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産後うつの鍼灸治療

水曜日, 9月 22nd, 2021

産後うつの東洋医学的考え

産後うつの鍼灸治療方針

 

産後うつは東洋医学では、五臓六腑の『』と『』の働きが弱っているために発症すると考えられています。
出産をすると母体は多くの『気血』を消費してしまうために肝の血を蔵して排泄・排出するという調整機能は大きな影響を受けて肝の機能は低下しやすくなります。
また、肝と腎は『肝腎同源』と言われて肝が弱ると腎の機能も弱くなりやすいため、治療では肝と腎の機能を補っていく必要があります。

産後うつで多く見られる病証としましては、『肝血虚』と『腎虚』があげられます。肝血虚では、イライラ感が抑えられない・不安感・気分が落ち込みやすいなどの症状があらわれやすく、腎虚では物忘れや体の重だるさなどが出やすくなります。

産後うつに対する当院の鍼灸治療

産後うつに対する当院の治療はまず第一に自律神経のバランスを整えることです。

産後うつ病の自律神経調整鍼灸

 

当院には自律神経測定器があり、自律神経の今の状態を把握してから施術を行えるのでその方にあった施術法を選択することが可能です。
交感神経の活動が高い場合や逆に副交感神経の活動が高い場合で自律神経が乱れている場合では施術法や治療配穴が違ってきます。
また東洋医学的観点からもアプローチをしていきます。『肝』や『腎』の機能を補ったり、『気血』の流れを改善していきます。

産後うつの鍼灸治療

 

当院には女性鍼灸師も在籍しているため女性ならではのお悩みもご相談ください。

神門

産後うつの鍼灸治療症例

 

30代 女性

結婚してからも独身時代と変わらずに夜遅くまで仕事をこなしていた。そのような生活をしていたためなかなか子供を授からなかった。30代も後半になりそろそろ本当に子供がほしいと思い、仕事の量を減らしてやっと妊娠できた。妊娠がわかったときは嬉しかったが、それと同時に育児に対する不安や生活環境の変化、将来の不安を抱くようになった。
出産後、いろいろ本やインターネットで調べたことを実践したがなかなか思うようにいかずに段々と育児に対するストレスが溜まっていった。1か月を過ぎると睡眠がうまく取れなくなり、日中は気分が悪くなったり、底知れぬ不安感に襲われるようになってしまった。
ある朝、起きると体が思うように動かないと感じて産婦人科を受診したところ産後うつと診断された。授乳中ということもあり、軽い薬を処方してもらったが、症状は改善されなかった。強めの抗うつ剤を医師からは勧められたが、授乳を続けたいとのことで当院にご来院された。

治療
自律神経測定器の結果、交感神経の活動が高く自律神経が乱れているという結果が出ました。手足や腹部の冷えも強く全身の血流が悪くなってしまっていると感じました。自律神経を調整する治療と冷えを改善するお灸療法を中心に行っていきました。また、家でもご主人の協力を得て少し育児から離れてリラックスできる時間を確保していただきました。

◇1回目◇
治療後、体のだるさや疲れが一気に出た感じがしてその日はよく眠ることができた。

◇2回目◇
眠れる時もあるが全体的にはまだあまり眠れた気がせずに日中に気分が悪くなることもあり。

◇3~8回目◇
どうしても夜泣きなどで夜中起きることがあり、そのあと目がさえてなかなか眠れないが少しずつ身心が楽になっていることを実感。

◇9~12回目◇
育児のことで頭がいっぱいだったが少しずつ余裕ができてきて、化粧や趣味の読書などが楽しめるようになってきた。睡眠も改善。睡眠時間が短いと感じる日は子供が昼寝をしている時に一緒にリラックスして眠れるようになった。

 

 

産後うつとは

産後うつという言葉を聞いたことがありますか?ストレス社会と言われる現代の日本では10~15人に1人は生涯うつ病にかかると言われています。これはとても大きな割合で年々うつ病で悩まされる人は増えていると言われています。

うつの増加傾向は産後にも当てはまり、産後にうつ病で悩まされることを『産後うつ』といいます。産後うつは10人に1人以上の割合で産後女性にかかってしまうとも言われています。

産後はどうしても生活環境やホルモンバランスの変化が大きいです。そこで赤ちゃんの面倒を自分だけしか見ておらず、誰にも相談できな状況ですとうつ病にかかりやすいと言われています。

産後うつの症状は、よく言われるうつ病の症状と似ています。症状の特徴としましては

 

☑気分が落ち込む

☑何事にもやる気が出ず、育児も億劫になる

☑いつもは普通にできていた献立が考えられない

☑常に何かしらにイライラしている

☑食欲がわかない

☑寝つきが悪い、睡眠不足

☑化粧などしなくなり、外見に気を遣わなくなった

☑将来のことばかりか考えて不安になる

頭痛首肩こりがひどい

☑できない自分を責めてふさぎがちになる

☑下痢や便秘

胃痛や腹痛

☑何事にも興味が薄くなり、今まで楽しめていたことが楽しめなくなる

 

産後3か月の間にこのような症状が出た場合産後うつかもしれません。その場合は、一人で抱え込まないで周りの人に相談することが重要です。そのまま一人で抱え込んでしまうと症状が悪化や改善までに時間がかかってしまうことがほとんどです。

産後うつは単に一時の症状ではありません。きちんと治療していく必要があるのです。

産後うつ

 

産後うつの原因

産後うつとなってしまう原因は人それぞれで多岐にわたりますが、大きく分けると生活環境の変化とホルモンバランスの変化です

 

・生活環境の変化

特に出産が初めてという女性は、初めてという経験がいっぱいです。赤ちゃんがいるのといないのとでは生活環境が大きく変わるのは容易に想像できます。その中でも特に多いのが、ご主人は仕事が忙しくて育児に協力的ではなく、ご両親も近くに住んでおらずに育児の負担がほとんど女性にかかってしまう場合に産後うつにかかるリスクが増加します。

また、里帰りで出産で実家にいた時はいいが、自宅に帰ったときに初めて育児の負担が全て自分にかかることでも産後うつは発症しやすくなってしまうのです。

また、赤ちゃんがまだ小さいころだと気軽に外出などできず、赤ちゃんと家で過ごす時間が長くなり、気分転換もできません。外出したら外出したらで常に赤ちゃんのことを考えねばならず、ストレスは溜まりやすい状況です。

女性の社会進出が進み、女性も男性ばりにバリバリと仕事をこなす人も少なくありません。そういった女性が外出もままならず、育児と家事で毎日を過ごしていくというのは大きなストレスかもしれません。

 

 

・ホルモンバランスの変化

産後の女性は体のホルモンバランスの変化も大きいです。多くの方の産後女性の体はこれまで生きてきた中で一番急激に変化する時期といっても過言ではありせん。母乳を作り出しますし、赤ちゃんがおなかの中で育った子宮は急激に縮まっていきます。

これは相当な体の変化でホルモンバランスの変化も大きいです。

ホルモン分泌などの内分泌系の活動は自律神経が大きくかかわっているため、ホルモンバランスの大きな変化は自律神経のバランスが乱れやすくなって産後うつにかかってしまいます。

 

 

産後うつにかかりやすい人

 

うつ病にかかりやすい人の性格に特徴があるように産後うつにかかってしまいやすい人の性格にも特徴があります。

 

・生真面目で完璧主義

生真面目で完璧主義な女性は、産後に何かトラブルが起きても他人に迷惑をかけてしまうと思い込んで誰にも相談できない人が多いです。それでも育児に家事にうまくいっている場合はよいのですがうまくいかなくなった途端に自分を責めてしまい産後うつにかかってしまいます。

 

・努力家で頑張りすぎてしまう

もちろん育児をするということは生活環境が一変するため慣れるまでは努力が必要になってきます。初めての出産となるとなおさらです。しかし、それ以上に親やご主人などの周りの方のサポートはそれ以上に必要になってきます。

そのことを理解せずに明らかに自分の許容量を超えて育児や家事を行っていると心身ともについてこられずにある一定の許容量を超えてしまうと産後うつとなってしまいます。

 

・今までうつ病にかかったことのある人

今までにうつ病やその他心療内科系の疾患にかかったことのある人は産後うつにもかかりやすくなると言われています。

 

 

産後うつに対する病院での治療

産後うつと診断されるとまずカウンセリングなどの心理療法が行われることがほとんどのようです。多くの人は産後うつを発症して半年以内に症状が軽快すると言われていますが、産後うつ患者の4人に1人は半年以上もうつ傾向にあり、なかなか症状が軽快しないという場合もあります。そういった産後うつが重症化した場合は抗うつ剤などの薬が処方されます。

しかし、抗うつ剤を服用する時にまだ授乳中の場合は、副作用の少ないより安全性の高い薬を服用する必要があるため処方できる薬も限られてきます。

 

産後うつを改善するための生活習慣

・自分一人で育児・家事を抱え込まない

・親や夫にサポートをお願いする

・適度な運動(散歩など)でストレスを発散する

・睡眠時間を確保する

・子供を預けて一人になれる時間を作る

・食欲がわかなくても口当たりのいいものできっちり1日3食摂る

 

 

鉄欠乏と産後うつ

 

うつ病の治療において栄養療法も必要だと言われています。

産後うつに関しましても、産後のお身体には栄養が必要ですから尚更産後うつの回復には栄養療法が欠かせないです。

 

必要な栄養素の研究で近年、うつ病と鉄分不足が関係しているのではないかというものがあります。

鉄欠乏で貧血なら理解できるけどうつ症状が出るなんてと思う方も多いかと思います。

しかし、うつ病と診断されて抗うつ薬を処方されたが全く効果がなく、鉄分を補給したところ回復傾向に向かったという医師もいます。

 

鉄は体の様々な機能の役割を担っています。例えば、皮膚や粘膜の維持に関わっており鉄が不足すると肌荒れや口内炎ができやすくなってしまいます。免疫力の維持にもかかわっているため鉄不足となってしまいますと免疫力の低下します。

 

うつ症状と鉄不足の観点からしますと、鉄が酸素の運搬やエネルギーの産生に関わっていることが大きいです。

 

鉄が不足してしまいますと身体のいたるところが酸素不足やエネルギー不足に陥りやすくなってしまうのです。すると、疲労感倦怠感、さらに脳が酸素不足になると立ちくらみめまいの原因となります。

 

そのほか、鉄は脳の神経伝達物質の意欲に関係するドーパミンや脳の覚醒に関わるノルアドレナリン、幸せホルモンと言われるセロトニンなどの合成にも関わっています。

鉄が不足することでそれらのこころの働きに重要とされるホルモンの合成がうまくいかずに睡眠障害不安うつ状態になりやすいです。

 

厚労省は鉄の推奨摂取量を1日10mg、女性で12mgと定めています。鉄が多く含まれる食材としまして

・豚レバー

・鶏レバー

・牛レバー

・しじみ

・キハダマグロ

・カツオ

 

などがあります。

 

妊娠・出産・授乳では鉄の消費量が増えると言われています。通常摂取する量よりも摂取しないと鉄が欠乏した状態におちいり、産後の場合特に産後うつ症状が出やすくなってしまいますので注意が必要です。

