パニック障害の鍼灸治療

パニック障害に対する当院の鍼灸治療

 

パニック障害の鍼灸治療方針

 

パニック障害に対する当院の治療は、まず第一に自律神経の状態を整えることです。

パニック障害の鍼灸治療

 

当院では、自律神経測定器を用いて自律神経の状態を把握してから治療していきます。
自律神経の状態を把握することはパニック障害の治療においてとても重要なことであり、自律神経の状態を把握することで高い治療効果が期待できます。

また、東洋医学的観点から身体全体のバランスを診ていきます。パニック障害においては、上記のような東洋医学でいう『』や『』の機能低下が起きている場合が多いです。そのような機能が低下している部分やまた逆に機能が亢進し過ぎている部分を調整していきます。

パニック障害は、仕事や学校に行くことができずに生活の質(QOL)を著しく低下させている方が多いです。そのような方が、社会復帰できるように全力でサポートしていきます。

 

パニック障害の方は、首横の筋肉の胸鎖乳突筋が過緊張状態の方が多く、当院ではその筋肉をほぐすために首横へも鍼灸治療を施していきます。

パニック障害の胸鎖乳突筋への鍼治療

 

 

 

パニック障害の東洋医学的考え

 

パニック障害は東洋医学では、五臓六腑の『』と『』が深く関係していると言われています。

・肝の重要な機能
東洋医学でいう『』の重要な機能として挙げられるのが『肝は疏泄を主る』『肝は血を蔵する』という機能です。
肝は、情緒を安定させて精神状態を正常に保つ役割や自律神経系の機能によって全身の各機能を円滑に働かせる機能があります。

また肝は、血を貯蔵して状況に応じてその量を調整しています。血管の収縮や弛緩などで全身の血流量も調整しているのです。

 

・心の重要な機能
東洋医学でいう『』の重要な機能として挙げられるのが、『心は血脈を主る』『心は神を主る』という機能です。
『心は血脈を主る』という機能は西洋医学の心臓と似たような働きです。心臓の拍動によって循環を正常に遂行させるというものです。それに加えて各部分の新陳代謝などの機能も担っています。

『心は神を主る』の『神』は思考や分析や判断にあたるもので、それらを主っているのが『心』だと考えられています。

 

・肝と心の関係
血の運行でとても深い関係にあります。循環系は『心』の血脈を主る作用と『肝』の血を蔵するという機能によって調整されています。

また、思考や精神状態の安定にも『心』と『肝』は深い関係にあり、『心血』や『肝血』によって正常に保たれています。よって『心』や『肝』の機能低下によって『心血』や『肝血』が不足してしまうとパニック障害などの精神疾患に罹ってしまうのです。

 

 

パニック障害の鍼灸治療症例

30代 女性

仕事が忙しく、夜は終電時間を超えてまで仕事をしていることも多い。土日も休まず働く日々が3か月ほど続いた。睡眠時間も一日5時間程度で食事も外食やコンビニ弁当ばかりでバランスよく取れていなかった。
ある日、仕事の会議中に激しい動悸と息苦しさ・手の痺れが出て、会議を途中で退席した。横になってしばらくすると症状は治まったが、それ以降その現象がいつ起こるのかという恐怖・不安感を持つようになってしまった。病院で検査をしたが、特に体の異常は見つからずに心療内科の受診を促されて受診をしたところパニック障害と診断された。
会議中はもちろんのこと電車や人混みの中でも強い恐怖感を感じるようになり、仕事にも行けなくなり、休職せざるおえなくなった。

当院の治療
自律神経測定器を用いて自律神経を測定したところ午後7時頃の測定だったにもかかわらず交感神経が過亢進状態でした。
まずは、自律神経の状態を整えて東洋医学的診断法に基づいて治療していきました。

治療経過
◇1回目◇
治療後、帰り道など恐怖感や不安感はまだ強い状態だったが、その夜はぐっすりと睡眠することができた。
治療に加えてバランスの良い食事と入浴後のストレッチをしてもらうようにしました。

