顎関節症の鍼灸治療

顎関節症に対する当院の鍼灸治療

顎関節症に対する当院の鍼灸治療は、

 

・痛みの緩和
鍼を刺して通電療法を行うことで患部の痛みを緩和させること。その他、腕の顔面部の痛みを軽減させる効果のある「合谷」と「曲池」というツボも鍼通電を行うこともあります。患部との併用して行うことで鎮痛効果がさらに期待できます。

顎関節症の鎮痛鍼灸治療

・筋緊張の緩和
物をかむ際に使われる側頭筋や咬筋などの咀嚼筋の筋緊張緩和。それらの筋肉が過緊張状態ですと、顎関節に負担が大きくかかるため顎関節症の原因ともなります。

顎関節症の鍼灸治療

・自律神経調整治療
心因性の顎関節症に代表されるように精神的なストレス、自律神経の乱れによっても顎関節の痛みとなって現れることもあります。特に交感神経が優位が続いてしまうと交感神経は筋や血管を収縮される作用があるため筋肉のコリや発痛物質が留まってしまうことによって痛みの原因となってしまうのです。また、過度にストレスが溜まっている状態ですと気付かないうちに喰いしばり状態となって顎関節症の原因となります。そこで当院では自律神経測定器で自律神経を計測してその人に合ったオーダーメイド施術を行うことで顎関節症にも効果が期待できます。

顎関節症の自律神経調整鍼灸

 

・頸肩の筋緊張の緩和
特に歯のかみ合わせが悪かったり、喰いしばり動作が多い状態ですと首や肩の筋緊張が強く出ている方が多いです。頸肩の筋緊張を施術によって緩和することで咬筋の筋緊張も緩和されやすくなります。

 顎関節症の頸肩への鍼灸治療

この4点を主な柱として施術していきます。痛みの強く出ている時期では3~7日ほどの間隔で集中的な施術を行って痛みが軽減してきたところで施術間隔を延ばしていきます。

 

顎関節症に対する鍼灸治療の効果について

外傷性のものなど器質的な原因で起きている顎関節症では、あまり有効性はみられないが、特に器質的に異常が見られない場合、鍼灸治療の有効性が著効にあらわれたという研究結果も出ています。
全日本鍼灸学会
『顎関節症に対する鍼灸治療』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/36/4/36_4_250/_article/-char/ja/

この研究では、顎関節症の鍼灸治療で有効率が75%あったという報告がされています。

 

 

顎関節症のセルフケア

 

顎関節症は、嚙み合わせや咀嚼筋の疲労、精神的なストレスが溜まって起こるなど多岐にわたります。鎮痛薬でその場だけ凌いでもそれまでと変わらない生活を続けているとまた同じような痛みやその他の首こり・肩こり・精神的な症状などさまざまな症状に波及しかねません。まずは顎関節症の原因となりやすい生活習慣を見直して改善していきましょう。

・急性期は患部を冷やす
顎関節症で痛みが強く出て間もない時期は、炎症を拡大させないためにも痛みが出ている患部を氷水などで冷やすようにすると良いです。痛みが出てもそのままにしておいてしまうと症状が長く続いてしまう危険性があります。すると、痛みが慢性的となってしまいさらに咀嚼筋などの周囲の筋肉が緊張しやすい状態となり回復も遅くなってしまいます。

・日中の食いしばりに注意する
何気ないパソコン作業での仕事中などでも自然と食いしばることがあり、それが顎関節症の原因となり得ると考えられています。集中してしまうとどうしても自分が食いしばっているか気が向かないかと思いますので仕事中など目のつく場所にメモ書きを貼っておいて自分が食いしばっているか確認すると良いでしょう。

・硬いものや咀嚼回数の多いものは控える
顎関節症の症状が出ている場合は、硬い食べ物が咀嚼回数の増える食物はなるべく控えるようにしましょう。顎関節に負担をかけてしまうと回復も遅くなります。痛みが出いる時はなるべく負担をかけないように注意しましょう。

・ストレスの軽減
ストレスが溜まって自律神経が乱れている状態ですと血流や筋肉の状態も悪くなってしまうためストレスを溜め込まないということは顎関節症の改善にもとても重要です。

 

 

 

