ヒステリー球は自律神経の乱れが原因で生じている場合が多いため、当院では自律神経測定器で自律神経の状態を把握したうえで施術していきます。ヒステリー球では特に交感神経が過亢進の状態が多く、主に副交感神経の活動を活発にさせて交感神経の活動を抑える身体がリラックスできるような施術を行っていきます。
鍼灸施術は自律神経のバランスが整えることできるということは研究結果でも出ています。
その他東洋医学的観点より、肝の働きを正常に戻すようなツボも刺激することや付随して起こる精神症状にも心や腎の働きを整えることでアプローチしていきます。
梅核気の初期では、日常生活でもそこまで支障をきたすことが少ないですが、症状が進行するとうつ病や自律神経失調症など症状が重症化してしまう危険性がありますので早めの治療が重要となってきます。
ヒステリー球を東洋医学では、『梅核気』といいます。五臓六腑では『肝』の病変で梅核気が起きると考えられています。
東洋医学での肝の役割・機能は西洋医学の肝臓と少し違ってきます。東洋医学での肝は、『肝は疏泄を主る』『肝は血を蔵する』『肝は筋を主る』の役割機能があります。
・肝は疏泄を主る
気を全身のすみずみまで行き渡らせることを指します。これは、情緒を安定させて精神様態を快適に保ったり、自律神経系の機能によって各機能が正常に行われるように調整する役割・機能を担っているということです。
・肝は血を蔵する
肝が血を貯蔵して必要に応じて供給して消費することを指します。また、血液循環の調整にも大きな役割を果たして自律神経系を通じて血管の収縮や弛緩をさせて体内の細胞への血流量を調整しています。その他、女性の場合では子宮への血液量の調整や自律神経系を介した女性ホルモンの調整も行うことで月経や妊娠が正常に行えるようにしています。
・肝は筋を主る
肝は血流の調整や神経系を介して筋肉の緊張や弛緩を調整しています。四肢の筋や腱の緊張を制御することで関節の運動もつかさどっているのです。
梅核気の症状に効果のあるとされる漢方に『半夏厚朴湯』があります。半夏厚朴湯は、気の巡りをよくする効能があることで梅核気を改善させます。梅核気は上記のように肝の病変によってのどの部分の『気』の巡りが悪くなったり、『血』が不足したり過剰となってしまうことでノドに何か詰まったような異物感を感じると考えられており、半夏厚朴湯はそれを解消させる効能があるのです。
この3つの機能のうち梅核気では、「肝の疏泄を主る」機能が低下して起こると考えられています。それにより、気は全身のすみずみまで行き渡ることができなくなり、『肝気鬱結』という症状が出ます。これは自律神経系の過緊張が主体で起こると考えられています。精神的な緊張状態が続くことや精神的な不安定状態が続くことで生じやすいほか病邪や引用の失調状態でも引き起こされるとされています。
肝気鬱結の主な症状は、胸苦しい・ノドのつかえた感じ・憂鬱感・精神不安定・食欲不振・便秘と下痢症状など多岐にわたります。肝気鬱結に痰症状が加わることで梅核気となりやすくなってしまいます。
ヒステリー球とは喉に大きな異常がないのにもかかわらず喉の違和感などの感覚を引き起こす疾患であまり聞きなれない言葉かもしれませんが、ストレス社会と言われる現代ではヒステリー球で悩まされている方が意外にも多いのです。
このような症状がある方はヒステリー球の疑いがあります。
☑ノドに異物感を感じる
☑食べ物が飲み込みにくい
☑風邪を引いたときのようなノドのイガイガ感
☑ノドに物がつかえたような感覚が消えない
☑ノドの奥が狭くなって息苦しさを感じる
☑ストレスや不安感が消えない
☑睡眠の質が悪く、寝つきが悪い
☑胸やけが続く
☑吐き気
このような症状が出ている場合、ヒステリー球の疑いがありますが、自己判断をするのは危険です。上記のようなノドの異常が出ると、喉頭がんや腫瘍が見つかる・逆流性食道炎や風邪症状の可能性もありますので一度耳鼻咽喉科や内科を受診して検査を受ける必要があります。
ヒステリー球の場合、腫瘍やがんなどの器質的異常が見られないため、検査では異常が見られません。医学的には咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)と呼ばれています。他にも梅核気(ばいかくき)感覚球(かんかくきゅう)咽頭神経症(いんとうしんけいしょう)などとも呼ばれることもあります。。
上述の通り、ヒステリー球は検査では異常が見られません。
ヒステリー球を起こす最大の原因はストレス等による自律神経の乱れと考えられているからです。また、喉の病気やドライマウス、空気の乾燥なども原因として挙げられます。
自律神経は心臓や血管、内臓の働きなど、自分の意志とは無関係に身体をコントロールしている神経のことを指します。自律神経には交感神経と副交感神経との二つの神経があり、この二つの神経のバランスが崩れると「自律神経の乱れ」ということとなり、身体に様々な悪影響が出てくるのです。
交感神経は活動的な神経で基本的に筋肉を収縮させて運動時や仕事中など集中して作業をするときに働く神経で、逆に副交感神経は身体を休める神経で夕方から夜にかけて活動が優位となってくる神経です。この二つの神経が乱れることで、よく知られている疾患としましては自律神経失調症やうつ病、不安神経症などは自律神経のバランスの乱れが大きな原因となります。
