当院の月経前不快気分障害(PMDD)に対する鍼灸治療は、自律神経のバランスと女性ホルモンのバランスを整え、身体の冷えを取り除き全身の血流を良くすることにより、症状の改善を促します。
1問診
しっかりと問診をして原因がありそうな部分を特定していきます。

2自律神経測定
自律神経測定器を用いて現在の身体の状態を把握します。

3仰向け治療
腹部・手足のツボを用いて自律神経の調節を行います。
冷えのある部分にはお灸も行います。

このとき婦人科系のツボも用いて、女性ホルモンのバランスも整えていきます。
4うつ伏せ治療
背部兪穴という五臓六腑の状態を調節するのに重要なツボがありますので、その部分に刺激をいれていきます。
主に「脾」「腎」「肝」のツボを用います。

また、下肢・骨盤周囲にも施術を行います。
骨盤内血流が増加することで子宮内膜が健康な状態になるため、乱れていたホルモンバランスが整いやすくなります。
月経前不快気分障害(PMDD)とは、月経の数日前から精神症状を引き起こす病気です。
主な症状は、気分の落ち込み、不安感、緊張感、イライラ、悲しみなど様々で、日常生活に支障をきたしてしまう重度なものです。
この重い精神症状は、生理の7~10日前に現れ、生理が始まるころに消失するのが特徴です。
月経前不快気分障害(PMDD)と似た症状で月経前症候群(PMS)が存在します。
月経前症候群(PMS)も、生理前に心身ともに不調が現れ生理開始とともに良くなる、という点ではとてもよく似ていますが、月経前不快気分障害(PMDD)は月経前症候群(PMS)と比べて精神症状がより重症であると言えます。
閉経が近づくにつれ症状が増すこともありますが、閉経後には症状は消失します。
月経前不快気分障害(PMDD)の原因はいまだ解明されてはいません。
しかし、生理前に増加する黄体ホルモンの影響が大きいことは分かっています。
通常であれば月経が近づくにつれて黄体期に増加した黄体ホルモンの量は、1週間程度で徐々に低下していきます。しかし、月経前不快気分障害(PMDD)症状が強い場合、黄体ホルモンは月経の数日前に急激に減少するため精神状態が不安定になってしまうのです。
また、もう一つの女性ホルモンである卵胞ホルモンとのバランスが乱れることも原因のひとつであると言われています。
いずれにせよ女性ホルモンの乱れが大きく関わっていると考えられます。
他にもストレスや姿勢、睡眠、食生活、低血糖、自律神経の乱れなども大きく作用すると言われています。
・SSRI
セロトニンなどの働きを高め、気分を安定させる作用があります。
うつ病に対してはこれらの薬の効果が現れるのに数週間かかりますが、月経前不快気分障害(PMDD)には即効性があると言われています。
特にイライラや怒りの感情などを抑えるのに効果的です。
・漢方薬
東洋医学的には月経前気分不快症状には瘀血治療を基本とします。
瘀血とは血の流れが滞った状態をさします。
このとき血の流れだけでなく気の流れも滞っていると考えられるため、気・血の流れを良くする漢方薬が効果的です。
また、精神症状に加えて心身症状もみられる場合は鎮痛薬や便秘薬などが処方されます。
東洋医学では子宮を「女子胞」と称します。
女子胞は「脾」「腎」「肝」と深く関与しています。
これら3つのバランスが崩れることで子宮の血液循環が滞り瘀血に繋がります。

①脾の機能失調により肝や腎精が不足する
脾の機能が低下すると、腎精や肝血を十分に化生できないため腎精不足や肝血虚になります。
②肝腎精血不足
腎精不足になると血を十分に化生できず肝血虚がおこります。
また、不足した肝血を化生するために腎精が消耗されると腎精不足がおこります。
30代女性
4〜5年前から、生理前になると気分の落ち込み、パニック、集中力の低下などの症状が現れた。
基本的に梅雨の天気が安定しないときや、秋から冬の気温の低下がある際に出現していたが、1年前の出産を期に悪化し、生理2週間前から上記の症状が毎月でるようになった。
生理前はメンタルが安定せず、家事と育児をこなすことで精一杯でイライラしたり、悲しくもないのに涙が止まらなくなるときもある。
日常生活に支障がでるため、弱めの精神安定剤を服用している。
もともと婦人科系は弱く、生理不順でピルを服用していたが、肝臓の数値が悪化したため現在は服用を中止している。
手足の冷え、気圧頭痛、首肩こりは慢性化している月の半分は体調が悪いため、疲労もなかなかとれない。
病院にいっても薬をもらうだけで改善はみられず、家族のすすめもあり今回はじめて鍼灸治療を行うことにした。
当院の治療
初診時は生理後で比較的安定していたため自律神経に大きな乱れはなかったが、疲労度が高く、自律神経調節能力の低下がみられた。
PMDDは自律神経が大きく関わってきているため、まず自律神経の調節を行い、婦人科系のツボを用いてホルモンバランスを整えるように治療した。
また、触診したところ、首肩・背部の筋肉の張りが強く、手足・下腹部に冷えが強くでていた。
張りが強い場所には鍼を用いて筋緊張の緩和、冷えが強い部位には鍼とお灸を行い血流改善をはかった。
治療経過
◇1回目◇
治療後身体がぽかぽかして眠気がでた。久しぶりにリラックスできた。
◇2回目◇
前回治療後、調子は良かった。
昨日気圧頭痛があり、痛み止めと精神安定剤を服用したところ副作用でだるさが強い。
自律神経の調節と首肩の緊張をとることで、だるさはなくなりスッキリした。
◇3回目◇
身体の余分な力がぬけて、日常的にあった重だるさは減ってきた。
慢性的な首肩こりはまだある。
生理予定1週間前だがメンタルは安定している。
◇4回目◇
生理2日目。メンタルは安定しており、イライラも悲しみもない。
生理痛は強くあったため、腰・臀部に鍼とお灸を行い骨盤内の血流を良くする治療をした。
◇5回目◇
全体的に調子がいい。薬を飲まなくてもメンタルが安定するようになった。
首肩こりもまだあるが、そこまで気にならない程度になった。
治療間隔を少しあけて今後も継続していく。
症例2
10代 女性
生理前になると毎回メンタルがおちて、家族や友達に当たってしまう。そんな自分が嫌で、思考が良くない方へ自動的に向かうのを止められないのが辛い。
落ち着いたら自分のしたことや周りに当たってしまった事を振り返り、毎月必ず自己嫌悪に陥ってしまう。
今は理解ある人たちに恵まれているが、これからもそうとは限らないし、何より毎月自分のホルモンバランスに振り回されるのは辛いので何とかしたい。
鍼は初めてだが、好きなインスタグラマーが鍼をやっていたので自分もやってみたいと思い来院。
当院の治療
自律神経測定器で計測したところ、交感神経が優位な状態との結果がでました。
また、自律神経の調節能力が低い結果が出たため、この状態ですと、活動する日中と、リラックスする夜中で切り替わるはずの自律神経が切り替わらずに常に交感神経が優位な状態の可能性が高いとお伝えしました。
他にも血管年齢も20歳ほど高い結果となり、お話を聞くと、睡眠がしっかりと取れておらず寝不足気味な日々が続いているとのことでした。
以上の測定結果でかなり自律神経が乱れていることが分かりました。
治療としては自律神経を整える事をメインで行うことと同時に、婦人科系に関りが深い経穴を用いて東洋医学的な治療を行いました。
治療経過
◇1回目◇
足のお灸で全身が暖かくなった。
◇2~5回目◇
寝付きが良くなってきた。
◇6~10回目◇
生理が近くなり不安定になってしまった。ただ、鍼に来る前よりは軽くなってる。
◇11~15回目◇
生理痛や頭痛の当たり前になっていた不調がなくなった。今はかなり快適に過ごせている。
◇16,17回目◇
生理周期で不安定になることはゼロではないが、一番やめたかった周りへの言動が改善された。
月経前不快気分障害(PMDD)の特徴として、生理の数日前から精神症状があらわれ生理開始とともに症状が消失するのが大きな特徴です。
つまり、ある程度の病状を予測できることになります。
この点を生かして、生理前にはできる限り仕事のピークや心身に負担のかかるイベントを避けることが第一です。
また、症状が出た際は下記の内容を日常に取り入れてみるのがよいでしょう。
①発症時も無理に通常と同じ効率を求めない
症状がでているときは、普段当たり前に出来ていることが出来なくなる場合がほとんどです。
いつもと同じ生活を求めると新たなイライラを生むため、「いつもの60%くらいの力で仕方がない」くらいの気持ちで過ごしましょう。
②休日や睡眠時間を確保して心身ともに余裕をもつ
ホルモンバランスを整えるためにも、十分な睡眠をとりリラックスする時間を作ってストレスを緩和させることが大切です。
ゆっくりお風呂につかったり鍼やマッサージを受けたり、身体を休めることを意識しましょう。

まず、仰向けで自律神経のバランスを整えるツボに鍼やお灸で刺激を与え、内臓機能の調整、免疫機能調整、全身の血流促進と体のバランスを整えた後、下肢のツボに鍼やお灸で刺激を与え、血行を促進し、冷えを取り除くことで筋肉の疲労物質の代謝を促進する施術を行います。
また、下肢の血液循環や神経伝達機能を整えるために腰部や臀部にもアプローチしていきます。結局、下肢に向かう血液や神経は腰部や臀部を通りますのでその部分の筋緊張が見られて圧迫されてしまっていると下肢にも血液循環は悪くなってしまうのです。

鍼やお灸が施術のメインとなりますが、腰臀部や下肢へのストレッチやマッサージも取り入れて筋肉の柔らかさ、柔軟性も出していくことでこむら返りが起きづらい体へ予防施術も行っていきます。

