むくみの鍼灸治療

むくみの東洋医学

東洋医学においてむくみは「津液の停滞」と考えます。臓腑は脾、肺、腎の三つの臓器が主に関連しています。

特に水分代謝を司る脾が大きく関係し、この脾の働きが弱くなることによって起こるのが脾虚によるむくみです。

むくみの他にお腹が張る、食欲がない、軟便、下痢、吐き気などを伴なうことがあります。脾は四肢を司るため手足にむくみを生じます。

消化吸収を担う臓腑でもある脾は暴飲暴食や無理なダイエット、疲労や運動不足でも弱まりやすく、湿気の多い環境で過ごしたり暑いからと水分を過剰に摂取する事で、水分が脾胃に停滞し消化吸収が阻害されてむくみを生じます。

肺虚によるむくみは上半身や顔に出やすいのが特徴で、肺はどの臓器よりも外気にさらされやすく冷えや乾燥に弱い臓器です。

長時間寒い場所にいたり乾燥した場所にいる事で肺の機能が弱まると、水分を体の内から外へ配布する働きや、水分を体へ巡らせ皮膚の潤いを保ったり、汗として体外に発散させる肺の働きが弱められ水分が停滞してむくむと考えられています。

また、全身の水分バランスを整える働きをしている腎の機能が疲労やストレス、食生活の乱れ、睡眠不足などで弱まると尿の生成、排泄が上手くいかず体内の水分代謝が悪くなり、むくみの原因になります。

その他にも寒湿(冷え、湿気)や、湿熱(アルコール、暴飲暴食、油っぽい食事など)が原因として考えられています。

むくみに対する当院の鍼灸治療

むくみが起きやすい方は冷え血流の悪さといった状態を伴なうことが多く、手足が冷えやすい、デスクワークで肩こりや腰痛がある、立ち仕事で足が疲れやすい、などといった自覚症状をお持ちの方が多いです。

むくみのお灸治療

当院では最初に自律経測定器で血管の状態や自律神経のバランスを測定させて頂きお身体の状態を診ていきます。
自律神経のバランスが乱れを起こして交感神経が過亢進状態になると血管が収縮し、冷えや血行不良、筋緊張を起こしたり、逆に副交感神経が過亢進状態も血管のポンプ作用が低下しむくみを起こす原因となるからです。
まず、仰向けで腹部や下肢、上肢に鍼やお灸で刺激を与えて自律神経の調整を行った後、うつ伏せで足や腰など下半身にあるツボや背部の五臓六腑の働きを整えるツボに刺激を与え、冷えや血液循環を改善していきます。

むくみの鍼灸治療

 

また上半身や顔のむくみが気になる方は首や肩、上肢にもアプローチしていきます。

むくみのうつ伏せ鍼灸治療

 

 

 

むくみとは

 

人間の身体の約6割程度は水分でできています。
水分は、細胞の内側と外側にも存在して、3分の2程度は細胞間質液といいまして細胞の中に存在しています。 しかし、何らかの原因で細胞内の水分が細胞外に出ることでむくみの症状として現れてしまうのです。
医学的にいいますと、「むくみ」を「浮腫」といいます。細胞間質液は、細胞内を飛び出して栄養成分を様々な器官に運ぶ役割があります。細胞外に出た細胞間質液は栄養成分を送り届けたあとに再び血液内に戻りますが、正常に血液内に細胞間質液が戻れないとむくみとなってしまうのです。

むくみ

むくみの原因とは

 

むくみの原因は、大きく分けて「生理的なむくみ」と「病的なむくみ」「突発性のむくみ」に分けられます。

 

・生理的なむくみ
生理的なむくみの原因は、長時間の座りっぱなしや立ち仕事などで同じ姿勢が長くなってしまうことで、特に足に静脈血が集中して静脈の圧力が高まることで細胞から押し出された細胞間質液が余分な水分となって現れることでむくみの症状となります。また、朝起きた時などにみられる一時的な顔のむくみなども生理的なむくみと言われ、生理的なむくみはずっとむくんでいるというわけではなく、むくみは朝や仕事終わりなど時間が限局されています。

・アルコールの摂取
アルコールを摂ると血液中のアルコール濃度が高くなり血管が拡張して静脈やリンパによる水分の処理が間に合わなくなるのでむくみやすくなります。

 

・塩分の摂りすぎ
塩分を摂りすぎると余分な水分が増えむくみが進行します。カップ麺などのインスタント食品は避けましょう。

 

・ビタミン・ミネラル不足
特にカリウム、マグネシウムなどの不足はむくみに繋がります。

 

・自律神経、ホルモンバランスの乱れ
自律神経は交感神経と副交感神経がバランスをとる事によって内臓や血管などの機能が正常に機能しています。ストレスや疲労、生活習慣の乱れ、気温の変化などでこのバランスが乱れると血行不良の原因となってしまいます。
血行不良は冷え性の原因となるだけでなく老廃物や余分な水分が下半身に溜まりやすくなるためむくみの原因になります。また、ホルモンバランスと自律神経は脳の視床下部という同じ場所で支配されてます。そのためホルモンバランスが乱れると視床下部に影響を与え、自律神経のバランスも乱れやすくなります。すると血行不良やリンパの流れに影響を与え、むくみの原因となります。

