視神経萎縮とは、視神経に何らかの障害が起こった場合に、視神経が萎縮し、機能しなくなる状態のことをいいます。萎縮の度合いにより視力、視野に障害が発生します。
視神経萎縮の主な原因は、視神経の外傷、変性疾患、腫瘍など視神経の病変のみでなく、周囲組織から視神経への圧迫、視神経の血管病変、網膜疾患、緑内障、ぶどう膜炎、栄養障害、薬物中毒などさまざまで、症状や治療は原因によって多岐にわたります。
また、ごくまれに遺伝性、あるいは家族性のものもあります。
残念なことに、いったん視神経萎縮が進んでしまうと、視神経は元に戻らず、視力や視野障害の回復は難しくなります。
①単性視神経萎縮
球後神経の障害により、逆行性に視神経乳頭に変化が生じたもので、乳頭は陶白色、色調は鮮明で乳頭の混濁はなく、篩状板の透視は良好です。定型的なものとして視神経の外傷、切断、脊髄勞性視神経萎縮、圧迫や脳下垂体腫瘍、循環障害などがあります。
②炎性視神経萎縮
視神経乳頭部での浮腫性病変が生じた結果によるものです。
視神経乳頭の境界は不鮮明で、色調は灰白色~汚い白色。視神経乳頭組織のグリア細胞や葉性組織の増殖のため視神経乳頭の混濁が見られ、篩状板は透視できません。また、視神経乳頭上血管はグリア性白鞘で覆われていることが多いです。
覗視神経乳頭炎やうっ血乳頭など乳頭腫脹を起こす病変をきたした場合に起こります。
③網膜性視神経萎縮
網膜色素変性やその他の網膜病変によって、広範囲の網膜神経節細胞が障害されたことによる視神経萎縮で、網膜動脈の狭細化や網膜実質の変性や萎縮を伴い、視神経乳頭は黄白色を帯びて境界不鮮明となります。
④緑内障性視神経萎縮
原因は緑内障で、境界は鮮明、色調は蒼白。乳頭陥凹が認められます。視神経軸索の組織学的消失と網膜神経節細胞が障害されたことによる視神経萎縮です。網膜動脈の狭窄化、網膜実質の変性と萎縮を伴います。
⑤遺伝性視神経萎縮
遺伝性視神経症で遺伝子によるものです。常染色体優性視神経萎縮です。
視神経萎縮が起こると主に視野が狭くなります。主な症状としては視野縮小、具体的には見える範囲が少しずつ減り、見えない部分は黒く映るといった現象が主体です。
視野中の見えなくなってくる部位については個人差があり、視野の真ん中から見えなくなってくる人もいれば、左右上下の周囲部分から見えなくなってくる人もおり様々です。また、これには高確率で色覚異常が伴います。
自覚症状として、視力障害や視野欠損がありますがその程度は、原因となる疾患によって様々です。
検査
視力検査、眼底検査では、視神経乳頭の色が黄白色になっていたり、視覚誘発電位検査や蛍光眼底検査、中心フリッカー検査、MRIなどの検査により診断されます。また、脳神経外科的な検索や病気の原因を調べるために血液検査なども行います。
治療
原因が分かっている場合には、その原因疾患に対する治療を行います。
副腎皮質ステロイド薬やビタミン製剤などの投与を行う場合もありますがその効果は不明です。また、循環障害では循環を改善させるような薬物や高気圧酸素療法が用いられることがあります。一度視神経萎縮が進行してしまうと、視神経はもとに戻らず視力や視野傷害の回復は困難です。
東洋医学では五臓六腑の肝は目に開竅するといわれており、目の疾患は肝機能の障害が深く影響していると考えられています。肝血が不足してしまうと視覚の異常や運動系の異常などがみられます。
また東洋医学では『肝腎同源』といわれており、肝血と腎精は互いに補い合っています。加齢により腎精が減少して肝血にも影響を与えると考えられます。
鍼灸治療では主に、原発性(原因不明)の視神経萎縮と、炎症によって引き起こされた続発性の視神経萎縮を治療します。
眼科検査で視神経萎縮と診断された場合でも、比較的若い方で診断からの経過が短い場合には、鍼治療により視力、視野などが改善する症例があります。
これは、眼底検査などで視神経萎縮とされていても、実際の視機能は残存している場合もあるためです。
しかし、長期間が経過した視神経萎縮では大きな改善は難しいため、原因疾患の再発や進行を抑えて現状を維持することが鍼治療の目標となります。
当院ではまず、内臓機能、血液循環、免疫機能などを主る自律神経のバランスを機械で測定し、お身体の状態を把握した上で治療へ移ります。
まず、うつ伏せで首肩周りに鍼やお灸をすることで筋緊張を緩和し、顔面部の血液循環を促進します。
次に仰向けで、目の周囲のツボ鍼やお灸で刺激を与え、血液循環を促進し眼の機能を高め、視中枢や視神経細胞を修復させる作用を促します。
東洋医学的観点から肝や腎をはじめとした五臓六腑の機能調整、生命維持に欠かせない気、血、水をの流れを整えるツボなどを用います。
さらに自律神経系の調整施術を行い、全身的な血液循環の促進と内臓機能や免疫機能を高め、症状が治癒しやすいお身体の状態へと整えていきます。
パニック障害に対する当院の治療は、まず第一に自律神経の状態を整えることです。
当院では、自律神経測定器を用いて自律神経の状態を把握してから治療していきます。
自律神経の状態を把握することはパニック障害の治療においてとても重要なことであり、自律神経の状態を把握することで高い治療効果が期待できます。
また、東洋医学的観点から身体全体のバランスを診ていきます。パニック障害においては、上記のような東洋医学でいう『肝』や『心』の機能低下が起きている場合が多いです。そのような機能が低下している部分やまた逆に機能が亢進し過ぎている部分を調整していきます。
パニック障害は、仕事や学校に行くことができずに生活の質(QOL)を著しく低下させている方が多いです。そのような方が、社会復帰できるように全力でサポートしていきます。
パニック障害の方は、首横の筋肉の胸鎖乳突筋が過緊張状態の方が多く、当院ではその筋肉をほぐすために首横へも鍼灸治療を施していきます。
パニック障害は東洋医学では、五臓六腑の『肝』と『心』が深く関係していると言われています。
・肝の重要な機能
東洋医学でいう『肝』の重要な機能として挙げられるのが『肝は疏泄を主る』『肝は血を蔵する』という機能です。
肝は、情緒を安定させて精神状態を正常に保つ役割や自律神経系の機能によって全身の各機能を円滑に働かせる機能があります。
また肝は、血を貯蔵して状況に応じてその量を調整しています。血管の収縮や弛緩などで全身の血流量も調整しているのです。
・心の重要な機能
東洋医学でいう『心』の重要な機能として挙げられるのが、『心は血脈を主る』『心は神を主る』という機能です。
『心は血脈を主る』という機能は西洋医学の心臓と似たような働きです。心臓の拍動によって循環を正常に遂行させるというものです。それに加えて各部分の新陳代謝などの機能も担っています。
『心は神を主る』の『神』は思考や分析や判断にあたるもので、それらを主っているのが『心』だと考えられています。
・肝と心の関係
血の運行でとても深い関係にあります。循環系は『心』の血脈を主る作用と『肝』の血を蔵するという機能によって調整されています。
また、思考や精神状態の安定にも『心』と『肝』は深い関係にあり、『心血』や『肝血』によって正常に保たれています。よって『心』や『肝』の機能低下によって『心血』や『肝血』が不足してしまうとパニック障害などの精神疾患に罹ってしまうのです。
30代 女性
仕事が忙しく、夜は終電時間を超えてまで仕事をしていることも多い。土日も休まず働く日々が3か月ほど続いた。睡眠時間も一日5時間程度で食事も外食やコンビニ弁当ばかりでバランスよく取れていなかった。
ある日、仕事の会議中に激しい動悸と息苦しさ・手の痺れが出て、会議を途中で退席した。横になってしばらくすると症状は治まったが、それ以降その現象がいつ起こるのかという恐怖・不安感を持つようになってしまった。病院で検査をしたが、特に体の異常は見つからずに心療内科の受診を促されて受診をしたところパニック障害と診断された。
会議中はもちろんのこと電車や人混みの中でも強い恐怖感を感じるようになり、仕事にも行けなくなり、休職せざるおえなくなった。
当院の治療
自律神経測定器を用いて自律神経を測定したところ午後7時頃の測定だったにもかかわらず交感神経が過亢進状態でした。
まずは、自律神経の状態を整えて東洋医学的診断法に基づいて治療していきました。
治療経過
◇1回目◇
治療後、帰り道など恐怖感や不安感はまだ強い状態だったが、その夜はぐっすりと睡眠することができた。
治療に加えてバランスの良い食事と入浴後のストレッチをしてもらうようにしました。
◇2~4回目◇
電車や人混みではまだ恐怖感や不安感を感じる。休職前は手汗をすごくかいていたが、最近はあまりかかなくなった。
◇5~7回目◇
だんだんと恐怖心が薄らいできた。コンビニや本屋などは恐怖心を感じず、行けるようになった。