東洋医学的観点から肝の働きを補うツボ、血の生成を助け、血の巡りを改善するツボも取り入れ治療を行います。


こむら返りを東洋医学的にみた場合、過労や冷えストレスなどにより瘀血(おけつ)の状態に陥ることにより筋への血の供給が妨げられた状態か、消化器系の不調、栄養不足、過労などにより血の不足(血虚)があるために筋に栄養が行き渡らず筋痙攣を起こすと考えられています。
また、五臓六腑の「肝」は血液を貯蔵し必要に応じて供給する役割をしていますが、その肝に供給され血や肝に貯蔵される血であると考えられている「肝血」が不足する(肝血虚)と体内各部に血液を十分に供給できず滋養作用(栄養を与える機能)が低下し筋の引きつり、痙攣、しびれなどを引き起こすといわれています。「肝血」が不足する原因として老化やストレス、睡眠不足、疲労などが挙げられます。
自分の意志とは無関係に起こるふくらはぎの筋肉(腓腹筋)の痙攣のことを「こむら返り」と呼びます。一般的に「足が攣(つ)る」ともいわれ医学用語では「有痛性筋痙攣(けいれん)」や「筋クランプ」とも表現されます。50歳以上の成人のほとんどが一度は経験しているといわれるほど多くの人にとって身近な症状です。加齢とともに頻度が増す傾向があり、高齢者では発生頻度も高いことが分かっています。
人間の体は筋肉の収縮と弛緩を調整する事によりバランスのとれた動きをしています。この調整の仕組みは、脳の脊髄などの中枢から信号が神経を通って筋肉に送られ筋肉の収縮が起こり、次に筋肉や腱のセンサーから逆方向に信号が中枢に送られ、どのくらい収縮するか弛緩するかが決められています。
こむら返りはこの仕組みのなかでおこる筋肉の異常収縮です。

スポーツなどで多量の汗をかき脱水状態になったとき、電解質のバランスの崩れ、運動や労働による筋疲労、水分不足、運動不足、冷えや血行不良、薬の副作用、病気による神経系の伝達機能低下などが挙げられます。
※電解質とは
体内にあるイオンのことで、筋肉細胞や神経細胞の働きに関わります。ナトリウム、カリウム、カルシウムなどのミネラルが電解質として挙げられこれらのバランスが崩れると筋肉や心臓、神経の働きに支障が出てこむら返りが起こりやすくなるほか、最悪な場合は命に関わることもあります。中高年がこむら返りになりやすいのは汗や尿と一緒にミネラルが体外に排出される量が増えることが一つの原因とされています。また、胎児にミネラル分を供給している妊婦も、同様の理由でこむら返りを起こしやすい状況にあります。

・糖尿病
・肝硬変
・甲状腺機能低下症
・副甲状腺機能亢進症
・動脈硬化症
・下肢静脈瘤
・椎間板ヘルニア
・変形性腰椎症
などこれらの疾患でこむら返りの症状が現れる事があります。また、薬の副作用で起こることもあります。あまり頻繁にこむら返りが起きてしまう場合は一度病院で検査を受ける必要があります。
こむら返りを起こすと急激に強い痛みが走ると同時に、自分の意志とは無関係に足の筋肉が収縮したり、痙攣したりします。人によっては痺れを伴なうこともあります。
筋肉は硬直して動かしづらく、立ったり歩いたりといった単純な動作も困難になります。こうした症状は数秒から数分間持続してから自然に消失します。頻度には個人差があり球に発症する方もいれば毎晩複数回に及ぶ場合もあります。一般的には睡眠中に発生することが多い症状ですが、日中に症状が見られることもあります。
夜間時にふくらはぎに筋収縮がひどく起きてしまった場合に翌日まで痛みが残り、歩行時に痛みや違和感が出ることも少なくありません。またよくこむら返りが起きてしまうという方の中には下肢の血液循環の悪化に伴い、足のむくみ症状が見られます。
こむら返りが起こっている時は筋肉が縮んだまま伸びなくなっている状態です。そのため収縮した筋肉をゆっくりと伸展する(伸ばす)ことです。ふくらはぎに筋収縮が起きてしまっている場合には腓腹筋やヒラメ筋を伸ばすようにすると自然と治まっていきます。
痛い方の足を伸ばし、かかとを前方に出すようにしてつま先を頭の方向へ傾けるようにします。つま先を掴んだり、タオルなどを使ったりして頭の方向へ引き寄せるとより筋肉を伸ばすことが出来ます。
こむら返りは、病的なもの以外では、下肢の血流が悪く、疲労物質やミネラルバランスが悪い場合に起こる危険性が高まります。そのため、こむら返りを予防する生活習慣では、食事や運動・休息が重要になってきます。
食事では、鶏肉や魚、大豆成否などを摂取して血流をよくする体づくりが重要です。
運動では特にふくらはぎをよく使う運動をしてこむら返りを予防することが重要です。血液循環がわるく筋力が低下閉まっている状態ですと筋肉のけいれん(寝ている時のこむら返り)になることがあります。
意識的にウォーキングや軽めのストレッチなどをしてふくらはぎ改善していく必要があります。
その他下肢を冷やさないために締め付けない、レッグウォーマーや寝る前に足湯などをされますと効果的です。
また、水分が減ってしまった状態ですと筋痙攣の症状が起こりやすいとされています。寝る前に一杯の水やスポーツドリンクを飲むようにして水分をある程度宅われていく必要があります。
こむら返りの鍼灸治療症例
症例1
70代男性
70歳を過ぎてから、就寝中にふくらはぎをつる事が多くなった。
そのためゆっくり眠る事ができず、寝不足気味なった。
元々足が浮腫みやすく、最近は腰や膝も痛い。
当院の治療
下肢の循環、筋緊張の改善のためにふくらはぎ(腓腹筋、ヒラメ筋)、下肢前面(前脛骨筋)、下肢内側(後脛骨筋)、下肢外側(腓骨筋)に刺鍼し、低周波の電気鍼を行った。
また、膝の痛みや腰痛も下肢の負担になる一因のため、それらの治療も並行して行った。
◇一回目◇
まだあまり変化はないが、施術後は足が軽い。
◇二回目◇
足はまだつるが、膝の痛みは軽くなってきた。
◇三回目◇
夜足がつる回数が減ってきた。
◇四回目◇
左足はつらないが、右足がたまにつることがある。
◇五回目◇
両足ともつる事が減少した。
◇六回目◇
足のむくみも気にならなくなり、つることもなくなった。
◇七回目◇
膝の痛みが最近少し気になるので、そちらの治療のため通院中
症例 2
60代 女性
1年前から全身に筋けいれんが起こるようになり、最近症状がひどくなりご来院された。けいれんは脇腹やふくらはぎ、土踏まずでよく起こる。2年ほど前から仕事が特に忙しく、月に3日ほどしか休みが取れていない生活が続いていた。病院で画像検査などしたが問題は見つからなかった。降圧剤と抗甲状腺薬を服用している。
施術
自律神経測定器の結果、夜の時間帯であったが交感神経が過剰に優位な状態であった。
仕事が忙しく心身の疲労から自律神経のバランスを乱し、血流の悪さや薬の影響で全身的な筋けいれんが起こっていると考えられる。そのため、全身的な血液循環促進や身体を休ませる働きのある副交感神経を高めることを目的に、自律神経調整施術を行っていきました。
来院頻度は1、2週間に1回。
一~四回目
施術後はリラックス出来てよく眠れる。
筋けいれんが起こる回数は大幅に減った。治療間隔が開くと、またけいれんが起こる。
五回目以降
筋けいれんは数日に1回ぐらいまで減り、体調が良い。
症状が気になる時にご来院される。
清水大地

資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
まず、自律神経測定器にて自律神経のバランスを測定した後治療に移ります。

交感神経が高まると全身の筋肉が緊張し、肋骨の動きを阻害してしまったり、気管支の周りの筋肉がこわばり肺がうまく膨らまないことが考えられますので、自律神経のバランスを整えるツボに鍼やお灸で刺激を与え全身の緊張を和らげます。

また、首の前の筋肉や横隔膜、肋骨周囲の呼吸筋(呼吸を行う際に使われる筋肉)の緊張を和らげます。東洋医学的観点から肺、腎の経絡のツボを用いて呼吸器の機能を調整していきます。

ストレスの蓄積、運動不足などにより生命エネルギーである「気」の流れが悪くなる「気滞」という状態に陥ると、イライラしやすい、喉のつまり感、息苦しさ、お腹の張り、気力の低下などの症状を引き起こします。
この「気滞」という状態に深く関わるのが五臓六腑の「肝」です。ストレスなどにより「肝」の失調が起こると肝の持つ疏泄(そせつ)作用(気を全身へ巡らす作用)が低下し「気滞」に陥りやすくなってしまいます。
また、呼吸は東洋医学では五臓六腑の肺と腎の働きが関係していると考えられています。肺は呼吸をして大気から気の一部となる清気を吸い込み濁気を排出する役割と、水分の循環と排泄を調整する働きをしており、腎は肺が吸い込んだ清気を深く留める働きをしています。
肺と腎の失調は呼吸器のトラブルを引き起こしやすくなるのです。
私たちは普段日常生活において特に意識することなく呼吸をしています。「息苦しい」とは無意識にしていた呼吸が楽に呼吸ができないと感じたり、のどが狭くなって苦しい感覚や酸素が薄いと感じる状態です。
息苦しさは身体を正常に動かすためのエネルギーを作り出す「酸素」が体内へ送り届けられる途中、何らかのトラブルが発生することによって起こると考えられています。

