東洋医学ではドパミンの働きは、『心包の気』としてとらえられます。ドパミンは、意欲・集中力に関与しており、これは東洋医学内の心包の気の働きに類似しています。
西洋医学的でパーキンソン病はドパミン不足と言われていますが、それを東洋医学に置き換えると心包の気の不足だといえます。
『心包』とは、その名の通り『心』を包むような役割をもち、『心の気』から生成された『心血』を心包の力で体中に巡らせる働きがあるのです。
パーキンソン病では心包の気が弱くなってしまっているために心血が体中に行き渡らなくなってしまうため、手足に栄養ある心血が送られなくなり、手足に血液が滞りやすくなってしまうのです。
パーキンソン病患者では、身体がそれを解消させようと手足をぶるぶるふるわせて血液の流れを良くしようとする反応が振戦症状としてあらわれてしまうのです。
その方の強く出ている症状や症状の程度によって治療法を変えていきますが、どの患者様でも初診時には自律神経測定器で自律神経の状態を計測させていただきます。パーキンソン病の治療でも自律神経の状態を把握しておくことはとても重要です。
症状として自律神経症状が強く出ている方もおられます。多くの方は、交感神経の活動が過亢進状態ですが、まれに副交感神経の活動が優位になっている場合もあります。よって自律神経の状態を把握した上でその方に合った施術法を選択していきます。
東洋医学的に考えるとパーキンソン病では基本的に『心包の気』が不足している状態ですのでそれを補う施術をしていきます。
パーキンソン病とは、1817年にイギリス人医師のジェームズ・パーキンソンが初めて報告した疾患で進行性の脳の中の神経異常が原因で起こること発病するといわれています。
日本国内では1000人に1人の割合で発症しており、約10万人のパーキンソン病患者がいるとも言われています。日本での有病率は外国よりもやや少ない傾向にあるといわれていますが、高齢化社会に伴い日本でも有病率は増加傾向にあります。多くは、40代以上の方にみられますが、40歳前に発症するケースもあります。70歳や80歳になっても発症するリスクがあり、幅広い年代で注意しなければいけない疾患でもあります。
パーキンソン病の主な症状は4つ挙げられます。
・振戦
安静にしている時に体が震えてしまいます。特に指に多くみられますが、腕や手・足などにも震えが起きてしまい日常生活でも不憫に感じます。精神的緊張で増強することが多いようです。
・固縮
筋肉が硬くなり関節の動きがスムーズにできなくなってしまいます。本人に力を抜いてもらって他人が関節を動かした際に抵抗がみられます。
・無動
全体的な動きが鈍くなります。歩くスピードが凄くゆっくりとなったり、書く字が段々と小さくなるなどの症状があります。また全体的な動きも少なくなってきて瞬きの回数が減ったり、顔の表情が乏しくなります。寝返りをうてないほどとなることもあり、褥瘡の注意も必要です。
・姿勢反射障害
身体の平衡感覚に異常が起きて歩くときにバランスを保つように小股でさらにすり足で歩くようになります。歩いているとなかなか立ち止まれなったり急な方向転換ができなくなるため、物にぶつかりやすくなったり転倒しやすくなったりします。
この4つの代表的な疾患に加えて精神症状や自律神経症状もあらわれることがあります。
・精神症状
うつ状態による意欲の低下や気持ちの落ち込みや不安感、不眠などの症状もあらわれることがあります
・自律神経症状
多汗や全身の血流量低下からくる冷えや排尿障害、便秘や起立性低血圧などの症状も起こります。
精神症状や自律神経症状でパーキンソン病を判断するのは難しいので、特に上記のような『振戦』『固縮』『無動』『姿勢反射障害』の症状がみられる場合は。パーキンソン病の他にも脳腫瘍や脳卒中の可能性もあるのですぐに病院を受診する必要があります。
パーキンソンの原因は脳内のドパミンという物質が減少することによって起きることが知られています。ドパミンは、神経伝達物質で脳の中の黒質という部分で作られますが何らかの原因で黒質の神経細胞が減少して、正常のドパミン量の20%以下となるとパーキンソン病にかかってしまうといわれています。
特にドパミンは、体を動かす機能を調節する役割があるため、減少してしまうと正常な体の動きができなくなってしまうのです。
肝心な部分の黒質の神経細胞が減ってしまうのかという部分はいまだに解明されていませんが、遺伝的な要因であった、環境的な要因が関係していることが推測されています。
パーキンソン病の主な治療は、薬物療法と運動機能低下を防ぐリハビリです。
薬物療法では、ドパミンをドパミン量を増やす薬やドパミン受容体の感度を良くする薬が処方されます。また、精神症状や自律神経症状に合わせた薬も処方されることがあります。
運動療法では、身体の運動機能が低下してしまうことから日常生活の質の向上を目指してストレッチや簡単な運動療法が施されます。リハビリをしていないと運動機能の低下が一段と進みやすいため、自分の症状としっかりと向き合ってリハビリを行うことは重要です。
症例
60代 男性
半年前から身体の異常が現れ始め、徐々に足の震えが酷くなってきた。
動いているときは問題ないが、じっとしていると震えが止まらなくなる。
うつや不安感などといった精神状態は問題ないが、便秘が気になるようになってきた。
病院では薬物療法を勧められたがあまり乗り気ではなく、できるだけ他の方法をと思い当院に通い始めた。
当院の施術
現在みられる症状は、足の振戦と便秘のみで他の症状はまだ現れていませんでした。
しかし筋肉はかなり硬直しており、固縮も少し出はじめているようでした。
震えを止めようとして力を入れているので、余計筋緊張が強くなっていました。
当院では全身の筋緊張緩和と、振戦が現れている足に低周波電気鍼を行い、ドパミンの産生を促す目的で頭部に鍼で刺激していきました。
経過
1回目
あまり変化はない。
2回目~5回目
電気鍼を行っている間は、足の振戦が止まる。
6回目~8回目
施術後はしばらく振戦が軽減するが、徐々に元に戻る。
9回目~11回目
振戦は前回同様。便秘は最近解消してきている。
12回目~14回目
身体に力が入るため、疲れる。
15回目~17回目
進行は止まってきているような気がする。
18回目~20回目
施術後は振戦が軽減する。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 18:27 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)