◇8回目◇
以前は電車や人混みで恐怖心が強く、心に余裕が持てなかったが少しずつ心にも余裕が持てるようになってきた。
◇9回目◇
職場に復帰。最初は、労働時間を短くしてもらい少しずつ体を慣れさせていった。恐怖感・不安感は多少感じるが以前ほどではない。
◇10回目◇
身体が仕事に慣れていくうちに徐々に恐怖感・不安感を感じなくなった。
20代 女性
バイト中に急にめまいと動悸がして、このまま死んでしまうのではないかという恐怖感を感じた。その日はなんとかバイトを最後まで行った。テスト勉強も重なり、体が疲れていたからだと感じ、一晩多めの睡眠をとれば治ると考えていた。しかし、次の日もバイト中にめまいと動悸を感じて昨日よりもそれらが強く出て不安感や恐怖感も強く感じた。さすがにバイトを続けることができずに内科を病院に受診したところ特に検査で異常が見つからず、心療内科の受診を勧められた。
心療内科を受診したところパニック障害と診断されて抗不安薬や抗うつ剤を処方されて服用していたが、あまり改善されずに当院にご来院された。
治療経過
問診を詳しく行っていくと、症状が強く前にテスト勉強でほぼ徹夜状態が続き、テストが終わっても友人と飲みに行くその翌日に発作が起きたとのことでした。自律神経測定器で検査した結果、午前11時にもかかわらず副交感神経の活動が高く、正常な自律神経の反応とは違う結果が出ていました。
最近では、不安感を感じる場面が増えてきて電車の中や人込みでも恐怖感・不安感におそわれることもある。
◇1回目◇
治療を受けた直後から身体のだるさを感じてその夜は熟睡できたとのこと。電車の中ではまだ不安感を感じる。治療と並行して生活のリズムを整えて行き、睡眠時間の確保と早朝の散歩、規則正しい食事を心がけていただいた。
◇2回目◇
電車の中の不安感はいくらか和らいだ。しかし、まだ外に出る恐怖感が消えずに外出を控えているとのこと。大学もテスト後休みに入っており、バイトも今は休んでいる。
◇3回目◇
夜寝つきが悪い日があり、その次の日は不安感を感じやすい。よく眠れた日は不安感を感じにくく、外出する元気も出てきた。
◇4回目◇
前回よりも今回は睡眠が安定してきて電車の中での不安感は感じなくなった。
◇5回目◇
バイトに復帰。最初は、2時間程度から始めた。バイトに入る前は不安感を感じたとのことだが、始まると不安感は徐々に消えていった。
◇6回目◇
治療間隔も少しずつ伸ばしていった。前回までは3~4日に一回ほどだったが1週間に1度程度にした。バイトも続けているが問題なくやれているとのこと
◇7回目以降◇
治療を2週に1回、1カ月に1回と徐々に延ばしていき、疲れが少し溜まってきたら治療を受けるようになった。たまに不安感を感じることもあるが、以前のようにひどくなることも治まっていくとのこと。
パニック障害とは、突然何も前触れもなく全身に汗をかいたり、動悸やめまい、息苦しさなどの異常を感じてこのままだと死んでしまうのではないか、気が狂ってしまうのではないかと恐怖に襲われることです。
この恐怖に襲われることをパニック発作といいます。大体は、10分~1時間程度でおさまることが多く、発作が起きて病院などで診てもらう時には治まっていることが多く、血液検査や心電図などの検査をしても何も異常が出ないのが特徴です。
パニック発作を繰り返していると、また発作が起きてしまうのではないかと不安に駆られて人混みや電車の中などあまり逃げ場のない場所に出ることが難しくなります。これを「予期不安」と言われ、代表的なものに広場に出ると恐怖感が出る「広場恐怖」などがあります。
パニック障害は日本人の100人に1人の割合で罹る病気と言われており、決して珍しい病気ではありません。
パニック障害は気持ちの問題というようなものではなく、脳の働きの変化が関わっていると最近では研究で明らかになってきました。決して一人で抱え込むものではなくて早期に適切な処置を受ける必要があるのです。早期に治療を開始するとそれだけ予後も良好な場合が多いです。
パニック障害は何も処置をせずに放っておくと「パニック発作」➡「予期不安」➡「広場恐怖」➡「うつ病」という経過をたどる場合が多いです。
・パニック発作
パニック発作の症状や起きる状況は人によって様々です。
多くは、突然の激しい不安感や動悸、息苦しさ、体の一部の痺れや震え、めまい、ふらつき感などを感じます。体の状態としては、寝不足・炎天下での作業・風邪などで体が弱っている時に起きる場合が多いです。
パニック発作が起きやすい状況は、電車に乗っている時や多くの人の視線が集まる会議中やプレゼンの時、車を運転している時などです。
・予期不安
パニック発作が起きてしまうとそれと似た状況になった時などに、また発作が起きてしまうのではないかという不安感に駆られてその不安感が段々と大きくなり、日常生活でも不安感を感じやすくなります。
・広場恐怖
パニック発作が起きてしまうとパニック発作が起きてしまった状況を避けようとします。そのような発作が起きてしまうのではないかといった恐怖感を広場恐怖といい、広場恐怖を感じるとそれらの行動を避けようとします。多くは、公共の乗り物や高速道路での運転、会議中などその場から逃げ出せないような状況の時に恐怖感を感じやすいです。
・うつ病
パニック発作を適切な処置をせずに放っておくと、うつ病を併発してしまう場合があります。
パニック発作を繰り返しているうちに出掛けることが億劫になってきたり、仕事に支障が出てきたりと気分が落ち込みやすく、繰り返していくうちにうつ状態になりやすくなります。
パニック障害の診断はよくアメリカで提唱されている基準が使用されています。
以下の13項目のうち4つ以上あてはまる場合は、パニック障害の可能性があると言われており、専門医の診断を受けた方が良いでしょう。
パニック障害の原因は未だに詳しくは解明されていません。しかし、様々な研究で脳内の神経伝達物質の異常によって引き起こされるという原因が有力と言われています。
人間は恐怖を感じると逃避行動に出ます。それは脳内の偏桃体や大脳皮質という部分が深く関係しています。特に偏桃体は、情動反応や記憶を処理する部分です。大昔では、外敵や動物から身を守るために危険がせまり、恐怖を感じると偏桃体が反応して血管など身体を収縮させて素早く逃げやすくさせる反応が起きます。
しかし現代ではそういった状況になることは、稀です。仕事や人間関係、家庭などでストレスが蓄積しやすい現代では、むしろ上記のような会議中や電車の中など逃げ場のない状況で恐怖を感じて偏桃体が反応してしまうのです。
偏桃体から恐怖感や不安感が発信されますが、その信号を抑制している物質セがロトニンやGABAです。しかし、パニック障害に罹ってしまう方の多くは何らかの原因でこのセロトニンやGABAという物質が少なくなっていることが明らかになっています。
また、パニック障害の方は恐怖を感じると、脳の青斑核という部分から排出されるストレスホルモンであるノルアドレナリンが多量に出てパニック障害の症状が出てしまうという説もあります。
うつ病を始めパニック障害なども原因が明らかにされておらず、原因解明のために様々な研究が今も続けられています。様々な研究の中でどういった方がパニック障害に罹りやすいのかということがわかってきました
・遺伝の関係
親や兄弟などの親族がパニック障害を患っていると、パニック障害に罹りやすいという研究結果が多く報告されています。
ある研究によると親族にパニック障害に罹ったことがある方とそうでない方とではパニック障害に罹る確率が約8倍も増えたという結果もあります。
・養育環境や家庭環境
幼少期に虐待を受けたことがあるなどの養育環境に問題がある場合や親またはパートナーとの関係が上手くいっていない場合にパニック障害を患いやすいという研究結果が出ています。
・性格
厳密な研究結果は出ていませんが、パニック障害を患う人の性格的な特徴はあります。性格的に内気な人・引っ込み思案の人・悲観的な人・人見知りな人などの方に多い傾向にあります。
パニック障害は、正直なところすぐに治るような病気ではありません。治療期間中にも発作が起きてしまうことも少なくありません。起きてしまった時でも発作を抑えて起きても平気だと思えることが治癒への第一歩となります。
もしパニック発作が起きてしまった時にはまず呼吸に意識を向けることが重要です。呼吸が浅く速い呼吸となってしまうと交感神経の活動を高めてしまいさらに発作を助長してしまう危険性がります。呼吸法としましてはとにかくゆっくりと深く呼吸をすることが重要です。どうしても呼吸するときは吸うことを意識してしまいがちですが息を吐くことに意識を向けます。そして4秒間鼻から息を吸ってゆっくり口から6秒間息を吐くというように呼吸に意識を向けます。
