過敏性腸症候群の鍼灸治療

2018年11月10日

①過敏性腸症候群に対する当院の鍼灸治療

 

当院の過敏性腸症候群に対する施術は、第一にハリやお灸などの刺激により自律神経のバランスを整える自律神経調整法を行います。
中医学では局所的に診るのではなく、全体的に診ることが特徴のひとつであり、全身治療を行うことにより自然治癒力を高めます

また過敏性腸症候群は東洋医学的に見ると「」や「」の機能低下が原因で発症すると考えられているので、鍼灸施術を用いてツボを刺激することで「脾」「胃」の機能を正常化させます。
また過敏性腸症候群の方は、手足の温度や体温が低い場合が数多く見受けられるので、腹部を温めるお灸などを施し、体の内側から温めることで全身の血流改善体の冷えの改善を試みます。

その他過敏性腸症候群の患者さんでは頭痛肩こり・慢性的な痛み・めまいなどを訴える方が少なくありません。そういった患者さんには頭痛・肩こりやめまいの解消・痛みの緩和を目的とした治療も並行して行っていきます。

当院の施術は、東洋医学の観点により少しでも過敏性腸症候群を改善できる機会を提供することにより、患者さんの仕事の質の向上や生活の質の向上が期待できます。

 

 

過敏性腸症候群の鍼治療

 

電気のお灸でお腹を温めて自律神経の調整を行います。

 

鍼灸治療で腸の蠕動運動が活発化するという研究結果も

全日本鍼灸学会では、足三里と合谷への鍼刺激と腹部のツボ(中かん・天枢・関元)への鍼刺激によって腸の蠕動運動の指標であるグル音が亢進したという研究結果が報告されています。

また、研究では、過敏性腸症候群とクローン病患者ともに4年以上罹患期間があり長期の薬物療法を受けている方に鍼灸治療を行ったところ症状の改善とともに薬の量の減量もしくは中止することが出来たという報告もあります。

「鍼灸で過敏性腸症候群が改善する」

www.jsam.jp/pdflib/kiso_p10.pdf

 

 

②過敏性腸症候群に対する東洋医学的考え

過敏性腸症候群は、東洋医学でいう「」「」の病変が大きく関係していると考えられています。
東洋医学でいう「脾」「胃」は西洋医学でいうそれらとは違った役割・機能を持ちます。
たとえば東洋医学でいう「脾」は、消化器系全般の消化吸収機能・栄養代謝・体液調節の一部・免疫機能などの機能やリンパ系の循環などを含めた役割を担っています。
また、「胃」は、胆汁・膵液ならびに胃・十二指腸・小腸などの消化機能すべてを含めた役割を担っています。「脾」と「胃」は互いに密接な関係があり、「胃」が飲食物を消化して栄養物に変化させて「脾」が栄養物を吸収し、体中に運搬します。

また、その過程でできた不要物は、小腸や大腸に運ばれるのです。その際に「脾」「胃」に異常があると小腸や大腸にも影響を与えて下痢や便秘、腹部膨満感などを引き起こすと考えられています。

「脾」「胃」は熱や寒の邪気を受けると異常をきたしやすく(主に冷た過ぎる食べ物や熱過ぎる食べ物、刺激物)、またストレスなどにより「肝」の「情緒を安定させ精神状態を快適に保つ機能」や「視床下部・自律神経系の機能によって、全身の各機能が円滑に行われるように調節する機能」が低下すると、「脾」「胃」に影響を与えるといわれています。

 

 

 

③過敏性腸症候群とは?

