口腔顔面痛に対する鍼灸治療

口腔顔面痛の東洋医学

 

痛みを東洋医学的に考えた場合「不通則通(ふつうそくつう)」という考え方があり、これは、気血の不足や滞りで血行が悪くなると痛みが生じるという考え方です。

痛みの中でも痺れを伴うような神経痛などを「痺証(ひしょう)」といい、痺とは「通じない」という意味があり、なんらかの外的要因が原因で気血の流れが滞ることで痛みやしびれが生じると考えます。この外的要因として外邪(湿邪、風邪、寒邪、熱邪、乾邪)、湿痰、瘀血、血虚、気虚、気滞などが挙げられます。

また、五臓六腑の肝は疏泄作用(気を巡らす作用)を司り、ストレスなどにより肝の機能が低下すると気の滞りが生じやすくなります。

 

口腔顔面痛に対する当院での鍼灸治療

自律神経測定器により、現在のお身体の状態を測定した後治療に移ります。

激しい痛みがある場合交感神経系は過剰に緊張し、末梢血管を収縮させ、運動神経系も興奮するため筋肉の緊張が起こり、血管を圧迫して血行を悪化させます。

 

そうすると発痛物質などの代謝産物が一層溜まりさらに痛みを増強させることになります。

これは「痛みの悪循環」と呼ばれる現象です。この痛みの悪循環を断ち切るため、まず、自律神経系の調整を行い、内臓機能調整、全身の血行促進、免疫力を高め、本来体が持つ然治癒力の活性化を促します。

口腔顔面痛の自律神経調整鍼灸

 

 

また、東洋医学的観点から気血の流れを促すツボや五臓六腑の機能調整に関わるツボも取り入れます。顔面痛と頸部のアライメント(関節のバランス)や筋緊張は深い関わりがあると考えられているため、うつ伏せで首肩周囲の治療を行った後、仰向けで顔面部の痛みの強い部分やその周囲のツボに鍼やお灸で刺激を与え、痛みを脳に伝える神経経路をブロックする作用を促し、「脳内モルヒネ」と称されるエンドルフィン等の分泌を促します。また、血行を促進して痛みの原因となる物質を排出しやすくします。

 

口腔顔面痛の鍼治療

 

必要であると判断した場合鍼に微弱な電気を流すことで鎮痛効果を促します。

口腔顔面痛の鍼通電治療

 

 

口腔顔面痛とは

 

歯、舌、顎、顔面部、頭部などに出現する痛みの総称です。原因が明確な顔面痛は症状に応じた治療を行えば完治しますが、レントゲンや検査に異常がないのにもかかわらずズキズキ鈍い痛みを持続的に感じる、激しい痛みが断続的に起こるなどの症状が現ることがあります。

統計的に性差は圧倒的に女性に多く見られ、特に中高年に多いといわれています。

 

 

口腔顔面痛の原因

口腔顔面痛の原因は多岐に渡り神経の病気外傷ウイルス細菌感染、中には脳神経の異常や心筋梗塞など決して見逃すことのできない病気の一現象を示す場合もあるため十分な注意が必要です。

しかし、原因不明の痛みに関してはストレスや心理的葛藤が深く関係していると考えられており、心身共に緊張した状態が長く続くことにより起こる筋肉の緊張や、脳の痛みをコントロールしたり、認知するシステムの変調によって脳の中で痛みが増幅されたり、勝手に作り出されていることが近年の研究で分かってきました。

これら原因不明の慢性疼痛に対していわゆる痛み止め(鎮痛薬)は末梢神経に作用する薬であるため脳の中で起こる痛みには効果が無いとされています。

口腔盤面痛の主な症状

・顎が痛む

・歯を抜いたり神経をとったのに歯が痛む

・顔面がピリピリとしびれる

・口の中や舌が痛い

・耳の周囲が痛む

・頭や目の周囲が痛む

 

口腔顔面痛を起こす主な疾患

 

非定型歯痛、顔面痛

X線などの検査において異常を見つけることが出来ない顔面の痛みを非定型顔面痛、歯の痛みを非定型歯痛といいます。

外傷や炎症など局所に明らかな原因が認められないにもかかわらず、歯やその付近に痛みが起こります。鎮痛薬や外科処置、歯科処置では改善が得られない場合が多く、原因も十分に解明されていませんが、神経系の異常が原因とする「神経因性疼痛説」や心理社会的要因が原因とされる「心因説」などの説があります。