また、その際に余裕があれば心を落ち着かせる手のツボ『神闕』というツボを押しながら行うと良いです。そのツボに関しましてご来院の際に場合によっては皮内鍼といって鍼のシールを貼って常に刺激させる治療を行うこともあります。
そして、パニック発作は永遠に続くことはないと思うことも重要です。必ず発作はいつかは治まるのです。そう自分に言い聞かせるのです。気の持ちようなのかと思われるかと思いますが、発作が起きている時にそう思えるだけで発作が意外と早く収まっていく方が多いです。
また、どうしても発作がコントロールできない何をしても収まらないと感じたら「逃げ場」を作っておくことも重要です。電車内で発作が起きやすいのであればドア近くにいたり、映画館であれば出口近くの座席に座るなどです。
運動習慣は、身体面の利点ばかりでなく、精神面での利点も様々な研究により明らかになってきています。運動は、身体だけでなく脳にもいい影響をもたらしてくれます。
2004年アメリカのサザンミシシッピだいがくで行われた研究です。
不安感受性が高く、全般性不安障害を抱えている運動不足気味の学生54名を対象とした研究で2つにランダムに分けて行われました。どちらのグループにも2週間の間に20分間の運動を6回させましたが、一方のグループは最大心拍数の60~90%の強度でランニングを行ってもらい、もう一方のグループには最大心拍数のおよそ半分ほどのゆったりとしたペースでランニングを行ってもらいました。
結果は、どちらのグループにも不安感受性の低下が認められましたが、運動強度の高いグループの方が大きな効果が出ました。
運動強度の高いグループでは運動によって鼓動が早くなり、一種のパニック発作のような感覚を身体に出現させて、そうした肉体的な現象が必ずしも不安の発作につながらないということを脳に教え込んだといえます。パニック発作はある種の体の興奮状態でそれを脳は恐怖と捉えるわけであり、運動によって体の興奮が気持ち良いものと捉えることで不安やパニックが解消されやすくなるのです。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好医院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
橈骨神経とは、頸椎から鎖骨の下部を通り、腋の下を通って上腕骨の外側を回り込み、前腕の筋肉である伸筋に通じる神経で、正中神経や尺骨神経と並び、腕を走る大きな神経の一つで、手首を反らしたり、指を伸ばしたりする神経です。
感覚領域は手の背部で親指、人指し指とそれぞれの水かき部を支配しています。橈骨神経麻痺とはこの橈骨神経が何らかの原因で障害されることを指します。
長時間上腕部に圧迫をかけることで発症することもあって腕枕の状態で発症することもあるため「土曜日の麻痺」や「腕枕症候群」「ハネムーン麻痺」といった通称名も存在します。
上腕部での麻痺の原因は開放創や挫傷(ケガ)、上腕骨骨折や上腕骨外側上顆などの骨折、圧迫などにより生じます。
肘での麻痺の原因はガングリオンなどの腫瘤、腫瘍、骨折などの外傷、神経炎、運動のし過ぎなどによる絞扼性障害によって橈骨神経麻痺の症状が出現します。
しかし、原因が無いのにもかかわらず発症する場合もあります。
橈骨神経は手首や指先の動作に関連した筋肉支配に関与しているため手指や手首を反らしたり伸ばしにくくなります。(下垂手)また、障害部位に応じて親指、人指し指、中指の手の甲から前腕の親指側の感覚が障害されます。
感覚障害の有無や、運動障害をもとにしてなされます。
下垂手や下垂指の所見は重要な判定項目になります。また、神経麻痺では神経が障害を受けた部位を外部から叩くと支配領域に痛みが出現することがあります。
これを「ティネル兆候」といいますが、この所見も診断には重要です。その他、麻痺を生じるようになった原因検索や症状の程度の評価を目的として、レントゲン写真やMRI,エコーなどの画像検査、筋電図検査などが必要に応じて行われます。
外傷や腫瘍などがきっかけとなり発症した場合、観血的な処置(手術など出血を伴う処置)を行うことで原因を排除します。
また、局所の安静のために固定をしたり、ビタミンB12や消炎鎮痛剤の投与などの保存的治療で経過観察を行うこともあります。
また、拘縮(関節可動域制限を起こした状態)を予防するためのリハビリテーションも大切です。保存療法を行っても症状の改善が見られない場合には手術療法が行われることになります。橈骨神経麻痺が進行すると神経障害が持続し、最終的には筋力の低下を呈する危険性もあります。
そのため神経損傷があるものであれば神経剥離、神経縫合、神経移植などが行われます。筋肉の障害が強く、筋力の回復が見込めない場合腱移行手術が選択されることになります。
橈骨神経の走行は、東洋医学で考えられている経絡の走行上で『手の陽明大腸経』や『手の太陰肺経』の走行上と似ています。
東洋医学では、大腸経や肺経の気血が滞ってしまうことでその走行上に痛みや痺れが出てしまうことで橈骨神経麻痺のような症状が出てしまいます。
橈骨神経麻痺走行上の筋肉に鍼を刺して電気を流すことで刺激を与えることで回復を図ります。特に上腕部や肘中央部に橈骨神経の絞扼部があることが多いためその部分の筋緊張を取り除いて神経や血管の滞りを解消させていきます。
筋肉や神経は電気信号で動いています。その筋肉や神経に直接鍼通電療法を施すことによって麻痺の解消を促していくのです。
また東洋医学的観点より、五臓六腑の『肺』や『大腸』のツボを用いて治療をしていきます。その他、頸部や胸部の筋緊張が原因で神経麻痺が起きることもあるためその部分の筋緊張も取り除いていきます。
50代 男性
経過
6週間ほどまえに左手を下に寝てしまったことで橈骨神経麻痺を発症。整形外科に通院してマッサージや電気治療、ビタミン剤などの処方を受けたがなかなか改善されなかった。普段から手首が垂れないように添木をして対応。左手の背屈動作がほぼできずに親指辺りのしびれも出ている様な状態。
当院の治療
まずうつ伏せで首肩回りの筋緊張を見ていきました。頸部の硬さや左肩甲骨外側の筋緊張が強い状態でした。
うつ伏せの施術ではそれらの筋緊張の緩和やその他腰痛の症状もあり、併せて鍼灸施術を行っていきました。
次に仰向けとなり左上肢を中心に施術。左上腕部や前腕部、肘部外側に特に強い固結があり、それらの部分と左手親指の痺れが強く出ている部分と左タバコかの部分にも鍼を刺して電気を流す鍼通電治療を行っていました。
治療経過
一回目の治療後から少しずつ背屈動作ができるようになってきました。鍼通電治療時にも最初は電気を流しても筋肉の収縮反応が全く見られませんでしたが、少しずつ腕橈骨筋などの筋腫縮反応が見えてきました。5回目の施術後には電気鍼治療時に親指が動く反応が初めて見えました。
日常生活で徐々にですが添木を外せる時間も出てきて上腕部の筋肉痛を感じられるようになってきました。10回の施術で病院で8割ほどに橈骨神経麻痺が回復していると言われある程度の動きが出来るようになってきましたが、まだ力入り具合はよくなく右と比べると握力が明らかに低下していました。
13回目の施術後ほぼ橈骨神経麻痺の症状は完治。まだ筋力は少し低下していましたが後は日常生活をこなしていくことで筋力をつけていくということで施術を終了しました。
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
外反母趾とは、母趾が外側に曲がった変形をいいます。65歳以上の女性では3人に1人以上が外反母趾を発症しているといわれるほどです。日本では様式の靴を履くような生活が中心になってから発生頻度が増加しており、性別では女性が患者のほぼ9割を占めるといわれています。
外反母趾は歩き方や姿勢にも影響しますので、膝痛や腰痛、肩こり、片頭痛など体の様々な箇所に不調をきたします。
合わない靴やハイヒール
外反母趾になる最も多い原因です。サイズの合わない靴を履き続けると、靴の中で脚が前に滑り、指が靴のつま先へと押し付けられて、親指に付け根の骨だけが異常に出っ張る外反母趾になりやすいとされています。
また、ハイヒールが特に悪いと思われがちですが、靴の種類に関わらず、女性の方が男性に比べて筋肉量が少ないため負担を受けやすく、親指の力が衰えて外反してくるといわれています。
遺伝
外反母趾そのものが遺伝するのではなく、外反母趾になりやすい骨格が遺伝するため、一般的に両親や親族に外反母趾の人がいるとなりやすいといわれています。
足の筋力低下
近代では長時間靴を履いて過ごす時間が増え、裸足で過ごす時間は減少しました。また、乗り物を利用することも多く自分の足で歩く機会は減少してきています。
