵機能の向上と自律神経の調節の治療も合わせておこないました。
治療頻度は週1回
治療経過
◇1~3回目◇
特に変化なし
◇4回目◇
仕事中に鼻水の量が減ったことに気づいた。徐々に減っていたのか変化に気付かなかった。
◇5~8回目◇
回数を重ねるごとに鼻炎が気にならなくなっていき、薬の量も半分にまで減った。
◇9~10回目◇
日常生活に支障がでないまでに回復した。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 15:28 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)