肺は空気中の酸素を取り入れて不要になった二酸化炭素を体外へ排出しています。肺で取り込まれた酸素は血液に取り込まれ全身へ送られます。
しかし何らかの原因で身体に酸素がうまく届けられないと息苦しさが現れます。肺はきちんと機能しているのに身体に酸素が届けられない時やきちんと酸素が行き届いているのに酸素が足りないと勘違いするような状況になっても息苦しさが起こります。
・煙や粉塵(ふんじん)による呼吸器へのダメージ
タバコの煙や、大気汚染、粉塵などにより気管支や肺胞が刺激されて炎症が起こると息苦しさを感じる原因になります。
・アレルギーを引き起こしやすい体質とアレルギー反応
特定の原因物質に対して体の免疫システムが過敏になるのがアレルギーですが、その反応が強く出た際に気管支が狭まって呼吸困難が起こることがあります。
・酸素濃度の低下
密閉された空間や換気の悪いところでは、空気中の酸素濃度が低くなり、息苦しさを感じることがあります。また、高地などの酸素が希薄な場所では、身体がその環境に順応できず息苦しさを感じることがあります。
・激しい運動
全速力で走るなどの激しい運動をすると呼吸が荒くなり、早いペースで呼吸が行われるため酸素の取り込みが間に合わず酸欠状態に陥ることで息苦しさを感じます。
・ストレス
不安や緊張など過度のストレスを感じているときは「交感神経」の緊張が起こり筋肉が緊張状態になったり血圧や心拍数が上昇したりする症状が現れます。
すると呼吸が浅くなり息苦しさを感じてしまうことがあります。また、ストレスによる緊張は横隔膜や肋骨周囲の筋肉も緊張させてしまうため肺が十分に膨らんだりしぼんだりすることが出来なくなることで息苦しさを感じる原因になります。
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
タバコの煙や汚染された空気を吸うことで肺胞が破壊され、空気の取り込みが十分に行われなくなる病気です。重度の呼吸困難や咳などが主な症状です。
・気管支喘息
アレルギー反応により、気管支が炎症を起こし気管支の幅が狭くなり、息が苦しくなる発作を繰り返します。のどが詰まるような感覚と息苦しさ、咳、喘鳴が主な症状で、息を吸うときより吐き出すときの方が苦しくなるのが特徴的です。
気管支喘息に対する鍼灸治療について詳しくはこちら←
・気胸
外傷などにより肺を覆っている胸膜に穴が開き、胸腔に空気が侵入して肺が急速にしぼむ病気です。突発的に起こる呼吸困難や咳、胸痛が現れるのが特徴です。放置すると肺の機能を大きく損なうばかりか場合によっては生命の危険もある病気です。原因不明で起こる気胸は自然気胸と呼ばれ10代~30代の長身でやせ型の男性に発症しやすいといわれています。
・肺結核
「結核菌」という細菌に肺が感染して起こる病気です。肺以外にもリンパ節や腸、骨などにも感染します。咳や痰、発熱、呼吸困難、体重減少などの症状が現れます。咳などによる飛沫により菌が広がる可能性がありますが、初期症状が軽いため感染に気付かないこともあります。
・肺炎
口や鼻から侵入した細菌が喉から気管支を通って肺胞が炎症を起こすことで肺胞の壁が厚くなり、スムーズに空気の交換が行われなくなる病気です。初めは咳や痰、発熱など風の初期症状と変わりはありません。
しかし、肺炎の場合は咳が長く続いたり、黄色や黒っぽい痰が出るようになったり、息を吸うと胸の痛みが出るようになったりします。息苦しさを関るようになると重症な肺炎になっている可能性があります。
・心不全
心筋梗塞や不整脈などの様々な心疾患が原因で心臓の機能が低下し、身体に十分な血液を送り出すことができなくなった状態です。
全身の血液循環が悪くなるため、肺に水がたまり急激にうっ血が増すと肺水腫による重度の呼吸困難やショック症状が起こることがあります。
・心臓弁膜症
心臓にある四つの弁の中で全身血流に影響の大きい二つのいずれかの弁が十分に開かなかったり、弁がきちんと閉じなくなり血液が逆流したり一部が漏れ出たりすることで起こる疾患です。
・過換気症候群
精神的不安や極度の緊張など過剰なストレスが引き金となり、突然浅く速い呼吸を繰り返す疾患です。
動機や胸部絞扼感(胸がしめつけられる感覚)酸欠状態のような息苦しさがあります。固有回数が増えることで血液中の炭酸ガス(二酸化炭素)が過度に減少し、血液がアルカリ性に傾くことで血管の収縮が起きめまい、手足のしびれ、筋肉のこわばりなどが生じます。
対処法として紙袋で口と鼻を覆い呼吸をするペーパーバック法が有効です。
過換気症候群の鍼灸治療について詳しくはこちら←
・貧血
貧血になると酸素を全身へ運ぶヘモグロビンが減少して体が酸欠状態になり、息切れ、息苦しさなどの症状が起こることがあります。
貧血症状の鍼灸治療について詳しくはこちら←
・甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモンは心拍数をあげる働きをします。甲状腺機能亢進症の場合は甲状腺ホルモンが過剰であり通常より心拍数が上がった状態になります。
心拍数が最適な状態よりも上がりすぎてしまうため心臓がポンプの役割を十分に果たすことが出来ず、全身に必要な酸素を届けることが出来ないため呼吸困難を起こすことがあります。
甲状腺異常の鍼灸治療について詳しくはこちら←
症例
30代 女性
転職した会社に人間関係でストレスがあり、仕事はやりたかったことで楽しさややりがいは十分に感じているが、最近はその働く楽しさを上回るストレスが増えてきた。前までは会話かあったり、関りがあれば息苦しさを感じたが、今では上手く呼吸ができていないのではないかと思うくらい苦しい時がある。
気づいた時にはその人が近くにいるだけでも息が苦しくなることも増えてきた。
今の職場はその人以外は皆さん良い人で仲良く働いているが、その人の事だけで働けなくなるかもと不安になり来院。
鍼治療は美容鍼で受けた事があるが、お灸は初めて。
当院の治療
自律神経測定器で測定したところ、精神的ストレスが高い結果がでました。
ご本人も自覚があり、かなり職場の人間関係で悩まれている様子でした。
もともとお仕事は好きな気持ちがある分悩みが大きくなっているように感じました。当院の治療としてはストレス値が高くなっている事が原因で交感神経が優位な状態が続いていたため、自律神経を整える事をメインの治療として行い、同時呼吸器に関係する経穴等の東洋医学的な治療も合わせて行いました。
治療経過
◇1~5回目◇
特に変化はなく、終わりにはリラックスした感じはあるが、すぐに元に戻ってしまう。
◇6回目◇
治療した次の日に急に楽に呼吸が出来るようになった。ストレスになる人が近くに来たらまだ苦しさはあるが、かなり変化を感じた。
◇7~13回目◇
特に変化を感じない。楽になった状態から元に戻らないため、良くはなっている。
◇14回目◇
ストレスになる人が近くにきても呼吸が出来る様になった。
◇15回目◇
日常生活に支障が無くなるまで改善した。
尿崩症とは、尿の量を調整する抗利尿ホルモン(ADH)バゾプレッシンと呼ばれるホルモンの合成・分泌の障害により腎臓での水の再吸収が低下する結果、尿量が著しく増加する疾患です。

多尿とそれによる多飲が主症状です。突然に発症し、強いのどの渇き(口喝)があります。一日の尿量は3ℓ以上になり、夜間でも減少しません。
尿崩症は体内の水分のバランス調整ができなくなり、腎臓から大量の尿が排泄されるようになる病気です。
体内の水分バランスは、抗利尿ホルモン(バゾプレッシン)と呼ばれるホルモンが重要な役割を果たしています。抗利尿ホルモンは、尿が大量に排泄されないように調整するホルモンであり、体内の水分量を正常に保つために重要なホルモンです。
抗利尿ホルモンは、視床下部と呼ばれる脳の組織の一部で産生された後、同じく脳に位置する下垂体へと移され同部位で保存されます。
体内の水分が足りてないような状態になると(長時間水分が取れていない、下痢などで脱水になっている、運動で汗をかいたなど)、抗利尿ホルモンが下垂体から分泌されます。
下垂体から分泌された抗利尿ホルモンは、血液の流れに乗って腎臓に運ばれます。腎臓に運ばれた抗利尿ホルモンは腎臓に働きかけ、尿を濃くします。つまり、尿として対外に排泄される水分量を減らすことで、体内で水分が保たれるように調整します。
体内に水分を保持する一連の流れから分かるように、体内に水分を保持する機構は複雑です。この経路のどこかに異常をきたすと尿崩症が発症します。
尿崩症は原因に応じて、中枢性尿崩症と腎性尿崩症に分類されます。
◇中枢性尿崩症
中枢性尿崩症は、そもそも抗利尿ホルモンが脳(視床下部・下垂体)において生産や分泌がなされなくなったことによって発症します。
中枢性尿崩症の分類
・特発性:原因が不明なもの
・続発性:脳の中の視床下部から下垂体後葉という部分に別の病気があり、その病気に伴って発症するもの。原因として胚細胞腫、頭蓋咽頭腫などの脳腫瘍、脳外科手術、炎症などが挙げられます。
・家族性:ADHの合成、分泌に関わる遺伝子に変異があるために発症するもの。子へと遺伝する確率は50%です。
◇腎性尿崩症
腎性尿崩症は、抗利尿ホルモンに対して腎臓が反応をしない状態から生じる尿崩症を指します。脳からの指令に対して腎臓が適切に反応しない結果、大量の水分が尿として排泄されることになります。
中枢性尿崩症と腎性尿崩症が尿崩症の代表ですが、その他にも尿崩症を引き起こしうる状況があります。
たとえば、手術や感染、炎症、脳腫瘍などにより視床下部が障害を受けると体内の水分がしっかり保てているにも関わらず常時喉が渇くことがあります。この場合には大量の水分を自発的に摂取するようになりそれに反応して大量の尿が排泄されてしまうようになります。
また、妊娠期間中に一過性の尿崩症を発症することもあります。これは胎盤から分泌されるたんぱく質が抗利尿ホルモンを壊してしまうため、尿量の調節がうまくいかなくなることが原因です。
また、胎盤からはプロスタグランジンと呼ばれる物質が分泌されますが、プロスタグランジンが抗利尿ホルモンの腎臓における反応性を低下させます。しかし、これらの妊娠に関連した尿崩症は軽度であることが多く、出産とともに症状も改善します。
検査・診断
尿崩症では尿検査、血液検査、水制限試験、画像検査などが行われます。
血中の抗利尿ホルモンと血中、尿中の浸透圧を調べます。血中浸透圧は高く、尿中浸透圧は低いですが血中抗利尿ホルモンは低値となります。
また、摂取水分量を制限し、採尿と採血をし、浸透圧の変化を調べます。正常では尿の浸透圧が上昇しますが、尿崩症では上昇しません。さらに、抗利尿ホルモンを注射して、その効果を調べます。中枢性では尿量が減少しますが、腎性では変わりません。MRIでは、性状で認められる下垂体後葉の信号が失われています。糖尿病や腎臓病などの除外と精神的な原因による多飲多尿との区別が必要です。

治療
脳内の病変による場合は、原疾患の治療が必要です。多尿の治療には抗利尿ホルモン製剤を日に1~2回点鼻する方法が一般的です。その他、飲み薬や注射製剤も使用できます。

