風邪の東洋医学

風邪の東洋医学的考え

 

東洋医学では、風邪は疲労やストレスで体の抵抗力が弱くなったところに、皮膚から「寒(冷え)」や「外邪(外から入り込む病因)」が侵入して起こると考えられています。

外邪は風邪、暑邪、熱邪、湿邪、燥邪、寒邪があり、この「外邪」の中で風邪の諸症状を引き起こすのに関係が深いのは「風邪(風が体に与える悪影響)」と「寒邪(寒さが体に与える悪影響)」といわれています。

風に当たり続ける事で体調の熱が奪われることや、皮膚や粘膜が乾燥することでウイルスや細菌が体に侵入しやすくなること、寒さにより体が冷える事で血行が悪くなり、免疫力が低下することが関係していると考えられています。

 

この「風邪」と「寒邪」はどこから侵入するかというと「口、鼻、皮膚、毛穴」などからです。この呼吸器や皮膚、毛穴と関係が深いのは「肺」といわれています。

東洋医学における「肺」は水分を全身に行き渡らせる働き、汗を調節する働きがあり、外からの外邪を防ぐ働きも肺が関係しています。肺は乾燥に弱い臓器とされていますので、空気が乾燥する時期には肺を病みやすくなり風邪をひきやすくなると考えられています。

 

肺気虚・・・肺の陽気が不足してしまうと呼吸器系の機能低下や咳、呼吸困難や水分代謝が障害されるために痰の量が増えてしまいます。その他、無力感や息切れなどの気虚の症候もあらわれることがあります。気虚の状態は、病態が長引くことが多く、肺気が持続的に衰える状態に陥りやすくなってしまいます。全身的な気虚としては脾肺気虚・心肺気虚・肺腎気虚が発生してしまうこともあります。
軽度な症状では、自汗・寒気・風邪をひきやすいなどがあります。

肺陰虚・・・肺の陰液の不足の病態で慢性病による栄養障害・炎症による津液消耗や乾燥した環境などによって生じます。症状として乾咳・血がにじまる粘痰、声が出ない、のどの乾燥感、顔面紅潮、微熱や寝汗などの熱症候があらわれます。肺陰虚は気管支の粘液分泌不足・慢性炎症や自律神経系の乱れなどが関連すると考えられています。

 

 

また、東洋医学では五臓六腑の『肺』は、『大腸』との関係が深いと考えられています。肺の下方に向かって機能を推し進める粛降という機能は、大腸の排便機能との関連が深いと言われています。肺の機能が低下してしまうと大腸の機能にも不調が起きやすく、逆のことも言えます。

 

風邪症状に効果のあるとされる漢方の食材

 

・大根
大根は漢方の世界でも『除風寒』といって寒気から風邪を回復させる効能やの作用や『下気和中』といって気の巡りを促進させて胃腸の働きをよくするなどの効能があるとされています。現代の研究でも大根のアルコール抽出成分には、ブドウ球菌や真菌などの細菌に対する抗菌作用があることがわかっています。風邪の初期症状の場合、大根と白ネギを薄切りにしてお湯に入れて飲むと効果的です。その他にも大根の葉に豊富に含まれるビタミンCは抗酸化力があるとされ、血管の粘膜を強化する働きもあります。

 

・ショウガ
ショウガは、風邪に効果があると聞いたことがある方も少なくないのではないでしょうか。漢方の政界でもショウガは、『解表散寒』といって寒気を追い払うことで風邪症状に効果があると言われています。胃腸の働きも回復させる『温中止嘔』や肺の機能を高めて咳を止める『温肺止咳』の効能もあります。現代の研究でも発熱しているマウスにショウガを与えると発汗を促すことで明らかな解熱作用が見られることがわかっています。

 

・ねぎ
ねぎも風邪症状に効果のある食材として知られている一つです。漢方の世界でも『発汗散寒通陽』といいまして節々の関節の痛みを伴う風邪に対して発汗作用で効果があると言われています。また、『消腫解毒』といって毒を解消させて炎症の腫れを引かせる作用があります。

 

 

当院での風に対する鍼灸治療

 

東洋医学では風邪は身体の表面から入ってくると考えられており、特に後頚部から肩にかけては風邪が入ってきやすいところと考えられています。首や肩が凝り固まりそこへ冷たい風が当たると風邪を引きやすい状態になります。

 

風邪に対するうつ伏せ鍼灸治療

 

当院ではまず、自律神経系のバランスを整える治療を行い、五臓六腑の働きを調整し冷えを除き、免疫力を高め自然治癒力を促進する治療を行います。また、東洋医学的観点から肺の働きを補うツボも取り入れていきます。

風邪に対するお灸治療

その後うつ伏せで後頚部から肩の筋緊張を緩め、風邪の治療穴や背部の五臓六腑の働きを調整するツボに鍼やお灸を用いて刺激を与えていきます。同時に腰部や下肢を遠赤外線やお灸で暖める事で、全身の血流を促進し冷えの緩和と、新陳代謝を促進し自然治癒力を高めていきます

