東洋医学では、病気になる原因として多く分けると内因(体質的要因・精神的要因)と外因(生活的要因・自然的要因)に分けられます。外因は、内因を通じて身体に影響をもたらします。
多くの病気は、この外因を突き止めて除去することが重要となってきます。
帯状疱疹では、この外因の生活的要因・飲食の不摂生・風邪・熱邪・湿邪が体に影響を与え、東洋医学でいう「肝」や「脾」を侵します。
生活的要因
睡眠不足や過労、食生活の乱れ・性生活の乱れなど不規則の生活を送っていると帯状疱疹が発症する原因となります。
飲食の不摂生
暴飲暴食・不規則な食事・偏食・辛いもの・香辛料やアルコールの過剰摂取は帯状疱疹の原因となります。
風邪
風邪に侵されると、
という特徴があります。自律神経系や末梢神経系の障害を主な特徴とします。
熱邪
熱邪に侵されると
などの特徴があります。炎症による症候を主な特徴とします。
湿邪
湿邪に侵されると
などが挙げられます。湿邪は、季節や環境による影響を受けやすく、雨の日や湿度の高い日などに症候が現れやすいです。
帯状疱疹はこれらの外因が一つではなく、様々な外因が合わさり、「肝」や「脾」を侵すと考えられます。
湿邪や熱邪が「肝胆」にとどまって発生します。肝の陽気が過亢進状態となり、胸脇部の痛みや発赤、めまいや頭痛、顔面部の痛みや目の症状も呈します。過労やストレスが原因となる場合があります。
主に湿熱の邪気によって「肝胆」の機能が障害され、消化器系の炎症や自律神経の失調、水分代謝に影響を与えます。
胸脇部の張った痛みやピリピリとした痛みが出ます。便秘や軟便を繰り返したり、手足が重だるくむくみの症状が出る場合もあります
湿邪と熱邪が「脾」とどまって熱の炎症症状や胃腸障害、水分代謝の障害がみられます。
皮膚の掻痒や発熱症状がみられることも多く、長期間続く場合もあります。
鍼灸の鎮痛効果で帯状疱疹後の神経痛を和らげます。鍼刺激は脳内モルヒネを生み出すことがありますので、全身の痛みを和らげてくれて、精神を安定させる働きもあります。刺した鍼に電気を流す鍼通電療法でさらに鎮痛効果が促進される効果が期待できます。
また、お灸には抗炎症作用もありますので合わせて帯状疱疹の周りにお灸治療も行っていきます。
経絡治療では、精気の虚に内因と外因、不内外因の病因が加わると、気血津液・臓腑経絡に影響し、人体が内側から傷つき外から侵入されて病気になります。
帯状疱疹には風邪、熱邪、湿邪が関係すると上述しました。これは外因からの毒邪の侵入により内因が侵されるというものです。
風邪から始まる病が多いのと風邪は他の邪と合わさって発病します。
風邪による病証では、まず頭顔面部や肌表の症状が多く現れます。
特徴は発展変化が早く遊走不定です。
東洋医学的治療としましては、熱邪や湿邪を取り除くことが第一優先となります。熱を下げるように施して外因の勢いを弱めて胃腸の働きを整えることで湿邪と熱邪を外に出すように促します。
使用経穴は
熱を下げる・湿邪を排出するという目的で「行間」・「狭渓」・「支溝」・「外関」・「肝兪」・「胆兪」を使用します。局所の帯状疱疹については鎮痛目的で
顔面部の帯状疱疹には、「陽白」・「下関」・「四白」・「頬車」
胸脇部の帯状疱疹には、「期門」・「大包」
腰腹部の帯状疱疹には、「章門」・「帯脈」
帯状疱疹は、激痛を伴い疱疹が治ったとしても帯状疱疹後神経痛が起こることがあり、長い間痛みに苦しめられることも少なくありません。
神経ブロックや鎮痛薬の長期服用は、副作用のリスクや効果が段々と減退していくというリスクがあり、近年ペインクリニックでも鍼灸治療が選択されることがあります。帯状疱疹の鍼灸治療について大阪労災病院麻酔科ペインクリニックの研究では、41症例中で発症から2か月以内の患者さんではほぼすべての方に痛みの軽快がみられ、発症して2~6ヶ月経過した方で約90%の方が軽快、6ヶ月~1年経過で80%の方が軽快、1~2年経過で66%の方が軽快、2~5年経過で60%の方が軽快、5年以上経過で50%の方が軽快したという結果が出ています。
また、この研究では帯状疱疹の痛み症状に鍼治療が効果があるばかりでなく皮膚症状にも寛解させる効果があると推測されています。
「帯状疱疹痛に対する鍼治療の効果」
https://ci.nii.ac.jp/naid/130004065889
30代男性
3週間前から仕事のストレスやストレス解消による暴飲暴食などが加わり、胸部から肋間部にかけて痛みと疱疹が出た。皮膚科を受診したところ帯状疱疹と診断されて抗ヘルペスウィルス薬などを処方されたがなかなか改善されず当院を受診。
当院の治療
仕事でのストレスにより自律神経が乱れていることが考えられたので自律神経測定器で計測し、体の状態をしっかり問診した上で治療に入りました。まずは、自律神経調整療法で自律神経の状態を整えて、鎮痛効果を促す鍼灸治療・湿邪や熱邪を取り除くと東洋医学的観点からの鍼灸治療を施しました。
治療経過
◇1回目◇
治療後痛みは少し軽減したとのことだが効果はそこまで持続せず、2日目には痛みは戻ってしまった。
◇2回目◇
2回目の治療後痛み軽減。鎮痛効果も1回目よりも継続。
◇3~6回目◇
痛みがだいぶ治まってきたが、疱疹はまだある。