東洋医学では、排尿に関するトラブルは、水分循環に異常をきたす「水毒・水滞」によって生じる症状です。こうした原因を作り出すのが「水」の状態を調整している五臓六腑の「腎」です。
東洋医学でいう「腎」は腎臓という臓器だけを指すのではなく、排尿、排泄、水分代謝、ホルモンバランス、記憶力などを総合した働きを表しています。
この「腎」の機能が衰える「腎虚」になると「水」の異常が起こりやすくなると考えられています。また、寒くなるとトイレが近くなるように、排尿トラブルの根底には「冷え」があると捉えており、腎虚にも体の冷えや、血の滞りで生じる「瘀血(おけつ)」も関わることがあります。
当院では自律神経測定器にて測定を行い、自律神経のバランスや血管の状態など、お身体の状態を把握したうえで治療へ移ります。
まず、血液循環、内臓機能、内分泌、免疫機能などを司る自律神経系の調整施術を行うことで、症状が治癒しやすいお身体の状態へと整えていきます。

また、排尿障害のある方は下腹部から下肢、腰部や骨盤周囲の筋緊張や冷えが見られる方が多いため、腰から下肢にかけての重要なツボを用いて筋緊張を緩めて血行を改善し、内臓機能を高めます。

さらに、東洋医学的観点から、気、血、水の流れを整えるツボや冷えを除くツボ、五臓六腑の「腎」をはじめとした五臓六腑の機能を高めるツボなどに刺激を与えていきます。
東洋医学で舌は五臓六腑の「心」と気血生化の源である「脾胃」は密接に関係しており、臓腑や気血の病変が舌に反映されます。また、「心」は精神活動を担っている臓器でもあるため過度なストレスが「心」に影響を与えることもあります。

さらに、舌痛症は熱邪と関係が深い疾患と捉えます。熱邪は病気の原因(病因)の一つで、自然界の火熱により生じる現象に似た症状を引き起こす病邪です。
発赤、熱感などの炎症症状や、疼痛、化膿、発熱、悪寒、口喝、充血、不眠、イライラ、出血などの症状が見られます。
熱邪には二つのタイプがあり、熱邪の勢いが盛んになって生じる実熱(じつねつ)と、熱を冷ますのに必要とされる陰液が不足するため(陰虚)相対的に熱邪が強まって生じる虚熱(きょねつ)です。
陰虚証の場合、唾液分泌が減少し口の中が乾燥します。これによって口腔内の粘膜が炎症を引き起こしやすくなり、痛みを感じやすくなったり、辛い味などに過敏に反応するようになります。

舌痛症の患者さんは疲労やストレスを抱えていることが多く、それは舌痛症の痛みに密接に関係していると考えられています。
そのため当院では、ストレスや疲労度、自律神経のバランスなどを機械で測定し、お身体の状態を把握したうえで治療へ移ります。
まず、顔面部の血流を良くするためうつ伏せで首や肩周りに鍼やお灸をして筋緊張を緩め、仰向けでお顔周りのツボに鍼やお灸で刺激を与え、痛みを感じる神経の機能を整える施術を行います。
また、東洋医学的観点から「心」や「脾胃」の機能をはじめとした五臓六腑を整えるツボや、熱邪を除くツボを用います。また、免疫機能や内臓機能、ホルモンバランスなどを主る自律神経系を調整するツボに鍼やお灸で刺激を与えることで、お身体が本来持つ自然治癒力を高め病気が治癒しやすい状態へと整えていきます。

舌痛症とは、口腔の粘膜に明らかな病変がないにも関わらず舌に慢性的な痛みや痺れが生じる疾患です。
全人口の0.7%~3%の方に発症すると言われていて、特に閉経後の女性における有病率は12~18%とのことです。性別では女性が7~8割を占め、年齢は50代~70歳代が多く真面目で几帳面な性格の人が多い傾向にあります。
女性の患者が大多数を占め、主に更年期以降発症することが多いため原因としてエストロゲンの減少や、自律神経の変調、中高年のうつや神経症などの精神科領域の疾患の関与が疑われていますが未だ病因は特定できていません。しかし、近年は舌痛症を神経障害性疼痛(しんけいしょうがいせいとうつう)の神経痛の一種と捉える考えが支持されています。
これは神経の中でも末梢だけでなく、中枢が大きく関与していると考えられています。
とはいえ、原因を一つに特定することはできず、様々な原因や要因が複合して影響しあっているとも考えられています。
症状の多くは舌の先や背中側、舌の脇や縁に表在性のヒリヒリする、焼けるような・やけどをしたような、または痺れた感覚を訴えることが多く、随伴症状として味覚障害や口腔乾燥感を伴うことがあります。
また、辛い物や酸味のあるような刺激物で悪化する方もいます。痛みは慢性的に持続するため、日常生活の質が低下(QOL)することもあります。

舌痛症の痛みは安静時に増悪し会話や食事の際、何かに集中していると痛みは忘れてしまうという傾向があります。
また、日内変動があり夕方から夜に悪化する傾向があります。痛みの強さには波があり、痛みのために睡眠できないということはありません。また、痛む部位が移動する、会話や疲労、ストレス、睡眠不足などで悪化することがあります。
痛みは心理社会的ストレスと密接な関係があることがわかっています。仕事や家庭などでの不快な出来事が痛みを増悪させます。この心理社会的なストレスが舌痛症のトリガー(誘因)となることが知られています。
舌の痛みを生じるような疾患、舌炎やアフタ性口内炎、扁平苔癬(へんぺいたいせん)などの口腔粘膜疾患や、義歯、不良補綴物による障害、口腔乾燥症、口腔カンジダ症、舌癌などの疾患の有無を確認します。
また、血液検査や口腔の細菌培養検査により、鉄欠乏性貧血やビタミン欠乏、亜鉛欠乏、カンジダ症の有無を確認します。
これらの検査から臨床的に明らかな原因となる病変を認めない場合舌痛症と診断されます。
舌痛症は原因が分かっていない疾患であることから根本的な治療法はまだ確立されておらず、対処療法となります。
現在最も有効な治療法は、主に抗うつ薬を中心とした薬物療法です。これは鬱などのメンタルへの効果ではなく、慢性的な痛み(慢性疼痛)そのものに対する効果を狙ったものです。
また、心理的な原因が考えられる場合には、食事や睡眠、運動などの生活習慣のアドバイスを含めたカウンセリングも行われています。

チックとは不規則で突発的な体の動きや発声が、本人の意思とは関係なく繰り返し起きてしまう疾患です。根本的な原因はいまだ解明されていませんが、子どもの10人に1~2人が体験するといわれています。4~11歳頃の思春期~青年期の男児に発症することが多く12歳頃を境にして減っていき、成人になるまでに約50%の方は自然治癒していきます。
症状が継続する期間によって
・一過性チック症(一年以内に症状が消失する)
・慢性チック症(一年以上持続する)
に分類され、さらに多種類の運動チックと一種類以上の音声チックが一年以上続く場合は「トゥレット障害(トゥレット症候群)」と分類されます。トゥレット症候群の頻度は一万人に1~5人くらいといわれており性差はありません。

以前は心の問題と言われていきましたが、現在では遺伝的な要因の関与やドーパミンという神経伝達物質のアンバランスの関与が指摘されています。
また、不安や緊張、興奮、疲労、などが誘因となりやすいといわれています。
不安などのストレスや強度の疲労、発熱によって悪化しやすく、心身共に落ち着いている状態のときは改善する傾向にあります。
不安や緊張などの精神的ストレスが原因となることが多い病気のため、傷つきやすかったり敏感に感じやすかったりする性格も関係があると考えられています。
動作性の症状(運動チック)
・まばたき
・顔をしかめる
・鼻をピクピクさせる
・口をゆがめる
・とがらせる
・舌を突き出す
・首を左右に振る
音声性の症状(音声チック)
・咳払い
・鼻や舌を鳴らす
・叫ぶ
・単語を連発する
などに大別されます。
チックは意図的なものではなく、やるつもりがなくてもやってしまうものです。ある程度であれば意志により抑制することも可能です。しかし、抑制を続けると反動で一時的に症状が激しくなることもあります。
検査・診断
チック症は子供の場合は小児科や小児神経科で診察を受け、大人の場合は精神科や神経内科を受診することが勧められています。
症状と持続時間を中心に、問診、視診などで判断されることが多いです。問診からチック症を大きく3つの病型に分けます。運動チックまたは音声チックの症状が見受けられ、発症してから一年以内の「暫定的チック症」、運動チックと音声チックのどちらかの症状が一年以上見られる場合の「持続型(慢性)運動または音声チック症」と、運動チックも音声チックのどちらも発症してから一年以上経過している「トゥレット症候群」の3つです。また、ADHDや強迫症などの病気はチックとともに発症することが多く、合わせて検査を行うこともあります。
治療
症状が比較的軽度の場合は、薬物治療などは行わず、できるだけ身体的、心理的ストレスを減らす環境を整える方法を医師との相談の上で考えていきます。また、認知行動療法という本人の認知の仕方を変えることで、ストレス軽減を目指す認知療法が行われます。
チックが重度で学校生活に支障をきたすなど、特に問題となる場合、単純なチックにはクロナゼパムやジアゼパムなど、生活に支障をきたすような重度のケースでは、向精神薬などが用いられることがあります。
これらの方法で症状が軽快しない場合、難治性のチック症の場合は深部脳刺激療法(DBS)という手術が選択されることがあります。
チック症における多くの症状は筋肉の動きが制御できないことが根本にあります。
東洋医学では、筋肉の動きは五臓六腑の肝がコントロールしていると考えられています。
肝の主な働きは気、血(けつ)、津液(しんえき)の巡りをコントロールすることですが中でも気と血の巡りに強く関係しています。これらの流れを調整する働きを疏泄(そせつ)といいます。また、肝は血の貯蔵、精神状態の安定化にも貢献しています。他にも目、爪、筋肉の働きや状態を支えています。
ストレスを受け続けると肝の気や気を巡らす疏泄機能がうまく働かなくなってしまい気滞(きたい)や瘀血(おけつ)を引き起こしてしまいます。その結果眼精疲労、視力低下、まぶしさ、めまい、立ちくらみ、爪や肌の荒れ、抜け毛、筋肉の痙攣、ひきつり、こむら返り、生理不順などの症状を引き起こすことがあります。