過敏性腸症候群とは、腸の検査などを行っても炎症や潰瘍などの目に見える異常がないのにもかかわらず、慢性的な下痢便秘などの便通異常と腹痛腹部の張り感などの腹部症状を呈する症候群です。
過敏性腸症候群は、高頻度な心身症のうちの一つで、社会的・環境的ストレスなどにより消化器症状が増悪することが特徴です。文明が発展していくことに伴って、以前には見られなかった現代文明特有のストレスによる関連疾患が増加しており、過敏性腸症候群はその代表的な疾患です。

過敏性腸症候群により、QOL(生活の質)は著しく低下し、仕事の質にも影響を与えることから過敏性腸症候群の治療していくことはとても重要なことです。

 

過敏性腸症候群

 

④過敏性腸症候群の鍼灸治療症例

 

30代 男性 会社員

一年前よりお腹の張り感と下痢の症状が出るようになってきた。会議での発表やお客様との大事な打ち合わせがある日の朝に特に感じるようになり、電車の中で腹痛に耐え切れなくなり、目的地の手前で降りてトイレに駆け込むこともあった。市販の薬などで対応していたが、ここ2~3週間で毎日のように症状が出るようになってしまい、さすがに心配になり胃腸内科を受診。

検査では特に大きな原因は見つからず、過敏性腸症候群と診断された。
胃腸内科から処方された薬を飲む以外にも治療法はないかとインターネットで探していたところ当院を見つけてご来院されました。

・自律神経測定の結果
お昼頃計測したのにもかかわらず副交感神経が非常に高い状態で、自律神経の乱れが出ていた。副交感神経は、日中低くて夕方・夜にかけて上がってきて自然と眠りにつくことが理想的です。この方の場合平日は夜遅くまで仕事しており、副交感神経の理想的な形とは真逆の反応が出ていると考えられます。また、寝つきも悪くてご本人としても眠りが浅い状態と感じており、朝目覚めてもすっきりした感じはない。
自律神経の状態を正常に戻すことが重要だと考えられます。

治療経過
◇1回目◇
鍼灸治療が初めてということもあり、弱い刺激でお灸は心地よい柔らかい暖かさのお灸法を用いました。治療後、体がすっきりした感じがあったとのことでしたが、次の日の朝には治療前と同じような症状が出てしまった。

◇2~3回目◇
1回目の治療後少しだるさが出てしまったが、少し横になるとだるさが取れてくるということで刺激の量も少しずつ増やしていきました。治療後の朝腹痛などの症状はあまり感じられなかったが、次の日には症状が戻ってしまっていた。

◇3~5回目◇
下痢の症状は治まってきたが逆に便秘になることもあり、下痢と便秘を繰り返すようになった。

◇6~8回目◇
夜寝つきが良くなってきた。時間のある時や出勤時間などにウォーキングなどの運動をすることで夜程よい身体の疲れを感じる。便秘も解消されてきた。

◇9~10回目◇
再度自律神経測定器で計測した結果、昼頃では副交感神経が前回よりも低く正常に近い値だった。下痢・便秘の状態も良く、体調が良いとのこと。重要な会議の前などは少し緊張して少し寝つきが悪かったり、腹部に違和感を感じることは少しある。

 

この方の場合、運動習慣もなく、お酒も毎日のように飲まれるということで食生活も乱れていました。当院での施術と並行して生活習慣も改善していただけるようなプログラムを組みました。現在も身体の調子を整えるという目的で定期的にご来院していただいております。

 

 

 

30代 女性 営業職

当院ご来院1週間前から下痢が続いている。内科で薬を処方されて服用しているが、なかなか改善されてこない。最近仕事でのストレスを強く感じており、特に朝出社する直前に腹痛及び下痢症状が出ることが多い。
日常生活でも普段から身体の冷えが強く、夕方以降は足のむくみもひどくなる。疲れた時は顔色が悪くなり、血色が悪く同僚からも心配されていたとのこと。睡眠や食事はとることができているが、食欲はなく食べる量も少ない。また朝疲れが残っていると感じる日が多い。運動は週末にパーソナルトレーナーの指導のもとでトレーニングやストレッチを行っている。

 

当院の治療
自律神経測定器の結果、自律神経の乱れがあったのでまず第一に自律神経を整える目的で施術しました。下肢のむくみや冷えに関しましてはお灸を多用して施術して改善をはかります。東洋医学的検査法の脈診や舌診を行った結果、『肝血虚』『脾胃陽虚』だったのでそれらを整える治療もしていきました。