このような要因から足底の筋肉が発達せず靭帯や筋が緩んだり弱くなって(開帳足)、外反母趾を進行させてしまいます。
その他
10歳代に起こるものは母指が人差し指より長かったり、生まれつき扁平足ぎみであったりすると外反母趾になりやすい特徴があります。最も多い中年期のものは履物に加えて、肥満と筋力低下などによって起こります。
健常な足には縦のアーチだけでなく横のアーチがあります。外反母趾ではこれらのアーチが崩れて扁平足になると、中ほどにある母指の中足骨が扇状に内側に開き、それから先の指は逆に靴で外側に圧迫されて起こります。
特徴的な症状は足の母指(親指・母趾)の先が人差し指(第2趾)の方に「くの字」に曲がり、付け根の関節の内側の突き出したところが痛みます。
その突出部が靴に当たって炎症を起こして、ひどくなると靴を履いていなくても痛むようになります。また、足の裏に胼胝(タコ)ができたり、母趾が人差し指の下にもぐりこみ痛みが酷くなることもあります。
外反母趾により足のアーチが崩れてしまうと、地面からの衝撃を吸収できない状態になってしまい、膝や股関節、腰などの関節に着地の衝撃が直接響くため、痛みや不調を感じやすくなることがあります。また、外反母趾の部分をかばうように歩くことで脚自体が変形してしまうこともあるといわれており、O脚やX脚に発展してしまうこともあります。
・頭痛や肩こりなど上半身の不調の原因にも
外反母趾になると足指をうまく使えなくなるため、心臓から最も遠い部位である足指や足裏の血流ポンプ機能にも影響を及ぼす可能性もあり、全身の血の巡りが良くない状況になることで、冷えやむくみ、免疫力の低下を感じやすくなりかねません。
また、外反母趾により生じた体のバランスの崩れを肩や首で修正しようとするため、特定の部位が緊張しがちになり、首や肩のコリなど上半身の不調を招くともいわれています。
外見からも診断は可能ですが、正確には足部のレントゲン写真で診断します。第一中足骨と第一基節骨のなす角を外反母趾角といい、15°までを正常、15~30°までを軽度30~40°までを中等度、それ以上を重度としています。
ただし、外反母趾があっても症状がないものは単に「外反母趾変形」があるというだけで、治療対象にはなりません。痛みや靴のトラブルなどの症状があってはじめて外反母趾は治療が必要になります。
治療
保存療法(手術以外の治療方法)と手術療法があります。
保存療法
装具療法と運動療法があります。中等度以上の外反母趾は痛みが強くなったり、変形が進むことが多いので予防することが重要です。
装具療法
まず、アーチサポート(靴の中敷きのようなもので、土踏まずの部分を少し高くする装具は縦アーチを、中足骨パッド(足趾の付け根の部分にある出っ張り)は横アーチの低下を防止し、痛みを和らげます。その他には趾の間に挟むセパレーター(ベルクマン、スーパートンチャンなど)、外転装具があり、それらをいくつか合わせて使うこともあります。
運動療法
足趾でのタオルをつまみ寄せる訓練、ホーマン体操(ゴムバンドを両方の母趾にかけ、母趾を内側に動かす訓練)などがありますが、変形を元に戻す効果はなく、いずれも進行を遅らせる程度の効果です。それでも痛みが強くなる場合には手術を行うことになります。
手術療法
変形が進むと、指についている筋肉も変形を助長するように働き、体操や装具では元に戻りにくくなります。痛みが強く、靴を履いての歩行がつらくなると手術を行います。
外反母趾の手術にはいろいろありますが、最も一般的なのは中足骨を骨切りして矯正する方法で、変形の程度により方法を選んで行っていきます。
外反母趾の鍼灸治療は変形そのものを戻す治療ではなく、痛みを軽減したり、進行を遅らせる治療になります。
鍼灸治療の効果の特徴として鎮痛効果や抗炎症作用がまず挙げられまます。
炎症が起きている患部の周辺のツボに鍼やお灸で刺激を与え、炎症を抑える作用や鎮痛効果を促します。
また、外反母趾の方は足だけの問題だけではなく筋肉のバランスが崩れることで、膝や股関節、腰などの下半身の関節の不調や、首や肩など上半身に不調をきたすこともしばしばあります。
全身の関節のゆがみや筋肉の緊張は足にも影響を与えるため、全身的なバランス調整施術も行っていきます。
また、内臓機能や血液循環などを司る自律神経のバランス調整性術も合わせて行うことで、免疫力や自然治癒力を高め全身的な血液循環を促進し、症状が治癒しやすいお身体の状態へと整えていきます。
・膝痛の鍼灸治療
・腰痛の鍼灸治療
・肩こりの鍼灸治療
・片頭痛の鍼灸治療
年の瀬も押し詰まり、ご多用のことと存じ上げます。
さて、誠に勝手ながら、当院の年末年始の診療は、下記のとおりとさせていただきます。
皆様にはご迷惑をお掛けしますが、何卒ご容赦願います。
今年一年ご愛顧を賜りまして大変感謝申し上げますと伴に、皆様のご多幸をお祈りいたします。
令和2年12月29日~令和3年1月2日まで休診
年内診療 令和2年12月28日 20時最終受付
年始診療 令和3年1月3日 AM10時より
何卒よろしくお願い申し上げます。
目を潤し、またさまざまな病原から目を保護するために、目には涙液が流れています。涙液は涙腺と副涙腺で分泌されて上涙点と下涙点から吸い込まれ、細い管(上涙小管、下涙小管。2つが合流して総涙小管)を通って涙嚢に達し、鼻涙管を通過して鼻腔へと流れ込みます。
この鼻涙管が閉塞して、涙が鼻へとうまく排泄されなくなっている状態を鼻涙管閉塞といいます。
ご高齢の方がなりやすい病気ですが、生まれたばかりの赤ちゃんのうち10%は鼻涙管閉塞があるといわれています。ただ、生まれつきの場合は一歳になるまでにほとんどが自然に開通するといわれています。
先天的な原因
生後間もなくは鼻涙管の発達が不十分なことも多く、先天的に鼻涙管が閉塞もしくは狭窄(狭くなる)していることがあります。成長とともに鼻涙管の発達も期待できますが、なかには発達が不十分になることもあります。
後天的な原因
後天性鼻涙管閉塞は多くは加齢現象としてみられており、中高年の女性に多くみられます。その原因の1つとして、もともと女性は涙道が狭いことが考えられます。また、女性では化粧品の流入などによる炎症などが原因で鼻涙管閉塞を引き起こすことがあります。
その他、後天的な要因から発症する場合、原因を目の疾患と鼻の疾患に大きく分けることができます。
目の疾患
結膜炎が代表的です。空間的につながりのある鼻涙管に炎症が広がってしまうことから鼻涙管閉塞を発症します。
鼻の疾患
鼻炎などの炎症が広がることがあります。蓄膿症やポリープなども鼻涙管閉塞の原因となることがあります。
鼻涙管閉塞になると片眼、または両眼から常に眼脂が出る、涙が出る、潤む、目やにが増える、涙で視界がぼやける、目の周りの皮膚がただれる、目頭が感染を起こし赤くなるなどの症状を引き起こします。
検査
涙道通水試験と呼ばれる検査をもとに診断を行います。これは涙点から生理食塩水を注入し、鼻から生理食塩水が排泄されてくるかどうかを確認する検査です。
本来であれば、涙は涙点から鼻涙管を介して鼻へと流れていきます。つまり、目と鼻は一つの空間として構成されています。そのため、健康な状態であれば、涙点に注入された生理食塩水が鼻の中へ排泄されることを確認することができます。しかし、鼻涙管閉塞では生理食塩水の排泄を鼻で確認することができません。
その他、原因となる疾患を検索する目的で、眼科的な検査や耳鼻科的な検査が併用されることもあります。
治療
基礎となっている病気に対するアプローチに加え、年齢や鼻涙管閉塞の症状に応じて治療方法が決定されます。
先天性の鼻涙管閉塞では、生長とともに鼻涙管閉塞が自然に改善することも多く、マッサージなどを行う程度で保存的に経過をみることもあります。具体的には目頭を一日のうちに数回定期的にマッサージする「涙嚢マッサージ」と呼ばれる方法がとられることがあります。
涙嚢マッサージを行いながら、抗生物質の点眼薬を併用することもあります。また、涙道通水試験を治療的な意味合いで併用することもあります。
保存的な治療で改善が見られない場合には、鼻涙管開放術(ブジー)を行います。鼻涙管開放術は、涙点から細い針金を鼻涙管に差し込み、物理的に涙の流れを阻害している部分の通過性を向上させる方法です。
鼻涙管開放術を行っても症状が改善しない場合には、鼻涙管にチューブを挿入、留置することもあります。さらに、涙嚢と鼻の通り道を形成する涙嚢鼻腔吻合術と呼ばれる手術が選択されることもあります。
蓄膿症の場合
炎症や、化膿、発熱、充血、疼痛、出血などの熱証
五臓の肺の機能低下、脾胃の機能低下などが考えられます。
結膜炎の場合