◇7~10回目◇
痛みと疱疹は治まったが、目の症状(充血・痛み・かすみ)が出た。
◇11~14回目◇
治療間隔を1週間に2回のペースを1週間に1回に治療間隔を伸ばしていき、目の症状も治まってきたところで治療を終了した。
帯状疱疹は、水痘罹患後に三叉神経や脊髄後神経節に侵入していた水痘帯状疱疹ウイルスが、免疫力低下や加齢などが誘因となって発症するものです。
水痘にかかると、ウイルスは皮膚から神経に侵入しますが、免疫力によってウイルスは消失して症状は治癒します。
治癒したからといってウイルスが消滅したわけではなく、一部のウイルスは脊髄近くの神経節に潜伏します。
潜伏中は症状が出ませんが、免疫力の低下や加齢によってウイルスが再活性化し、皮膚に症状が出たものを帯状疱疹といいます。
神経節に隠れていますが長いものだと何十年と潜伏します。
帯状疱疹は一生に一度しか発症せず、免疫力が低下している方を除き再発することは稀です。
帯状疱疹の初期症状は疼痛・違和感・激痛とさまざまな痛みからなります。
この痛みは片側性で起こります。
痛みが起きてからの数日後に赤い斑点がみられ、次第にブツブツした丘疹となって水ぶくれに変わっていきます。この状態が多発してきて帯状に広がっていくのが特徴になります。
この頃から神経痛も強くなり、わずかな刺激にもピリピリと痛みを感じるようになります。
このタイミングで医療機関に受診される方が多いです。
帯状疱疹は約三週間前後で治りますが、痛みは治りにくく帯状疱疹後神経痛となることがあります。
後遺症として帯状疱疹後神経痛になると痛みが続き、数カ月も痛みが続く場合もあります。
この帯状疱疹後神経痛は帯状疱疹が治癒した後に数か月以上続く痛みです。ウィルスによって神経が傷つけられてその回復が遅れてしまうことによって痛みが継続するものと考えられています。
強い痛みのため夜も眠れないような痛みになることもあります。
帯状疱疹後神経痛は体の免疫力と深いかかわりがあることがわかっており、高齢者や免疫力が低下している人ほど痛みが残ると言われています。また、帯状疱疹にかかってしまった時の対処の遅さも帯状疱疹後神経痛に関係してくると言われており、発症後3日以内に抗ウィルス剤の服用などの処置を行うと帯状疱疹後神経痛にかかりにくいとされています。
その他にも帯状疱疹の時に皮膚症状が強い方や夜も眠れないほどの強い痛みの方は帯状疱疹後神経痛になる可能性が高いと言われています。
帯状疱疹後の後遺症には、痛みの他にも感覚が鈍くなったりすることもあります。
抗ヘルペスウイルス薬の使用です。
早期から抗ウイルス薬を使用することで、皮膚や神経のダメージを軽くすることが期待できます。
また、水泡がつぶれて細菌感染した場合は抗菌薬の使用です。
痛みに対しては消炎鎮痛薬で痛みを鎮痛します。痛みに敏感になると普段は気にならなかった痛みでも過敏に反応して痛みが治りにくくなってしまいます。
夜間の痛みには座薬を使用することもあります。
新型コロナウィルス禍で帯状疱疹が増加傾向にあるということがいわれています。
通常の帯状疱疹は、50代以上になると発症率が上昇します。それは人間が本来持っている免疫機能が関係しています。帯状疱疹ウイルスは脊髄の神経節に潜伏していて身体の免疫機能で活動を抑え込んでいますが、免疫機能が低下してきてしまう50代以上になると発症リスクがどうしても上がってしまうのです。
今回の新型コロナウイルスでは、50代以下の若年層にも帯状疱疹の患者さんが増加してきているといわれています。
その要因として挙げられるのが、新型コロナ禍で外出規制など生活環境の目まぐるしい変化によって受けるストレスやコミュニケーション不足などからくる孤独感などさまざまなストレスからくる免疫機能の低下です。
10代や20代でもリモート授業の影響や運動量の低下、収入の減少、先の見えない未来への不安感、また気晴らしに自由に友達と遊んだり飲み会なども行うことが出来ない状況下だったことからストレスフルとなり、帯状疱疹を発症することも少なくありません。
実際に当院にも帯状疱疹やそれに伴う帯状疱疹後の神経痛、三叉神経痛、顔面神経麻痺等の患者さんが増えてきた印象です。
ラムゼイ・ハント症候群
帯状疱疹の水泡が耳介や外耳道にできて、顔面神経麻痺、難聴やめまいなどの内耳神経症状を伴うものです。
眼の病気
目にできる帯状疱疹は痛みやかゆみだけではなく視神経にも悪影響を及ぼして、角膜炎や網膜炎を引き起こします。視神経がおかされると最悪失明の可能性もあります。目の周囲に帯状疱疹ができた時はこれらが併発する可能性があります。
脳炎や髄膜炎
脳炎は脳が炎症するものです。
吐き気・頭痛・意識障害・高熱などの症状がでます。
髄膜炎は脳や脊髄を覆う膜に炎症ができたものです。ウイルスや細菌などから感染して発症することがあります。症状は頭痛・項部硬直・嘔吐・錯乱などです。
この二つは気をつけなければなりません。取り返しがつかないほど悪化することや最悪死に繋がる可能性もあります。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 15:27 / 院長コラム コメント&トラックバック(%)