動脈硬化に対する鍼灸治療は、WHO(世界保健機関)にも効果が認められている鍼灸治療対象疾患のうちの一つです。近年、鍼灸治療は肩こりや腰痛などの整形外科系疾患の他にも内科系疾患などにも効果があると研究が進められており、欧米などでも多くの疾患で施術が行われています。
東洋医学では、動脈硬化の状態を『瘀血』ととらえられています。
瘀血とは、体内の血の巡りが悪くなっていう状態で血は汚れてスムーズに血管内を進むことができなくなっています。東洋医学では、血の循環は、五臓六腑の『肝』と『心』が大きな役割を担っています。
肝の機能として「肝は血を蔵する」という役割があります。これには2つの意味があり、肝が血を貯蔵して必要に応じて供給または消費することと、自律神経系の作用を介して血管を収縮または弛緩させて体内のすみずみまで血流量を調整するというものです。
また心の機能として「心は血脈をつかさどる」という役割があります。これは、心臓のポンプ作用によって血液の運搬や体内各部の新陳代謝を促しています。
この肝と心の2つの作用が上手く働いている状態ですと血はスムーズに供給されて身体の細部に行き渡るようになるのです。この2つは相互に密接な相関関係にあります。
心の血脈をつかさどるという作用と菅野血管運動神経調節機能によって循環系は正常に保たれ、肝の臓する血に含まれる栄養分によって心も正常に機能して全身に運ばれるのです。
肝と心どちらが不調な状態でも血はうまく運ばれずに瘀血の状態を引き起こしやすくなってしまうのです。
東洋医学では、瘀血が起きている場所によって様々な症状が出るとされ、肩こりや腰痛など身体の痛みや痺れの原因にもなると言われています。当院では、体のどの部分に瘀血が生じているのか、五臓六腑の肝と心を中心としたどの部分が弱っているのか逆に強くなりすぎているのかを脈診や舌診などで判断して施術していきます。
その他、血液の流れは自律神経が支配しているため、自律神経測定器で自律神経のバランスを測定したいうえで自律神経のバランスを改善していきます。
当院の動脈硬化の予防・改善を目的とする鍼灸治療では、瘀血という東洋医学的観点と自律神経という西洋医学的観点の双方からアプローチしていきます。
※動脈硬化症の鍼灸治療予防の効果について
閉塞性動脈硬化症の鍼灸治療の効果につきまして全日本鍼灸学科では研究されています。
「鍼で血管が新生されるー閉塞性動脈硬化症(ASO)の鍼灸治療」
www.jsam.jp/pdflib/kiso_p16.pdf
下肢の閉塞性動脈硬化症で鍼灸治療の前後において下肢の皮膚温をサーモグラムで測定した結果、鍼治療後のサーモグラムでは著名な皮膚温の上昇が認められました。
鍼刺刺激で増加すると言われる血管拡張物資が増加していることがわかり、さらに血管新生誘導因子の生産に関する遺伝子を発現させて血管を新生させることも研究結果で分かっています。この結果、閉塞性動脈硬化症の症状に対する改善緩和やその他の体の箇所の動脈硬化症の予防にもつながることが推測されます。
動脈硬化とは、その名の通り動脈が硬くなってしまうことでそれ自体は症状を何も起こしません。しかし、動脈硬化が進行してしまうと、動脈の弾力性が失われて血管が傷つきやすくなってしまったり、血管内に脂肪や悪玉コレステロールなどが沈着してしまって血管内が狭くなってしまうことで動脈が破れてしまったり、詰まったりしてしまいます。
すると、心筋梗塞や脳梗塞など死にも直結してしまう取り返しのつかない病気にかかってしまう危険性が高くなってしまうのです。
私たち人間の中に流れる血管には、「動脈」と「静脈」との2種類があります。
動脈は基本的に心臓から送り届けられた酸素や栄養素の富んだ血液を体の細部に運ぶことで人間が生きていくうえでとても大切な役割を担っています。動脈は心臓から全身や肺に向かって血液の流れを作っています。
特に心臓に直結している大動脈は最も太い動脈で酸素やぶどう糖などを多く含んでおり、そこから細動脈に枝分かれをして細胞組織に血液を運んでいる重要な動脈です。
大動脈は直径で約3cmもあり、その大動脈が異変を起こした場合、大動脈瘤や大動脈破裂などの重篤な疾患にかかってしまいます。
動脈の特徴として心臓から勢いのある血液が送られてくるため、動脈の血管壁は分厚く弾力性が高くなっています。簡単に破れたりつまらないような構造となっているのです。
動脈の血管壁は、3層に分かれおり、内側から内膜→中膜→外膜となっておりそれぞれに役割があります。
内膜
内膜は血管壁の一番内側に位置しているため、血液に直接触れることができる膜です。よって内膜から血液に含まれる酸素や栄養素を必要な分だけ取り込む役割があります。その他、血管の収縮や拡張なども調節する血管作動物質も放出しています。
中膜
中膜は血管壁の真ん中に位置することで血管の弾力性を保つ役割を担っています。中膜は平滑筋細胞と弾性繊維が何層に重なることで血管にしなやかさや血管の収縮・拡張運動を実現しています。
外膜
外膜は血管の一番外側に位置することで血管を保護しています。また外膜には細いリンパ管や神経などが張り巡らされています。