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院

線維筋痛症の鍼灸治療

金曜日, 9月 10th, 2021

①線維筋痛症に対する当院の鍼灸治療

 

線維筋痛症の鍼灸治療方針

 

当院の線維筋痛症に対する施術は、第一にはりやお灸を施すことにより全身の調整を図り、自律神経のバランスを整えます。慢性的な痛みやその他全身症状は、特に自律神経を乱すと考えられています。線維筋痛症は、全身的な疼痛もあることから特に自律神経を乱しやすいといえます。実際に自律神経失調症の症状も多く併発します。

線維筋痛症の自律神経調整鍼灸
当院では、自律神経測定器を用いてその日の自律神経の状態を把握して上で施術していきます。線維筋痛症では、慢性的痛みにより交感神経過亢進の状態が多いため、はりやお灸などの刺激の中でも心地よい刺激を用いて、リラックス神経である副交感神経優位の体にもっていきます。

また東洋医学では、局所的に診るのではなく、全体的に診るという考えがあり、全身施術を行うことにより自然治癒力を高めます。
線維筋痛症は東洋医学的に見ると「」と「」の作用不足により発症すると考えられているので、鍼灸治療を用いてツボを刺激することで「気血」の作用を正常に戻すように促します。

当院の鍼灸治療による線維筋痛症の施術目的は、線維筋痛症の回復程度を高め、回復を速めることです。また西洋医学とは違う東洋医学の観点により少しでも線維筋痛症が回復できる機会を提供することです。お悩みの方はぜひ一度ご相談ください。

 

その他、さした鍼に電気を通す鍼通電療法も行っていく場合があります。鍼刺激と同時に電気を流すことにより更なる鎮痛効果が望むことが出来ます。

線維筋痛症の鍼通電治療

 

 

 

②線維筋痛症の東洋医学的考え

 

線維筋痛症は東洋医学でいう「気虚」(気の作用不足による症候)と「血虚」(血の持つ栄養を巡らす作用不足による症候)、またはそれら二つが同時に起こる「気血両虚」が原因で発症すると考えられます。

ⅰ)気虚
「気」の作用不足による症候で、臓腑の機能低下・免疫力の低下などがあらわれます。
また慢性疾患などでよく見られ、元気がない・疲れやすい・無力感・息切れ・風邪をひきやすいなどの全身的な虚弱の症候があらわれます。

「気」の機能

椎動作用
成長・発育・生理的機能・代謝の推進

温煦作用
椎動の維持及び体温の維持・調節

防御作用
病邪の防御・排除

固摂作用
漏れや排泄過多の統制・臓器の定位

気化作用
物質転化

 

ⅱ)血虚
「血」の持つ全身に栄養を巡らす作用の低下であり、循環血液量の不足に相当します。症状としては、顔色が悪い・皮膚につやがない・目がかすむ・頭痛・動悸・四肢の痺れ感や筋のひきつれなどがあらわれます。「血虚」の種類として「肝血虚」と「心血虚」などがあるが、「肝血虚」が中心となります。

肝血虚
「肝血虚」とは中医学でいう「肝」が血を貯蔵して必要に応じて供給・消費する機能と自律神経系の作用を通じて血管を収縮あるいは弛緩させ、体内各部の血流量を調整する機能が異常をおこして発症します。
筋のけいれん・手足のしびれ・目の乾燥感や女性では、月経のおくれ・月経血の過少・無月経などがみられることが特徴です。

 

ⅲ)気血両虚
「気」は「血」による栄養を受けて機能し、「血」は「気」の転化作用によって生成されるので、「気」と「血」はとても深い関係にあり、「気血両虚」の状況がよくあらわれます。

また中医学でいう「肝」と「腎」の機能が弱ると全身的に血や体液が不足し、筋肉などの様々な器官に栄養を送ることができず、さらに上記の条件が加わると線維筋痛症がおこりやすくなります。両者の関係は深いので「肝腎同源」とも言われており、「肝」と「腎」の症候が同時にあらわれることが多いです。

 

 

③線維筋痛症とは

 

線維筋痛症の主な症状pptx

線維筋痛症は体の広い範囲の慢性的な耐えがたい痛みを主な症状として全身の重度の疲労や様々な症状をともなう疾患です。しかし、血液検査や画像検査などには異常がないため、線維筋痛症という診断がつかなかったり、あるいは別の病気と診断されたりする事が少なくありません。

それまで受診した医療機関の診察によっては、変形性脊椎症腰椎椎間板ヘルニア更年期障害自律神経失調症心因性疼痛うつ病などと診断される場合もあるようです。

 

線維筋痛症では、全身に痛みがあり、また体の様々な部位がとくに痛む場合もあります。痛みの質や程度には個人差があり、患者さんによっては「死んだほうがまだマシな程の痛み」と表現されるように激しい痛みが生じる場合があります。

接触軽い圧迫など通常では痛みを起こさないような刺激によっても強い刺激が引き起こされる場合があり、感覚過敏といった感覚異常がみられる場合があります。
症状は一般的に季節の変わり目にしばしば悪化して夏より冬のほうが痛みの強い人が多いようです。
また線維筋痛症の症状は、痛みだけではなく、痺れこわばりなどの症状が体のさまざまな場所にあらわれます。そのほか患者さんによっては、不眠疲労感下痢便秘不安感憂うつ感など、多くの身体症状や精神症状がみられます。

 

 

■線維筋痛症の痛み以外のさまざまな症状■

◇疲労感
しばしば慢性疲労症候群を合併する。痛みに加えて疲労感が加わると就労できない場合がある。

◇不眠
睡眠の質が悪くて起床時に爽快感が少なく、疲れが取れにくい。強い痛みが不眠に深くかかわっていると考えられる。

◇刺激に対する感受性の増大
音や光、温度、におい、圧迫などの刺激に対して敏感。

◇記憶力や認知機能の障害
記憶力、集中力、作業効率、判断力などが低下。

◇乾燥症状
目の渇きや口の渇きなどの乾燥症状。

◇関節可動域の増大
女性の場合では、関節の動く範囲が健常な女性よりも大きい。

◇消化器症状や排便・排尿の異常
胃酸の逆流や腹部膨満感、嘔吐の症状が多く見られ、排便異常として下痢や便秘などを訴える。また排尿回数が多く、しばしば膀胱炎を合併する。

◇精神状態
うつ病や不安障害などの精神疾患も頻繁に合併する。

◇運動機能の異常
健常な人よりもバランス能力が低く、転倒の回数が多い。

◇手足のむくみ
手の甲や足の甲がむくむ。

線維筋痛症の診断基準としてアメリカリウマチ学会が作成した基準があり、それが参考となります。

ⅰ)広範囲な痛みの既往
左半身の痛み、右半身の痛み、腰より上の痛み、腰より下の痛みに加えて体幹部の痛みがすべてなければならない。

ⅱ)指による触診で定められた18か所の圧痛点のうち11か所に痛みがある
定められた18か所のうち11か所以上に疼痛を感じると陽性と判断され、また押す力は4㎏と定められている。

日本には約200万人の線筋痛症の患者さんがいると推定されており、患者さんの7~9割が女性です。線維筋痛症は子供にもみられ、年齢とともに有病率は増加しますが、50~80歳を境に有病率は逆に低下します。

 

②線維筋痛症の原因

 

線維筋痛症の原因は、さまざまな説が提唱されていますが、はっきりとした原因は分かっていません。しかし、脳に何らかの変性が起こっているのではないかと推測されます。
現在、線維筋痛症は精神疾患ではなく、脳や脊髄などの中枢神経系の機能障害と考えられており、中枢神経の過敏化が線維筋痛症の発症や維持にとても大きな影響を与えていることが定説になっています。
中枢神経の過敏化などといった異常が起こると身体にさまざまな異常をもたらし、それらは脳の部位の違いによって精神症状・運動機能異常・痛みといった異なる症状がおこると考えられます。例えば、何らかの理由により脳の異常が起こる部位が少し変化することで痛みが変化したり、脳の異常が精神機能を制御している場所に及べば、うつ病不安障害を合併したりします。

また精神的ストレス・社会的ストレス・肉体的ストレス・交通事故などは、線維筋痛症になりやすい危険因子でそれらによって脳のどこかが変性してしまい中枢神経の過敏化が起こると考えられています。

 

 

症例

 

40代 女性

 

2か月前から突然背中の痛みが出た。最初は、腰痛持ちだったのでそれと同じ類のことかなと思い気に留めないようにしていたが段々痛みが強くなり、少し服が触れただけでも痛みが走るようになった。

 

子育てと仕事で忙しく睡眠時間も少なかったせいで身体の疲れもたまっていたかもと思い少し休みをとって休んでも状態はよくならず、日に日に痛みが増していった。

 

痛む場所も変わっていき、背中や足、手の関節、頭痛など多岐にわたる。どうしようもなくなり、近くの病院で診てもらったところ原因がわからなかったため大学病院を紹介されて受診したところ線維筋痛症の診断を受けた。

 

全身の痛みのほかに筋肉のこわばりや痛みによる睡眠障害、うつ傾向もでているとのこと。家事や出かけることも億劫うになってしまい気持ちも塞ぎがち。

 

病院では薬と麻酔の注射を打って何とか痛みを和らげる処置をしてもたっているが、効果は多少あるといった感じだったので知人に鍼灸治療を紹介されて当院にご来院された。

 

治療経過

その日の痛みの箇所に合わせてその部分に鍼や鍼通電治療を用いて鎮痛効果を高める鍼治療を行っていきました。

また、痛みによる不眠症状やうつ傾向も出ていたので自律神経のバランス調整施術も同時に行っていき症状改善をはかっていきました。

病院での治療も並行して鍼灸治療を受けていただき、治療開始3週間目から少しずつ痛みの程度が弱くなっていきました。治療のペースは週に2回ほどで2か月目以降は治療の間隔を延ばしていきました。

痛みは3か月でかなり改善が見られてきたが不眠症状がまだ残る。

自律神経のバランス調整と不眠症状に対する鍼灸治療に重点を置いて施術をして行き、治療開始6か月ほどで不眠症状も改善されてきたので治療を終了した。

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年
鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む

2011年
おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年
中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年
渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年
三軒茶屋α鍼灸院を開院

手首の腱鞘炎の鍼灸治療

木曜日, 8月 26th, 2021

ドゥケルバン病 手首の腱消炎について

腱鞘炎の鍼灸治療はWHO(世界保健機構)に適応疾患とされています。

WHO適応疾患について←

手の使い過ぎなどによる腱消炎は、ドゥケルバン病が疑われます。

①ドゥケルバン病(手首の腱鞘炎)に対する当院の施術

当院のドゥケルバン病に対する施術は、第一に手首付近のツボにはりやお灸の刺激をすることにより炎症を早く抑える効果を促します。
また、痛みの強い部位に鍼をさして微電流を流すことにより気血の流れをスムーズにして鎮痛効果を促します。

 

特に手首親指側を通る「肺経」や「大腸経」で気血が滞っている場合が多いので「肺経」や「大腸経」に関するツボを用いてそれらを解消するよう促します。
東洋医学の診断方法に基づき全身の調整治療も行っていきます。ドゥケルバン病は全身性の疲労や気血の滞りが原因の場合もあるので手首だけの部分的な治療ではなく全身を診て治療していきます。