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顎関節症

顎関節とその周囲の異常により顎運動時の疼痛、関節雑音、開口障害などを伴ないます。咀嚼筋自体や、顎関節に過剰負荷が加わることにより発症されるとされています。

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副鼻腔炎

いわゆる蓄膿症と呼ばれる疾患で、風邪や顔の怪我、アレルギーなどを原因として発症する副鼻腔の炎症です。

一ヶ月程度で自然に軽快する急性副鼻腔炎と、症状が三カ月以上に渡り続くものを慢性副鼻腔炎に分けられます。鼻の粘膜が腫れ、副鼻腔の空洞に膿や剥がれた粘膜が溜まり症状として頭痛、顔面痛、顔面腫脹、黄色や緑の鼻汁、鼻づまり、嗅覚障害などの鼻症状が見られます。

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三叉神経痛

三叉神経は顔や歯の感覚(痛覚、触覚、温覚など)を脳に伝える神経ですが、この神経の支配領域に起こる発作性神経痛を三叉神経痛と呼びます。三叉神経の痛みの特徴は三叉神経の神経分布に沿って数秒から数十秒の電気が走ったような痛みが生じます。

触れると痛みを感じる部分(トリガーゾーン)があり、洗顔や会話、食事、歯みがきなどで痛みが誘発されます。

原因は完全に解明されていませんが、その多くが脳の脳幹と呼ばれる三叉神経の出入り口のところで動脈硬化などで屈曲した動脈や静脈が直接ぶつかり、神経を圧迫することによって生じると考えられています。

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帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹は子供の頃にかかった水ぼうそうの原因ウイルスである水痘帯状疱疹ウイルスが神経の中に潜んでいて、加齢やストレスなどにより免疫力が低下した際に水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化する事により発症します。急性期には発疹と水疱が起こり、酷い時には皮膚の潰瘍も生じます。抗ウイルス薬の服用により皮膚症状は通常そのうちに治りますが、皮膚症状が消えた後にも急性期より耐え難い痛みが続いたり、一時帯状疱疹が良くなったのにもかかわらず一ヶ月ほどして再び痛みが起こる痛みが起こる場合があります。これを帯状疱疹後神経痛といいます。痛みは年齢が高いほど、急性期の疼痛が強い場合、初期の治療が遅くなった場合ひどくなる傾向にあります。

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片頭痛

脳血管の拡張により周囲の炎症によって神経が刺激されて起こる頭痛です。悪心、嘔吐などを伴う事もあり、関連痛として歯痛や顔面痛を伴うことがあります。

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群発頭痛

偏頭痛と同じタイプの頭痛の一つで非常に激しい顔面部の痛みを訴えます。痛みが生じるところは目の周囲の多いのですが、痛みの症状によっては上顎の奥歯が痛いと訴えることがあります。痛みの他涙、目の充血、鼻水、鼻づまりなどの症状も認められます。

 

 

舌痛症・口腔内灼熱症候群

舌がヒリヒリ、ピリピリとした痛みや熱さを感じる病気です。多くは舌の先端や舌の縁がなどに持続性、自発性の痛みを訴えますが、食事には支障がなく、舌の表面の外見は異常がないのが特徴です。原因がいまだ明らかになっていない病気ですが、心気症に近い病態で何らかの精神的要因が背景にあるものという考えや、更年期の女性に多い事からホルモンのアンバランスや自律神経の変調なども関係があると考えられています。

 

 

 

痛みのメカニズム

痛みは医学的に発生メカニズムから大きく3つに分けて考えられています。

・侵害受容性疼痛

骨折や打撲、筋肉痛、火傷など炎症や物理的、化学的な刺激によって起こる痛みで、通常は急性期は疼痛部位に炎症の3兆候(発赤、腫脹、熱感)を伴ないます。

 

 

・神経障害性疼痛

しびれや神経痛など神経への刺激や損傷によって神経系統の異常興奮が原因で起こる痛み

 

 

・心因性疼痛

医学的な検査をしても以上が見られないため原因不明の痛みとされ、心理的、社会的なストレス要素が関係していると考えられる痛みで、非器質的疼痛といわれます。

 

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 10:01 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)

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