東洋医学では「肝は目に開竅する」という言葉があります。これは目と肝に密接な関係があることを示しています。肝は各器官に気・血・津液がすみずみまで流れるよう、量や配分を調整しています。このような働きを疏泄機能といいます。
血を主る肝が疲労などで消耗すると、目まで栄養を送ることが出来なくなり、目へと悪影響が及びます。また、肝は生命の源である「腎」と深い関わりがあります。肝血が不足すると、腎は腎精を血に変えて、肝血を補い、反対に腎精が不足すると肝は肝血を精に変えてお互い補い合うことで機能を維持しています。
当院では、全身の血流、内臓機能、涙の分泌などに深く関わる自律神経のバランスを機械で測定し、お身体の状態を把握したうえで治療へ移ります。
まず、顔面部の血流を促進するため、うつ伏せで首や肩周りの筋緊張を緩める施術を行います。次に仰向けで鼻涙管周囲のツボに鍼やお灸で刺激を与え、閉塞部を刺激し鼻涙管の詰まりを和らげる作用を促します。
また、東洋医学的観点から肝や腎を中心とした五臓六腑の機能調整を行います。さらに、自律神経の調整施術を行うことで内臓機能や免疫機能を高め本来お身体の持つ自然治癒力を高め、症状が治癒しやすいお身体の状態へ整えていきます。
肩こりの原因や症状には個人差がありますので、それぞれの原因、症状に合わせた治療を行う必要があります。当院ではまず自律神経測定器によって血管の状態や自律神経の状態を測定させて頂き、自律神経や内臓機能を整えるツボを鍼やお灸で刺激する事で全身の血流を促進し、身体をリラックスした状態へと促し自然治癒力を高めていきます。
そのうえで症状と合わせた頚や肩部、背部、上腕部などのツボを鍼や灸で刺激し、必要であれば筋肉の緊張が強いところへ電極を繋ぎ微電流を流すことで筋肉の緊張を緩和していきます。また鍼通電治療を行うことで痛みの閾値が上がり肩の痛みを感じにくくさせる効果も期待できます。
それらとマッサージやストレッチを行うことでさらに筋緊張の緩和を促し、施術効果を持続させるのです。
また、肩こりの改善には普段の日常生活での姿勢や生活習慣を変えていくことも必要です。当院での施術に加えて日常生活での注意点もアドバイスしていきます。
肩部の治療に対する鍼治療の臨床研究は日本問わず海外でも行われています。ここでは一つイギリスのプライマリケア・クリニックで行われた肩部の疼痛に対して鍼通電治療法を用いた臨床研究をご紹介させていただきます。
参加者は18歳以上で肩の軟部組織領域が原因で肩の疼痛が出ていると医師から診断を受けた方を対象に行われました。
一つ目のグループは、肩の痛みが出ている部分と末梢部分の経穴に鍼を刺して低周波鍼通電治療を1週間に一度8週間受けたグループと同じ経穴に対して鍼を刺さない偽鍼治療群とに分けて行われました。
130人の患者が参加し、鍼治療群65人と偽鍼治療群65人をランダムに振り分けて痛みを測定する疼痛VASを用いたり、非ステロイド性抗炎症薬の投与量、などを用いて施術後の変化を見ていきました生活の質への患者満足度の評価法。
両郡から10人ずつ脱落者がでたが、7週間後偽鍼群では疼痛VASスコアが20%低下したのに対して鍼通電治療群では、43%の低下が見られました。その他非ステロイド性抗炎症薬の投与量の減少、肩関節の可動域の拡大、生活の質の改善など鍼通電治療群では明らかな改善結果が得られました。
その効果は治療開始後、3か月・6か月ともに継続して見られました。
参考文献
『鍼のエビデンス 鍼灸臨床評価論文のアブストラクト』
医道の日本社
30代 女性
長年慢性的な肩こりに悩まれていたが、二年ほど前から結婚を期に職場が変わり、通勤に1時間以上かかり、仕事もパソコン中心のデスクワークを行うようになり、肩の痛みや腕の冷え感・だるさや痺れを感じるようになってしまった。ある時から通勤中の吊り輪を持つこともつらくなり、仕事中でも肩が痛く仕事にも支障が出るようになってしまった。整形外科を受診してレントゲンなどで検査をしたが、特に病的な異常は見られずに特に治療は行われなかった。
マッサージ院や整体院などにも1年ほど通院したがなかなか改善されずに鍼灸治療を試してみたいと当院にご来院されました。
治療
首や肩部分を触診したところ特に肩甲挙筋と僧帽筋、小円筋や大円筋、上腕二頭筋長腱付近の緊張が強く凝り固まってしまっている状態でした。また、通勤中や仕事中のつらさから仕事にも嫌気がさして夜も深い睡眠がとれていないと感じていることから自律神経測定器で自律神経の状態も測定していきました。
◇1~3回目◇
治療後1日くらいは肩や腕の調子はいいと感じたが、2日もすると状態は戻ってしまう。
◇4回目◇
普段、通勤電車でつり革をつかむとすぐに腕のだるさや冷え感を感じていたが、それを感じるまでの時間がだいぶ伸びてきたと感じたとのこと
◇5回目◇
頸肩周りの筋緊張はだいぶ緩和されてきた印象。本人としてはまだ仕事中1時間もすると肩が気になってくる。睡眠は最近深く取れるようになってきた。
◇6~8回目◇
頸肩部に鍼をさしながゆっくり肩を挙上させて痛みを軽減させる運動鍼療法を行ったところ次の日からだいぶ状態が軽減されてきたとのこと。
◇9回目◇
頸肩の状態はだいぶ緩和されてきて仕事中はそこまで気にならなくなってきた。まだつり革をもつと冷え感は感じてしまうが、その程度も軽減されてきた。
肩こりとは後頭部から肩、肩甲骨や鎖骨にいたる筋肉が異常に緊張し、痛みや不快感、違和感を感じる症候の総称であり、症状が悪化すると頭痛や吐き気、上肢の痛みを伴う事もあります。肩こりを感じる筋肉は色々ありますが、首の後ろから肩、背中にかけて張っている僧帽筋という幅広い筋肉が中心です。
筋肉が硬くなり循環障害が起こる事で酸素や栄養分が末端まで届かず、疲労物質が蓄積する事が刺激となり痛みを引き起こします。肩こりの原因は実に様々です。
・筋肉疲労によるもの
姿勢不良による筋肉の過緊張、使い過ぎによるもの、冷えによる筋肉の中での血行不良、加齢や運動不足などが原因として挙げられます。
・眼精疲労
目の酷使によって、目の周囲の筋肉の緊張と共に首や肩の筋肉が緊張する事や、メガネの度数があっていないなどの慢性的な目の緊張や疲労が肩こりの症状を引き起こす事があります。
・ストレスによる緊張
過度なストレスを受けると、身体の調節機能である自律神経のバランスが崩れる事により筋肉疲労を引き起こします。自律神経は日中の活動を司る交感神経と体の回復を司る副交感神経の二つで成り立っており、この正反対の働きをする二つの神経がバランス良く働く事で健康が保たれています。
この自律神経は脳の視床下部で統率されている為、精神的ストレスの影響を受けやすいといわれています。過度のストレスや疲労により自分の意志とは無関係に自律神経のバランスが崩れて血管を収縮させ、筋肉を緊張させる交感神経の働きが優位になります。
このような状態が長く続くと、血行不良や筋肉の緊張も続き、肩こりが慢性化しやすくなります。また、自律神経は心臓の拍動や血圧の調整、汗の分泌、内臓の運動などの体の反応を司っている為、肩こりと併発して動悸や息切れ、不眠、めまい、頭痛、火照り、血圧上昇、下痢や便秘、胃腸の不調など様々な自律神経症状が現れる事も少なくありません。
・体系や骨格の影響によるもの
猫背、なで肩、肥満、側弯症、ストレートネックなど
・歯のかみ合わせ不良、顎の関節の問題からくるもの
不自然なかみ合わせにより咀嚼筋の緊張を引き起こす事で顎周りの筋肉が緊張し、肩こりを引き起こします。特に側頭筋の筋緊張は頭痛を引き起こす原因ともなります。
・頸の骨や神経に問題がある場合
頚椎椎間板ヘルニア
主に加齢や外傷が原因で発症し、骨と骨の間に挟まれているクッションの役割を果たしている椎間板が何らかの理由で飛び出て神経を刺激する事によって起こります。30代~50代に多く突然発症する事もあります。
悪い姿勢での作業やスポーツなどが誘因になる事もあります。首の痛みや肩こりに加えて痛みやしびれを腕や手指に感じます。椎間板が飛び出した場所により神経を圧迫する位置も違うので、痛みや痺れが現れる場所も違ってきます。
神経の圧迫が強くなると手足の動きが悪くなったり麻痺のような症状に進行する事もあります。
変形性頚椎症
私達の体は脊柱(いわゆる背骨)を支柱にしていますが、そのうち首の部分の骨は7つで構成されており頸椎(けいつい)と呼ばれています。
これらの骨や周辺の靱帯が組み合わさることで、上下左右の向きたい方向に首を動かすことが出来ています。頸椎の中には脊髄が中心に走っており脳から命令を全身に伝える役目を果たしています。変形性頚椎症とは何らかの理由により頸椎が変形を起こすことです。その原因は主に加齢や事故による外傷によるものが多く、40代以降の人が特にかかりやすいと言われています。