ドゥケルバン病のうつ伏せ鍼灸治療

 

ドゥケルバン病を患っている方は、長時間のパソコン作業などにより自律神経の乱れも伴ってる方が少なくありません。そこで当院では、自律神経測定器を用いてその時の自律神経の状態を把握した上で施術することで他にはない効果が期待できます。また首肩の筋緊張(頚椎症について)や頸部ヘルニアによっても手の痺れを感じる場合もあるので触診して硬さなどがみられる場合は首肩部分も併せて施術していく場合もあります。

当院の施術により、手首の症状はもちろんのこと全身の施術効果も期待できます。

 

 

ドゥケルバン病の鍼治療

 

②手首の腱鞘炎の症例

 

40代 女性 右手首の痛み

◇症状◇

この方は日中はパートでパソコンを使う事務作業をして、お子さんも二人いるため家事なども忙しかった。仕事でのパソコン作業の時に手首親指側に違和感を感じることが多かった。気にせずに過ごしていると、包丁で野菜を切っているときに手首の痛みが違和感から痛みに感じるようになり、当院に来院されました。
仕事や家事で多忙な日々を過ごしており、体の疲れも相当溜まっていた。

 

◇当院の治療◇

肉体的にも精神的にも疲労がたまっていると問診時に感じたため、自律神経測定器で自律神経の状態を計測しました。夕方の時間に計測したところ交感神経が過緊張状態で副交感神経の活動が低い状態でした。まずは、全身のリラックス治療により交感神経の活動を抑え、副交感神経を高める施術をして手首の治療に入りました。パソコン作業や家事で重い物を持つせいか首肩の筋の緊張も強い状態でしたので、首肩から上腕・手首にかけて集中的に鍼灸施術をし、さらに手技療法で緊張の強い部分をほぐしました。

 

◇治療経過◇

・1回目
仕事や家事での手首の痛みは少し軽減した。治療後体の疲れが出てよく眠ることができた

・2~5回目
パソコン作業での痛みはだいぶなくなってきた。包丁もまだ痛むがしっかり握れて切れるようになってきた。体全体が軽くなってきた。

・6~7回目
痛みから違和感にかわり、日常生活では、無理なく過ごせるようになってきた。

・8~9回目
仕事で長時間パソコン作業をすると少し手首に違和感を感じるが休むと比較的早く回復できるようになった

 

 

③症例2


50代女性

◇症状◇

仕事を辞めて起業をしたところ、以前にもまして忙しくなり、パソコンのキーボードをうつ回数が増えていた。寝る暇もなく一日中キーボードを打ち続けていることもあり、それから徐々に左手の親指に痛みが出るようになってきた。最初は、痛みを我慢して何とか仕事ができていたが、仕事を続けていたらキーボードをうつ度に痛みが走りどうしようもなくなって整形外科を受診したところ腱鞘炎と診断された。湿布薬を処方してもらい貼りながら仕事をしていたが、なかなか軽減しなかったので友人からの紹介で当院にご来院された。

 

◇治療◇

パソコン作業のせいか首肩の筋肉も凝り固まっている状態だったので首肩の治療も行っていきました。首肩の筋肉が緩んだところで肘周りから手首に伸びている筋肉を緩めて痛みの強く出ている部分にも鍼灸施術を行っていきました。

 

◇治療経過◇

・1回目
治療後、首肩が楽になり手首・親指も痛みが軽減された。

・2回目
仕事中は夢中になって親指の痛みも忘れることもある。以前は痛みで仕事に集中できなかった

・3回目
仕事が忙しく、少し期間が空いて来院された。痛みが少し以前のように戻ってしまっていた

・4回目
前回治療後、痛みが楽になり仕事中も気にならなくなった

・5回目
痛みがだいぶ落ち着いてきた。以前はペットボトルの蓋が痛みで回せなかったが回せるようになった。5回目以降も疲れが溜まるとご来院していただいている。

 

症例③

30代 男性

以前は外回りであったりとかデスクワークの仕事以外がメインだったが、ここ数ヶ月はリモートワークが増えてきて在宅でデスクワークする時間が増えてきた。慣れないタイピングやマウスでの作業で首肩コリや腕の痛みを感じていたが、それよりも手首の痛みを強く感じるようになってきた

段々と右手首の親指まわりの痛みが強くなってきてしまい、タイピングなど手首を動かすと痛みが強く出てしまい仕事にならなくなってしまった。

整形外科で腱鞘炎と診断。注射や薬で対処していくらか軽快したが、まだ痛みが出ているため鍼灸治療を受けに当院にご来院されました。

◇治療◇

痛み止めの薬と併用して鍼灸治療を受けて頂きました。まずはうつぶせ首肩や肩甲骨周りの筋緊張状態を緩めてから次に仰向けとなり上肢の筋緊張の緩和、右手親指周りを中心に施術を行っていきました。

経穴でいいますと、陽池と合谷、外関と手三里をパルスで結んで鍼通電治療を行っていきました。

◇経過◇

合計6回の施術で、最初の2回はあまり治療後の変化がみられませんでしたが、3回目は痛みの程度が6割程度まで半減。治療の間はなるべく右手に負担をかけないように、趣味の筋トレでダンベルトレーニングをしていたとのことですがそれも期間中は休んでいただきました。

治療回数を重ねるごとに痛みの程度が減少。5回目を終えた時点で1~2割の痛みの程度。違和感程度になってきたのであとは手首に負担のかかる動作の指導ともしも痛みが出たら休んでアイシングをしてもらうように指導をして施術を終了しました。

 

④ドゥケルバン病とは?

 

ドゥケルバンの主な症状

 

ドゥケルバン病とは、手首親指側(長母指外転筋腱・短母指伸筋腱)の狭窄性腱鞘炎で、手の使い過ぎなど様々な原因により手指特に手首の親指側に痛みを感じる疾患です。
長母指外転筋・短母指伸筋・長母指伸筋は、親指を伸ばす運動さらに親指を外側に反る運動を行います。親指を強く伸ばすと、手首の表側にくぼみが見られ、その小指側の壁は長母指伸筋の腱、親指側を短母指伸筋の腱によりつくられます。

長母指外転筋
前腕の中間ほどから出て親指につく筋肉です。主な働きは親指を外側に向ける働きと手首を親指側に曲げる働きがあります。親指を伸ばすと手首に筋張った腱が二つ確認できますが長母指外転筋の腱はそのうちの一つです。

長・短母指伸筋
長・短母指伸筋も前腕の中間から出て親指につく筋肉です。長母指伸筋は、親指を伸ばし、外側に向ける働きのある筋肉です。短母指伸筋は長母指伸筋の働きを助ける働きがあります。この二つの筋肉の腱も長母指外転筋の腱と同じように親指を伸ばした時に手首に筋張った腱を形成する一つです。

 

腱鞘とは、腱を包んでいる滑液包のことで、なかには無色透明で粘着性のある滑液という物質が入っており、腱の動きをスムーズにさせる働きがあります。
ドゥケルバン病はこの腱鞘の部分が使い過ぎなどの何らかの原因で炎症を起こしたり、肥厚するなどして、腱が腱鞘内をスムーズに通過出来なくなった状態をいいます。

症状として、
痛み
・主に手指とくに親指を使う動作をした際に手首の親指側の痛みや手関節親指側の腫れ・圧痛などがあります。その他手指の痺れを感じる場合は手根管症候群も併発している場合もあります。
手根管症候群について詳しくはこちら

機能障害
・親指にしびれを感じたり、親指の動きが悪くなる場合もあります。

ドゥケルバン病を見分ける簡単な診断法として親指を他の指4本で覆うように握らせた状態で手首を小指側に曲げるとかなりの激しい疼痛が誘発されるものは、ドゥケルバン病が疑われます。(フィンケルスタイインテスト)

腱鞘炎

 

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院

ぶどう膜炎の鍼灸治療

火曜日, 8月 24th, 2021

ぶどう膜に対する当院の鍼灸治療

 

当院のぶどう膜炎に対する施術は、第一に目の周辺の経穴にはりをさしてぶどう膜の炎症をおさえる作用を促します。また必要であれば鍼に電極をつなげて微弱電流を流します。

ぶどう膜炎の鍼治療

 

ぶどう膜炎は五臓六腑の肝に深く関係しているので肝に関する経穴を用いて肝血を補うことや肝気の巡りをよくします。

また肝の陽気が過亢進して頭の方へのぼっていくことで症状を起こしているとも考えられるので肝の陽気を抑え、なおかつ下げる治療もする必要があります。

 

風熱の邪気によって引き起こされる場合はそれらを体外に出す治療が必要になります。
また東洋医学の特徴である全体を診て治療するという考えから全身の調整施術も行っていきます。
また多くの方は、目の痛みや視力低下のストレスにより交感神経が優位になっており、自律神経が乱れております。そこで当院では自律神経測定器を用いて、自律神経の状態を把握した上で施術していきます。

 

ぶどう膜炎の全身調整鍼灸治療

 

 

ぶどう膜炎の東洋医学的考え

中医学では五臓六腑の肝は目に開竅するといわれており、目の疾患は肝の機能障害が深く影響していると考えられています。

肝血が不足してしまうと視覚の異常や運動系の異常などがみられます。また肝の陰陽のバランスが崩れてしまい肝の陽気の過亢進がおきると次第に陰液を消耗して肝陽が頭の方へ上がっていきます。

するとぶどう膜炎などのさまざまな目の疾患・高血圧・頭痛・自律神経失調症などを引き起こします。また外からの風熱の邪気が体に侵入すると目は侵されやすく、ぶどう膜炎を引き起こす原因にもなります。

 

ぶどう膜炎の鍼灸治療症例

 

30代 女性
当院にご来院される一年前に大学病院の眼科で原田病(ぶどう膜炎)と診断される。視力障害などの症状はまだあまり強く出ていないものの目の痛みや頭痛の症状は出ている。病院でステロイド薬を処方されて服用しているが症状の改善があまり見られないために病院と並行して当院の鍼灸治療を受けたいとのことでご来院された。

 

当院の治療
原田病の原因はいまだわかっておらず、自己免疫疾患のひとつと考えられています。問診で詳しく伺ったところ原田病発症の1年ほど前から生活環境がガラリと変わり、ストレスを多く抱えていたことがわかり、それが一つの原因となったのではないかとご本人もおっしゃっていました。 そこで、当院では自律神経測定器を用いて自律神経の状態を計測させていただいてから治療に入りました。 自律神経側敵の結果、交感神経の活動が活発で、体の疲労度の数値も高い状態でした。

当院では

・自律神経の状態を整える全身調整治療
・首肩の筋肉の緊張をとる治療
・最後に目の周りの治療

この3点を施術しました。

 

治療経過
最初の1か月程は、週に2回と治療間隔を詰めて2か月目から週に1回のペースで治療していきました。治療開始3週間目からステロイドの薬が減り、悩まされていた目の痛みや頭痛も治まってきた。 治療開始3か月目よりステロイドの服用もなくなり、体調も落ち着いてきた。