◇2~4回目◇
電車や人混みではまだ恐怖感や不安感を感じる。休職前は手汗をすごくかいていたが、最近はあまりかかなくなった。

◇5~7回目◇
だんだんと恐怖心が薄らいできた。コンビニや本屋などは恐怖心を感じず、行けるようになった。

◇8回目◇
以前は電車や人混みで恐怖心が強く、心に余裕が持てなかったが少しずつ心にも余裕が持てるようになってきた。

◇9回目◇
職場に復帰。最初は、労働時間を短くしてもらい少しずつ体を慣れさせていった。恐怖感・不安感は多少感じるが以前ほどではない。

◇10回目◇
身体が仕事に慣れていくうちに徐々に恐怖感・不安感を感じなくなった。

 

20代 女性
バイト中に急にめまいと動悸がして、このまま死んでしまうのではないかという恐怖感を感じた。その日はなんとかバイトを最後まで行った。テスト勉強も重なり、体が疲れていたからだと感じ、一晩多めの睡眠をとれば治ると考えていた。しかし、次の日もバイト中にめまいと動悸を感じて昨日よりもそれらが強く出て不安感や恐怖感も強く感じた。さすがにバイトを続けることができずに内科を病院に受診したところ特に検査で異常が見つからず、心療内科の受診を勧められた。

心療内科を受診したところパニック障害と診断されて抗不安薬や抗うつ剤を処方されて服用していたが、あまり改善されずに当院にご来院された。

 

治療経過
問診を詳しく行っていくと、症状が強く前にテスト勉強でほぼ徹夜状態が続き、テストが終わっても友人と飲みに行くその翌日に発作が起きたとのことでした。自律神経測定器で検査した結果、午前11時にもかかわらず副交感神経の活動が高く、正常な自律神経の反応とは違う結果が出ていました。
最近では、不安感を感じる場面が増えてきて電車の中や人込みでも恐怖感・不安感におそわれることもある。

◇1回目◇
治療を受けた直後から身体のだるさを感じてその夜は熟睡できたとのこと。電車の中ではまだ不安感を感じる。治療と並行して生活のリズムを整えて行き、睡眠時間の確保と早朝の散歩、規則正しい食事を心がけていただいた。

◇2回目◇
電車の中の不安感はいくらか和らいだ。しかし、まだ外に出る恐怖感が消えずに外出を控えているとのこと。大学もテスト後休みに入っており、バイトも今は休んでいる。

◇3回目◇
夜寝つきが悪い日があり、その次の日は不安感を感じやすい。よく眠れた日は不安感を感じにくく、外出する元気も出てきた。

◇4回目◇
前回よりも今回は睡眠が安定してきて電車の中での不安感は感じなくなった。

◇5回目◇
バイトに復帰。最初は、2時間程度から始めた。バイトに入る前は不安感を感じたとのことだが、始まると不安感は徐々に消えていった。

◇6回目◇
治療間隔も少しずつ伸ばしていった。前回までは3~4日に一回ほどだったが1週間に1度程度にした。バイトも続けているが問題なくやれているとのこと

◇7回目以降◇
治療を2週に1回、1カ月に1回と徐々に延ばしていき、疲れが少し溜まってきたら治療を受けるようになった。たまに不安感を感じることもあるが、以前のようにひどくなることも治まっていくとのこと。

 

 

パニック障害とは?

 

パニック障害とは、突然何も前触れもなく全身に汗をかいたり、動悸やめまい、息苦しさなどの異常を感じてこのままだと死んでしまうのではないか、気が狂ってしまうのではないかと恐怖に襲われることです。

この恐怖に襲われることをパニック発作といいます。大体は、10分~1時間程度でおさまることが多く、発作が起きて病院などで診てもらう時には治まっていることが多く、血液検査や心電図などの検査をしても何も異常が出ないのが特徴です。

パニック発作を繰り返していると、また発作が起きてしまうのではないかと不安に駆られて人混みや電車の中などあまり逃げ場のない場所に出ることが難しくなります。これを「予期不安」と言われ、代表的なものに広場に出ると恐怖感が出る「広場恐怖」などがあります。