一方、静脈は身体や肺から戻ってくる血管を静脈といい、肺静脈系と大静脈系に二分されています。動脈が体の深層を通っているのに対して静脈は体の表層を通り、体の熱を放出する放熱器官の役割や血液の貯溜の役割を担っています。
動脈硬化は、別名サイレントキラーと呼ばれています。動脈硬化が怖いところは、なり始めは特に症状が無く、症状が体に出ないうちに進行していって症状が出るころには手遅れな状態となり死へ至る危険性のあることです。実際に動脈硬化が大きな原因とされる脳卒中や心疾患が原因で死に至る日本人は全体で3割にものぼるというデータもあります。
動脈硬化は、動脈の血管が細くなったり、破れたりしてしまい必要な酸素や栄養が全身に行き渡らなくなってしまい臓器や組織に異常をきたします。そのほか動脈硬化は、心臓に大きな負担をかけて高血圧や心肥大を引き起こしてしまいます。
動脈硬化が原因で起こる疾患の代表的なものとして
・脳梗塞
脳の血管に動脈硬化が起こってしまい、血栓となりそれが詰まると半身不随や言語障害などの後遺症が残ってしまったり、梗塞が起こった場所によっては死に至ることもあります。
・心筋梗塞
心臓に酸素や栄養素を供給する冠動脈が動脈硬化となり、血管内が狭くなってしまうと必要な物質を心臓に送り届けることができなくなり、心臓が酸欠状態となってしまいます。心筋梗塞は突然死をまねくとても怖い疾患です。
・腎疾患
腎臓は血液内の不要になった物質をこすフィルター作用がありますが、その腎臓の血管に動脈硬化が起きてしまうと腎機能が低下して腎臓病となってしまいます。
・閉塞性動脈硬化症
下肢の血管に動脈硬化が起こってしまった場合、下肢の血流が著しく悪化して痛みや痺れ症状が起きて症状が進行して最悪の場合、足の切断が必要になる場合もあります。
動脈硬化は血管の老化現象と言われており、年齢を重ねていくごとに動脈の弾力性が損なわれてしまうことや血管が狭くなってしまうことはある程度仕方ないことです。年齢を重ねていくにしたがって血管内の内膜には悪玉コレステロールや脂肪が沈着していき、内側は盛り上がってきて60歳ともなると血管自体が狭くなってしまいます。
その結果、血液がスムーズに全身に行き渡らなくなり、心臓は全身に血液を送り届かせようとすることで心筋は肥大してより多くの圧で血液を拍出します。すると、内膜には無理なストレスが生じて内膜を覆っている細胞や蓄積した脂肪斑が剥がれて血栓ができ、それが詰まることで心筋梗塞や脳梗塞を起こしてしまうのです。
高血圧や糖尿病・肥満の方は、血管内の内皮細胞が傷つきやすかったり、血液中の脂質や悪玉コレステロールの値が高くなり、動脈硬化となりやすいのです。
このような高血圧や糖尿病・肥満などの日々の生活習慣が高い割合で原因とされる動脈硬化の進行は、日々の生活習慣を変えることである程度防ぐことが可能と言われています。
・高血圧
高血圧の状態が続いてしまうと心臓からの血液の流れの圧が血管壁を傷つけやすい状態が続くということで血管内にコレステロールが付着しやすくなります。すると、内皮細胞の機能が低下して動脈硬化となってしまうのです。 動脈硬化が進みやすい血圧は、「収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上」とされています。
血圧は塩分の摂りすぎや肥満によって高くなりやすいので、日々の食生活で塩分を控えたり、お腹7分目に抑えて決して食べ過ぎないように心がけましょう。
・肥満
肥満で内臓脂肪が過剰に溜まった状態ですと血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪が増えて血管内の内皮細胞に付着しやすくなり、動脈硬化を引き起こします。さらに肥満は高血圧や糖尿病の合併しやすく、日々の体重を注視する事はとても重要です。
日本肥満学会の基準では、BMI値[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]が25以上となると肥満気味とされており、自分自身で計算して頂いて25以上となる方は、食生活に見直しや運動習慣を取り入れるなどを行うようにしてください。
・糖尿病
糖尿病は、慢性的に血糖値が高くなる状態で、血液中に高血糖状態が続いてしまうと、血糖を下げる役割のあるインスリンの働きが低下して血液中に脂質が多い状態となります。
すると内皮細胞に脂肪斑ができやすい状態となってしまうのです。
・喫煙習慣
タバコをすると煙に含まれる一酸化炭素により、善玉コレステロールが減ってしまい逆に悪玉コレステロールが増える要因となります。すると血液は粘度が増した状態となりやすく、血管内は傷つきやすくなり動脈硬化を引き起こします。
また、煙に含まれるニコチンは血管を収縮させる作用があるため動脈硬化を引き起こしやすいといえます。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 11:24 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)