風邪の肺経に対する鍼灸治療

風邪の原因

 

風邪の原因となるのは、約8割以上がウイルスで、残りは細菌や微生物が原因と言われています。同じ風邪でも症状の軽いもの~重いものまで様々です。
これは、風邪を引き起こすウイルスが多種存在し、ウイルスの種類やかかった人の状態によって症状に個人差が現れるためといわれています。風邪のウイルスは常に空気と接している鼻や口を通して体に侵入します。
しかし、健康な人の身体には細菌やウイルスなどの侵入を排除するための自己防衛機能(免疫システム)が働いています。風邪の諸症状はこれらの自分の体の免疫機能が働く事で起こる体の反応です。基本的にゆるやかに進行していき、微熱が徐々に上がってきます。熱は一般的に37~38度程度です。

風邪の症状

 

くしゃみ、鼻水、咳

鼻の中には鼻毛や粘膜が空気清浄フィルターのような働きをし、ウイルスや細菌など異物の侵入を防いでいます。鼻の粘膜に風邪ウイルスが付着するとそれを追い出そうとしてくしゃみや鼻水が出ます。また、ウイルスがのどの粘膜に付着した場合は咳がでます。これらの反応はウイルスが侵入した初期段階に起こります。

 

発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、喉の痛み、違和感、咳、痰、倦怠感

ウイルスが鼻や口の粘膜を通過し、身体の中に侵入すると血液中の白血球がウイルスを排除しようとして働きます。白血球の中でも貪食細胞と呼ばれるマクロファージや好中球がその名の通りウイルスや細菌を飲み込み、酵素で分解し殺します。貪食細胞が飲み込みきれなかったウイルスに対しては、特定の病原体を排除する役割を持つタンパク質である抗体が免疫システムとして働きます。
抗体はある種の病原体が侵入した時に白血球のT細胞が指令を出しB細胞が抗体を作り始め、次に同じ病原体が侵入してきたときにブロックします。体内でこれらの免疫システムが働く事でその反応として炎症が起こります。この炎症が寒気、頭痛、発熱、筋肉痛、関節痛、喉の痛みや違和感、倦怠感、咳、痰、鼻水などとして現れます。ただしその症状は誰もが同じように現れるのではなく、個人の体力や体調などにより様々です。これらの炎症反応が強いことは、これまでに感染したことのないウイルスであること、ウイルスの性質が強いことや量が多いこと、ウイルスが深く侵入してしまうことなどが関係しています。

 

風邪と間違えやすい病気

 

・花粉症

スギ花粉が飛散するのは2月~3月にかけての頃です。インフルエンザの流行の時期と重なっています。スギ花粉症がある方ではインフルエンザ、風邪ウイルス、花粉症のどれなのか鑑別が必要になります。見分け方として鼻や喉の症状は花粉症の場合でもなるので鑑別点となりません。
花粉症でも微熱が出ることがありますが、38度を超えるようなことは稀なので高熱の場合は鑑別点となります。しかし目の痒みはインフルエンザウイルスや風邪ウイルスでは通常起こりません。

 

・インフルエンザ

喉の痛み、鼻水、頭痛、悪寒、倦怠感、関節痛、筋肉痛などの症状が現れます。風邪との大きな違いは風邪が徐々に熱が上がるのに対して、インフルエンザは突然38℃台の高熱が出ることが挙げられます。重症化すると気管支炎や肺炎などを併発する事もあり、子供の場合は中耳炎や熱性けいれん、ときには急性脳症を起こす可能性があります。

気になる症状があればすぐに病院で検査を受けましょう。インフルエンザの場合は早期治療が非常に重要です。

 

・アレルギー性鼻炎

家のほこりやダニ、スギ、ヒノキ、ブタクサ、イネなどの花粉によって起こります。くしゃみや水っぽい鼻水、鼻詰まりが特徴です。花粉が原因の場合には喉の痒みや発熱も見られます。春先に多いため、初めて発症した人は風邪と思い込みやすいと言われています。
アレルギー性鼻炎は鼻症状やくしゃみの他に目の痒みや涙、充血下痢や皮膚の痒みなどが起こることもあります。原因が花粉以外の場合は発熱は無いといわれています。

 

・急性気管支炎

多くはウイルスが原因となる病気で鼻水、喉の痛みの他、悪寒やふしぶしの痛み、咳、微熱など風邪そのものの症状が現れます。最初はコンコンと乾いた咳が出ますが、やがて少量の白いたんが、さらに進行すると緑や黄色のたんが絡むようになります。気道が狭くなり、咳の後ゼイゼイという音や、ヒューヒューという音がし始めます。重症化すると高熱が3~5日程続くといわれています。タバコを吸う人、ダイエット中の人、子供や高齢者などは発症しやすいため注意が必要です。

 

・肺炎

細菌やウイルスが鼻や口から侵入することで起こります。健康な人は喉で排除できますが、風邪を引いて喉に炎症が起こっていたり、慢性疾患などで体力や免疫力が弱っているなどに肺炎を起こしやすくなります。