パニック障害は日本人の100人に1人の割合で罹る病気と言われており、決して珍しい病気ではありません。

パニック障害は気持ちの問題というようなものではなく、脳の働きの変化が関わっていると最近では研究で明らかになってきました。決して一人で抱え込むものではなくて早期に適切な処置を受ける必要があるのです。早期に治療を開始するとそれだけ予後も良好な場合が多いです。

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パニック障害の主な症状

パニック障害は何も処置をせずに放っておくと「パニック発作」➡「予期不安」➡「広場恐怖」➡「うつ病」という経過をたどる場合が多いです。

 

パニック障害の症状

 

・パニック発作

パニック発作の症状や起きる状況は人によって様々です。

多くは、突然の激しい不安感動悸息苦しさ体の一部の痺れや震えめまいふらつき感などを感じます。体の状態としては、寝不足・炎天下での作業・風邪などで体が弱っている時に起きる場合が多いです。

パニック発作が起きやすい状況は、電車に乗っている時や多くの人の視線が集まる会議中やプレゼンの時、車を運転している時などです。

 

 

・予期不安

パニック発作が起きてしまうとそれと似た状況になった時などに、また発作が起きてしまうのではないかという不安感に駆られてその不安感が段々と大きくなり、日常生活でも不安感を感じやすくなります。

 

・広場恐怖

パニック発作が起きてしまうとパニック発作が起きてしまった状況を避けようとします。そのような発作が起きてしまうのではないかといった恐怖感を広場恐怖といい、広場恐怖を感じるとそれらの行動を避けようとします。多くは、公共の乗り物や高速道路での運転、会議中などその場から逃げ出せないような状況の時に恐怖感を感じやすいです。

 

 

・うつ病

パニック発作を適切な処置をせずに放っておくと、うつ病を併発してしまう場合があります。

パニック発作を繰り返しているうちに出掛けることが億劫になってきたり、仕事に支障が出てきたりと気分が落ち込みやすく、繰り返していくうちにうつ状態になりやすくなります。

 

パニック障害の診断基準

パニック障害の診断はよくアメリカで提唱されている基準が使用されています。

 

以下の13項目のうち4つ以上あてはまる場合は、パニック障害の可能性があると言われており、専門医の診断を受けた方が良いでしょう。

 

  • ・動悸や脈拍が早くなる
  • ・全身特に掌に多量の汗をかく
  • ・体や手足の一部分が震える
  • ・息切れや息苦しい感じがする
  • ・喉が詰まった感じがして苦しい
  • ・胸の痛みや圧迫感がある
  • ・吐き気、腹部の不快感がある
  • めまい、ふらつき、意識が遠くなる
  • ・自分が自分でなくなり不安を感じる
  • ・狂ってしまうのでないかという恐怖に襲われる
  • ・発作で死への恐怖を感じる
  • ・体の一部にしびれ感やうずくような感覚
  • ・手足の強い冷えやほてり

 

 

パニック障害の原因

パニック障害の原因は未だに詳しくは解明されていません。しかし、様々な研究で脳内の神経伝達物質の異常によって引き起こされるという原因が有力と言われています。

 

人間は恐怖を感じると逃避行動に出ます。それは脳内の偏桃体大脳皮質という部分が深く関係しています。特に偏桃体は、情動反応や記憶を処理する部分です。大昔では、外敵や動物から身を守るために危険がせまり、恐怖を感じると偏桃体が反応して血管など身体を収縮させて素早く逃げやすくさせる反応が起きます。

しかし現代ではそういった状況になることは、稀です。仕事や人間関係、家庭などでストレスが蓄積しやすい現代では、むしろ上記のような会議中や電車の中など逃げ場のない状況で恐怖を感じて偏桃体が反応してしまうのです。

偏桃体から恐怖感や不安感が発信されますが、その信号を抑制している物質セがロトニンやGABAです。しかし、パニック障害に罹ってしまう方の多くは何らかの原因でこのセロトニンやGABAという物質が少なくなっていることが明らかになっています。

 

