・大臀筋
お尻を形成する大きな筋肉で、臀部の筋肉の最も表層部に位置します。大臀筋の作用は主に股関節の伸展動作に働き、その他に股関節を外旋させる作用もあります。歩行や走る動作など全ての日常動作に関与します。
・中臀筋
大臀筋の上部に位置し、一部は大殿筋に覆われている筋肉で、股関節の外転、屈曲、伸展、内旋、外旋といった動きに関与します。直立のとき、小臀筋と共に骨盤を支える筋肉で、例えば歩行中体重が片足にかかった時に逆側に骨盤が傾かないように保持する筋肉でもあります。もし、この筋肉に障害や機能不全が起こるとトレンデンブルグ徴候が見られるようになります。
※トレンデンブルグ徴候とは
立っているときや歩行の際に反対側の骨盤が下がってしまう現象で、股関節障害の検査法の一つです。骨盤が下がることで重心が左右に振られ、側方に揺れるような歩き方になってしまいます。
・小臀筋
小臀筋は臀部上部側面にあり、中殿筋の深部にある筋肉です。作用においては中臀筋とほぼ同じで主に股関節の外転や内旋などの動作に関与します。中臀筋と同じように片足に重心をのせたときの軸足の骨盤の安定にも関与しています。
深層外旋六筋(股関節の外旋動作に重要な働きをする筋肉群)
・梨状筋
大臀筋のさらに深層にある筋肉で、文字通り梨の様な形をした筋肉です。主に股関節の外旋に働く筋肉ですが、深層外旋六筋のうち上方に位置しており貢献度は低いものの股関節の外転にも関与しています。また、股関節の安定にも関わる筋肉です。日常動作では、歩行時に方向を転換する際や、立位など股関節を安定させる全ての動作に関与しています。
梨状筋下孔を通る坐骨神経は梨状筋の絞扼を受けやすいので、その影響で坐骨神経痛が出現する場合があります。これを梨状筋症候群といいます。
・内閉鎖筋
股関節の外旋動作に関わる深層外旋六筋の中で最も強力な筋肉で、日常動作では歩行の安定、歩行時の方向転換時、体の向きを変える際の軸足の動き、直立姿勢での骨盤の安定などに貢献しています。
・外閉鎖筋
外閉鎖筋は内閉鎖筋の裏側にあり、外旋深層六筋の中でも最も深部に位置する筋肉です。作用として股関節の外旋と股関節の内旋にもわずかに関わっています。日常動作には歩行時などの方向転換で体の向きを変える時に動きのサポートと制御に働きます。
臀部の痛みを引き起こす怪我や疾患
・腰椎椎間板ヘルニア
椎間板は繊維輪と髄核でできていて、背骨を繋ぎクッションの役割をしています。その一部が出てきて神経を圧迫すると腰部、臀部痛、下肢に痺れや痛みが放散したり、足に力が入りにくくなります。椎間板が加齢などにより変性し繊維輪に亀裂が起こり断裂して起こります。悪い姿勢での動作や作業、喫煙でヘルニアが起こりやすくなることが知られています。
・梨状筋症候群
スポーツなどによる梨状筋を含む股関節周囲の筋肉が硬くなり臀部に痛みを生じる状態を指します。梨状筋の真下を通る坐骨神経を圧迫すると臀部痛、大腿後面痛などを引き起こします。
・腰部脊柱管狭窄症
脊柱管は背骨の中央にあり、脊髄とそれに続く神経(馬尾神経)が通っています。この脊柱管が何らかの原因で狭くなり中を通る神経を圧迫するのが脊柱管狭窄症です。
臀部、下肢の痛み、痺れ、間欠性跛行などの歩行障害が見られます。脊柱管狭窄症の原因は加齢による椎間板の変性や後方の椎間関節の肥大と考えられています。
・仙腸関節障害
仙腸関節とは骨盤にある仙骨と、腸骨の間にある関節で、周囲の靭帯により強固に連結されています。仙腸関節は脊椎の根元にある関節で3~5mm程度の可動域しかありません。この関節では日常生活の身体を支える働きとして根元から脊椎のバランスをとっています。中腰での作業や不用意な動作、あるいはその繰り返しの負荷で関節に微小な不適合が生じ、周辺の靭帯や筋肉に痛みが発生してしまいます。
症状として片側の陽臀部痛、下肢痛が多く見られます。
・肉離れ
肉離れとは運動やその他日常生活の動作で、筋肉に急激な負荷がかかった際に起こりやすい症状です。筋肉が吸収できないほどの負荷が筋肉にかかると筋肉がダメージを受けて損傷し、患部が腫れたり内出血を起こすなどの症状を起こすこともあります。軽度、中度、重度とあり症状の度合いによっては歩行困難となるほど生活への支障も出やすいのが肉離れです。
臀部の痛みの原因は様々ですが、大きく分けて3つの原因が考えられます。
・肉離れ、打撲などの外傷
・椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの腰部の構造的な変形