・自律神経失調症について
・うつ病について
・不安神経症について
自律神経は、筋肉の働きや胃腸の働き、血液の供給やエネルギー消費などにもとても大きな役割を担っています。自律神経が乱れてしまうとこれらの身体の働きも乱れてきてしまうのです。
ヒステリー球の場合、交感神経が活発な状態が続いてしまい、ノド周囲の筋肉が萎縮してしまい圧迫された状態が続くことでノドの違和感や異物感、息苦しさなどを感じるのです。
これは不安や疲労、緊張状態などが引き金となるため、仕事中や仕事に向かう際、会議中や人混みなどストレスの多い環境で比較的発症しやすいです。その他、睡眠不足や運動不足、食事の偏りなど生活習慣の乱れによってもヒステリー球の症状は起こりやすくなってしまうのです。
症例
20代 男性
3か月前から喉に違和感が出始めて、喉に異物があるような感覚に悩まされている。
病院で検査をしたが特に異常がなく、ヒステリー球と診断された。
喉の異物感のおかげで仕事に集中できない、休日も気になってリラックスできないなど、日常生活に支障が出ている。他の治療を色々試したが期待通りの効果はなく、藁にもすがる思いで来院した。
普段はIT企業に勤めており、パソコン作業が多い。今の仕事が好きでやりがいを感じており、睡眠時間を削ってしまう事もある。
ストレスは人並にあるが、そこまで強く感じたことはないが、
半年前に地方から東京に引っ越ししてきて環境変化へのストレスはある。
ストレートネックで首肩のコリ、眼精疲労は慢性的にある。
当院の施術
自律神経測定器で自律神経の状態をチェックしました。
交感神経が副交感神経よりも過剰に働いており、第一の原因と判断し自律神経の調節、とくに副交感神経の働きを促す施術を行いました。
それと同時に、胸鎖乳突筋や僧帽筋に刺鍼をし首肩の緊張をとり、ヒステリーに効果がある「天突」、「中脘」、「膻中」「豊隆」「気海」といったツボを刺激しました。
また施術以外にも、運動や食事の指導も行いました。
◇1回目◇
あまり変化はない
◇2回目◇
少し楽になったような気がするが、大きな変化はない
◇3回目◇
初回に比べてかなり楽になってきた
◇4回目◇
調子よいが、まだ完全に取れていない
最近ランニングをするようになってから気分もいいし、体調が良くなってきた
◇5回目◇
気になる頻度が減ってきた
◇6回目◇
ほとんど気にならない
30代女性
半年前、ペットロスがきっかけで喉の違和感や息苦しさがぬけず病院を診断したところ、病的な所見はなく、ヒステリー球ではないかと診断された。
当時は喉まわりだけでなく全身の疲労感があったが現在は特に気にならない。
喉まわりだけがなかなか改善されないため、仕事中や就寝時など気になってしまい日常生活に支障をきたすため当院を受診された。
昔からストレスには弱いほうで、気持ちがおちこむと体調も悪くなりやすい。
当院の治療
ヒステリー球の治療は、第一に自律神経のバランスを整えることが重要です。
ストレスが加わり交感神経がたかぶる時間が長いと、身体をリラックスさせる時間がなくなり喉周りの筋肉の圧迫も続いてしまいます。
手足やお腹のツボをつかい自律神経を整え、それから首や喉周辺の筋肉を緩め症状改善を図りました。
また、慢性的な身体の疲れもでていたため背中のツボにも鍼と灸を行い、治療頻度は1週間に1回程度で経過をみていくようにした。
◇1回目◇
常に身体に力が入っている状態だったことに気づいた。
治療後は少し息がしやすいような気がした。
◇2〜4回目◇
変化なし
◇5〜12回目◇
回数を重ねるごとにのどの圧迫感が減り、仕事に集中できるようになった。
就寝時は意識してしまうためかまだ違和感が残っている。
◇13〜15回目◇
日常的にあまり気にならない程度まで回復。
今後は治療間隔を2週間あけて経過をみる。
ヒステリー球を治すまたは予防するためには自律神経の状態が大きくかかわってくることから生活習慣がとても重要となってきます。基本的なストレスや疲れを溜め込まない生活を心がける必要があるのです。
・十分な睡眠
睡眠時間が十分に確保されていない状態が続いてしまうと体の疲れが溜まりやすく、精神状態もイライラや不安が強く出やすい状態となってしまいます。また夜に十分な睡眠をとることで自律神経の状態も整いやすくなります。
・適度な運動
主にウォーキングや軽めのジョギング、体操やヨガなどの有酸素運動は、副交感神経の活動を活発にすると言われています。逆に筋力トレーニングなどの筋肉に大きな負担のかけるトレーニングでは交感神経が優位になりやすいので夕方から夜かけての筋力トレーニングは避けた方が良いです。
・労働時間
労働時間の超過は体の疲れが溜まりやすく、自律神経の状態も悪くなりやすいです。夜の残業や仕事を家にまで持ち込むと自律神経の乱れに繋がります。
・規則正しい食事
栄養のバランスが偏っていたり、食事のとる時間が毎日バラバラですと自律神経が乱されやすくなります。胃腸の働きは自律神経が担っているため、食事を摂る時間は重要で夜の9時以降の食事はできるだけ避けた方が良いです。
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 11:53 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)