さらに、肝と関連深い腎へのアプローチも必要な場合があります。腎は成長や生殖などを司る精(せい)を蓄えています。肝腎同源(かんじんどうげん)といって、肝が失調すると腎の働きも弱まり、逆に腎の精が少なかったりすると肝の働きも弱まってしまうのです。

チック症の方は体と心の緊張状態が続くために自律神経も緊張しやすいです。
そのためイライラ、不安、やる気が出ないなどの自律神経失調症の症状も出やすくなります。
自律神経は内臓の働きや代謝、体温などの機能をコントロールするために無意識に働いている神経で、日中活動的な時間に優位に働く交感神経と夕方から夜にかけて優位に働く副交感神経の二つに分けられます。
精神的な緊張、不安などのストレスや疲労の蓄積などにより自律神経が失調すると、チック症状が出やすくなったり症状を悪化させる要因にもなります。
そのため当院では、問診後に自律神経測定器で測定を行いお身体の状態を把握したうえで治療へ移ります。

お子様の場合小児鍼を使用し施術を行います。
小児鍼は、一般的な鍼とは違い、鍼を体に刺さず、専用の鍼具で皮膚をさする、あるいは皮膚にトントンと当てるだけの手法です。不安なお子さんにはお母さんに抱いて頂いたままで施術を行うこともできますし、親御さんの治療室への同席も可能です。
腕や足、腹部や背部などに存在する自律神経のバランスを調整するツボへ鍼やお灸で刺激し、免疫機能や内臓機能を整え体をリラックスさせることにより症状の改善が期待できます。
また、ストレスは、神経線維に伝わり筋肉を緊張させたり血管を収縮させ血行不良を引き起こします。それが最も現れやすいのが首や肩周辺の筋肉です。
チック症やトゥレット症候群の方はストレス反応により首や肩周りの筋肉が緊張していることが多いため当院では首や肩周りの施術を合わせて行います。首や肩の筋緊張を緩和することで脳内の血流を促進し、ドーパミンをはじめとした神経伝達物質のバランスを整える作用が期待できます。
また、痙攣が見られる場合その箇所に直接施術を行うことで筋肉の緊張を和らげ血流を良くしてコンディションを整えます。
さらに、東洋医学的観点から肝や腎をはじめとした五臓六腑の機能を調整するツボや、気血の巡りをよくするツボに刺激を与えお身体の状態を整えていきます。

やる気の低下は「気」のバランスが崩れていることによって起きると考えられています。「気」とは生命活動のエネルギーを表し、全身を巡り各臓器の機能の維持に大きな役割を果たしています。
この「気」を十分に取り込めない状態や、流れに乱れがある状態が続くことで、「気虚」の状態となりこれが慢性的な疲労状態が続く要因と考えられています。
「気」が不足している状態が続くことで「血」が不足する「血虚」も引き起こし、時にはより状態の悪い「気血両虚」の状態となります。
このような状態が続くことで体内の気の巡りが悪くなり、血液の養分が不足の状態に陥ってしまうことで回復力が低下してしまうと考えられます。
また、怒り(ストレス)の感情は肝によって処理されるため、精神的ストレスが続くと気が肝に鬱積し気が滞ることや脾虚(脾臓という消化器系の機能低下)により、栄養が不足したり、余分な水分が体にこもってしまい経絡の流れを阻害してしまうこと、腎虚(腎の機能低下)によってエネルギーが不足することなども原因として考えられています。
まず、最初に自律神経測定器で血管の状態や自律神経のバランスを測定しお身体の状態を診させて頂きます。
自律神経測定器で自律神経の状態を把握することでよりその方に合った施術法を選択してオーダーメイドの施術を行うことが可能なのです。やる気の低下でご来院される方の多くは、自律神経の乱れが見られます。
自律神経のバランスは日中などの活動的な時間帯は交感神経が優位な状態で逆に夕方から夜にかけてはリラックス神経である副交感神経の活動が優位になっていくのが正常な反応です。
しかし、やる気の低下でご来院される方の多くは自律神経のバランスが日中夜逆転してしまっている方が多くいらっしゃいます。鍼灸治療は自律神経のバランスを整える効果があり、自律神経のバランスを整えることでやる気の低下を改善していきます。

その他、東洋医学の観点より気血の状態も整えていきます。やる気の低下は特に気血の状態が重要で、気血が不足している気血両虚という状態が多く見られます。
気血に関する経穴を刺激することで気血を補う施術を行っていきます。

30代 女性
特に朝倦怠感が強く出て、仕事に集中できずやる気が起こらない状態が2か月ほど続いていた。
仕事がない休日も一日中眠気があり、外出もせずにずっと横になっているような状態。次第にパソコン作業中手汗がすごく出てキーボードが濡れるほどで睡眠も途中で起きてしまうような自律神経のバランスの乱れが見られるようになってきた。
友人の勧めで鍼灸治療を勧められて当院にご来院されました。
自律神経測定

まず初めに自律神経を測定してから施術を行っていきました。
副交感神経の活動が強く自律神経の乱れが見られましたので自律神経の状態を整える治療を中心に施術していきました。
治療
仰向けでお腹や手足のツボを使って自律神経の状態を整える治療を行って次にうつ伏せとなり、背中にある背部兪穴という五臓六腑に重要なツボを使って五臓六腑の状態を整えていきました。
治療後、まず睡眠の質が改善されたと実感。中途覚醒の症状が出る頻度が減りました。1週間に1~2回ほどの治療を2か月ほど続けて朝の倦怠感は段々と良くなり、仕事での集中力も上がってきました。
症例2
20代 男性
10年前から疲労感が感じやすくなり、ここ一か月ぐらいでやる気の低下が著明に感じる。
一日の睡眠時間は十分寝ているはずだが、日中の眠気が強い。
首や肩のコリ感もあり、頭痛も気になる。
当院の施術
問診で詳しくお話をお聞きしたところ、お仕事の関係で海外出張が多く、生活が不規則という事がわかりました。生活習慣や症状の特徴から自律神経の乱れが強い可能性があるため、まず自律神経測定器でお身体の状態を測定したのですが、夜の時間でも副交感神経の働きが弱く自律神経の乱れが大きく出ていました。
また、触診において全身の張りとくに首肩の緊張の強さが目立っていました。
この患者様は睡眠の質が悪く寝ても疲れが取れない体質のため、まず副交感神経を高める治療から始めました。睡眠の質が低下すると疲労が蓄積され、心にも余裕がなくなるため活力が低下してしまいます。そのため、まずは副交感神経を高めて疲労を回復させるようにリラックス作用が期待できる治療方法を行いました。
その後に、全身の筋緊張の解消を目的としたアプローチを行っていきます。
特に首が硬くなることにより、脳から放出される幸福ホルモンのセロトニンが分泌できなくなり、やる気の低下を引き起こす原因になります。
1回目
あまり大きな変化はないが、体は軽くなった。
2回目
やる気の低下や精神的な調子は改善した。
疲れはまだ取れにくい。
3回目
眠りが浅いせいか疲れはまだ残りやすいが、精神的な状態は安定している。
4回目
気持ちが安定し、やる気が出てきた。疲労感も以前より軽減している。
5回目
気持ちに活力が出てきて、仕事中の集中力も増してきた。
症例3
50代 男性
ここ数か月いまいち仕事に身が入らない日が増えてきた。特に身体に痛みや症状もなく、ストレスに感じる出来事も思いつかないが休みの日に外出せず2日間を過ごすことが多くなったり、仕事から帰って来て座ったまま2時間何もせずにボーっとしている事が3日前にありさすがにどうにかしなければならないと思い来院。
鍼は正直怖さがあり、なるべく痛くしないで治療してほしい。
当院の治療
自律神経測定器で測定したところ、交感神経と副交感神経のバランスが真逆になっておりました。交感神経は昼に優位になる神経、副交感神経は夜に優位になる神経ですが、夜の時間帯で測定しましたが、交感神経がかなり優位な状態になっていました。
また、ストレス値が高くでており、本人の自覚は無いようでしたがかなり身体ともに過剰な負荷がかかっていますとご説明しました。
自律神経の乱れが激しいため、自律神経の調節をメインに行いました。それと同時に筋肉の緊張も強かったので、筋肉を緩めるための血行促進の治療も行いました。
治療経過
1回目
治療中に眠れるくらいリラックスできた。
2~5回目
治療中にリラックスできるが、効果としてはあまり感じない。
6回目
気づいたら仕事終わりに家へ帰ったあとも元気が残っている気がする。
ここに通う前はほとんど家事は休日にまとめて片付けていたが、最近は平日も家事ができている事に気づいた。
7~12回目
回数を重ねるごとに体調が良くなっている。
改善してきたため、治療の間隔を空けて通うことになった。
13回目
日常生活で困らないくらい回復した。
やるべきことがあってもやる気が出ない、積極的に物事を成しとげようという気になれない、という状態になるのはなぜなのでしょうか。それには、脳の伝達物質の影響が関係しています。
脳の神経伝達物質は、心に影響して喜びや不安などを感じさせたり、身体に影響してだるさをもたらしたりします。やる気が出なくなるのは「セロトニン」や「ドーパミン」「ノルアドレナリン」という神経伝達物質のバランスが乱れているからです。
私たちの身体は平常時、神経伝達物質の分泌をコントロールして精神のバランスをとっていますが、人間がストレスを感じるとドーパミンやノルアドレナリンが過剰分泌され、セロトニンの量が減ってしまいます。セロトニンの量が減ると神経伝達物質のバランスが崩れ、脳内の神経細胞の働きに影響が出てやる気が出なくなるといわれています。
神経伝達物質のバランスが崩れる原因は、明確には解明されていませんが、慢性的な疲労や過度なストレス、睡眠不足、食生活の偏り、不規則な生活習慣などが関係していると考えられています。