体力の少ない子供や高齢者は特に注意が必要です。肺炎は、ガン、心臓病に続いて日本人の死亡原因の第3位となっている病気です。症状は肺炎を起こす病原体の種類や炎症を起こしている部位によって少しずつ異なります。たいてい38度以上の高熱がでますが、高齢者の場合は熱が出ない場合もあります。肺炎の特徴は激しい咳です。

たんを伴なわない乾いた咳が長く続くことが多いのですが、黄色や緑色の痰を伴なう湿った咳が出る事もあります。他にも悪寒、息苦しさ、胸痛、筋肉痛、関節痛、食欲不振、倦怠感、頭痛などの症状がみられます。

炎症が肺を包む胸膜に及ぶと胸痛が起こったり、血液の中の成分が染み出して胸と胸壁の間の胸腔に水が溜まることで胸膜炎を起こすこともあります。また、悪化すると血液中の酸素不足からチアノーゼ(唇や顔が紫色になること)が現れ、呼吸数や脈が速くなることもあります。

 

・結核

結核菌という細菌が体内に入り、増殖することにより起こる病気です。結核菌に感染しても必ず発症するわけではなく、健康であれば菌を吸い込んだ後人の身体は免疫によって結核菌を抑え込んでしまいます。

しかし、体力が低下したり、病気になって免疫機能が働かなくなるなどして抵抗力が落ちると、抑え込まれていた結核菌が再び活動を始め、発病する可能性があります。日本では結核の約八割は肺結核です。結核菌が肺の内部で増え、結核に特有な様々な炎症が起こ

ります。続いて肺が破壊されていき、呼吸する力が低下します。肺以外の臓器が侵されることもあり、リンパ節、腎臓、骨、脳など体のあらゆる部分に影響が及ぶことがあります。初期の症状は風邪と似ており、倦怠感、咳やたん、発熱(微熱)などの症状が長く続くのが特徴です。ただしそれが2週間以上も続いたり、良くなったり悪くなったりを繰り返すところが風邪と異なります。

 

風邪にかからないための生活習慣

風邪にかからないためには、免疫機能を強化し、感染を予防するための生活習慣が重要です。以下は、風邪予防のための生活習慣の一部です。

  • 手洗いと衛生
    頻繁に手を洗うことが風邪予防の基本です。特に公共の場や外出先で触れたり、人ごみにいる場合は、手洗いや手指の消毒を行うことが重要です。

  • 適切な栄養摂取
    バランスの取れた食事を摂り、特にビタミンCや亜鉛、他の重要な栄養素を含む食品を摂ることで、免疫機能をサポートできます。

  • 適度な運動
    適度な運動は免疫機能を向上させ、全体的な健康を促進します。適度な運動は血行を良くし、免疫細胞の循環を助けます。

  • 十分な睡眠
    睡眠は免疫機能をサポートし、体の修復と再生に重要です。毎晩適切な時間を確保して質の良い睡眠をとることが大切です。

  • ストレス管理
    長期間のストレスは免疫機能を低下させることがあります。リラックス技術や趣味、適切な休息を取るなど、ストレスを軽減する方法を見つけましょう。

  • 適切な服装
    風邪の季節や寒冷地域にいる場合は、適切な服装を心がけましょう。風邪を引きやすい部位をしっかりと覆い、風を通さないようにします。

    大切な食習慣
    風邪にかからないための食習慣

  • バランスの取れた食事
    主食(ごはん、パン、麺)、主菜(肉、魚、豆腐などのたんぱく質源)、副菜(野菜)、果物をバランスよく摂ることが重要です。これにより、必要な栄養素を摂取できます。

  • 多様な色と種類の野菜
    野菜にはさまざまな栄養素が含まれています。色とりどりの野菜を取り入れ、異なる種類の野菜を食べることで、多様な栄養素を摂ることができます。

  • 適切なたんぱく質摂取
    肉、魚、卵、豆腐、豆類などから適切な量のたんぱく質を摂ることが大切です。たんぱく質は細胞や筋肉の構築に関与し、満腹感も提供します。

  • 良い脂質を重視
    良質な脂質(オメガ-3脂肪酸やモノ不飽和脂肪酸)を意識して摂ることが大切です。オリーブオイル、アボカド、ナッツ、魚などが良い脂質の源です。

  • 食物繊維を摂る
    穀物、野菜、果物、豆類などの食物繊維を摂ることで、腸の健康を保ち、便通を良くします。食物繊維は満腹感も与え、過食を防ぐのに役立ちます。

  • 適量の果物摂取
    果物にはビタミンやミネラル、抗酸化物質が豊富に含まれています。毎日適量の果物を摂ることで、免疫機能をサポートし、全体的な健康を促進します。

  • 水分補給
    十分な水分を摂ることは非常に重要です。水分は代謝を促進し、体内の機能をサポートします。飲み物としては水が最適です。
  • 食事を楽しむ
    ストレスなく食事を楽しむことも重要です。ゆっくりと食事を摂り、食べること自体を楽しむことで、満足感が得られます。

 

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 13:07 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)

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