しかし、若くても遺伝的な要因で骨の変化が見られることがありますし、スポーツによる怪我や交通事故などの衝撃で頸椎がずれてしまったり、日頃の姿勢の影響も原因の一つとされています。
頸椎の変性とは骨と骨の間のクッションの役割を果たしている椎間板が弾力性を失っていく事で骨と骨がぶつかり合ったり擦り減ったりすることで、骨のでっぱりが出来て骨が変形します。これを骨棘(とげ状の突起)と言います。
また、靱帯の石灰化や骨化、椎間板が後ろに飛び出したり、脊髄の微細な傷や血行障害などにより脊髄から分かれて足の方へ向かう神経根という神経を圧迫、刺激されることによって痛みを引き起こします。首や肩の筋肉の緊張と圧痛、肩から腕にかけての痛み、(放散痛)脱力感、疲労感が生じ、腕や手指にしびれが出ることも多く、その痛みは軽いものから耐えられない程まで程度は様々です。
症状が進行すると手の筋肉の萎縮や皮膚温の低下、異常発汗、等が現れます。また、脊髄に圧迫が起こると下肢の症状が現れ、歩行障害、排尿、排便障害などの症状が現れます。
・臓器の問題があって起こる肩こり
肩こりを併発する内臓疾患として心臓病や肝臓、胆嚢の病気、胃腸障害、肺の病気などが挙げられます。
狭心症や心筋梗塞では左胸から左肩への放散痛が特徴的です。肩こり以外にも背中の痛みや、強い胸やけ、胸が締め付けられるような激しい痛みが伴います。
右肩やその周辺に痛みやコリがある場合は肝臓や胆嚢の病気の疑いがあります。肝臓の機能に障害があると肝臓の上に位置する横隔膜が刺激され肩の動きが障害され、右の首から肩への痛みが見られます。胆嚢炎や胆石の時は、右の上腹部の激しい痛みと共に右肩から肩甲骨にかけても強く痛みます。
胃腸障害では肩こりや肩甲骨の間に痛みが現れる事があります。肺結核や肺膜炎になると微熱、咳、だるさの症状が起こりますが初期症状として首、肩こりや背中のコリ、だるさが出ることがあります。
慢性的な肩こりがある方は内臓疾患からくる肩こりを見極めにくいかもしれませんが、内臓疾患からくる肩こりの特徴として肩こり以外にも持続的な疲労感、頭痛、動悸や息切れ、めまい、耳鳴り、背中の痛み、発熱、手足のしびれなどの症状が現れるという事や、運動や入浴、マッサージなどで筋肉を緩めても症状が軽減されないという事が挙げられます。
今までに感じたことの無い痛みや違和感が続いたり、肩こり解消の対処をしても、痛みが段々と増しているなどの異常を感じたりした場合は重大な病気が隠れている可能性もありますので、早急に医療機関の受診をお勧めします。
また、疲労や暴飲暴食、ストレス、運動不足、寝不足などで内臓疲労(肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、胃、腸など)が起こり、それが肩や背中のこりとして現れることもあります。
東洋医学では人の体には経絡という道のようなものがあり「生命エネルギー」の通り道になっていると考えられています。主要な経絡は14ありそれぞれが臓器と深い関係にあります。このルート上にあるのがツボと呼ばれ生命エネルギーの出入り口とされています。ツボと臓器は繋がっている為臓器が不調になれば関連するツボが硬くなったり押すと痛んだりするようになります。鍼灸治療ではこの関係を利用し、内臓疲労から起こる肩こりに対し関連する臓器に対応するツボを鍼や灸で刺激を与える事で症状を緩和していきます。
東洋医学からみた変形性膝関節症は気血両虚か『肝腎両虚』によるものだと考えます。
膝には肝、脾、腎の三経が通るため非常に重要な部位になるため障害が起こりやすいです。
三経の内、肝は筋を、脾は肌肉を、腎は骨に関係します。
この三経の状態を治していくことが変形性膝関節症の治療になります。
腫れがひどい場合には、湿熱や寒湿、熱毒、湿毒などの関係も調べて治療していきます。
膝の状態が悪く痛みをかばったまま歩行をしていると腰部の筋緊張を招くことが多く、膝の治療に関しましても腰部や背部の筋緊張緩和を目的に施術を行っていきます。
当院では、自律神経を測る機械で自律神経のバランス状態を調べてから治療に入ります。
交感神経や副交感神経のバランスが崩れていると血行状態がわるくなり回復が遅くなります。痛みはストレスからも引き起こされるため自律神経のバランスが悪いため免疫やストレス耐久力なども痛みの原因となります。
東洋医学から調べた肝、脾、腎に合わせて自律神経を整えることで、変形性膝関節症の治療速度を速めます。
膝は骨盤からの影響を受けやすい部位です。骨盤が歪んでいるために膝に負担がかかり変形性膝関節症になる場合もあります。骨盤が前傾や後傾、左右の歪みにより下肢が正しく地面に着けなくなると間の膝が損傷しやすくなるためです。
当院では、関節の歪みを整える治療法がありますので、歪んでしまった骨盤や股関節、膝関節の矯正を行います。
関節の歯車を上手く整えることで関節内の関節液が出やすくする状態に治してあげることで、関節の動きをスムーズにしていくことができます。
変形性膝関節症の痛みに対する鍼治療の有効性を示す研究が海外でも行われています。
南スペインの公立プライマリーケアセンター疼痛治療班の研究では、変形性膝関節症患者に対する薬物療法の補助治療として鍼の有効性を確かめる試験が行われました。
変形性膝関節症の治療に通る患者97名を対象に試験が行われて、患者をランダムに2つの群に割り当てました。
一つ目の群は、非ステロイド性抗炎症薬の投与に加えて鍼治療を行った群(48名)で、2つ目の群は非ステロイド性抗炎症薬の投与と偽鍼治療群(49名)です。鍼治療群では電気鍼治療も加えて治療期間は12週間行いました。
評価法は、疼痛・こわばり・身体機能に関するサブスケールと疼痛強(VAS)・生活の質プロフィールなども用いて変化を見ていきました。
結果は、鍼治療を行った群が疼痛・こわばり・生活の質全てにおいて偽鍼群よりも顕著に改善されたという結果が出ました。
40代 男性
数か月前より右ひざに痛みが出るようになった。特に朝や座って立ち上がるときなどに痛みが強く出て症状が強く出るときは立ち上がり動作がつらくなり、すっと力がぬけてしまう感じがしていた。あまりに痛いので整形外科を受診したところ変形性膝関節症と診断されてしまった。その時は膝に注射を打って数日痛みが治まったが、数日経つとまた痛みが出てくるため整形外科では手術を勧められた。しかし、知人で同じような手術をした方がいてその方はあまり症状が改善されなかったため手術を何としても回避したいと考えて当院にご来院された。
治療
まず仰向けになっていただき、膝周囲に鍼通電療法とお灸療法を施し、次にうつ伏せで膝裏や腰部にも施術していきました。最後に下肢から腰部にかけて入念にストレッチと骨盤矯正を行っていきました。また、30代の時と比べると体重が20キロほども増えていたためそれが膝への負担を増加させていると考えられているため日々の生活で体重減少と下肢の筋肉のトレーニングを行っていただきました。
◇1回目◇
治療後、立ち上がり動作は楽になったと感じた。次の日の朝も以前よりは痛みを感にくくなった。
◇2~5回目◇
治療後は膝の調子はいいが、数日するとまたもどってしまう状態を繰り返していた。
◇6~10回目◇
体重も徐々に減少。膝への負担も軽減してきた。膝の痛みも感じることが減ってきて立ち上がり動作をしても痛みはほぼない。
変形性膝関節症とは、膝関節の軟骨がすり減って、関節炎や変形を生じて痛みなどを引き起こす病気です。
変形性膝関節症は傾向として、肥満型の女性に多くなりやすい病気です。性別差では1:3の割合で女性の方が多いです。関節軟骨の退行性変性は体重による負荷が関係するため肥満体型の方がなりやすいと考えられています。
原因がはっきりしない加齢によって起こる変形性膝関節症と、何らかの原因により生じる二次性の変形性膝関節症に分類されます。
変形性膝関節症の約8割が膝関節の疾患がなく発症する一次性のものです。
二次性の疾患には、十字靭帯損傷や半月板の外傷、化膿性関節炎などの感染の後遺症、痛風、骨折、脱臼などが影響して起こるものです。
一次性変形性膝関節症は軟骨の退行性変性によって起こるものです。
一次性の変形性膝関節症では、その主因と考えられている膝関節の関節軟骨における退行性変性は40歳代から始まり、50歳代を過ぎると膝痛を中心とした症状の発症が起こってきます。
変形性膝関節症は、関節軟骨の退行性変性を原因とする疾患である。すなわち、加齢による膝関節の関節軟骨の変性によるもので、このため本疾患は高齢者に多くなります。
正常の膝関節の表面には、弾力性に富んだ軟骨に覆われています。この関節軟骨が衝撃や外力からのクッション材になることや、関節の動きを滑らかにする役割があります。