顎関節症とは

顎関節症とは咀嚼したり、口の開閉をする際に、咀嚼筋(顎を動かす筋肉)に痛みや違和感を感じる咀嚼筋群の機能障害と顎関節に伴う痛みや雑音を伴う可動域制限の総称です。
顎の痛みの他に咀嚼や大きな口を開ける時にカックンとかガリガリといった関節音が生じたり、顎の関節が変形して下顎頭と直接、または間接的に擦れ合うとシャリシャリ、グニュといった軋轢音が生じる事もあります。また、顎の痛みの他にも長い間喋ったり食べ物を噛んだりすると顎がだるく疲れたり、顎が引っ掛かったようになり動かなくなる、

顎関節症の原因は様々で、
・かみ合わせの異常
(不正咬合)
・頸椎の異常
・筋肉の緊張
・外傷
・精神的ストレス
・疲れ

を蓄積させる生活習慣などが挙げられますが直接的には歯ぎしりや食いしばりによる影響が最も大きいと考えられます。歯ぎしりや食いしばりがあると咀嚼筋に疲労が蓄積すると顎関節にも過剰な負担がかかり咀嚼筋や顎関節の機能障害(口を大きく開けられない、硬いものが噛めないなど)が現れます。顎関節症の発生頻度は歯科受診患者総数の約10%で20~40代の女性が多いと言われていますが最近では若年者の患者が増加しています。

 

このような顎関節に直接かかわる症状の他に身体の各部位に様々な症状が見られる場合もあります。

耳と平衡感覚
耳鳴り難聴めまい、耳閉感、立ちくらみなど

鼻と喉
鼻閉感、喉の閉塞感、鼻やのどの圧迫感など


充血、涙目、視力低下など

その他
肩こり頭痛、全身のだるさ、疲労感、頸椎ヘルニア、手足のしびれや痛みなど

 

 

 顎関節症の分類

顎関節症は障害を受け入ている部位によって四つに分類されます。

 

・顎関節円板(がくかんせつえんばん)障害
顎の関節である関節円板がずれてしまっている状態です。顎関節症患者の6~7割がこの顎関節円板障害だといわれています。

 

・咀嚼筋痛(そしゃくきんつう)障害
咀嚼筋という筋肉が噛みしめなどによってダメージを受ける事によって起こります。

咀嚼筋とは何かを嚙むために下顎を動かす筋肉の総称で、側頭部にある「側頭筋」や顎関節の外側にある「咬筋」などが含まれます。咀嚼筋は大きな筋肉で頭部、肩や首につながっているため、咀嚼筋痛障害になると首や肩の痛みやこり、頭痛などを感じる事があります。

 

・顎関節痛障害
顎関節に強い力が加わり、顎関節がねじれている状態です。主に歯のかみ合わせが悪い状態で食事を行う事により起こります。顎を動かすと顎関節に強い痛みを感じます。

 

・変形性顎関節症
長期間あごの骨に負担がかかり続ける事によって、下顎の骨が変形してしまった状態です。変形性顎関節症は長い間顎関節症を患っている人が多いため年齢層が高い傾向にあります。

 

 

顎関節症に含まれる疾患

 

外側翼突筋の障害
就寝時の歯ぎしりなどにより外側翼突筋が断続的に強く収縮し筋肉が強く疲労することで障害を受けることがあります。軽症の段階では筋肉疲労の状態ですが、重症化すると腱鞘炎に移行する事があります。

変形性顎関節症
顎関節を構成する軟骨や骨の変性性疾患で診断はX線写真により、関節結節が擦り減ったり、骨が刺激により増殖する骨棘の形成、軟部組織の骨化などが認められるとこの疾患名が付けられます。主に対症療法が中心で予後は良くないといわれています。

心因性の顎関節症
顎関節症の症状があるのにかかわらず、診断することが出来ない場合、この疾患名が付けられることがあります。心理的、精神的原因によりものとされるため、一般的に精神科医へ診察を依頼する事になります。うつ病自律神経失調症も併発している危険性があります。

 

症例

 

20代 女性

一か月前から硬いものを食べるとあごに痛みが生じるようになり、最近は痛くて口が開けなくなった。開口時には、軋むような音が鳴る。

仕事でのストレスの影響で睡眠時の食いしばりが強く、朝起きたらあごの筋肉が痛い。日中も気が付いたら食いしばっているため夕方になるとあごの痛みが強くなる。

強度の肩こりがあり、酷い時は頭痛も出る。

 

当院の施術

営業のお仕事をされていて、慢性的な強いストレスを感じるという事でしたので、自律神経測定器でお身体の状態を確認したところ、交感神経が非常に高く、休日にもかかわらずリラックス出来ていない様子でした。