また、パニック障害の方は恐怖を感じると、脳の青斑核という部分から排出されるストレスホルモンであるノルアドレナリンが多量に出てパニック障害の症状が出てしまうという説もあります。

 

 

パニック障害を患いやすい人

うつ病を始めパニック障害なども原因が明らかにされておらず、原因解明のために様々な研究が今も続けられています。様々な研究の中でどういった方がパニック障害に罹りやすいのかということがわかってきました

 

・遺伝の関係

親や兄弟などの親族がパニック障害を患っていると、パニック障害に罹りやすいという研究結果が多く報告されています。

ある研究によると親族にパニック障害に罹ったことがある方とそうでない方とではパニック障害に罹る確率が約8倍も増えたという結果もあります。

 

・養育環境や家庭環境

幼少期に虐待を受けたことがあるなどの養育環境に問題がある場合や親またはパートナーとの関係が上手くいっていない場合にパニック障害を患いやすいという研究結果が出ています。

 

・性格

厳密な研究結果は出ていませんが、パニック障害を患う人の性格的な特徴はあります。性格的に内気な人・引っ込み思案の人・悲観的な人・人見知りな人などの方に多い傾向にあります。

 

 

パニック発作が起きてしまった時

パニック障害は、正直なところすぐに治るような病気ではありません。治療期間中にも発作が起きてしまうことも少なくありません。起きてしまった時でも発作を抑えて起きても平気だと思えることが治癒への第一歩となります。

もしパニック発作が起きてしまった時にはまず呼吸に意識を向けることが重要です。呼吸が浅く速い呼吸となってしまうと交感神経の活動を高めてしまいさらに発作を助長してしまう危険性がります。呼吸法としましてはとにかくゆっくりと深く呼吸をすることが重要です。どうしても呼吸するときは吸うことを意識してしまいがちですが息を吐くことに意識を向けます。そして4秒間鼻から息を吸ってゆっくり口から6秒間息を吐くというように呼吸に意識を向けます。

また、その際に余裕があれば心を落ち着かせる手のツボ『神闕』というツボを押しながら行うと良いです。そのツボに関しましてご来院の際に場合によっては皮内鍼といって鍼のシールを貼って常に刺激させる治療を行うこともあります。

そして、パニック発作は永遠に続くことはないと思うことも重要です。必ず発作はいつかは治まるのです。そう自分に言い聞かせるのです。気の持ちようなのかと思われるかと思いますが、発作が起きている時にそう思えるだけで発作が意外と早く収まっていく方が多いです。

また、どうしても発作がコントロールできない何をしても収まらないと感じたら「逃げ場」を作っておくことも重要です。電車内で発作が起きやすいのであればドア近くにいたり、映画館であれば出口近くの座席に座るなどです。

 

強度の高い運動がパニックや不安を取り除く

運動習慣は、身体面の利点ばかりでなく、精神面での利点も様々な研究により明らかになってきています。運動は、身体だけでなく脳にもいい影響をもたらしてくれます。

2004年アメリカのサザンミシシッピだいがくで行われた研究です。
不安感受性が高く、全般性不安障害を抱えている運動不足気味の学生54名を対象とした研究で2つにランダムに分けて行われました。どちらのグループにも2週間の間に20分間の運動を6回させましたが、一方のグループは最大心拍数の60~90%の強度でランニングを行ってもらい、もう一方のグループには最大心拍数のおよそ半分ほどのゆったりとしたペースでランニングを行ってもらいました。

結果は、どちらのグループにも不安感受性の低下が認められましたが、運動強度の高いグループの方が大きな効果が出ました。
運動強度の高いグループでは運動によって鼓動が早くなり、一種のパニック発作のような感覚を身体に出現させて、そうした肉体的な現象が必ずしも不安の発作につながらないということを脳に教え込んだといえます。パニック発作はある種の体の興奮状態でそれを脳は恐怖と捉えるわけであり、運動によって体の興奮が気持ち良いものと捉えることで不安やパニックが解消されやすくなるのです。

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好医院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 15:28 / 院長コラム コメント&トラックバック(%)

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