産後うつは東洋医学では、五臓六腑の『肝』と『腎』の働きが弱っているために発症すると考えられています。
出産をすると母体は多くの『気血』を消費してしまうために肝の血を蔵して排泄・排出するという調整機能は大きな影響を受けて肝の機能は低下しやすくなります。
また、肝と腎は『肝腎同源』と言われて肝が弱ると腎の機能も弱くなりやすいため、治療では肝と腎の機能を補っていく必要があります。
産後うつで多く見られる病証としましては、『肝血虚』と『腎虚』があげられます。肝血虚では、イライラ感が抑えられない・不安感・気分が落ち込みやすいなどの症状があらわれやすく、腎虚では物忘れや体の重だるさなどが出やすくなります。
産後うつに対する当院の鍼灸治療
産後うつに対する当院の治療はまず第一に自律神経のバランスを整えることです。
当院には自律神経測定器があり、自律神経の今の状態を把握してから施術を行えるのでその方にあった施術法を選択することが可能です。
交感神経の活動が高い場合や逆に副交感神経の活動が高い場合で自律神経が乱れている場合では施術法や治療配穴が違ってきます。
また東洋医学的観点からもアプローチをしていきます。『肝』や『腎』の機能を補ったり、『気血』の流れを改善していきます。
当院には女性鍼灸師も在籍しているため女性ならではのお悩みもご相談ください。
30代 女性
結婚してからも独身時代と変わらずに夜遅くまで仕事をこなしていた。そのような生活をしていたためなかなか子供を授からなかった。30代も後半になりそろそろ本当に子供がほしいと思い、仕事の量を減らしてやっと妊娠できた。妊娠がわかったときは嬉しかったが、それと同時に育児に対する不安や生活環境の変化、将来の不安を抱くようになった。
出産後、いろいろ本やインターネットで調べたことを実践したがなかなか思うようにいかずに段々と育児に対するストレスが溜まっていった。1か月を過ぎると睡眠がうまく取れなくなり、日中は気分が悪くなったり、底知れぬ不安感に襲われるようになってしまった。
ある朝、起きると体が思うように動かないと感じて産婦人科を受診したところ産後うつと診断された。授乳中ということもあり、軽い薬を処方してもらったが、症状は改善されなかった。強めの抗うつ剤を医師からは勧められたが、授乳を続けたいとのことで当院にご来院された。
治療
自律神経測定器の結果、交感神経の活動が高く自律神経が乱れているという結果が出ました。手足や腹部の冷えも強く全身の血流が悪くなってしまっていると感じました。自律神経を調整する治療と冷えを改善するお灸療法を中心に行っていきました。また、家でもご主人の協力を得て少し育児から離れてリラックスできる時間を確保していただきました。
◇1回目◇
治療後、体のだるさや疲れが一気に出た感じがしてその日はよく眠ることができた。
◇2回目◇
眠れる時もあるが全体的にはまだあまり眠れた気がせずに日中に気分が悪くなることもあり。
◇3~8回目◇
どうしても夜泣きなどで夜中起きることがあり、そのあと目がさえてなかなか眠れないが少しずつ身心が楽になっていることを実感。
◇9~12回目◇
育児のことで頭がいっぱいだったが少しずつ余裕ができてきて、化粧や趣味の読書などが楽しめるようになってきた。睡眠も改善。睡眠時間が短いと感じる日は子供が昼寝をしている時に一緒にリラックスして眠れるようになった。
産後うつという言葉を聞いたことがありますか?ストレス社会と言われる現代の日本では10~15人に1人は生涯うつ病にかかると言われています。これはとても大きな割合で年々うつ病で悩まされる人は増えていると言われています。
うつの増加傾向は産後にも当てはまり、産後にうつ病で悩まされることを『産後うつ』といいます。産後うつは10人に1人以上の割合で産後女性にかかってしまうとも言われています。
産後はどうしても生活環境やホルモンバランスの変化が大きいです。そこで赤ちゃんの面倒を自分だけしか見ておらず、誰にも相談できな状況ですとうつ病にかかりやすいと言われています。
産後うつの症状は、よく言われるうつ病の症状と似ています。症状の特徴としましては
☑気分が落ち込む
☑何事にもやる気が出ず、育児も億劫になる
☑いつもは普通にできていた献立が考えられない
☑常に何かしらにイライラしている
☑食欲がわかない
☑寝つきが悪い、睡眠不足
☑化粧などしなくなり、外見に気を遣わなくなった
☑将来のことばかりか考えて不安になる
☑できない自分を責めてふさぎがちになる
☑下痢や便秘
☑胃痛や腹痛
☑何事にも興味が薄くなり、今まで楽しめていたことが楽しめなくなる
産後3か月の間にこのような症状が出た場合産後うつかもしれません。その場合は、一人で抱え込まないで周りの人に相談することが重要です。そのまま一人で抱え込んでしまうと症状が悪化や改善までに時間がかかってしまうことがほとんどです。
産後うつは単に一時の症状ではありません。きちんと治療していく必要があるのです。
産後うつとなってしまう原因は人それぞれで多岐にわたりますが、大きく分けると生活環境の変化とホルモンバランスの変化です
・生活環境の変化
特に出産が初めてという女性は、初めてという経験がいっぱいです。赤ちゃんがいるのといないのとでは生活環境が大きく変わるのは容易に想像できます。その中でも特に多いのが、ご主人は仕事が忙しくて育児に協力的ではなく、ご両親も近くに住んでおらずに育児の負担がほとんど女性にかかってしまう場合に産後うつにかかるリスクが増加します。