治療経過
◇1回目◇
鍼灸治療が初めて刺激に対して少し不安があるということで細い鍼・熱すぎないお灸を用いて弱い刺激を心掛けました。治療を受けた日の夜は寝つきが良く、深い睡眠がとれたとのこと

◇2回目◇
治療後、身体の疲れが取れてきていると実感。まだ朝は腹痛や下痢症状が出る。週末以外にも軽いストレッチやウォーキングをしてもらうようにした。

◇3回目◇
身体の冷え・疲れがだいぶ取れてきた。脈診をしても脈に力が出てきて「肝」や「脾」もだいぶ回復してきた様子

◇4回目◇
週に2日ほどしか朝の下痢・腹痛症状を感じなかった。以前は薬を飲んでもあまり効果がなかったが、同じ薬でも症状が止まり効果が出るようになってきた。

◇5回目◇
ほぼ朝の症状を感じなくなった。食欲も出て睡眠も深くなり身体の疲れも感じにくくなった

◇6回目以降◇
今まで週に1~2回のペースで治療を受けていたが間隔を空けて治療を受けるようになった。どうしても仕事などで疲れることもあるので今は1か月に1~2回のペースで通院加療中。

 

 

 

⑤過敏性腸症候群の症状

過敏性腸症候群は、消化管症状と同時に精神症状もあらわれます。不安感睡眠障害倦怠感うつ病自律神経失調症状などが多くみられます。
過敏性腸症候群もそれら精神症状も精神的・身体的ストレスが引き金と考えられており、合併頻度が非常に高いのです。

過敏性腸症候群は、20代~40代の女性に多く発症すると言われていますが、日々変化している現代社会において近年は、男性や小児・高齢者においても発症することが少なくありません。
一般的に便秘型過敏性腸症候群は女性が多く発症して、下痢型過敏性腸症候群は男性が発症しやすいといわれています。女性は大腸の収縮力が男性よりも弱く、大腸通過時間が遅くなることから便秘になりやすいと考えられています。

 

 

⑥過敏性腸症候群の原因

過敏性腸症候群の発生メカニズムは未だ十分に明らかにされていませんが、遺伝と社会環境職業・教育環境などの環境要因の両方がその発生頻度に影響する可能性が考えられており、ストレスとの関わりが大きいです。
社会環境的な要因として農村部より都市部、発展途上国よりも先進国、一般人よりも医学部学生の発生頻度が高いという報告もあり、ストレスの大きいと考えられる環境の方が発症しやすいといえます。

 

過敏性腸症候群における症状は、下痢・便秘などの便通異常と腹痛・腹部不快感などの知覚に関するものに大きく分けられます。
一般的に消化管運動が亢進すると下痢が誘発されて消化管の圧力が上昇し、腹痛をも引き起こすと考えられています。また逆に消化管運動が低下すると便秘になると考えられます。

脳は消化管における運動・分泌・血流などを調節しています。一方、消化管からの情報は脳へ伝達され、脳から消化管へ伝えられる調節機能にも影響を与えます。すなわち、脳と消化管の間は一方通行ではなく、相互に情報が行き来しているのです。

 

近年、過敏性腸症候群ではこの脳と腸の相関関係がとても重要なことと考えられているのです。
様々なストレスは、自律神経のバランスを崩して、自律神経によって支配されている消化管運動に異常を起こし、さらに痛みを感じやすくさせます。そういった消化管異常は、便通異常を引き起こし、消化管内の圧力を上昇させて腹痛をも引き起こします。

そして便通異常や腹痛の情報は、脳にストレスを感じさせてさらに消化管異常や痛みを増悪させる、そういった負のスパイラルが過敏性腸症候群の病態把握として注目されています。
この負のスパイラルを解消するには、全体を診て治療するという東洋医学の特徴が重要であり、鍼灸施術が有効であると当院は考えています。

 

 


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸整骨院|眼精疲労 at 09:36 / 院長コラム 過敏性腸症候群の鍼灸治療 への3件のコメント

お問い合わせはこちらから
ここをタッチするとすぐにお電話が出来ます
メールでのお問い合わせはこちらから