症例2
50代 男性
3年ほど前に右目の痛みと充血が出て眼科を受診したところぶどう膜炎と診断されて、原因は特定されなかった。その時は、眼科で処方された薬で痛みや充血は良くなったが、それ以降1~3カ月おきに右目に炎症がおきる。だんだんと薬の効果も軽減してきて痛みと充血が長く続くようになってしまったため当院を受診された。ぶどう膜炎の他にストレスで耳鳴りが起きたり、生活習慣病による高血圧症も患っていた。

当院の治療
問診を行っていったところ、夜勤などの勤務もあり生活のリズムがバラバラで睡眠の質も低下していた。寝つきも悪く、自律神経の状態を計測したところ交感神経の活動がとても高い状態で疲れがあまり抜けないとのことでした。
まず自律神経の状態を整えて首肩の筋緊張を緩めてから、右目を中心に鍼通電療法を行っていきました。

治療経過
最初の施術後、痛みは半分ほどに軽減されたが、充血は変わらず起きていました。それから5回程治療を重ねて痛みと充血は抑えられていきました。
ご本人もお仕事で忙しく、その後一か月後にまた来院され、また以前ほどではないが痛みと充血が起きていました。今度は3回程の施術で痛みと充血は治まっていきました。その後、体のメンテナンスも兼ねて定期的(2~4週間に1回程)に鍼灸施術を受けられていますが、ぶどう膜炎再発はしていません。

症例3
40代 女性
35歳の頃に目の痛みが強く出た。その時は単なる目の使い過ぎで痛くなったと思い、痛みに耐えながら生活して2日後には痛みが治まったがまた1か月後に前回の目の痛みよりも強い痛みを感じた。その時は目の痛みばかりではなく頭痛や首の痛みも感じたため、眼科を受診した。眼科では、ぶどう膜炎と診断された。その際にステロイド剤が入っている点眼薬を処方されて点眼すると目の痛みは治まった。
しかし、また目の痛みが1~2か月後に起こり、ステロイド剤の目薬を点眼して症状を抑えるような状態が続いていた。ステロイド剤を使っていると目の眼圧も高くなってきており。眼圧が左右20mmHg程にもなってしまった。これからも目薬を使って眼圧が高くなるのがこわいとのことで鍼灸治療をご希望された。

治療
首肩の筋の緊張も強く出ておりいましたので、まずうつ伏せ施術で首肩の筋緊張をとってから、仰向けとなり目の周りや腹部・手足の経穴を用いて施術していきました。

◇1回目◇
治療後、目の痛みはやや軽減。VAS6

◇2回目◇
1回目の治療後から3日ほどたって痛みが強く出たのステロイドの目薬を点眼。

◇3回目◇
前回治療後のVAS3。

◇4回目◇
目の痛み落ち着く。これまでは3~4日のペースで施術を受けられていたが1周に1度ほどに変更

◇5回目◇
たまに違和感程度の痛みを感じることもあるが落ち着いている。目薬もしていない

◇6~10回目◇
たまに痛み出るがすぐに落ち着いてくる状態を続けていたが、10回目終えるとそれもなく快適に過ごせているとのこと

◇11回目以降◇
予防・再発防止のため3~4週間に1回程のペースで施術を受けられている。

 

 

症例4

40代 女性

数年前からぶどう膜炎を発症。発症するたびにステロイドの点眼剤で治めてきた。ぶどう膜炎の症状はまぶしさや視界の濁りはなく、炎症初期は痛みが強く視力も低下するが、炎症が治まると症状も回復する。

当院にご来院される1か月前からぶどう膜炎が再発。普段は2~3週間で炎症が治まることが多いが今回は症状が長引いている。左目のみ発症。まだ痛みと赤みが少し残っていて視界不良。

子育て等の疲れや睡眠不足、首肩の筋緊張も強くそれらも影響しているかもとご本人は考えている。

施術

目の症状のほかにもめまいや不眠等の自律神経症状もあったことから自律神経測定器で自律神経の状態を測定したのちに鍼灸施術を行っていきました。

うつ伏せで首肩の筋緊張の緩和・背部兪穴なども用いて肝や腎の状態を治していき、次に仰向けとなり目の周りを中心に施術を行っていきました。

鍼のみでのお身体の反応も良く今回は電気鍼治療は使わずに行っていきました。治療のペースは5回ほどは週に一回ほどのペースで6回目以降2~3集会のペースで行い、計9回施術を行いました。

経過

2回の治療の後、眼科で炎症の状態を診たところ、炎症のレベルが下がってステロイドの強さがワンランク下がったとのこと。施術5回目くらいまでは左目の痛みは何となく出ていて症状にも波があったがそれ以降は段々と痛みも落ち着いてきた。

施術8回目の後眼科を受診。炎症はほぼ消失しており、ステロイド点眼治療も今残っている薬で終了しても良いとのこと。

 

ぶどう膜炎とは

ぶどう膜とはぶどう膜の一部または全体が炎症を起こす疾患です
ぶどう膜は血管に富む組織であり、炎症が起こりやすく、特に全身的な炎症の一部分として発症することがあります。眼球の外壁は外側から角膜・ぶどう膜・網膜という3層の膜からなります。ぶどう膜は虹彩・毛様体・脈絡膜の3つの部分に分けられます。
虹彩は角膜を通して日本人ではふつう茶褐色に見える部分です。その色には人種差があり、白色人種はメラニン色素が少ないので青色に見えます。虹彩の中央には瞳孔があり、目に入る光の量を調整しています。

 

ぶどう膜炎の主な症状

 

毛様体はぶどう膜の前方部分である虹彩と後方部分である脈絡膜との間にあってチン小帯で水晶体をつり下げています。毛様体は房水を生産して角膜と水晶体を栄養しています。また毛様体筋という筋肉があり、この働きによって水晶体の厚さがかわることで網膜にはっきりした像が結ばれます。

脈絡膜は強膜の内側に接しており、メラニン色素が多いために黒く見えて虹彩とともに瞳孔以外からの余分な光線が眼球内に入らないようにする役目を果たしています。また脈絡膜には血管が豊富で眼球内特に網膜外層に栄養を補給しています。
最もよく現れる症状としては、霞みがかったように見えたり、明るい光に対して過敏になったりします。その他視力低下眼痛眼の充血飛蚊症などの症状もみられます。片眼もしくは両眼に症状が現れます。または両眼交互に症状が現れることもあります。

ぶどう膜炎の初期症状は軽度のものから重いものまでさまざまで、眼が急速に障害されることもあります。黄斑部の腫れ緑内障白内障といった合併症が長期間にわたって続き、視力を低下させることもあります。

 

 

ぶどう膜炎の原因

 

ぶどう膜炎の原因はさまざまで、眼そのものに原因がある場合もあれば、全身性の疾患が原因の場合もあります。日本で多いぶどう膜炎はベーチェット病・サルコイドーシス・原田病によるぶどう膜炎です。
この三大ぶどう膜炎のほかにも、膠原病関節炎腸疾患皮膚疾患脳神経疾患耳鼻科疾患糖尿病・あるいは血液疾患や悪性腫瘍などがぶどう膜炎の原因になっていることもあります。原因不明のぶどう膜炎も多く、その割合は30~50%と言われています。原因不明のぶどう膜炎は特発性ぶどう膜炎と呼ばれています。

 

ⅰ)ベーチェット病
ベーチェット病はぶどう膜炎、口内炎、陰部潰瘍、皮膚の赤いしこりなどが主な症状です。そのほか関節炎、消化管症状、神経症状、血管炎を起こします。
ぶどう膜炎は再発性で両眼性であることが多いです。長期間におよぶ発作の寛解と再燃を繰り返して、様々な症状は一度に出てくるわけではなく、長い年月をかけて症状がそろい初めてベーチェット病と診断される場合も少なくありません。原因は分かっていません。

 

ⅱ)サルコイドーシス
サルコイドーシスは全身性の疾患であり、全身に肉芽腫(炎症を起こした後に治癒の過程でできる塊)ができる病気で慢性的なものです。眼の病変として両眼に慢性結節性ぶどう膜炎を生じます。ぶどう膜炎以外に皮膚や肺、リンパ節、心臓などにも病変を起こすこともあります。原因は分かっていません。

 

ⅲ)原田病
メラニン細胞を標的とする自己免疫疾患と考えられています。両眼に急激で高度の視力障害が起こります。虹彩毛様体炎、脈絡膜炎のほか全身症状が生じます。初期には頭痛耳鳴りめまいなどを伴うことがあります。発病から1~2ヵ月後には皮膚や頭髪の色素脱失が現れます。

 

ⅳ)交感性眼炎
一眼に窄孔性の外傷を受け、ぶどう膜が損傷されると1~2ヵ月後に両眼に強い虹彩毛様体・脈絡膜炎が起こります。外傷を受けた眼の炎症が増悪するのと同時に健康な眼にもぶどう膜炎が起こって高度の視力障害を起こします。

 

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好医院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院

タナ障害の鍼灸治療

水曜日, 8月 18th, 2021

タナ障害に対する東洋医学的考え方

東洋医学では筋肉や関節などに痛みや痺れを起こす病症のことを「塞がって通じなくなる」と痛みを引き起こすとして痺証(ひしょう:滞っている状態)として考えます。

何らかの原因で局部の気血の流れが滞って通じないことから生じたもので、その人の体質や老化、ストレスなどによる身体の調節機能の衰え、臓器、臓腑の障害や生活習慣の乱れなどの内因により引き起こされるものを根本的な原因とし、それに乗じて外邪(風邪、寒邪、湿邪、熱邪など)が侵入すると気血の流れを滞らせると考えられています。

膝関節には肝、脾、腎の3つの経絡が通ります。この3つの経絡がこれらの原因により流れが停滞することにより痛みを生じると考えられています。

 

タナ障害に対する当院での鍼灸治療

腰や臀部の筋肉の緊張が膝の筋肉のバランスの崩れや緊張に繋がる可能性がありますのでうつ伏せで腰、臀部、大腿後面、下肢にかけて施術を行い身体の連動性を整えていきます。

タナ障害の腰部への鍼灸治療

 

その後仰向けで大腿四頭筋、前脛骨筋などの膝関節を構成する筋肉のツボに鍼やお灸で刺激を与え、筋肉の過緊張を緩和し膝関節のバランスを整え、関節部のタナの挟み込みを軽減させ関節の動きを円滑にすることや、血液循環を促進し炎症を抑える治療を行います。

タナ障害の下肢への鍼灸治療

東洋医学的観点から膝関節部に関係する経絡の気血の流れを整えるツボも取り入れていきます。特に五臓六腑の『肝』『腎』『脾』のツボを積極に用いていきます。

 

 

また、急性期の場合アイシングや炎症を緩和させるため患部にお灸を施すことで消炎、鎮痛作用を促します。

回復期では、マッサージやストレッチ等も用いて凝り固まっている筋肉の可動域を出してひざへの負担を軽減させていきます。大腿部や下腿の筋肉の過緊張はひざ関節の負担がかかり、また大腿部の筋力不足もひざ関節の負担へとつながってしまうのです。

 

