当院では甲状腺の諸症状に対して鍼灸治療で全身調整を行うことでアプローチしていきます。
甲状腺は東洋医学の五臓六腑の『腎』と非常に密接な関係があります。腎は生殖器系機能や内分泌機能の調整に関与しています。腎経の経穴の反応点に施術を行うことで内分泌機能の改善をはかります。また、東洋医学では『腎』と『肝』はとても深い関わりがあるため、肝経の経穴も使って施術していきます。
東洋医学的な施術に加えて自律神経測定器で自律神経の状態を把握した上で、当院の自律神経調整治療と甲状腺の機能向上と血流改善のために甲状腺周りの経穴(人迎など)の反応点にもアプローチしていきます。
甲状腺に対する施術は、自己免疫を抑制することや体質を改善していくことが必要になりますので中・長期的な治療が必要になります。
40代 女性
ここ3か月前より全身の倦怠感と何をしてもすぐに疲れてしまう、やる気が出ない症状に悩まされていた。朝には全身のむくみがひどく、特に顔はパンパンにむくんでいた。首肩こりや腰痛も出ている。インターネットで自分の症状を検索したところどうも甲状腺機能低下症ではないかと疑っていた。時間がある時に病院で検査を受けたところ甲状腺機能低下症と診断された。
入院をして薬の投薬をしたところある程度症状は落ち着いてきたが、まだまだ本調子とまではいかずに倦怠感ややる気が出ない症状は出ていた。漢方や鍼灸など東洋医学的な治療も行いたいということで当院にご来院された。
治療
自律神経測定器で自律神経の状態を測定したところ副交感神経の活動が異常に高い状態で自律神経のバランスの乱れがみられた。また、問診結果から仕事や家庭でのストレスが発症前に多くかかっていたことがわかりました。自律神経のバランス整える治療をしつつ、東洋医学的観点より腎を補う治療をしていきました。
◇1回目◇
治療後、だるさはあまり出ずに体がすっきりしたとのこと
◇2回目◇
身体の疲れやすさは変わらない。首肩こりはいくらか軽快
◇3~8回目◇
仕事などでストレスを受けてしまうと症状が強く出る時もあったが、治療を行うたびに段々と症状は軽快していった。治療は週に1回程のペース
◇9回目◇
日常生活ではほぼ支障が出ない程度まで回復。病院での薬の服用と鍼灸治療を併行して行っていった。
甲状腺は首の前面、喉ぼとけの下に位置する内分泌器官です。気管を包み込むようにあり、自分自身で触診することも可能です。
甲状腺はヨードをもとに甲状腺ホルモンを産生し、血液中に分泌するところです。
甲状腺ホルモンは甲状腺から分泌され、一般に全身の細胞に作用して細胞の代謝率を上昇させる働きをもつ、アミノ酸誘導体ホルモンです。甲状腺ホルモンの働きは代謝を促進させることであり、甲状腺ホルモンが正常に分泌されることによって身体の各部分の活動が正常に保たれます。何らかの原因で甲状腺ホルモンの分泌が少なかったり又は多かったりすると身体の機能は十分に役割を果たせなくなってしまうのです。
脊椎動物では広く甲状腺ホルモンが確認されていて、生存に非常に重要なホルモンといえます。余談ですが、甲状腺ホルモンの分泌がなければおたまじゃくしはカエルにはなれないのです。そのくらい生存に関係しています。
甲状腺に腫瘍ができるもの
良性腫瘍性疾患
甲状腺にできる腫瘍の8割ほどが良性のものです。
腫瘍以外には自覚症状はほとんどなく、生命の危機があるというわけではないですし、手術がすぐに必要というわけでもないですが、大きさや状態も含めて定期的はな検査が必要といえます。腫瘍の大きさは小さなものから首を動かしづらくなるものまであります。しかし、呼吸がしづらくなったり食事が喉を通らなくなったりすることはほぼありません。男女比は1対10と圧倒的に女性に多い疾患で20代~50代に多いです。
悪性腫瘍性疾患(ガン)