また周りを覆う滑膜からは膝関節がスムーズに動くための関節液がでます。この関節液には、関節の潤滑油と軟骨の栄養の役割があります。
変形性膝関節症の初期段階では、この関節軟骨が摩耗によりすり減り痛みを感じ始めます。膝に負担がかかる動きで感じやすいので、立ち上がり時や、階段昇降時などです。
この状態が続くと状態が進行して、軟骨部分が摩耗により下の骨が変形してくるようになります。この部分が骨棘となり擦れるたび強い痛みを生じるようになります。
この段階になると日常生活でも大きな障害になりますし、骨同士がぶつかり合うため関節の可動域も大きく制限されてきます。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
東洋医学では脳卒中のことを『中風』または『卒中』といわれ、古くから中国の古書「内径」に記載されています。東洋医学では、歴代の医学家が数千年にわたって病因・治療・予防・療養の観点より総合的に研究して学説として形成されていて東洋医学の治療の中でもとても重要な位置づけがなされている疾患の一つです。
当院の鍼灸施術では、古くから脳卒中の特効穴と知られる『中風七穴』を用いたり、1972年から石学敏教授を中心に開発された『醒脳開竅法』の治療理論、自律神経調整治療を用いて総合的に施術していきます。醒脳開竅法の研究では、脳血液供給量や血液年度の改善、脳波の改善等が見られており、治療効果が実証されています。
石学敏教授の研究によると、1972年~1988年の17年間に入院治療患者総数2959例の脳血管障害患者に対して醒脳開竅法を行ったところ、治癒1698例・著効542例・好転613例・無効47例・死亡59例という臨床結果が出ています。
また、麻痺が起こっている筋肉にマッサージやストレッチなどの手技療法も用いて麻痺などの改善をはかります。
感覚障害の場合、損傷を受けた感覚器に繰り返し刺激を与えているうちに感覚機能が回復する可能性があるため鍼通電療法を用いて継続的な電気刺激をあたえていきます。
海外では、脳卒中後遺症に対してリハビリと併用して鍼灸治療が行われているところもあります。今回は、ノルウェーで行われた鍼治療の臨床研究をご紹介します。
一つは、ノルウェーのスンナス・リハビリテーション病院で行われた研究です。片側脳卒中発症後、約1か月入院して引き続きリハビリを受けた49例を対象に鍼治療群(26例)とコントロール群(23例)に分けられました。すべての患者さんに各々に適合したリハビリを6週間にわたって受けていただき鍼治療群に対してはそれと併用して鍼治療を週に3~4回受けてもらい、コントロール群はこれらの追加治療を受けませんでした。
評価法はベッド上での寝返りなど運動能力項目を8個用意し、運動能力評価スケールをこの試験のことをまったく知らない理学療法士が評価しました。また日常生活の活動性を患者さん本人の自己申告に基づく評価法も用いて評価していきました。
主な結果は、6週間後に測定し、鍼治療群とコントロール群ともに運動能力評価スケール・自己申告での評価スケールの改善が見られましたが、鍼治療群がコントロール群よりも運動能力評価スケール・自己申告での評価スケールともに有意な改善を示しました。
この研究では鍼治療を加えることで脳卒中後遺症患者の回復が促進されると結論付けています。
脳卒中は、悪い生活習慣が原因で起こることが多く、生活習慣病の一種だと言われています。
生活習慣を改善して脳卒中の原因となる危険因子を一つでも減らすことはとても重要なのです。その他、脳卒中となる前には体の不調など前兆となる変化が体に起こることが多く、その前兆を見逃さずに軽い症状だとしても専門医に診てもらうことも脳卒中後遺症が重症化しないためにも重要なことです。
脳卒中の危険因子として高血圧や糖尿病が挙げられます。これらは毎日の食生活や運動習慣でコントロールしていく必要があります。塩分摂取を控えて適度な運動をしましょう。
理想的な塩分摂取量は一日だいたい5~7g程度とされています。食べ過ぎや肥満は高血圧や糖尿病、高脂血症の原因となります。一日の摂取カロリーを意識して食べ過ぎには注意しなければいけません。
その他、食物繊維を十分に摂取することも重要です。食物繊維の働きは、コレステロールや胆汁酸を結合して悪玉コレステロールを排出する作用があります。食物繊維は、野菜や豆類、海藻類に豊富に含まれています。また、悪玉コレステロールを摂取しすぎてしまうと動脈硬化の原因となってしまったり、糖や脂質と結合して血管壁に付着してしまい血管内壁を狭めて血流が悪くなってしまいます。
付着したものが剥がれ落ちてしまい血栓となり血管をふさいでしまう心配もあります。バターやお肉の脂身の摂取を控えて植物性の油を用いたり、青魚を積極的摂るようにしてください。イワシやサンマなどの青魚は、エイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸といった不飽和脂肪酸が含まれ、中性脂肪濃度を低下させて血栓を溶かす役割があります。
運動は、筋トレなどの無酸素運動よりもウォーキングやサイクリング、水泳などの有酸素運動が脳卒中予防には有効です。
また、夏の時期などに多くの汗をかいたときや下痢・嘔吐が続いたときには水分摂取を多めにとるように心がけることが必要です。体に水分が少ない状態ですと血液の粘度が高くなり、脳卒中となる危険因子となります。
脳卒中特に脳梗塞が起こりやすい時期について真冬に多く発症して次いで真夏の暑い時期にも発症しやすいと言われています。特に真冬の脱衣所やトイレなど冷えている場所で体が冷えて血管が過度に収縮してしまうことで血管が詰まりやすくなってしまうのです。
夜に目覚めてトイレに行く際などにも注意が必要です。睡眠中は水分を取れないため血液の粘度が高くなっておりさらに体が冷やされるからです。寝る前に水分補給をして起きてトイレに行く際にも上着を一枚羽織るなどして体を冷やさないように注意しましょう。
脳卒中とは、脳の血管がつまって症状の出る『脳梗塞』と脳の血管が出血してしまい症状の出る『脳出血』『くも膜下出血』とがあります。
脳卒中は、日本においてガン・心臓病に次いで第三位の死亡原因となっているとても怖い病気です。また、後遺症も多くの場合残ってしまい、寝たきりとなってしまう方の約3割程度が脳卒中患者という統計があります。脳卒中なかでも脳梗塞が大半を占めて脳内出血が続きます。
脳梗塞は血管が狭くなってしまったり、血管に血栓が詰まることで脳に必要な酸素やエネルギーが十分に送れなくなることにより、脳の細胞が障害を受けて起こるものです。脳梗塞の危険因子となるものに高血圧・高脂血症・糖尿病などが挙げられます。
また脳梗塞には発症するメカニズムによってタイプが分けられます。
ラクナ梗塞
脳の細い血管が詰まって起こる脳梗塞です。脳内に入った血管は最初は太いですが、徐々に枝分かれすることで細くなっていきます。この細い血管がつまります。原因として高血圧が深く関係していると考えられています。
アテローム血栓性脳梗塞
アテローム血栓性脳梗塞は脳内の比較的太い動脈である大動脈・頸動脈などが動脈硬化によって狭くなることで血管が詰まる脳梗塞です。このアテローム血栓性脳梗塞は近年増加傾向にあると言われています。
心原性脳塞栓症
心原性脳塞栓症は心臓でできた血の塊・血栓が血管内を移動して脳に到達して動脈を塞いで起こる脳梗塞です。
脳出血は脳内の血管が何らかの原因で破れてしまって、脳細胞に障害が生じる疾患です。脳出血の一番の危険因子は高血圧です。血圧が高い状態が長く続くと全身の臓器に悪影響を及ぼしますが、脳内血管にも影響を与えて少しずつ血管壁を傷つけてある日突然破れて出血を起こしてしまうのです。脳出血を起こすと障害された部位によって運動障害や感覚障害などを引き起こします。
・高血圧の予防法について
被殻出血
大脳基底核にある被殻問う部分が出血した場合を被殻出血といいます。ここの部分が出血した場合、片麻痺・感覚障害などの症状が出て進行すると意識障害が起きます。
視床出血
脳の間脳という部分の視床に出血が起きた場合を視床出血と言います。視床は嗅覚を除く視覚・聴覚・体性感覚などの感覚情報を大脳皮質へ送る際の中継地点となる重要な部分です。
視床出血が起きると手足や顔面部に感覚障害や麻痺が起きたり、言語障害や視覚障害などが起きてしまいます。
小脳出血
小脳は、後頭部あたりにあり、脳幹部の後方に位置しています。小脳は平衡機能や眼球運動の調整、身体の動きの調整に関わりがある器官です。そのため、小脳出血が起きると激しい後頭部痛とともに回転性のめまいや嘔吐が発症してその後歩行がうまくできない・眼振や視界の不調などの症状が表れます。症状に気づいた時点で早期に病院を受診して治療をすれば社会復帰が出来る可能性が高まりますので、激しい後頭部痛・回転性のめまいを感じたら救急で処置してもらうことが重要になります。