症例

30代 男性

ランニングが趣味で月に100キロ以上ランニングをしていた。フルマラソンに挑戦しようとここ2週間ほど距離を伸ばして練習していたところひざ内側に痛みが出るようになってしまった。

最初は走って30分ほどで痛みが出てくるだけだったが段々と走り出してすぐ痛みが出るようになってしまって整形外科を受診したところタナ障害の疑いを診断されて保存療法を勧められた。

湿布薬と安静にと言われただけで他に治療法はないかと鍼灸治療に興味をもってご来院された。

 

治療

2か月後にフルマラソンに出場を何とでもしたいとのことでそれを目指して施術を行っていきました。
主に膝内側の鎮痛作用を目的に施術を行っていき、腰部やハムストリングスあたりにも筋緊張がみられたのでそれらの筋緊張の緩和を目的に施術を行っていきました。

3週間はランニング練習も控えていただいて治療に専念していただきました。その間にひざ内側の痛みと腫れはほぼなくなり少しずつトレーニングを再開。スクワットやランジ運動などで大腿部の筋トレを行っていただき膝部への負担をなるべく避けられるようなトレーニングをして、ランニングを再開していきました。

治療のペースは約1週間に1回程度で行い、もし痛みが出た場合はトレーニングを中断、アイシングと下肢のストレッチを欠かさずに行っていただきました。

フルマラソンは最後の方に痛みが出たものの目標であるタイムもきって走りきることができたとのことでした。

タナ障害とは

 

スポーツなどによるジャンプ動作や膝の使い過ぎで、膝の皿(膝蓋骨)の内側に引っ張られる感覚を覚え膝を動かすと痛みが出ることがあります。膝関節の構造は、太ももの骨である「大腿骨(だいたいこつ)」とスネの骨の「脛骨(けいこつ)」と膝のお皿の骨の「膝蓋骨(しつがいこつ)」で構成されています。

この大腿骨と脛骨の間には半月板というクッションの役割をする軟骨の板があります。膝関節は、外側から関節包(かんせつほう)滑膜(かつまく)という2つの膜に包まれて保護されておりこの膜の中には滑液(かつえき)という液体で満たされています。

この滑液が満たされている空間のことを「関節腔(かんせつこう)」といいます。その滑膜の大体中央部分(大腿骨と脛骨の中間)に「滑膜ヒダ」があります。この滑膜ヒダは関節鏡で見るとちょうど物を乗せる棚のように見えることから「タナ」と呼ばれています。

このタナは母体の中にいる胎児期には全ての人にあり、発達する過程で通常退化していきますが生後も正常な日本人の約半数が残存しているといわれています。

タナ障害とはこのタナの部分が膝に慢性的に負担をかけることで肥厚したり硬くなることで膝蓋骨と大腿骨に挟み込まれて摩擦が起きたり、強く刺激を受けることで傷つき炎症を起こす疾患です。

タナ障害は男性よりも女性に多く見られ、10代から20代に多く見られる障害になります。

タナ障害の症状

 

タナ障害の原因

 

タナ障害は膝の屈曲やジャンプ動作を伴うスポーツ種目によく見られます。

例えばバレーボール、バスケットボール、サッカー、テニス、山登り、陸上競技などが挙げられます。また、体質的にタナに厚みがあったり大きかったりする人の場合、膝を酷使した状態で膝を強打したりすると発症しやすくなります。

特に大腿の筋肉が疲労していることが原因でタナへの負担が強くなり発症することが多いといわれています。スポーツを行っていない人でも、仕事や日常の動作で膝関節を酷使することも原因となります。

 

 

タナ障害の症状

 

・膝の屈曲時に引っかかる感じがする

・通常時膝の内側を押すと痛い

・膝蓋骨周辺が痛む

・膝崩れ

・膝を動かした際にコキッ、パキンといった音がする

・膝の曲げ伸ばしに制限がある

・膝が腫れる

 

などが挙げられます。軽度のまま炎症が引いていけば問題はないのですが、悪化すると膝に水が溜まったり日常生活に支障をきたすほどの痛みに発展するため、適切な治療が必要となります。

 

※タナ障害の簡単な検査法としては膝の内側に手の指を当て膝を曲げ伸ばしするとクリック音(ポキポキ、コキッ、コキッ)のような症状が触知された場合陽性の可能性があります。

 

 

西洋医学的治療

X線関節造影(レントゲン)やMRI検査、関節鏡検査などにより診断されます。

局所安静、運動量を少なくすることや、消炎鎮痛剤内服、外用薬、超音波や温熱療法などの物理療法などにて保存的に治療を行います。

急性期の炎症が見られる場合にはアイスパックで冷やすなどの物理療法を行います。また、膝関節の柔軟性を高めるための大腿四頭筋(大腿前面の筋肉)やハムストリングス(大腿後面の筋肉)のストレッチ筋力トレーニングを主体とした理学療法を行います。痛みが強い場合、関節内にステロイド投与を行うこともあります。

 

一般的に予後は良好ですが、このような保存的治療でも疼痛が残存し日常生活に支障をきたす場合には滑膜ヒダ(タナ)を摘出する手術療法が考慮されます。

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好医院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院

2021年 夏季休暇のお知らせ

月曜日, 7月 26th, 2021

平素はひとかたならぬご厚情にあずかり、心から御礼申し上げます。

誠に勝手ながら、当院では下記の期間を夏季休業とさせて頂きます。

8月10日(火)~8月13日(金)
8月14日(土)より通常営業となります。※石島は15日(日)からの出勤

夏季休業中はご不便をお掛け致しますが、何卒ご寛容くださいます様お願い申し上げます。

なお、休業期間中にいただいたお問い合わせにつきましては、休業期間終了後に順次ご返信致します。

加齢性黄斑変性症の鍼灸治療

火曜日, 7月 20th, 2021

①黄斑変性症に対する当院の施術

当院の黄斑変性症に対する施術は、目周辺のツボにハリやお灸を施して必要とであるならば微電流も流すことにより黄斑組織の細胞の再生を促進します。

黄斑変性症に対する電気鍼治療2

乾燥型黄斑変性症の場合、網膜の血流量の減少が原因と考えられるため、目の周囲に積極的施術を致しますが、新生血管のできてしまう滲出型黄斑変性症の場合は新生血管が破裂してしまう可能性があるため、目周囲の施術は積極的には行いません。

その場合、東洋医学特有の全身を診て施術することで症状軽減をはかります。また、視界や視力の障害は、体にとってかなりストレスとなります。

黄斑変性症に対する頸部への刺鍼

 

当院では自律神経測定器を用いて自律神経の状態を確認した上で施術致します。多くの場合、交感神経の活動を抑えてリラックス神経である副交感神経の活動を高めていきます。
目の症状はもちろんのこと全体の体調もよくなっていくことが期待できます。

 

加齢性黄斑変性症の鍼灸治療

 

②黄斑変性症の東洋医学的考え

中医学では五臓六腑の肝は目に開竅するといわれており、眼の疾患は肝の機能の障害が深く影響していると考えられています。

肝血が不足してしまうと視覚の異常や運動系の異常などがみられます。
また中医学では肝腎同源といわれており、肝血と腎精は互いに補い合っています。加齢により腎精が減少して肝血にも影響を与えると考えられます。それは黄斑変性症を引き起こす原因にもなります。

よって肝と腎の異常が黄斑変性症の主な原因と東洋医学では考えられています。

 

③加齢性黄斑変性症の鍼灸治療症例

 

60代 女性

視力が徐々に悪くなり、気になっていたので眼科を受診したところ右目の加齢性黄斑変性症と診断された。両眼だけで見ると気づかなかったが右目の片目だけで物を診ると中心が黒く見える中心暗点の症状が出ていた。病院では、特に治療法が無いとのことでどうにかしてこの症状を少しでも改善した、これより症状を悪化させたくないとのことで当院にご来院された。
治療開始前、左目の視力0.6・右目の視力0.3

 

当院の治療
自律神経の状態と頸部の筋肉の緊張を緩和して目まわりの通電気療法やお灸療法を施していきました。治療開始前の計測では自律神経の状態は交感神経の活動が高く、自律神経の乱れがみられました。治療開始2か月程は週に2回ほどの治療間隔のペースでその後は、週に1回程の治療間隔で施術していきました。

 

◇1か月後◇
治療開始から1か月程は頸部の筋緊張の緩和・自律神経のバランスの改善などは見られたが、視力と中心暗点の改善は見られなかった

◇2か月後◇
2か月程経ったとき眼科を受診したところ、視力が左目0.7右目0.5に回復。視野の中心も薄くもやがかかっているような感じで以前よりは見えやすくなったとのこと。普段、左目ばかり使っており、左目の疲れが出ていたため左目もしっかりと刺激をしていきました。

◇3か月後◇
依然として目の調子は良い。視力と中心暗点は1か月前の計測と変わらない

◇6か月後◇
治療開始から6カ月ほどになった頃、視力が左目0.7右目0.6に回復。中心暗点も家事などをやる時やパソコン・スマホをみる時などには全然気にならない

◇1年後◇
症状は進行せずに良い状態をキープし続けている。

 

 

④黄斑変性症とは

 

黄斑変性症の主な症状

黄斑変性症とは目の網膜の中心部にある物を見ることにとって重要な黄斑部分に障害が生じて、見ようとするものがゆがんだり、中心部がぼやけてしまい、視界が狭くなる疾患です。

両方の目でみるとあまり気にならないこともあり、片方の目で見たときに初めて症状に気がつくということもあります。症状の悪化とともにゆがみが強くなり、眼底出血などによって視力低下中心暗点がみられ、失明に至る場合もあります。

症状が徐々に進行していく場合もありますが、新生血管が出血した場合は急激な視力低下を伴う場合もあります。

黄斑変性症の症状は、50歳を過ぎたころから見られて60歳~70歳が最も多い目の疾患です。いままで何も病気がかかったことがなく、視力もよかった人が突然発症したケースが多くみられます。黄斑変性症は男性の発生率が高くて女性の3倍もあると言われています。

 

また、遺伝的背景もあると考えられています。黄斑変性症では、双子で発症しやすかったり、家族にその既往歴があると疾患にかかりやすいという報告もあります。

しかし、家族に既往歴があるからと言ってすべての人が罹ってしまうというわけではなく、遺伝的要因・老化的要因・環境的要因などが合わさって発症してしまうと考えられています。

 

最近では黄斑変性症特有の遺伝子の変異が見つかったという研究があり、黄斑変性症にかかりやすい人とかかりにくいひととの遺伝子の違いが明らかになってきました。

加齢性黄斑変性症

 

 

●加齢性黄斑変性になりやすい人の特徴
加齢性黄斑変性症の根本となる原因は今だわかっていませんが、高齢になればなるほど発症リスクが高まることから黄斑部の老化現象が一つの原因だと考えられています。日本人の場合、脈絡膜から発生する新生血管という血管が原因で加齢性黄斑黄斑変性症を発症する方が多い事が分かっています。

この新生血管は今まであった血管が詰まっていて流れが悪くなったり、血流そのものの流れが悪くなってそれを補おうとして新生血管ができると考えられています。

その新生血管が隆起して物が歪んで見えたり、新生血管は非常に繊細で破れやすいので新生血管が破れてしまうことで出血してしまい中心暗点や視力低下が起こってしまうのです。