甲状腺のガンは種類によって症状が異なります。甲状腺がんは、乳頭がん・濾胞がん・低分化がん・未分化がん・髄様がん・悪性リンパ腫の6つの種類があります。甲状腺がんの8割以上が甲状腺がんで約8%は濾胞がんであるためこの2種類が大半を占めます。乳頭がんは、進行すると食事が喉を通りづらくなる・声がかすれる・息が苦しくなるといった症状を呈します。一方、濾胞がんはしこりがあるだけで他の身体的異常がない場合が多いので注意が必要です。
甲状腺のガンは比較的、他のガンより進行が遅いので治しやすいですが、早期発見・早期治療が重要といえます。喉のしこりや声のかすれ(嗄声)などがある場合は早期に検査を受ける必要があります。
甲状腺が腫れるもの
バセドウ病
甲状腺機能亢進症の代表的なものがバセドウ病です。
甲状腺を異物とみなしたつくられる抗体(TSHレセプター抗体)が、甲状腺を刺激し続けることにより、甲状腺ホルモンが過剰に分泌され甲状腺機能が亢進する疾患です。甲状腺機能が亢進すると新陳代謝が活発になります。自覚症状として、
・疲れやすい
・微熱
・イライラ感
・動悸
・頻脈
・眼球突出
・発汗
など様々な症状があらわれます。
自己免疫疾患の一つでなぜ起きるか原因がわかっていません。しかし、15%程の方は親や兄弟もバセドウ病を患っているケースがあり、遺伝的要因も考えられています。治療により血中の甲状腺ホルモンの濃度がコントロールできていれば、普通に生活を送ることができます。
橋本病(甲状腺機能低下症)
橋本病は慢性甲状腺炎とも言い、甲状腺機能低下症の代表的な症状です。九州大学の外科医であった橋本策博士が1912年に、世界で初めてこの病気に関する論文を発表したことから名前がつきました。
甲状腺の働きが低下するのが橋本病ですが、橋本病の7割は甲状腺ホルモン量は正常で自覚症状も全くありません。残りの3割の患者で甲状腺ホルモンが少なくなり、甲状腺機能低下の症状を呈します。症状としては、
・無気力
・むくみ
・記憶力の低下
・体重増加
・全身倦怠
・皮膚の乾燥感
・便秘
・寒がり
・生理不順
などがあり、主に代謝機能が低下する症状でます。
甲状腺の症状(亢進型、低下型など)は自己免疫性疾患に分類されます。これは自己の免疫系統の異常によるもので、異物を認識し排除するための役割を持つ免疫系が、自分自身の正常な細胞や組織に対してまで過剰に攻撃してしまうものです。なぜこの免疫系統が異常をきたすかは今の現代医学でもわかっていません。
自己免疫疾患は遺伝的素因が多いと考えられており、ウイルス感染や組織の損傷などが引き金になることもあります。
また甲状腺の症状はヨウ素の欠乏や過多などによっても症状を引き起こすことがあります。
甲状腺腫瘍の場合
腫瘍が良性か悪性化を判断することがとても重要です。まず触診、血液検査、超音波検査、細胞診などで良性と悪性の判断をします。
良性の場合、腫瘍により弊害がでない場合以外は経過観察をとることが多いです。気管や食道への圧迫が強くなったり、腫瘍が大きくなってきたり状態に変化が出てきたりすると手術になることもあります。
悪性の場合も薬物療法を基本として、手術せずに経過をみることが多いです。きっちりと治療をすれば比較的治りやすいといえます。
甲状腺機能亢進型の場合
甲状腺機能亢進の場合、主に薬物療法(抗甲状腺剤)が中心になります。長期の服用が必要ですが、服用していれば症状は安定します。
他には甲状腺を切除してホルモンの状態を正常化する手術療法や、放射線をあてて甲状腺ホルモンを抑制する放射線療法もあります。
甲状腺機能低下症の場合
橋本病の場合も薬物療法が主になります。
甲状腺ホルモンが不足しているわけですからそれを補ってあげれば良いのです。経口薬(チラージン)を服用することで、甲状腺ホルモンと同様の効果を再現できます。
甲状腺ホルモンが不足している場合、服用し続ける必要ありますが長期の服用でも副作用はほとんどありません。
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 17:05 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)