・身体的疲労
身体に疲れが蓄積する身体的疲労の原因として挙げられるのが、過度な運動や重労働、長時間の筋肉の酷使、運動不足や眼精疲労、睡眠不足、栄養不足などといわれています。
疲労している時は筋肉を動かすためのエネルギーが不足し、乳酸などの疲労物質が蓄積していきます。糖質が分解されてエネルギーとなる時に出来る乳酸は酸性です。筋肉は酸性に弱く、乳酸が多く蓄積されると十分に働けなくなります。その結果、疲れやだるさや筋肉の張りにつながります。また、同じ姿勢や同じ動作を続けて一部の筋肉が緊張したり、運動不足により筋肉が萎縮し弱くなることも乳酸が蓄積する原因となります。
・ストレスが原因で起きる精神的疲労
「ストレス社会」といわれる現代においてストレスと無縁で過ごしている人はほぼいません。精神的に感じているストレスは気持ちが重くなってしまうだけではなく、自律神経やホルモン分泌にも悪影響を与えます。
・身体、精神の管理能力が低下してしまう脳疲労
人が感じる疲れの中には、身体的な疲れや精神的な疲れ以外に脳の疲れもあります。脳疲労は脳が疲れている状態を指します。脳疲労の原因は睡眠不足とストレスといわれています。
脳が疲れてしまうと身体を管理する機能が低下してしまうため能増機能が上手く働かなかったり、身体や脳を動かそうと思ったときに上手く命令を出せずに動作が緩慢になったり、集中力、思考力、注意力の低下や、記憶力の低下、自律神経の乱れによる情緒不安定、脳の血流が悪くなることでストレスに過敏になるなどの症状が現れます。
セロトニンとは
セロトニンには脳内物質のバランスを整え、精神を安定させる働きがあります。睡眠と覚醒のリズムや痛みの抑制などにも関わっている物質です。セロトニンが不足するとイライラしたり、不安を感じやすくなるほか、うつ病との関連も指摘されており、食欲や性欲、睡眠、記憶、情動、学習機能へ作用します。
ドーパミンとは
意欲や喜びなど快感を得た時に活発になる物質です。ドーパミンがたくさん出るとやる気が出ます。また、人間が行動を起こす時にはドーパミンが分泌されており正常に分泌されていると、行動の動機づけに正しく作用します。
ノルアドレナリンとは
ノルアドレナリンは動物が危険を感じた時に分泌される物質です。脳と身体を覚醒させる作用と、環境や対人、精神などから受けるストレスの対応する作用などがあります。
ノルアドレナリンの分泌を活性化させることで、ドーパミンの分泌も活発になります。
・うつ病
うつ病とは、「不眠や食欲不振などの特定の症状が、2週間以上にわたりほぼ毎日続いている状態」です。うつ病になる原因は心身のストレスなどで、やる気が出ない症状はうつ病の初期症状として見られます。うつ病になるとセロトニンが不足するのでやる気が出ない他に、喜びの喪失や悲壮感にかられるなど、様々な精神障害の症状が出てきます。
セロトニン不足以外でやる気が起きなくなる病気
・橋本病
身体を守る働きをするリンパ球が何らかのきっかけで甲状腺を攻撃し、甲状腺の機能が低下することで代謝を促す甲状腺ホルモンの分泌が正常に行われなくなり、代謝機能が低下することで心身の機能が低下します。橋本病はやる気が出なくなる以外にも疲れやすくなる、汗をかきにくくなる、体重増加、脈拍や体温の低下、眠気などの症状が見られます。
・自律神経失調症
精神ストレスや過労などが原因で、交感神経と副交感神経のバランスが乱れることで起こる症状の総称です。自律神経は心身の状態を調節しているので、そのバランスが乱れることにより、だるさなどの全身症状だけでなく、頭痛や耳鳴りなどの器官的症状、やる気が出ない、イライラするなどの精神的症状が出ることがあります。現れる症状は人により様々です。
・無気力症候群(アパシーシンドローム)
特定の事に関して意欲や自発心が無くなる症状です。趣味は積極的に取り組む一方、仕事に関してはやる気が出なくなる、というような状態になります。感情の起伏が小さくなったり、様々な出来事に対して無関心になったりします。これは強いストレスから身を守るための逃避行動と考えられています。受験を乗り越えた大学生に多いとされていましたが、最近では社会人にも見られる症状です。
病気や心身の不調によりやる気が出なくなる以外にも、日常的な習慣が原因となっていることがあります。それは、睡眠不足や不規則な生活です。睡眠不足や不規則な生活が続くと体内時計が狂い、脳内物質のバランスを整えるセロトニンの分泌量が減ります。セロトニンの分泌量が減ると、入眠時に必要なメラトニンというホルモンが分泌されにくくなります。すると寝つきが悪くなったり、途中で目覚めることが増えたりして睡眠の質が下がりやすくなってしまいます。

やる気を出すために必要なセロトニンの分泌を正常にするには、睡眠サイクルを整える事が重要です。何となくやる気が出ないと思っている人は、起きた後や眠る前の習慣を見直す事が大切です。
清水大地

資格
はり師
きゅう師
2008年
鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年
おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年
中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年
渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年
三軒茶屋α鍼灸院を開院
イライラとは、一般的には物事が自分の思うようにならなかったり、不快なことがあったりして神経が高ぶり、いら立っている状態を指します。
医学的には、些細なことで不機嫌になることを「易刺激性(いしげきせい)」、怒りっぽいことを「易怒性(いどせい)」と呼びます。
これは、日常茶飯事誰にでもあることですが、程度が過ぎると日常生活に支障をきたすこととなります。

イライラの原因は、まず、ストレスが挙げられます。また、ホルモンバランスの乱れや病気などが関係していることもあります。
ストレスとは外からの刺激に対して緊張した状態を指します。
具体的には恋人や友人、上司、妻、夫などとの人間関係がうまくいかない場合や、仕事でやることが多すぎたり、予定通りに仕事がうまくいかない場合、職場の環境に慣れない場合、人生のいろいろなことに不安があり眠れない場合などの心理的、社会生活によるストレスや、気温、騒音、天気などの環境による刺激、疲労や睡眠不足、病気などの身体が受けた影響、クラス替えや進学、転職、結婚や出産、引っ越しなど喜ばしいと思われる出来事も含まれ、これらもストレスを引き起こす原因になります。
ホルモンバランスによるイライラは本人の意思とは無関係にイライラする場合で、ホルモンバランスが崩れていることが原因で起こります。
具体的には生理前になると普段気にならないことでもカッとなったりイライラする「月経前緊張症(PMS)」と閉経前の女性に起こる、加齢に伴う卵巣機能の低下により女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少し、そのため様々な不定愁訴が出現する「更年期障害」があります。また、男性も加齢に伴い男性ホルモンの分泌が低下して起こる「男性更年期障害」によってイライラが起こることがあります。
・月経前緊張症(PMS)の鍼灸治療について
・更年期障害の鍼灸治療について
・男性更年期障害の鍼灸治療について
同様に20~40歳の場合でも、ストレスや不規則な生活リズムで睡眠不足が続いていたり、忙しくて食事ができない、あるいは極端なダイエットをしたために栄養不足が女性ホルモンの分泌にも影響することがあり、更年期障害と同じような症状が現れることがあります。
また、妊娠中もホルモンバランスが不安定なため、自分では気が付かないうちにイライラして人に当たったりして対人関係がうまくいかなかったりすることがあります。また、すぐにイライラして子供を叱りつけたり、日常生活に不安を感じたりします。
このようなストレスやホルモンバランスの乱れは全身の器官やホルモン分泌を調整する神経である自律神経のバランスを崩す原因となり、心身に様々な不調が現れやすくなります。
病気との関連では、心の病気(双極性障害、統合失調症、依存症など)のほとんどはイライラを引き起こしやすいことが知られています。また、脳の病気(脳卒中、低酸素脳症、脳炎、認知症、発達障害など)や怪我による高次脳機能障害もイライラの原因となることがあります。特に認知症は攻撃的な発言をしたり、すぐに怒鳴ったりという初期症状が出ることがあります。認知症の周辺症状の一つで性格、人格の変化として現れることもあります。

精神的なストレスによるイライラは老若男女を問いません。多くの場合は何かしらのストレスを抱えていて、その解決、納得がしにくいときに起こります。その状態が長かったり、程度がひどかったりすると生活に支障をきたしかねません。また、これといった精神的ストレスや病気がなくても、生活の乱れによってリラックスする時間が取れないとイライラしやすくなります。
例えば、睡眠不足が続いている、忙しくて疲労がたまっている、運動不足、コミュニケーション不足などが挙げられます。
東洋医学ではストレスを七情といって「怒」「喜」「思」「憂」「驚」「恐」の七つに分類していますが、イライラの原因はこの中の「怒」になります。
ストレスは「気」の流れを停滞させる「気滞(きたい)」や気が本来の巡り方と逆行させる「気逆(きぎゃく)」血の滞りである「瘀血(おけつ)」を起こす原因になります。また、五臓の「肝」に影響しその機能を失調させます。
「気滞」になると気分が落ち込む、イライラ、不眠、頭が重い、ボーっとする、喉のつまり感、胸のつまり感、お腹の膨満感、ガスが多いといった症状が現れます。
「気逆」はのぼせや動悸、頭痛、めまいなど上半身に症状があり、足が冷えます。
「瘀血」は緊張性の頭痛、胸、腹部の張り、痛み、イライラ、情緒不安定などの症状が現れます。女性の場合、月経前に最も症状が出やすくなります。
「肝」が失調するとイライラ、不眠、目の充血、筋肉痛や筋肉のコリ、耳鳴り、末端の冷え、ゲップやガスが出やすい、便秘、胸や脇が張る、生理周期の乱れ、生理痛、肌荒れ、など様々な症状を呈します。


当院では、自律神経測定器で計測を行いお身体の状態を把握したうえで治療へ移ります。ストレス、疲労の蓄積、生活習慣の乱れなどで自律神経のバランスが乱れるとイライラ、情緒不安定などの精神症状が現れやすくなるためです。
自律神経を整えるツボに鍼やお灸で刺激を与え、内臓機能や免疫力を高め、全身的な血流を良くし自己治癒力を高めていきます。また、東洋医学的観点から気の巡りや血の巡りを整えるツボや「肝」をはじめとした五臓六腑の機能を整えるツボを選択していきます。
イライラ、怒りっぽい症状がみられる場合、身体的な緊張もみられることがほとんどです。身体的な緊張があると気や血の巡りも悪くなります。
特にストレスを感じると防御反応として首や肩周りに筋緊張が現れやすいため、首肩周りの施術も行っていきます。
また、問診や触診により精神症状の他にも不定愁訴や、緊張の強い部位、冷えのある部位を確認しそれに合わせて施術を行います。