これを踏まえると目に負担のかかる生活をしている人や全体的な血流を阻害するような生活を送ってしまっている人が加齢性黄斑変性症にかかりやすい人と言えます。

 

具体的には
・喫煙習慣がある人
・長時間のパソコンやスマホ画面を見ている人
・食生活が乱れていて肥満の人
・室外に出ている時間が長い人

 

このような人が挙げられます。喫煙は血管を収縮させて身体全体の血流を悪化させます。特に目の血管は細く影響を多く受けやすいです。

それにストレスなどの自律神経の乱れなどが加わると加齢性黄斑変性症にかかってしまうリスクは増大します。食生活が乱れ、肥満気味の人も血液がドロドロとなり血管が詰まりやすくなり、血管の細い眼にはすぐに影響が出る可能性があります。

室外に多く出て紫外線を目に受けると目の硝子体や水晶体に活性酸素が出来てしまい血流を阻害する原因にもなります。特に紫外線の強い日はサングラスや紫外線カットのメガネをかけるなどを対策をすると良いです。

加齢性黄斑変性症は日本で視覚障碍者手帳の交付原因疾患の第4位にあたります。高齢となり視力低下や視界の中心が見えない状態ですと、日常生活にも多大な影響を与えてしまいますので思い当たる方は今からでも対策をしていきましょう。

 

 

⑤黄斑変性症とiPS細胞

滲出型黄斑変性症に対するiPS細胞の移植手術が行われ、その経過が注目されています。黄斑変性症は、黄斑部に変性が起こり機能しなくなる疾患であるため、患者本人の皮膚細胞からiPS細胞を作製し、網膜の黄斑部に移植します。

もうすでに移植手術は実施されており、被験者の方は退院されています。しかし、移植手術から約1年は経過観察が必要であり、今後の術後経過の情報が待たれるところです。

この移植手術が成功し、視野や視力が回復すると多くの方の助けとなり、様々な難病にも応用されていくことになるでしょう。

患者本人の皮膚細胞から多分化能をもったiPS細胞を作製し、それをRPE細胞に分化させシート状にして網膜の黄斑部に移植します。

 

⑥加齢黄斑変性症の予防効果の可能性のある食品

アメリカの国立衛生研究所NIHの研究でルテインゼアキサンチンは加齢黄斑変性症に重要な予防効果がある可能性が示唆されています。

この二つの物質は生体内では合成されないため、サプリメント野菜・果物から摂取する必要があります。

網膜の黄斑部は、ものを見るのにとても重要な目の部分です。ものを見るためには90%ほどこの黄斑部の機能によるものと言われており視機能の大半を占めています。黄斑部の中央部にはゼアキサンチンが多く存在して黄斑部の周辺にはルテインが多く存在しています。

これらのルテインやゼアキサンチンの黄色の色素であるカロテノイドは、ブルーライトを吸収して網膜黄斑部を守ってくれます。パソコンやスマートフォンの画面から出るブルーライトは、網膜を障害することが報告されており、眼の表面ばかりでなく黄斑部にも影響が出てしまう危険性があるのです。

さらにカロテノイドは抗酸化作用が強く、活性酸素を排除することで黄斑部をしっかりと保護してくれます。

ルテインは、パセリ・ほうれん草・ブロッコリーなどに多く含まれており、ゼアキサンチンは生のパブリカや生のほうれん草に多く含まれています。

それらの食品をなかなか食べる機会が少ない方は、サプリメントでも代用できます。

近視の鍼灸治療

水曜日, 6月 30th, 2021

近視に対する当院の鍼灸治療

当院の近視に対する施術は、第一に目の周辺の経穴にハリや電子温灸器を用いて刺激することで目の血行状態をよくします。仮性近視はピントを合わせる役割のある毛様体筋という筋肉が目の使い過ぎにより血流が滞り、うまく機能していない場合がほとんどです。

 

近視のはり灸治療

毛様体筋は自律神経によっても支配されており、自律神経の乱れがある場合は、うまく目のピントを合わせられません。そこで当院では自律神経測定器を用いることで自律神経の状態を把握し、その結果に応じて施術法を変えていきます。
また近視は五臓六腑の肝に深く関係しているので肝に関する経穴を用いて肝血を補って肝陽の抑制などを行います。肝血は脾の機能の影響を受けるので脾の経穴も用いたりします。また東洋医学の診断方法に基づき、全身のバランスを整えます。全身を診て施術することは東洋医学の重要な特徴の一つです。

近視の鍼灸治療

当院の施術により視力が回復された方も多くいらっしゃいますので、お気軽にご相談ください。

 

近視についての東洋医学的考え

中医学では五臓六腑の肝は目に開竅するといわれており、眼の疾患は肝機能の障害が深く影響していると考えられています。肝血が不足してしまうと視覚の異常や運動系の異常などがみられます。また肝は精神情緒の安定、自律神経系を介した機能調節もおこなっており、精神的ストレスは肝気を滞らせて巡りを阻害します。

そのため眼の障害を引き起こします。五臓六腑でいう肝と脾には「」に関して密接な関連性があります。それは脾には栄養物質や水分を吸収して、「」、「血」などを生成して全身に輸送する機能があります。よって脾の機能が低下してしまうと肝血も不足してしまいます。近視を引き起こす原因になります。

 

 

近視の鍼灸治療症例

20代 女性
中学生までは視力は1.2で視力は良かったが、高校生になり視力が著しく低下し0.5程になってしまった。高校生になり、薄暗い場所で読書や勉強を長時間するよになり、それが原因で視力が低下してしまったかもとのこと。社会人となり、パソコンを主に使う仕事についてさらに視力が低下して、色までもぼやけて見えるよになり色覚も低下してきたしまい心配となって当院にご来院されました。

当院の治療
ピントを合わせる能力や色覚の異常も自律神経の乱れが原因の可能性があるので時間をかけて問診をした後、自律神経測定機を用いて自律神経の状態を計測しました。
自律神経を測定した結果、交感神経の活動が非常に高く、精神的ストレスの数値も高い状態でした。問診した結果、仕事上での人間関係でストレスを感じており、体が疲れてくる夕方や人間関係でのストレスを感じた際に目の調子も悪くなるとのことでした。

①自律神経調整治療
②首肩の筋緊張の緩和
③目の周りの筋緊張の緩和・血流改善
問診・検査結果よりこの3点を重点的に施術していきました。

治療経過
◇1回目◇
治療後目の調子はあまり変化が見られなかったが、首肩が軽くなり体が楽になったとのこと。

◇2回目◇
夕方いつも感じていた目の疲れ・かすみ目が少なくなってきた。

◇3~5回目◇
普段裸眼で見えにくかったが道路の標識がしっかりと見えるようになってきた。

◇6回目◇
仕事が忙しく、残業する日が増えて目のかすみを少し感じた。

◇7回目◇
前回治療後、目のかすみがとれて目が楽になった。

◇8回目◇
物の色がくっきりと見えるようになってきた。

◇9回目◇
会社の定期検診で視力を計測したところ、0.9となっていて前回計測(0.5)よりも改善が見られた。

 

 

 

近視に対する鍼灸治療効果の臨床研究について

明治鍼灸大学では、若年性の近視に対して鍼灸治療がどの程度の効果があったかの研究が行われています。

「若年近視に対する鍼治療の効果」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/49/4/49_4_567/_article/-char/ja/

この研究では視力低下を訴えている13~25歳の200名の患者に足して2年間鍼治療を行っています。治療後では視力が平均右目0.33の改善、左目では0.31の改善が見られたとのことです。この研究では、基本的な目の周りのツボに鍼を刺してまた目に効果的とされる手の合谷というツボを持ちています。また、効果があまり芳しくない方に対しては目の周りの鍼通電治療も用いて施術したとされています。

この治療法は、当院でも用いている治療法です。当院ではその他首肩背中の施術や自律神経も整える全身のバランス調整施術も行っていきます。

 

 

近視とは

目の屈折異常のひとつで、目が調節を休ませたときに眼球内に入ってきた平行光線が網膜の前方に像を結ぶ状態をいいます。
近視になりますと近くはよく見えますが、遠くがぼやけたりして症状が強く出ると視力障害を引き起こします。現在近視は増加傾向にあり、小中学校でも近視の割合は徐々に高まっています

 

 

近視の原因

■近視は主に3つの種類があります。

 

ⅰ)屈折性近視
人の目はカメラと似たような構造をしていて、カメラのレンズが水晶体、フィルムが網膜に相当しています。人はピントを合わせる場合は眼球を伸ばしたり縮めたりすることは出来ないので、水晶体を膨らませたり、薄くしたりすることで網膜にピントを合わせようとします。
しかし、屈折性近視の場合は、角膜や水晶体の屈折力が強いので網膜よりもまえに焦点を結んでしまいます。

ⅱ)軸性近視
生まれた時は眼球も小さいので物を見ても焦点は網膜の後ろにいってしまいます。これを遠視といいます。成長するにつれてだんだん眼球も大きくなり大部分の人は調節しなくてもピントが合う状態(正視)になって、眼球の成長はとまります。
しかし何らかの原因で成長が止まらずに眼球が大きくなると焦点が網膜の前になってしまいます。そのことが近視の原因になります。軸性近視は眼球が通常よりも前後が長いために起こります。

ⅲ)仮性近視
目の疲労により一時的に近視のような状態になることを仮性近視といいます。テレビやパソコンなどで目を酷使した後は症状が強くなり、目を休めたり遠くをみたりすると症状が弱くなることが特徴です。
テレビやパソコンなど近くで作業を長時間行いますと、目の調節が緊張したまま近くにピントが合った状態で遠くにピントが戻らない場合があり、一時的に近視の症状になります。

■近視の原因は現在のところまだよくわかっていませんが、有力なものに遺伝説環境説などがあります。

1)遺伝による近視説
親が近視の場合に子供が近視になる可能性は比較的高く、遺伝的な要素が近視に複雑に関係すると考えられます。近視の発生率の民族間の違いが近視に遺伝が関係していることの証拠として挙げられています。
近視の遺伝説では何歳の時に近視になり始めて何歳までにどこまで進行するかが生まれつき決まっていると考えられます。近視はほとんどの場合に青年期までに徐々に症状が進行して成人なると症状は進行しません。

2)環境による近視説
統計的に長時間の勉強やパソコなどをする人に近視が多い傾向や途上国の農村部の人たちなど普段あまり長時間勉強やパソコンをする機会が少ない人に近視が少ないといわれています。そのことが近視の環境説の証拠として挙げられます。

3)栄養による近視説
幼年期の炭水化物の取りすぎが慢性の高インスリン血症を引き起こしてそれが近視の原因となる説があります。

 

 

近視にならないために

近視の原因は様々な説が挙げられています。もし遺伝と関係している場合は、予防は難しいと考えられます。しかし、近年のパソコンやスマホなど近くの物を見ることが増えた現代では、目の使い過ぎが原因の近視が増えていると感じます。近年は、子供でもスマートフォンをもっていて視力低下が著しい状態です。