橋出血
橋は脳幹の中の一つの器官です。脳幹には意識中枢や呼吸中枢など生きていくためにとても重要な中枢があります。そのため橋出血となると他の脳出血と比べても重要化することが多いです。症状としましては、意識障害や呼吸障害、両手足の麻痺などがあります。また目の動きにも影響を与えて目の位置が固定されてしまう・左右別々の方向を向いてしまうなどの症状が出ます。
脳卒中後遺症の症状はの脳のどの部分に障害を受けるかによって症状が異なってきますが、主なものとして意識障害・記憶障害・運動障害・感覚障害・言語障害・視覚障害などが挙げられます。
意識障害
脳卒中後に意識が戻らないという状態からそれまでにはいかず日時や場所などがはっきりとわからない、記憶がないなどの状態があらわれます。
運動障害
運動障害は脳の障害が起きた部分の反対側に現れることが特徴です。それは運動神経の経路によるものです。大脳皮質の運動野から末梢へと向かう神経路は、延髄にある錐体で交叉しています。そのため、右の脳で脳卒中が起きると左の手足の麻痺が起こり、逆に左の脳の場合ですと右側に麻痺が起こるのです。
麻痺の程度も様々で、まったく動かすことができない完全麻痺や部分的な麻痺の不全麻痺、筋肉が重たく感じて突っ張ったように感じる程度の痙縮などがあります。
感覚障害
脳卒中後遺症の感覚障害では、主に冷たい熱いといった温覚がわからなくなる・触っているか触っていないかといった触覚がわからなくなる・自分の手足の位置が分からなくなるといった位置覚がわからなくなるといったものがあります。その他痺れなどの異常感覚も現れることがあります。
感覚神経も運動神経同様に延髄の部分で交叉して反対の脳へ伝えられるため、右脳が脳卒中を起こした場合は左半身の感覚障害が起こり、逆に左脳が脳卒中を起こした場合は右半身の感覚障害としてあらわれます。感覚障害は視床と被殻に出血が起きると現れる場合が多いです。
上記のような感覚障害の他に後頭葉が障害されたときは視覚障害・側頭葉が障害されたときは味覚や聴覚、嗅覚の障害があらわれます。
言語障害
脳卒中後遺症の言語障害では主に失語症と構音障害とがあります。
さらに失語症には他人の言葉は理解できますが自分が何か発声しようとしてもうまく言葉が出ないまた話すことが不明瞭である運動性失語症と他人のことがが理解できなく発声はできても支離滅裂な内容になってしまう感覚性失語症があります。
構音障害は、発声するのに必要な筋肉や神経の異常で言葉を出しづらくろれつが回らない状態です。
視覚障害
上記の感覚障害の所でも書きましたが、脳卒中後遺症では視覚障害があらわれることがあります。それは、目で感じた光の情報は、脳神経である視神経を通って大脳に入り、側頭葉で処理されるためその過程で脳卒中により障害されてしまうと物が見なくなったり、物が見える範囲が狭くなる視野狭窄、物が二重に見えてしまう複視の症状が出てしまうのです。
・複視の治療について
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年
鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年
おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年
中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年
渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年
三軒茶屋α鍼灸院を開院
胃腸の機能は五臓六腑の『脾』『胃』、ストレスの感受性は五臓の『肝』と深い関係にあります。
胃は飲食物を受け入れ(受納)、消化し(腐熟)、食べた物を人体に有用な形(清:せい)に変化させます。そしてその清を脾に渡した後、残りのかす(濁)を下の小腸、大腸に降ろします。
脾は清を吸収して気血を生成し、全身に輸送していきます。(運化)。胃の降濁作用に対し、脾は清を肺に持ち上げ(昇清)、運化します。
肝は身体の諸機能を調節(疏泄:そせつ)します。
自律神経系や情緒の安定、気血の流れと深い関係があります。脾胃の消化吸収機能も肝が調節しています。
また、下焦(下半身)を支配している腎の弱り(腎虚)も腸に影響を与えます。さらに、五行説の考えでは肺と大腸は表裏関係にあるため、肺虚(肺の弱り)からも排便異常が起こります。
当院では腸の蠕動運動をつかさどる自律神経のバランスを機械で測定しお身体の状態を把握したうえで治療へ移ります。
腸の蠕動運動は自律神経の特にリラックス神経である副交感神経と深いかかわりがあります。
自律神経系の調整施術を行い、腸の蠕動運動を促し、消化器系を中心とした内臓機能調整と、全身的な血行促進、免疫機能を高め体全体のバランスを整えていきます。
また、東洋医学的観点から『脾胃』『腎』『肝』『肺』などをはじめとした五臓六腑の機能を整えるツボを用います。
特に腹部や腰部にあるツボは腸運動異常に対して有効といわれていますので重点的に施術していきます。
イレウス(腸閉塞)とは、様々な原因で腸管の内容物がつまり、肛門側に移動できなくなった状態のことをいいます。
イレウスは大きく分けると腸管の内容物が物理的に通過できなくなる機械性イレウスと、腸管の血流や神経の障害で通過ができなくなる機能性イレウスがあります。
機械性イレウス
腸が物理的に閉塞している状態で、閉塞性と絞扼性に分けられます。
①閉塞性イレウス(単純性イレウス)
単純性腸閉塞のほとんどは術後の腸管の癒着による癒着性の腸閉塞で主に小腸が閉塞します。また、大腸の閉塞は大腸がんによるものや便秘によるものが原因となって起こることがあります。
②絞扼性イレウス(複雑性イレウス)
複雑性腸閉塞は腸管が捻じれて血流が悪くなる絞扼性のイレウスのことをいいます。腸管が捻じれるため突然の腹部の激痛が出現し、時折ショック状態となります。時間が経つと腸管が壊死してしまうため緊急で治療が必要となります。
機能性イレウス
機能性イレウスとは腸管の正常な働きが悪くなって起こる麻痺性のイレウスと、腸管がけいれんして起きる痙攣性イレウスの2つに分類されます。
①麻痺性イレウス
閉塞の原因が明確ではなく腸管運動の障害によってお起こるものです。開腹手術、急性腹膜炎、薬剤の影響、腸間膜の血栓・塞栓(そくせん)などが原因で、腸管が麻痺することで起こります。
②痙攣性イレウス
中毒などで腸管の一部がけいれんして内容物の移動に障害が生じます。
このうち、鍼灸治療の適応になるのは麻痺性イレウスです。
開腹手術、急性腹膜炎、脊髄損傷、精神疾患、薬剤、腸間膜の血栓・塞栓などが原因で腸管が麻痺することで起こります。
また、麻痺性イレウスはもともと腸に病気のある人や糖尿病、腸管運動が低下しやすい病気の人、高齢者などに起こりやすいといわれています。
医薬品の影響
鼻炎薬、あへん系鎮痛薬、免疫抑制剤、向精神薬、鎮痛薬、頻尿、尿失禁治療薬などのように自律神経系を介して腸管の運動機能を抑制するもの、抗がん剤のように腸管に障害を起こすもの、αーグルコシダーゼ阻害薬(糖尿病治療薬)などで起きるものがあります。
腸管の内容物が停滞するため腹部膨満感、吃逆(きつぎゃく)、吐き気、嘔吐が起こります。また、排便、排ガスの停止、腹痛、脱水などがあります。
・暴飲暴食を避ける
・水分をこまめに摂って排便を促す
・消化の悪い物(山菜・キノコ類、海藻・こんにゃく等)を大量に摂取しない
・体調のすぐれない時は消化の良いものを心がける
・十分な休息をとる(疲労を溜めない)
・適度な運動をする
などが挙げられます。
まず、病歴に関して問診が行われます。症状が現れた時期や腹痛の程度、腹部の手術歴の有無、がん、ヘルニア、クローン病などの病気の既往歴の有無、内服薬の有無などについて確認します。また、身体所見として腸蠕動(ちょうぜんどう)、腹部の膨らみ、腹膜刺激症状、腸雑音を確認したり、鼠径部を観察したりします。
問診によりイレウスが疑われたら、血液検査、X線検査、CT検査、超音波検査などを必要に応じて行います。
治療
症状の重さによって治療内容は変わってきますが、大きく分けて保存治療と手術の2種類の治療法があります。
保存治療として、点滴治療で脱水や電解質異常に対する治療を行いながら、飲食を止め胃腸を休めるとともに、水分管理を厳重に行います。また、必要に応じて抗生物質の投与を行ったり、鼻腔から腸までチューブを挿入して腸の内容物を吸引して腸管内の圧力を下げたりします。
保存療法で効果が乏しい場合には手術が検討されます。