心の症状が強く出ている場合には心療内科、精神科、メンタルクリニック、ホルモンバランスの崩れから起こるイライラは婦人科、産婦人科などを受診することをお勧めします。
産婦人科的な病気、内科の病気、薬物の関与が疑われれば、そちらに対する精密検査と治療が必要です。これらがない場合は、ストレスの有無を確認し、ストレス源がある場合は環境を調整するようなアドバイスをします。また、カウンセリングや行動認知療法などで心の整理を行うことで安定が得られる場合もあります。
明らかなうつ病、適応障害などの精神疾患と判断できる場合や薬を使わないケアだけでは日常生活の障害が解消しない場合は、抗うつ薬や抗不安薬などの薬物療法が有効です。
ホルモンバランスの崩れによるイライラの治療法はその原因となっている病気の治療を行うことが第一です。更年期障害のホルモン補充療法や、月経前緊張症のホルモン療法、漢方薬療法などがあります。また、カウンセラーに相談する精神療法、抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬などが処方される薬物療法などがあります。
不安という感情は、自分の身を守るためにとても重要な感情です。何となく不安を感じることで身の危険から逃げることが出来たり、何らかの対処ができます。
しかし、その感情が続いてしまい自分でコントロールができなくなってしまうと、精神的あるいは身体的にも大きな影響を与えてしまいます。
下記のような状態が続いているようでしたら不安障害の疑いがあるので注意が必要です。
☑なんでもない出来事でも緊張したり不安を感じる
☑疲れやすく、常に気怠い
☑めまい・ふらつき・頭重感を感じる
☑イライラして落ち着かない
☑夜でも神経が高ぶっていて疲れていても眠れない

不安障害とは、その名の通り不安感を主症状とする疾患です。前述のとおり、不安感は人間にとって必要な感情です。不安感があること自体はなんや病気でもありませんが、不安感が長く続いていたり、不安感が自分で全くコントロールできなくなってしまったら病的な不安の可能性があり、その不安感は精神もしくは身体にも悪影響を与えてしまいます。
不安障害は、女性にかかりやすい疾患と言われており、男性の約2倍も発症していると言われています。基本的に6か月以上慢性的に不安感が続き、最初は身体的変化みられずに病院を受診することが少ないですが、頭痛や動悸などの身体的変化みられてはじめて病院を受診することが多いようです。
不安障害は、身体的にも精神的にも症状があらわれます。
精神的症状
・なんとなく慢性的に続く不安感
・イライラ感
・記憶力や集中力の低下
・小さなことでも落ち込む
・中途覚醒や寝つきが悪くなる
・外出するのも億劫になる
身体的症状
・頭痛や頭重感
・動悸やめまい
・倦怠感
・慢性的な疲労感
・慢性的な首肩こり
・便秘
・頻尿
※上記が鍼灸で対応できる症状になります。
当院ではまず治療を行う前に自律神経測定器で自律神経の状態を把握した上で施術を行っていきます。
交感神経が優位かまたは副交感神経が優位かで施術法や使用経穴が異なってきます。

その他にも東洋医学的観点からも施術していきます。不安神経症で悩まれている方の多くは上記のように『心気虚』です。当院の鍼灸治療では、『心』の機能を回復させて『気』を充実させます。

頸部の筋緊張の緩和も不安障害には有効です。不安障害は、頸部の胸鎖乳突筋という筋肉が過緊張状態の方が多いです。
その部分の筋緊張が強く出てしまっていますと、その下を通過している血管を圧迫してしまうことで頭部への血液循環が悪化してしまう危険性があります。それらを解消することで症状改善を目指していきます。
不安障害に対しては鍼灸は補助療法になります。
鍼灸により病院で行っている治療効果を高めることが目的になります。

不安障害は、東洋医学でいう『気』と五臓六腑の『心』が深く関わっていると考えられています。
東洋医学の『気』は体内を流動する精微物質の一つと考えれており、体内を巡って臓腑の機能や精神的活動または体外から邪気から体を守る役割も果たしています。『気』の作用が十分に機能しないと、不安感などの精神的症状の他にも元気が出ない・倦怠感・食欲不振・イライラ感・頭痛・不眠など様々な体の症状を呈します。
五臓六腑の『心』は『神志を主る』と言われ、思考・分析・判断・情報処理などの意識や思考活動をになっています。
『心』の機能が充実していれば、思考力や判断力、記憶力などが正常に機能します。『心』の機能が低下してしまうと、不安感・動悸・めまい・倦怠感などの症状があらわれてしまいます。
上記の二つの『気』と『心』の機能が低下している状態を『心気虚』といい、不安神経症の原因となります。
30代 女性
結婚を機に会社を退職して前の仕事よりも労働時間の短い仕事に転職した。その新しい仕事先で上司との気が合わずにストレスを感じていた。結婚生活でもケンカが絶えず、将来本当にやっていけるのか不安感を感じるようになった。
その不安感がなかなか取れず、胸の圧迫感や全身の倦怠感を感じて仕事にも出ることが出来ずに会社を休みがちになってしまうようになってしまった。
薬に頼らずに不安感を取り除きたいということでたまたま見たホームページよりご来院された。
治療
まず、自律神経測定器で自律神経の状態を測定してから治療を行っていきました。交感神経が以上に高ぶっており、自律神経の乱れがみられたので自律神経を整える治療を中心に行っていきました。
治療経過
◇1回目◇
治療後、漠然とした不安感・胸の圧迫感が少し軽減したと感じた。
◇2回目◇
仕事で上司と接するとまた不安感を感じた。
◇3~5回目◇
体の疲労感が少しずつ和らいでいったが、不安感はあまり変化なし
◇6回目◇
以前は夜に不安感を感じて寝つきが悪い時があったが、寝つきが良くなったように思うとのこと
◇7回目◇
日常生活の中でも不安感を感じても自分でコントロールできるようなってきた。
◇8回目◇
上司との会話中や家庭内のトラブルがあると多少不安感を感じるが、長続きはしない
症例 2
20代 男性
社会人1年目となり、生活や環境が一気に変わったことや、業務に対しての不安感が強く感じるようになり、気分の落ち込み、なかなか寝付けない、朝起きれない、心が落ち着かないといった症状が続いている。
会社では上司は優しく、同僚もよい人ばかりで人間関係は良好だが、もともと神経質のため必要以上にプレッシャーを感じてしまい、勝手に気疲れてしまう。
仕事は経理業務を行っており、基本的にパソコン作業が多い。業務上細かい数字を凝視するため目の疲れが強い。
デスクワークのため、首肩のコリがひどくなり、頭痛もする。
心療内科にも通い始めたが、より症状を改善したく、当院に受診した。
当院の施術
話をお聞きするとすごくまじめな方で、学生時代も成績は優秀、遅刻もほとんどした事がない、課題もきっちりこなすというすばらしい方でした。
しかし、まじめすぎて気を抜くことが出来ず、自分で自分を追い詰めてしまう傾向があります。
社会人になり気合が入りと同時に失敗ができないと思い、必要以上に責任を感じながら業務を続けていることで心に余裕がなくなってしまっている状態でした。
そのため、リラックスできる状態が少なくなり常に自律神経が不安定になってしまったと感じました。
当院では自律神経の調節、東洋医学観点からの心、腎の調節、首肩の筋緊張を緩和を目的に施術を行いました。
不安神経症とパニック障害は元々「不安神経症」と呼ばれる一つの病気として認識されていました。しかし、その症状が多岐にわたっていたため米国精神医学会が診断基準を定めてそれによって不安神経症とパニック障害が区別されるようになりました。
パニック障害と診断されるのは以下の13項目で4つ以上が突然発症して10分以内にその症状が頂点に達することで4つ未満であれば全般性不安障害として診断されることが多いです。
4つ未満当てはまる場合でもすべて全般性不安障害と診断されるわけではなく、自律神経失調症のようなその他の精神疾患と診断されることもあります。
しかし、現代ではパニック障害や不安障害の人は増加傾向にあり、一生のうちに一度はこの病気にかかる方は決して少なくありません。
不安の原因は人によって様々ですが、主に精神的な悩みや不安、精神的なショックが原因となります。主に職場や結婚・離婚・引っ越しなどの生活環境の変化、大切な人との死別や裏切り、突然の解雇など社会からの断絶などがその要因となりえます。
しかし、なかにはそういった原因が全く見られない場合もあります。その場合、遺伝的な要因・その人の性格的要因・女性の場合ホルモンバランスの変化など考えられる原因は様々です。
不安障害の方に多く見られる性格
・真面目で責任感が人一倍強い
・仕事や勉強に決して妥協しない完璧主義
・人によく気を遣って言いたいことがあまり言えない
・物事に必要以上にこだわりが強い
・ストレスの発散をせずにため込みやすい
・緊張しやすい性格
・物事に対して常に慎重で細かく分析しがち
食事とメンタルは一見するとあまり関係がないと思われるかもしれませんが、食事がメンタルに及ぼす影響は様々な研究から明らかになっています。
ここ最近の研究で、健康的な食事をしている人の方が、格段にストレスに強いということが分かってきています。
特に
・ジャンクフードを食べる
・揚げ物を多く食べる
・飲酒習慣がある
・お菓子や清涼飲料水をよく摂取する
・加工肉を食べる
これらが習慣化してしまっている方は、これら摂取を控えるだけでもメンタルが大きく改善する可能性が高いです。研究では、3か月でストレス耐性が付いてくるという結果が出ています。
それにプラスして今注目を集めているのが、オーストラリアのメルボルン大学などが開発した
『SMILES』
という食事法があります。
地中海式の食事、フルーツ・野菜・魚・オリーブオイルを大量に食べる食事法をベースにしたものです。
2017年に発表された論文では、大うつ病に苦しむ男女に対して12週間「SMILES」の食事法を続けてもらい症状の変化を見ました。
結果は食事法を取り入れたグループは取り入れていないグループに比べて症状が3割も改善されたというものです。
生きていくのがつらいと感じていた人がちゃんと暮らしていこうと思うようになるレベルにまで改善されたのです。これは、通常投薬治療で得られる効果よりも優れたものです。
「SMILES」は地中海式食事をベースに
・全粒粉のパンやパスタ
・野菜一日握りこぶし6個分
・野球ボール3つ分くらいのフルーツ
・一週間に豆類を180グラム
・1日にナッツを掌に軽く乗るくらいの量を食べる
・週に120グラム以上の魚類
・脂身の少ない肉類
・週に6個以上の卵
・1日小さじ3杯のオリーブオイル
・乳製品
細かいガイドラインがありますが、これらすべてを実行するのは至難の業かと思いますので、普段より野菜とフルーツを多く食べるようにしておかずは魚類を中心にすることを心がけてみましょう。
お米は白米よりは玄米にあまりカロリーは気にする必要はありません。ちゃんとした食事を楽しむという心構えも重要です。
胸鎖乳突筋とは、耳の後ろの乳様突起と呼ばれる部分から首の側面を通り鎖骨、胸骨にかけて繋がる筋肉で、顔を横に向けた時に浮き出る筋肉です。
首を上下左右に動かす、回す、傾ける動作などに使われます。胸鎖乳突筋の後ろには頸椎から分かれた細い神経が通っており、これらの神経は頚神経や腕神経と呼ばれ後頭部、耳、首、肩や腕、指先の感覚や運動を支配しています。
胸鎖乳突筋は物理的な疲労(頭を支えるなど)以外にも、自律神経の不調や精神的ストレスでも筋肉を緊張させ様々な不調の原因となる筋肉です。
胸鎖乳突筋が緊張すると
・首肩こり
・頭痛
・首や顔のむくみ
・めまい
・耳鳴り
・耳閉感
・不眠症
・動悸
・手の痺れ
・うつ病
・パニック障害
・自律神経失調
・更年期障害
などの様々な症状が現れることがあります。これまでも多くの疾患の元になるのが胸鎖乳突筋です。
胸鎖乳突筋のすぐ下には脳や耳などにつながる血管や腕の方へと伸びる神経・血管が通っているため胸鎖乳突筋が過緊張状態で固まってしまっているとその下を通過する神経や血管を圧迫することで循環が悪い状態となってしまいます。
循環の悪い状態が長く続いてしまいますと脳や耳、上肢などの器官に栄養ある血液を送り届けることができずに機能低下を起こしてしまうのです。
また、循環が悪くなることでブドウ糖が乳酸などの疲労物質や発痛物質に変化してしまい痛みやコリの原因にもなります。
胸鎖乳突筋の過緊張状態で起きる頭痛はこめかみなどの側頭部に締め付けられるような痛みが生じてしまうことが特徴です。一般に筋緊張性の頭痛と呼ばれますが、筋肉の緊張している部位によっても頭部の痛みが出る部分が変化してきます。
・筋緊張性頭痛の鍼灸治療について詳しくはこちら←
胸鎖乳突筋の過緊張状態は、耳への循環低下を起こしてしまうことで聴覚への影響や耳の内耳にある三半規管にも影響を与えてしまうためめまいや耳鳴りの原因にもなります。
・めまいに対する鍼灸治療について詳しくはこちら←
・耳鳴りに対する鍼灸治療について詳しくはこちら←
胸鎖乳突筋の過緊張によって腕の方へと伸びる血管や神経が圧迫されてしまうことで痛みや痺れの原因となります。特にデスクワークでパソコン作業が主な人に多く発症する症状です。
うつ病や自律神経失調症など自律神経の乱れが原因で症状が現れやすい方は、胸鎖乳突筋の過緊張がほとんどの方に診られます。
胸鎖乳突筋の過緊張による脳への栄養供給の滞りが原因で精神症状が現れるとも考えられています。
単なる首コリや肩こりだと放置したままですとこれら心療内科系疾患にかかってしまう危険性があるため注意が必要なのです。
・うつ病に対する鍼灸治療について詳しくはこちら←
・自律神経失調症に対する鍼灸治療について詳しくはこちら←
うつむき姿勢
胸鎖乳突筋の過緊張状態の原因で一番多いのが長時間のうつむき姿勢(PC作業、スマートフォンの操作、家事など)です。
うつむき姿勢の状態は、重い頭部が前に傾きそれを支えるために頸部の筋肉には通常時の何倍もの負担となってしまいます。
姿勢を保持する姿勢筋は、その耐久性に優れた筋肉であるため少しの疲労では、感じにくくなっています。パソコン作業で頸肩がこってしまうということは、相当にその筋肉に負担がかかっている証拠です。
自律神経の乱れ
自律神経の乱れでも胸鎖乳突筋の過緊張状態が引き起こされます。主に交感神経の活動が活発になりすぎると胸鎖乳突筋が緊張しやすい状態となります。
交感神経とは活動的な神経で日中など仕事や勉強などしている時に主に働く神経で血管や筋肉などを緊張させて覚醒させる神経です。通常は夜なると活動を抑えて逆にリラックス神経である副交感神経の活動が活発となります。
しかし、夜遅くまで仕事やスマートフォン操作などをして交感神経の活動が活発のままですと自律神経が乱されやすいです。
夜になっても交感神経の活動が活発なので筋肉は休むことができずにコリや痛みの原因となってしまうのです。
喰いしばり
喰いしばりによる胸鎖乳突筋の緊張も多い原因です。意外と意識していなくても何か集中して作業している時に歯を食いしばっている方が多いです。
一度力強く食いしばってみると理解できるかと思いますが食いしばると頸の筋肉も引っ張られるように緊張していることがわかります。
喰いしばりの状態が長く続いてしまいますと胸鎖乳突筋のコリの原因となってしまうのです。
胸鎖乳突筋の鍼治療では、鍼をピンポイントに痛みやコリの原因となっている部分にアプローチをすることが可能です。
また、刺した鍼に電気刺激を加えて強制的に筋肉に収縮・弛緩のポンプ運動を起こさせることで血液循環の改善をして疲労物質や発痛物質を流してあげることで痛みやコリを取り除きます。