近くの物を見るということは、ピント調節の毛様体筋が使われて長時間に及んでしまうと疲れが溜まってきます。そのようなことが続いてしまうと毛様体筋の働きが鈍くなり、ピントを合わせることが困難となってきます。
大人になってから視力を回復することは、とても苦労しますし、視力が良くならず逆にどんどん低下していってしまう方も少なくありません。
幼少期や20歳前までの環境がとても重要となってきます。

 

・スマホは30分以上続けてみないようにする。
・パソコンも60分以上続けてみない。
・勉強などの合間の休憩に5m先の物にピントを合わせて毛様体筋を休ませるようにする。
・目を酷使した時は、就寝前に目の周りに蒸れタオルをかけて温める
・目の周りを軽くマッサージして血行を促進させる
こういったことを日頃から気をつけて行ってみてください。近視

子供の近視化を防ぐには

 

近視

現代の日本では、子供の近視がより増えています。それは、統計的にみても明らかになっていて様々な要因が考えられています。

一番は、近くにものを見る時間が長くなっていることにあるかと思います。スマートフォンやゲーム機の普及などでいつでもどこにいてもゲームや動画が見ることができる環境で子供でも眼の酷使が鮮明になっています。人の目の構造上、本来は遠くのものが見えやすくなるようにできています。遠くのものを見ることができた方が身の危険から回避できたり、獲物を捕らえることができるからです。

近くのものを凝視するということは、人の目の構造にとってとても負担になっているのです。

眼の酷使によってピントを合わせる調節筋がうまく機能しなくなってしまったりすることで視力の低下が起きている場合が多いです。

また最近では、外に出て遊ぶ子が減っていることで子供の近視化が進んでしまっているということも言われています。
太陽光に含まれる紫外線は、身体に害があると一般的に思われがちですが、実際は害ばかりではありません。

子供の目にとって紫外線は害ばかりでなくプラスに働いてくれている場合もあるのです。

眼球を覆っている角膜や強膜には膠原繊維が多く存在します。紫外線を浴びることでこの膠原繊維同士が繋がって太く硬くなります。

すると、近視化の原因である眼軸の伸びを防いでくれるのです

眼軸が伸びるというのは、眼球の形が卵型のように楕円形になってしまうこと。すると、光の焦点が網膜よりも前に来てしまうため近視となります。

紫外線を浴びて膠原繊維が硬く繋がることで眼球の周りが強く保たれて卵型に変形してしまうことを防いでくれるわけです。

逆に太陽光を十分に浴びない場合は、眼球が柔らかすぎて眼圧で長く伸びやすくなってしまうのです。

子供の近視化防ぐためにも子供を室内ばかりで遊ばせるのではなく外で遊ばせることも重要のようです。

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院

ドライアイの原因

木曜日, 5月 27th, 2021

パソコンやスマホなどの普及によりドライアイで悩んでいる方が増えています。パソコンなどを夢中で見ていると自然と瞬きの回数は減るということが言われており、すると目の表面を潤すことができなくなって、目の疲れや痛み、ショボショボやゴロゴロなどの違和感を感じるようになります

 

10秒間目を開け続けられますか?

10秒間目を開け続けれれない人は、ドライアイの可能性が非常に高く、開け続けられるまでも目の痛みや違和感を感じたドライアイの可能性がありますので、注意が必要です。

その他、下記の症状が3つ以上当てはまってしまっている場合にドライアイの疑いが強くなります。

□目が乾いた感じがする
□目がゴロゴロする
□目に何となく不快感がする
□まぶしい
□目が疲れる
□物がかすんで見えやすい
□コンタクト・パソコン・エアコンいずれかを使う
□まぶたが重たい感じがする

ドライアイの原因は?

 

ドライアイの原因

ここ最近ドライアイの症状で悩んでおられる方が増えておりますが、私の子供のころなどはドライアイという症状は聞いたことがなかったように記憶してます。やはり最近増えている原因としましてはパソコンやスマホなどの普及が関係していると考えられます。
厚生労働省の2008年の調査では、一日6時間以上パソコンやスマホなどの画像表示端末を使う労働者の多くは身体的な症状を抱えており、その9割もの方が目の疲れや痛みを訴えているとの結果が出ました。

今は、仕事以外にもパソコンやスマホを使う機会が多く、そのような仕事をしていない方でも一日中そういった端末を見ている方も少ありません。
人間の目は、獲物を捕らえるためもしくは身を守るため遠くの方をよく見るように作られていますが、パソコンやスマホでは、より近くのものを注視しており目の周りの筋肉などに相当な負担をかけている状態です。目の周りの筋肉の疲労は、血流を滞らせます。
涙の成分は血液から抽出されますから目の周りの血流障害はドライアイへとつながる可能性があります。

また、人間の目は集中している時、一般的に瞬きの回数が減ってしまいます。例えば、スポーツの場なんかでもそうですが、野球で打者が今から打つと集中している時やサッカーでのPKの時などは自然と瞬きの回数が減ります。
それと同じように集中して仕事ややゲームなどで遊んでいる時はどうしても瞬きの回数は減ってしまいます。それが短時間でしたらそこまで体の症状として出てこないわけですが、長時間続けてしまいますとドライアイばかりでなく眼精疲労飛蚊症眼瞼下垂などの疾患にもつながってしまいます。

また子供の視力低下も年々低下傾向にあります。
2013年度の学校保健統計調査によると、裸眼視力1・0未満の子の割合は、高校で65・8%、中学校で52・8%、小学校で30・5%だという結果でした。一概に原因はわかりませんが、テレビやスマホなどの生活の環境因子が大きなウエートを占めていると考えれています。

 

なぜ瞬きの回数減少でドライアイになるのか。

瞬きの役割をご存知でしょうか?
瞬きの役割としまして

①目の保護・乾燥防止

②網膜などの目の組織への休息時間の提供

③緊張の解消や痛みの感覚、感情などの心理的要因

④涙を作れという脳への指令

主にこの4点が挙げられます。特に注目していただきたいのが④の『涙を作れという脳への指令』です。瞬きの回数が減ると、目の表面の水分が蒸発しやすくなるばかりでなく、涙を作れという脳への指令も減ってしまうのです。ですからまた涙の量が減り、悪循環となってしまいます。

市販でよく涙の成分が入っているドライアイ解消のための目薬が売っていますが、むやみやたらに使用してしまうと自分で涙を作る機能が低下してしまう可能性がありますので注意が必要です。

パソコン環境とドライアイの関係

ドライアイで悩んでいる方の多くは事務作業などで長時間パソコン作業をしている方々です。なぜパソコン画面を見続けるとドライアイになりやすいのかと言いますと

①比較的近い画面を長時間で集中的にみる
上記にもある通り、近くの物を長時間注視し続けると、目のピントを合わせる毛様体筋などの筋肉が疲労します。筋肉が硬くなり、血液の循環が悪くなってしまうとドライアイになってしまいます。また、集中的にみることは人間の本能的に瞬きの回数を減少させます。瞬きの減少は、眼球の表面を乾燥させて傷つきやすくさせます。瞬きは脳へ涙をつくれという指令を送る役割もあり、瞬きが減少することは涙の生産減少にもい繋がってしまうのです。

②ブルーライトや画面の明るさ
ブルーライトはとても強い光で網膜まで達すると言われ、目に負担をかけます。また、画面が明るすぎるのも目に負担をかけ、疲れ目やドライアイになりやすくさせます。

③パソコンを行う姿勢
パソコンを行う時、気づくと背中は丸まって首は前に曲がっているという方も多いかと思います。そういった姿勢は、首などの姿勢を保持する筋肉を緊張させます。それが長時間続くと、首周りの筋肉は硬くなって、その下を通る血管などを圧迫して、首から上の血液循環を阻害します。眼にも悪影響を与えてしまい、疲れ目やドライアイの原因となります。

自分でできるドライアイケア

①パソコンやスマホを長時間使用しない。₁時間に1回は10分ほどの休憩をとる

②パソコンやスマホ使用中に意識的の瞬きや軽く目を閉じる

③画面を40センチ以上離して近くで見過ぎない

④暖かい蒸れタオルで目を温める

⑤目の周囲を軽くマッサージする

ドライアイに効果的な食事

ドライアイに効果的とされる食べ物があります。それはラクトフェリンを含む食材を摂取することとオメガ3系脂肪酸の多く含まれる食材を摂取することです。

ラクトフェリンとは、あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、涙に含まれるたんぱく質の一種であり、ラクトフェリンが含まれるヨーグルトやチーズ・牛乳を食べるとドライアイに効果的とされています。これらの乳製品は、腸内環境を整える食材として知られていますが、目も腸も粘膜に覆われており、腸の粘膜の状態が改善されると目の粘膜の環境も整いやすく、ドライアイの改善に役立ちます。

オメガ3系脂肪酸は、魚類に多く含まれていることが有名です。目の表面を乾かないように保つためには油分も重要です。質のいい魚類のオメガ3系脂肪酸を摂取することでドライアイの防止につながると言われています。

その他、一般的に眼に良いとされる食材、ビタミンCブルーベリーに多く含まれるアントシアニンなど抗酸化物質も摂取するとドライアイの防止になると考えられています。

鍼灸でドライアイを治療する

当院では、ドライアイ鍼灸治療を積極的に行っております。ドライアイでお悩みの方を解消させてきました。ドライアイのほかに眼精疲労や緑内障、飛蚊症、眼瞼下垂などの症状を併発されてご来院される方も多いです。

 

ドライアイのはり灸治療

 

お困りの方はお気軽にご相談ください!