自律神経失調症について

 ・運動不足
筋ポンプ作用が十分に働かないため、足の血液が心臓へと戻らずに足にうっ血が起こりやすくなります。また、筋肉の量が少なくなることで筋ポンプ作用の効率が悪くなり、新陳代謝の低下により血行が悪くなり、リンパの働きが悪くなります。

 

・生活環境
運動不足や睡眠不足、エアコンによる冷え、ストレスや足を締め付けるような靴、極端にヒールの高い靴、圧迫感のある下着などもむくみの原因になります。

 

・筋肉疲労
筋肉の疲労は時間がたつにつれ筋肉を緊張させ、筋肉がポンプの役割を果たすことが出来なくなり血流が悪くなります。

 

・月経前のむくみ
身体の水分を保持するプロゲステロン(黄体ホルモン)が増加する事によりむくみが出やすくなります。

 

 

・足のむくみ
デスクワークや立ち仕事など、同じ姿勢を長時間とる事でふくらはぎなど血液を循環させるポンプ機能が低下してしまいむくみの原因になります。血行が阻害されるとむくみの他にも足首の痛みなどの症状が出る場合もあります。
人体において下肢がむくみやすい部位なのは重力の影響でどうしても脚部に血液が溜まりやすいという「人体構造のしくみ」に関係があります。また、疲れている時、睡眠不足の時にもむくみやすくなります。こちらもポンプ機能が関係しているのですが、こちらはふくらはぎでなく心臓のポンプ機能が低下していることが原因です。また、女性に多いホルモンバランスの乱れや運動不足、冷え性といった血液やリンパの流れが悪い状態も原因となります。

・顔のむくみ
顔がむくむ時間で一番多いのが朝起きた時ですが、その原因は人間が夜寝る事で起こります。水分は高いところから低い所へ流れるので昼は足がむくみやすく、夜寝ている時は水分が身体全体に流れますので朝起きた時が顔のむくみが見られます。また、前日の過度のアルコール摂取や塩分の摂りすぎもよるものも原因の一つです。
アルコールをたくさん摂取すると血液中のアルコール濃度が高くなり血管が広がります。血液の流れが緩やかになると本来であればすぐに運び出してくれるための水分が滞ってむくみやすくなります。また、塩分を過剰に摂取すると腎臓に負担がかかってしまいます。
塩分を処理することが出来なくなるため体は塩分濃度を下げようとし、身体に水分をため込んでしまうためむくみが起こります。顔のむくみの症状は朝起きがけから、午前中くらいまでで昼に仕事や学校などで活動している健康な方であればいつの間にか顔のむくみは消えています。

 

その他にも、睡眠不足や疲れから新陳代謝が悪くなったり首や肩の筋肉の緊張が強い方もリンパの老廃物や余分な水分が流れにくく顔のむくみの原因となります。

 

 

病的なむくみ

こんなむくみがある場合は、一度病院で検査を受けたほうがよいでしょう。

・心臓疾患
心不全など

心不全とは病名ではなく「心臓の働きが不十分な結果、起きた体の状態」をいいます。心臓は全身に血液を送るポンプ機能を果たしていますが、病気など何らかの原因でその機能が低下することによって全身へ新鮮な血液を送ることが出来なくなってしまいます。その結果全身の末端である足などに水が溜まり、むくみを引き起こします。

 

・腎臓疾患
ネフローゼ症候群、急性糸球体腎炎、腎硬化症、多発性嚢胞炎、糖尿病性腎症、腎不全など

何らかの原因により腎臓の機能が低下してしまうと体のフィルター機能が上手く働かなくなり老廃物が体から十分に排出することが出来ずむくみの原因になってしまいます。

 

・肝臓疾患
肝硬変や門脈圧亢進症など

肝臓の機能が低下すると血液の中に水分を留めておく「アルブミン」というタンパク質の合成を上手くすることが出来なくなります。血液中のタンパク質が低下する「低タンパク血症」を起こしむくみの原因になります。

 

・内分泌機能障害
甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、月経前症候群(PMS)など

甲状腺の機能が低下するとアルブミンとムコ多糖体の結合物が沈着する事で水分とナトリウムが移動するため粘液水腫というむくみが生じます。これは他の浮腫と違って指で押してもすぐに戻ってしまい指の跡が残りません。逆に甲状腺の機能が亢進すると甲状腺ホルモンの働きが活発で過剰に分泌されることにより不整脈の一つで脈が不規則、かつ非常に速くなる「心房細動」が合併症として現れる事があります。心房細動によって心臓の動きに負担がかかると、全身の血の巡りが悪くなり手足や身体に浮腫が現れる事があります。

また、月経前症候群(PMS)の症状の一つとしてむくみが挙げられます。原因は黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌です。黄体ホルモンは妊娠しやすい体を作るホルモンですが、受精卵が着床しやすいように、子宮内膜を厚くする原料となる栄養や水分を蓄えようとするため、むくみやすくなるといわれています。

甲状腺機能亢進症について
月経前症候群(PMS)について

・突発性のむくみ
突発性のむくみとは原因のわからないものを指します。特に20代~50代の女性に多く発症して原因不明のため特に病院で検査をしても異常が見つからないため、病院では特に治療が行われずに悩まされている方も多くいらっしゃいます。 自律神経の乱れによるホルモンバランスの乱れや循環が悪くなっているために起こるとなどと考えられていますが、はっきりとした原因解明にまでは至っていません。

 

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 14:00 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)

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