運動習慣もなく、休日は日頃の仕事の疲れで寝ていることが多いという事でした。

まず自律神経、とくに副交感神経を働かせる施術を行い、首肩の筋肉にも刺鍼をし、筋緊張緊張緩和を目的とした施術を行いました。

顎の患部に関しては、「カクッ」というクリック音ではないため関節円盤の障害というよりも、顎周りの咬筋の緊張による障害と判断し、顎や首の前面にある胸鎖乳突筋、こめかみの筋肉といった顎の動作に関わる筋肉の硬結に電気鍼療法を行いました。

治療間隔は1週間に1回のペースで、一回一回状態に合わせて刺激量を変えていきました。

 

1回目

鍼灸治療は初めてで、緊張されていた様子だったので、初回は鍼に慣れて頂く事も踏まえてソフトな刺激量で行った

2回目

痛みや開口障害にまだ大きな変化はないが、心身共にリラックスできた

3回目

鍼に慣れてきたので、少し刺激量を上げた

4回目

少し痛みが軽減し、口も開けるようになってきたが、硬さはまだある

5回目

口がスムーズに開きやすくなってきた。

6回目

口は開くが、痛みは変わらず。

今回から同様の施術に加え、さらなる鎮痛作用上昇を目的とした鍼麻酔方式を取り入れた。

7回目

痛みが軽減。大きく口も開くようになった。以前の様な軋む音も頻度が減少

8回目

硬いもの食べると多少痛みはあるが、それ以外ではほとんど気にならない

9回目

ほぼ気にならなくなって、日常生活に支障がないまでに改善

 

症例2

 

20代 男性

1ヶ月前から口を開くと顎に痛みが出るようになり病院の診察を受けた結果、顎関節症と診断された。

もともと食いしばりがあり、歯が欠けることもあった。

顎の痛みに加え、開口時のパキッというクリック音やギシギシ軋む音が聞こえる。

普段はシステムエンジニアとして1日中パソコンに向かっていることが多く、精神的ストレスや肩こり、慢性的な疲労を感じている。

 

施術

患部は右顎で食いしばりのためか、右の顎のほうが少し筋肉の盛り上がりが目立ち、触診しても過剰な筋緊張がみられました。

側頭部もかなり硬さがあり、首肩の筋緊張も強い食いしばりが原因の一つと感じました。

まずうつ伏せで首肩の筋緊張を緩和を目的とした施術を行い、次に横向きで顎や顎周辺の筋緊張と痛みの緩和を目的とした施術を行いました。

施術の頻度は週1〜2回のペース。

状態に合わせて電気鍼も行いました。

 

経過

1回目

まだ大きな変化はない

2回目

顎筋緊張が取れた感じがする。痛みが少し軽減した

3回目

以前より大きく口を開くことができるようになってきた

4回目

口を開くと音はまだなるが、痛みは軽くなってきている

5回目

痛みはほぼなく、音も出なくなった。

日常生活で気にならない程度まで改善した

 

症例3

20代 女性

2か月前から起床時に顎の張りが気になるようになり、日が経つにつれて痛みに変わってきた。放っておけばそのうち治ると思い最初は気にしていなかったが、徐々に痛みが強くなり口が開けないほどに悪化してきている。開口時のクリック音は無いが、筋肉がガチガチに硬直して顎の部分が盛り上がっている。日中の食いしばる感覚はないが、就寝中の食いしばりの自覚はある。

顎の筋緊張から側頭部や首肩のコリも強く感じるようになってきた。

当院の施術

転職して環境が変わってストレスを感じていたということだったため、問診、触診に加え自律神経測定器で現在の状態を確認していきました。

測定の結果、交感神経が8、副交感神経が2の割合になっており、交感神経の働きが過剰になっていることが分かりました。

この方の根本的な原因が交感神経の過剰な高まりによるものと考え、当院では

①自律神経の調節治療

②顎周辺の筋緊張や疼痛を軽減する目的で低周波鍼通電療法

③首肩コリの緩和

以上を中心とした施術を行いました。

週に1~2回の感覚で通院していただきました。

経過

1回目

顎の痛みが少し軽減した。

口も開きやすくなったが時間が経つと元に戻ってしまう。

2回目

顎の痛みが和らいできた。押すとまだ痛みが出る。

食事も以前より楽になってきた。

3回目

顎の硬さはまだ感じられるが、痛みはほとんど気にならない。

4回目~6回目

口も以前のように開けられるようになり、痛みも気にならない。

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 16:16 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)

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