また、里帰りで出産で実家にいた時はいいが、自宅に帰ったときに初めて育児の負担が全て自分にかかることでも産後うつは発症しやすくなってしまうのです。
また、赤ちゃんがまだ小さいころだと気軽に外出などできず、赤ちゃんと家で過ごす時間が長くなり、気分転換もできません。外出したら外出したらで常に赤ちゃんのことを考えねばならず、ストレスは溜まりやすい状況です。
女性の社会進出が進み、女性も男性ばりにバリバリと仕事をこなす人も少なくありません。そういった女性が外出もままならず、育児と家事で毎日を過ごしていくというのは大きなストレスかもしれません。
・ホルモンバランスの変化
産後の女性は体のホルモンバランスの変化も大きいです。多くの方の産後女性の体はこれまで生きてきた中で一番急激に変化する時期といっても過言ではありせん。母乳を作り出しますし、赤ちゃんがおなかの中で育った子宮は急激に縮まっていきます。
これは相当な体の変化でホルモンバランスの変化も大きいです。
ホルモン分泌などの内分泌系の活動は自律神経が大きくかかわっているため、ホルモンバランスの大きな変化は自律神経のバランスが乱れやすくなって産後うつにかかってしまいます。
うつ病にかかりやすい人の性格に特徴があるように産後うつにかかってしまいやすい人の性格にも特徴があります。
・生真面目で完璧主義
生真面目で完璧主義な女性は、産後に何かトラブルが起きても他人に迷惑をかけてしまうと思い込んで誰にも相談できない人が多いです。それでも育児に家事にうまくいっている場合はよいのですがうまくいかなくなった途端に自分を責めてしまい産後うつにかかってしまいます。
・努力家で頑張りすぎてしまう
もちろん育児をするということは生活環境が一変するため慣れるまでは努力が必要になってきます。初めての出産となるとなおさらです。しかし、それ以上に親やご主人などの周りの方のサポートはそれ以上に必要になってきます。
そのことを理解せずに明らかに自分の許容量を超えて育児や家事を行っていると心身ともについてこられずにある一定の許容量を超えてしまうと産後うつとなってしまいます。
・今までうつ病にかかったことのある人
今までにうつ病やその他心療内科系の疾患にかかったことのある人は産後うつにもかかりやすくなると言われています。
産後うつと診断されるとまずカウンセリングなどの心理療法が行われることがほとんどのようです。多くの人は産後うつを発症して半年以内に症状が軽快すると言われていますが、産後うつ患者の4人に1人は半年以上もうつ傾向にあり、なかなか症状が軽快しないという場合もあります。そういった産後うつが重症化した場合は抗うつ剤などの薬が処方されます。
しかし、抗うつ剤を服用する時にまだ授乳中の場合は、副作用の少ないより安全性の高い薬を服用する必要があるため処方できる薬も限られてきます。
・自分一人で育児・家事を抱え込まない
・親や夫にサポートをお願いする
・適度な運動(散歩など)でストレスを発散する
・睡眠時間を確保する
・子供を預けて一人になれる時間を作る
・食欲がわかなくても口当たりのいいものできっちり1日3食摂る
うつ病の治療において栄養療法も必要だと言われています。
産後うつに関しましても、産後のお身体には栄養が必要ですから尚更産後うつの回復には栄養療法が欠かせないです。
必要な栄養素の研究で近年、うつ病と鉄分不足が関係しているのではないかというものがあります。
鉄欠乏で貧血なら理解できるけどうつ症状が出るなんてと思う方も多いかと思います。
しかし、うつ病と診断されて抗うつ薬を処方されたが全く効果がなく、鉄分を補給したところ回復傾向に向かったという医師もいます。
鉄は体の様々な機能の役割を担っています。例えば、皮膚や粘膜の維持に関わっており鉄が不足すると肌荒れや口内炎ができやすくなってしまいます。免疫力の維持にもかかわっているため鉄不足となってしまいますと免疫力の低下します。
うつ症状と鉄不足の観点からしますと、鉄が酸素の運搬やエネルギーの産生に関わっていることが大きいです。
鉄が不足してしまいますと身体のいたるところが酸素不足やエネルギー不足に陥りやすくなってしまうのです。すると、疲労感や倦怠感、さらに脳が酸素不足になると立ちくらみやめまいの原因となります。
そのほか、鉄は脳の神経伝達物質の意欲に関係するドーパミンや脳の覚醒に関わるノルアドレナリン、幸せホルモンと言われるセロトニンなどの合成にも関わっています。
鉄が不足することでそれらのこころの働きに重要とされるホルモンの合成がうまくいかずに睡眠障害や不安、うつ状態になりやすいです。
厚労省は鉄の推奨摂取量を1日10mg、女性で12mgと定めています。鉄が多く含まれる食材としまして
・豚レバー
・鶏レバー
・牛レバー
・しじみ
・キハダマグロ
・カツオ
などがあります。
妊娠・出産・授乳では鉄の消費量が増えると言われています。通常摂取する量よりも摂取しないと鉄が欠乏した状態におちいり、産後の場合特に産後うつ症状が出やすくなってしまいますので注意が必要です。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 18:19 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)