また、自律神経が乱れが胸鎖乳突筋のコリや痛みとなることもあるため全身的な調整鍼灸施術も行っていきます。
当院には自律神経測定器が常備されていますので自律神経の測定をしてその方に合わせたツボを用いたオーダーメイド鍼灸治療を行っております。

症例
20代 女性
10代から食いしばりが強いため顎の張り感に悩まされてきた。
酷い時は顎の痛みが数日続く事があり、マウスピース治療を受けている。
ここ最近になって顎の張りだけではなく、首の前側から耳の下あたりまで左右とも突っ張る症状が気になるようになってきた。今は顎の張りよりも首の張りや痛みの方が気になるようになり、当院に受診した。
ストレスはあまり感じる方ではないが、無意識に噛みしめたり、体の力が入ってしまう自覚は昔からあり、改善しようと意識はしているが難しい。
普段はデスクワークがメインだが重いものを持つこともあり、首に過剰な力が入っている感覚がある。ひどくなると、側頭部の重だるさや鈍痛が起こる。
首の側屈の可動域に制限がかかっている。
当院の施術
この方のような食いしばりによる胸鎖乳突筋の筋緊張は精神的ストレスが大きな原因になります。ストレスを感じなくても無意識に蓄積している場合があり、気がついたら慢性的な筋肉のコリが強くなっていることがあります。そのため、筋肉の緊張に対する施術だけではなく、自律神経の調節が根本的な治療になります。
まずうつ伏せで、背中、肩、肩甲骨、首の後面に刺鍼し筋緊張を緩和していきました。
次に、仰向けで自律神経調節治療、患部である胸鎖乳突筋、関連する咬筋、側頭筋に低周波電気鍼療法を行ってきました。
鍼灸治療は未経験という事で少し緊張もされていたため、慣れるという意味でも初回は刺激量を落とし負担を最小限に抑えた施術を行いました。
経過
◇1回目◇
体全体の緊張がとれ、とてもリラックスできた。
首の緊張も少し柔らかくなった気がして楽になった。
◇2回目◇
首の張りが以前より気にならなくなってきた。
夜の睡眠の質も良くなったような気がする。
◇3回目◇
忙しい日は眠りが浅くなるためか、首の張りが気になる。
◇4回目◇
前回よりも張り感がとれ、気にならなくなってきた。
夜も熟睡している。
◇5回目◇
今はほとんど気にならない。
たまに辛くなることもあるが、鍼治療を受けるとすぐに緩和する。
症例 2
50代 男性
もともと筋肉が緊張しやすく、肩が凝りやすい体質であった。
数年前から首周りのコリが強く感じるようになり、整体やマッサージを受けるも一時的には改善するがすぐに元に戻ってしまう。
別の方法を試そうと思い、以前から興味があった鍼治療を受けたく当院に受診をした。
最近では首の筋緊張が強いため喉の圧迫感が強く、声が出しにくくなっている自覚があり、会議といった人前で発言するときに支障が出ている。精神的にストレスを感じるとより締め付け感が強くなる傾向である。
首は横から前にかけての筋肉の硬さが一番気になるが、顎回りや頭の硬さも気になる。
当院の施術
まず、首や肩関節の可動域や全身の筋肉の硬さを確認していきました。
特に緊張が強いのは胸鎖乳突筋で、他にも僧帽筋、頭板状筋の筋緊張も強く感じました。
筋肉の緊張は姿勢といった物理的要因の他に、精神的ストレスによるものも多く含まれます。
そのため、筋緊張の強い患部にだけ施術を行うだけではなく、自律神経を調節する事に対してもアプローチしていきました。
うつ伏せでは、足、腰、背中のツボに刺鍼し、首肩の筋緊張が強い患部に直接鍼で刺激し、さらに低周波電気鍼を行っていきました。
次に仰向けになり、お腹、腕、足のツボに鍼やお灸で刺激し、患部の胸鎖乳突筋を中心とした筋緊張の強い部分に再度低周波電気鍼を行って筋緊張を緩めていきました。
経過
◇1回目◇
施術後は楽になったが、しばらくたってまた元に戻ってしまった。
◇2回目◇
以前より筋肉が緊張している感じが少なくなってきた。
◇3回目◇
忙しくなったり、ストレスを受けるとまたコリが強くなる。
◇4回目◇
少しずつ良くなってきて気にならない時間も増えてきた。