・腰と臀部の筋肉との連携に機能不全が起きている状態
肉離れや打撲などの外傷による臀部痛は痛み出したきっかけを本人が自覚している場合が多く、損傷の程度が大きくなければ治癒までの期間を安静に過ごしていればその後長期にわたって痛みが続くことは通常ありません。
鍼灸治療では炎症による痛みでも、患部の血液循環を促進し炎症物質の代謝を早めたり、お灸による抗炎症作用により治癒を早める効果が期待できます。
腰部の構造的な変形の場合は臀部の知覚を支配している神経に圧迫や摩擦といった刺激が加わるとその神経の影響下に痛みや痺れが現れます。そのため腰や臀部、下肢のツボに鍼やお灸で刺激を与え、血液の循環を良くしたり筋肉の緊張を和らげることで神経の圧迫や摩擦を軽減させ症状を抑えるのが目的となります。
筋肉や筋膜、靭帯などの軟部組織に機能不全が起こる原因は様々で、お仕事などで長時間の座位、立位、反復的な負荷などによって臀部の筋肉が緊張していたり、姿勢不良による関節のバランスの崩れ、産後の骨盤の関節のねじれや歪み、スポーツによる使いすぎなどが挙げられます。
鍼灸治療では腰部、臀部、下肢の重要なツボに鍼やお灸で刺激を与え、血液循環の促進と筋肉の過緊張を和らげ関節のバランスを整えます。また、必要であれば鍼に微弱な電気を流すことで痛みを抑制する効果を促していきます。
また、当院では自律神経調整の治療も合わせて行い、内臓機能を高めたり全身的な血行を促進し、免疫力を高めることで、全身的なバランスを整え症状が治癒しやすいお体の状態を整えていきます。
40代 女性
デスクワークで長時間座っていることが多く、1時間程座っていると右側のお尻の部分が痛く太とももの裏に軽いしびれが出るようになってしまった。
接骨院などでマッサージを受けていたがあまり改善されなくなって鍼灸治療に興味を持って当院にご来院されました。
治療
身体の筋肉が固まってしまっている所など触診をしていった結果、腰部と臀部の筋緊張、大腿外側部や鼠径部の筋緊張もみられました。
まずうつ伏せになって頂き腰部や臀部、大腿外側部の筋緊張の見られる部位に鍼を刺して電極を繋げる鍼通電療法を行っていきました。その後、大腿周りの筋肉をストレッチなどでもほぐしていきました。
次に仰向けとなって頂き、鼠径部にも鍼を刺してゆるめるほかに大腿前面と下腿前面の筋肉にもアプローチを行っていきました。
経過
毎週末に1回ほどの治療ペースで2ヶ月ほどご通院して頂きました。
30分~1時間ごとに立たないと臀部の痛みが耐えられない程でしたがだんだんと痛み始める時間が延びてきて最終的にはほぼ痛みやしびれを感じないようになりました
症例 2
40代 男性
もともと腰椎椎間板ヘルニアを患っておりだましだまし生活を送っていたが、ここ2,3週間前から臀部の痛みがひどくなってきた。痛みの感覚は痺れというよりも鈍痛で、少し長い時間の歩行や椅子に座っている時間が長いと痛みが増してくる。
職業は美容師で座位や中腰の姿勢で作業することが多く、コルセット無しでは仕事できない状態。
腰痛もあるが、臀部が辛すぎて腰の痛みは軽く感じる。
当院の施術
初回は仰向けとうつ伏せになると痛みが強くなるため、横向きで施術を行いました。
臀部を触診すると、大殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋といった浅層の筋肉の緊張が強く感じられました。
臀部や腰周囲の筋緊張が強い場所や、トリガーポイントに鍼で刺激し低周波鍼通電で固まった筋肉を緩めていきました。
主訴に対して以外にも全身の血流の改善と自然治癒力を高める目的で自律神経の調節も同時に行いました。
痛みが軽減してきたら、首肩コリや他の症状に対する施術も同時に行っていきました。
経過
1回目
少し痛みが軽減した。
まだコルセットは不安で外せない。
2回目
少しずつ痛みが軽くなってきている。
3回目
徐々に痛みが軽減。施術後は楽になるが、仕事をしているとまた痛くなる。
4回目
痛みがかなり楽になってきた。
筋肉の張りも取れてきた様子。
5回目
ためしにコルセットを外して仕事を一日してみたが、問題なく過ごせた。
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 17:45 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)