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好医院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院

倦怠感の鍼灸治療

木曜日, 5月 13th, 2021

倦怠感の東洋医学と鍼灸治療

 

東洋医学では倦怠感、疲労感はエネルギーである「」が十分に取り込めない状態や気の流れに乱れがあったり滞りがある状態が続く事で「気虚」の状態となり慢性的な疲労状態が続く要因であると考えられています。

また「気」は血による作用によって機能していて逆に「血」も気の作用によって生成されて全身に循環していると考えられています。

よって「気」と「血」は相互に関係しており、「気」が不足した状態が続くことで「血」が不足する「血虚」を引き起こしより状態の悪い「気血両虚」の状態となります。

よく見られるものとして、貧血の状態の場合に顔色が悪く頭がふらつくなどの血虚の症候と息切れや無力感などの気虚の症状が同時にあらわれることが多いです。気血の他に津液という体を循環しているものがあり、その気・血・津液(水)のバランスが悪くなってしまうと倦怠感は起こりやすいと考えられています。

東洋医学で倦怠感を考える「気血両虚」という気血が少ない場合と、気血の循環が悪くなって滞ってしまって症状が出る場合もあります。気血が滞ってしまっている状態を「気滞血お」といい、まず「気滞」といいまして気が滞ってしまうことで各体の部分で機能停滞などが生じると血管運動神経系にも影響を与えて循環障害が起きてしまうと血も滞ってしまう状態である「血お」になってしまうのです。

「気滞血お」では倦怠感のほかに無月経・月経困難症・消化管潰瘍などの症状も出てくる危険性もあります。

このような状態に対して鍼や灸の刺激を与える事で気、血、津液(水)の巡りを良くしたり足りないところを補っていきます

倦怠感のうつ伏せ鍼灸治療

 

特に気の働きの低下は関わりが深く気を補うようなツボを用いて治療を行います。また、ストレスや疲労、生活習慣の乱れなどから自律神経のバランスが乱れると体の自然治癒力や免疫機能も低下して自律神経を調整するツボなども取り入れながら治療を行っていきます。

 

倦怠感の自律神経調整鍼灸治療

 

倦怠感の下肢へのお灸治療

 

倦怠感が出ている方はタンパク質(肉類)を多めに

タンパク質が欠乏してしまうと、脳のやる気を起こさせるセロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンなどの物質も足りなくなります。
タンパク質が不足することでうつ状態に陥ってしまう危険性もあるほどです。

栄養ある食事を摂ってくださいといいますと近年ではどうしても野菜中心でお肉などの脂肪分などは控える食事を連想される方が多いのではないでしょうか。
しかし、栄養は3大栄養素といわれるタンパク質・脂質・炭水化物をしっかり摂れているということが重要です。

野菜が重要視されすぎていることが多く、偏った人ですと野菜中心の食事でお肉をほぼ食べないという方も多くいらっしゃいます。それを良しとする考えが広まっているのが現実です。

しかし、野菜中心の偏った食事は十分な3大栄養素を身体に取り込むことが難しくなってきます。

特に倦怠感に重要なタンパク質は、大豆類・魚類・牛乳・肉類に多く含まれます。

接種源は人の構成成分に近い方が良いとされているため同じ哺乳動物である牛肉や豚肉を摂った方がタンパク質の補充には適任とされています。

過度な摂取はもちろん脂肪も多くカロリーも高めですので肥満となるリスクが上がり生活習慣病にかかるリスクが増大しますので摂取量は気を付ける必要がありますが、ほとんど取らないことも身体にとっては重要な栄養素を取り込めないため倦怠感が出やすくなってしまうのです。

 

倦怠感の鍼灸治療症例

40代女性
1ヶ月ほど前から寝ても疲れが取れない状態がずっと続いている。睡眠時間も7時間は確保しているが、疲れているはずなのに途中で目が覚めてしまう事があり熟睡できていないと感じる。その代わりに日中の眠気が強く、頭がぼーっとして常に体が重だるい。基本的にデスクワークでパソコンを使う業務が多く首肩こりが慢性的にある。

当院での治療
自律神経測定器で計測を行ったところ、副交感神経が過亢進状態で血管年齢も実年齢より10歳ほど高めに出ており、肉体的ストレスと疲労度が非常に高い状態でした。
そのため、自律神経の乱れを整えるツボや、東洋医学的観点から気、血、水の巡りや気を補うようなツボを用いて治療を行いました。
また、首肩、背部の筋緊張を除き血液循環を促進し疲労物質の代謝を促す治療を行いました。

一回目
特に変化感じないが、体が温まった感じがした。

二回目
睡眠の質が少し向上した気がするが、2日に一回は途中で目が覚めてしまう。
倦怠感はまだ変化ない。肩こりが少し軽減した。

三回目
施術後2、3日は日中比較的体も頭がスッキリした感覚があった。徐々に戻ってしまったが、それでも最初よりは若干調子が良い。睡眠はたまに目が覚める時はあるがその後の寝つきは良い。

四回目
倦怠感が午前中はあるが、午後は比較的楽に感じる。眠気も昼食後や長時間のパソコン作業の際は感じるが、それ以外はあまり気にならなくなった。睡眠は寝つき、寝起きは楽になったが、途中で目が覚めることがまだ時々ある。

五回目
最近は仕事が忙しく肩こりが酷い。倦怠感は午前中に感じやすいが、以前ほどではない。
睡眠は途中で目が覚めたのは週に一回だけだった。

六回目
肩こりが楽になり首がまわるようになってきた。日によって差はあるが頭のぼーっとした感じと眠気が軽減してきた。
倦怠感は以前の半分くらいに感じる。

七回目
仕事後は肩こり感じるが翌日まで持ち越さなくなってきた。午前中も比較的元気な状態が続いている。睡眠も週に1、2回は目が覚めることがあるがその後の寝つきはよく熟睡できている。

八回目
仕事が忙しかった翌日は倦怠感を感じることもあるが、それ以外はあまり気にならなくなってきた。午前と午後の差もほぼ無くなり体が軽くなってきた。

九回目
肩こりが楽になった。睡眠も最近は目が覚めることなく熟睡できている。倦怠感は寝起きに感じる時もあるが、動いているうちに楽になるため日常生活に支障をきたすほどでは無くなった。

倦怠感とは

 

何となく体がだるい・倦怠感が続いている・疲れがなかなか取れないそのような症状に悩まされる方は少なくありません。
その原因は、様々で単純な身体の疲労から重篤な疾患のサインの場合もあります。倦怠感やだるさを単なる疲労と受け取って放っておくと思わぬ体の危険が迫っていることもあるので注意が必要です。

 

倦怠感を伴う疾患

・貧血
女性に多いのが貧血による倦怠感です。中でも特に多く見られる「鉄欠乏性貧血」では体内の鉄分が不足して体が酸欠状態になりだるさや倦怠感が生じます。

・インフルエンザ
体の中に入ってきたウイルスを攻撃しようと免疫機能が活発になり発熱や倦怠感、だるさが引き起こされます。

・肝機能障害
肝機能の症状の中では黄疸や眼球が黄色くなる症状というものが出てきます。それ以外の症状として体のだるさや脱力感、過度の眠気、微熱、不眠といった症状が現れる事があります。また、急性肝炎の初期症状は風邪と間違えられやすく酷い倦怠感が突然生じて頭痛や発熱、腹痛や吐き気などの症状も現れます。こうした症状がおさまる頃に黄疸(おうだん)が出始め皮膚や白目が黄色くなります。重症化を防ぐために早い段階で病院の受診が必要です。

・甲状腺機能低下症
情勢に多く見られる病気です。全身の代謝に関わる甲状腺ホルモンの分泌が低下して倦怠感や疲労感、体重の増加、むくみ、便秘など様々な症状が現れます。

・糖尿病
糖尿病などで血糖値が高い場合でも倦怠感の症状が現れる場合があります。

・心不全
動悸や息切れ、呼吸困難やむくみと言った症状が出てきます。初期症状としては坂道を歩いたときの息切れなどですが、進行が進むにつれ普通の道を歩いていても息切れや動悸の症状が出てきたり、夜に息苦しさや咳が出て寝られなくなったり足にむくみが出たりします。
・腎不全
欠尿により尿が減少したりそのために下腹部が張ることもあります。そのためむくみや食欲不振や全身の倦怠感と言った症状も現れる事があります。尿検査では蛋白尿が出る事がありますが、濁った尿が出るというのも特徴です。

上記の疾患に対してはだるさを訴えて病院で診察を受けた場合に比較的簡単にわかる疾患です。しかし、血液検査などをしてもなかなか発見されない疾患もあります。

・うつ病
抑うつ気分や無力感といった精神的な症状だけでなく、全身の倦怠感や疲労感もみられます。

・自律神経失調症
自律神経には活動的で緊張感のある状態にさせる交感神経とリラックスさせ体を休める副交感神経があります。昼間の活動的な時間帯は交感神経が優位に働き夜の睡眠時には副交感神経が優位に働く事でバランスが保たれています。しかしこの二つの神経がバランスを崩すと体を休めたい夜の時間帯に交感神経が優位になり体が緊張状態になり休まらないという状態になります。そして活動をしなくてはならない日中の時間帯に副交感神経が優位になりだるさや眠気、倦怠感などの症状を引き起こします。

・慢性疲労症候群
体を動かすのも難しく日常生活に支障が出るほど重い倦怠感や疲労感が半年以上続く病気です。微熱やのどの痛み頭痛、筋肉痛、思考力の低下など倦怠感以外にも様々な症状に悩まされます。慢性疲労という言葉から少し重い疲労が続くだけと思われがちですが、休息をとるだけではなかなか治らず、病院での治療が必要です。

その他、疾患名のつかない倦怠感やだるさもあります。そもそもだるさや倦怠感は活動に応じて発生する体の生理的な反応です。体が疲労しているとそれに反応して倦怠感やだるさとして現れて体を休めようと知らせてくれているのです。
体に現れる疲労の種類は大きく3つに分類されます。

・精神的疲労

物事を始めるために必要なやる気やモチベーションなどの精神力が低下する疲労を精神的疲労と言います。活力や目標が無いため全ての物に興味がなくなったり、何もする気がなくなるなどの症状が発生します。自覚症状に気が付きにくい傾向がありますが、朝起きると大きな疲れを感じるのが特徴です。
また、眠りが浅く満足できる睡眠がとれない傾向にあります。日常の様々なプレッシャーに対するストレスが原因ですが特に人間関係や悩み事から発生するストレスと大きく関係しています。このストレスが慢性化し限界を超えると、うつ病などの精神疾患や副腎疲労などの臓器の疾患の発症を引き起こす事もあります。

・肉体的疲労

筋肉を動かすためのエネルギーの不足と乳酸などの疲労物質の蓄積によって起こる疲労です。筋肉はエネルギーが足りないと動かすことが難しくなります。また、立ち仕事やパソコン業務の長時間労働などにより同じ姿勢でいることで一部の筋肉だけが緊張を続けていると乳酸が溜まり、筋肉の働きが悪くなります。
この状態で筋肉を動かさなくなるとさらに疲れやすい体になる事があり注意が必要です。

・脳疲労

理解や判断力論理などの知的機能が低下する脳疲労と言われる種類の疲労です。デスクワークや勉強などで視神経や脳が緊張した状態が続く事により起こる神経の疲れと言われており、学校や職場での生産性が低下したり記憶力や思考力、注意力などが低下し、集中が出来なくなるなど個人が持つ認知能力を完全に発揮できなくなる可能性があります。
また、脳が緊張している時は交感神経の働きによって内臓や筋肉が動き続けるため体にも疲労が溜まっていく事があります。

倦怠感

倦怠感と自律神経の関係

疲労を感じやすい原因の一つに自律神経の乱れがあります。
自律神経には交感神経と副交感神経の二つがあり、交感神経は呼吸を早める、・血圧を上昇させる・筋肉を緊張させる・神経活動を活発にするなど緊張や興奮を促し人を活動的にさせる神経です。

副交感神経には、呼吸を穏やかにする・血圧を下げる・筋肉を弛緩させる・精神的にリラックスさせるなどといった働きがあり、睡眠を促し休息の効果を高める作用もあります。

現代人は多忙で精神的なストレスに晒されがちなので、交感神経優位の時間が長くなる傾向にあります。交感神経が優位な状況ばかり続いてしまうと副交感神経が優位になるべき状況でもスムーズな切り替えができず、自律神経のバランスが乱れてしまうのです。
そうすると休息時にも十分にリラックスするのが難しくなります。こうした状況は眼精疲労頭痛肩こり腰痛、動悸など様々な症状を引き起こす原因になるとともに全身の疲労を感じやすくさせます。

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年
鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年
おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年
中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年
渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年
三軒茶屋α鍼灸院を開院

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