重症筋無力症の鍼灸治療

重症筋無力症とは

重症筋無力症は、難病指定されている疾患の一つで日本人の約10万に13人ほどの割合で発症していると言われています。細やかな検査をしないとわからない場合も多く、実際にはもっと多くの方が重症筋無力症にかかっているとも考えられています。

 

重症筋無力症は女性に多く発症しており、男性よりも1.5~2倍ほど発症リスクが高まります。20代から50代の女性に多かったですが、原因は定かではありませんが近年男女とも50代以上で発症する方も増えていっています。重症筋無力症は、自己免疫疾患の一つで自己免疫疾患は増加傾向にあるため重症筋無力症もその一つかもしれません。

 

重症筋無力症の症状

 

重症筋無力症の症状

重症筋無力症の主な症状は、体のあらゆる部分の筋力が低下してしまうことです。

最も顕著に現れるのが手足を動かす筋肉であったり、眼球を動かす筋肉・まぶたを上にあげる筋肉などです。

そのため、正常時よりも日常生活で余計に手足に負担がかかってしまうためにすぐに疲れてしまったり、夕方以降に症状を強く感じやすくなってしまいます。

手足の筋肉が低下してしまうと物をよく落としてしまったり、字がうまく書けない、症状の進行具合が強い場合ですと立ち上がれない・歩行できないなど著しくQOLが低下してしまいます。

また、呼吸筋にも筋力低下が見あられる場合、呼吸がしづらく命の危険性も伴うこともあり、注意が必要です。

目の筋力が低下してしまうと、目を動かす外眼筋が弱くなることで左右の目の焦点が合いづらくなってしまうため物が二重に見えてしまう複視の症状が出てしまったり、まぶたを上に上げる上眼瞼挙筋やミュラー筋の働きが弱まりまぶたが上がりづらくなる眼瞼下垂症状が現れてしまいます。

・複視の鍼灸治療について

・眼瞼下垂の鍼灸治療について

 

その他にも身体のさまざまな部分が筋力低下をしてしまうことでいろいろな症状を呈します。

・口周りの場合

粗食動作がうまくいかず、物が食べずらくなってしまいます。口がうまく閉まらないこともあるため食べ物やよだれや口角からあふれ出てしまいます。
声を出す筋肉にも影響を与えてしまう場合にろれつがうまく回らない場合もあります。

 

・顔周りの場合

表情がうまく作れません。本人としては笑っている表情をしていると動作をしていても受け手には違う表情に見えてしまう場合もあります。

 

重症筋無力症の原因

重症筋無力症はさまざまな筋肉の働きが正常に作動しません。それは末梢神経と筋肉のつなぎ目である神経筋接合部が自己免疫によって破壊されてしまうことによって脳への筋肉の信号がうまく伝わりづらくなります。

すると筋肉に力が入りづらくなったり、思うように動かせなくなるのです。

なぜ自己免疫によって神経筋接合部が破壊されてしまうかなどのメカニズムはまだ解明されていません。

よって西洋医学的な治療は発症年齢や症状の出ている部位、重症度などによっても変わってきます。

入院などをして免疫機能を抑えるステロイド薬や免疫抑制剤を投与したり、状態がそれほどひどくない場合は抗コリンエステラーゼ薬などを内服して様子を見ることもあります。

自然と症状が落ち着いたり、逆に強いストレスなどがトリガーとなって症状が悪化する場合などもあります。

 

重症筋無力症の鍼灸治療

 

当院にご来院される重症筋無力症の多くは眼瞼下垂症状や複視症状でお悩みになってご来院されます。

自己免疫疾患ですので自律神経も深く関わりがあると考えるためまず初診問診時に自律神経の状態を測定したうえで施術に入っていきます。

主に目の周りの施術がメインとなりますがその他の気になるお身体の部分も併せて施術していきますので問診時に全身の症状をお伝えください。

基本的にまずはうつ伏せで施術を行い、首肩や背部兪穴といいまして五臓六腑に重要なツボがありますのでそれらのツボを刺激していきながらお身体の自律神経のバランス調整などを行ってきます。また、重症筋無力症の方の特徴としまして首肩コリの痛みを感じていらっしゃる方が多いです。

 

重症筋無力症のうつ伏せ鍼治療

 

当院ではそれらの症状にもアプローチしていきます。

うつ伏せ施術が終わりましたら仰向けとなり目の周りの施術を行います。基本的には鍼通電治療を用いますがその方の鍼治療の身体の反応を診て刺激量は調整して行っていきます。

初めてで鍼治療にまだ慣れていない・まだ鍼治療への怖さがある場合に関しましては鍼通電治療を用いず徐々に刺激に慣れさせていきますのでご安心ください。

 

重症筋無力症の鍼治療

 

症例

20代 女性

病態

当院にご来院される1か月前から物が二重に見える複視症状でご来院されました。当初病院では外転神経麻痺と診断を受けていました。重症筋無力症の疑いはあったが、はっきりとは検査結果でない状態。

外転神経麻痺と全身疲労、首肩の筋緊張の緩和を目的にとりあえず治療を開始していきました。

 

症状に波があったものの7回目の施術後には少しずつ複視の状態が改善されていったが、それ以降急に複視症状が悪化。

細かく病院で検査を受けたところ正式に重症筋無力症と診断を受けたとのこと。

それ以降も鍼灸治療を3回受けて真正面の視界はほぼ一つにまで見えるようにまで回復。

 

 

重症筋無力症と診断を受けて入院からの経過

それから1か月ほどはステロイド投与で入院。

退院後もステロイド剤を服用して経過観察。

退院して1か月ほど経過してから鍼灸治療を再開。

 

ステロイド薬による全身のむくみ特に頬部あたりのむくみが気になるとのことで循環改善の鍼灸施術も併せて目の周りの施術を中心に行っていきました。

2~3週間に1度ほどのペースで鍼灸治療を受診。複視の調子は段々と改善されてきて体調良くなってきたことから3か月後に職場復帰。

職場復帰してからも目や身体のメンテナンスで1か月に1度ほどのペースで鍼灸治療を受けられています。

 


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 17:17 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)

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