不妊症の鍼灸

2019年5月30日

不妊症の治療

不妊症の鍼灸治療はWHO(世界保健機構)に適応疾患として定義されています。

WHOの適応疾患について←

①不妊に対する当院の施術

当院の不妊に対する施術は、第一に鍼灸治療を施すことにより全身の調整を図り、自律神経のバランスを整えることです。当院のはり灸施術は、交感神経を抑制し副交感神経の働きを促すばかりでなく、双方の神経の活動量を高めて自律神経のバランスを整えることが研究結果でも出ています。自律神経のバランスを整えることにより、妊娠しやすい体をつくります。

不妊症の鍼灸治療

東洋医学では局所的に診るのではなく、全体的に診ることが特徴のひとつであり、全身治療を行うことにより自然治癒力を高めます。また不妊は東洋医学的に診ると「」や「」の不調が原因で発症すると考えられているので、鍼灸治療を用いてツボを刺激することで「腎」の機能を活性化させたり、「肝」の機能低下・過亢進を抑えます。

・妊娠力をつける
妊娠力をつけるためには、「腎精」が重要であり、それは先天的なものが多くを占めますが、日々の食生活や規則正しい生活によりある程度補うことが可能です。当治療院では、治療により正常に食事や運動ができる体づくりやアドバイスを行っていきます。

・冷えを改善する
東洋医学では、血流低下や血流の滞りによる体の冷えは健康に悪いだけでなく、妊娠しづらい体となってしまうと考えられています。当院独自のお灸を施すことにより、体全体を温め、血流改善を促します。それにより月経不順や子宮内膜症の改善・予防を期待できます。

冷え性改善のお灸

・全身のリラックス効果
ストレスは、交感神経を過亢進状態へと導き、体のあらゆる機能に悪影響を与えるのはもちろんこと妊娠にも大きな影響を与えてしまいます。ストレスを受けると特に視床下部というホルモン指令部に影響を与えます。視床下部はホルモン指令部の役割の他に自律神経調整の中枢でもあります。強いストレスを受けて自律神経が乱れた状態だとホルモンバランスの異常をも引き起こします。
心地よい刺激での治療により全身をリラックス状態へと導き、交感神経の過亢進を抑制してホルモンバランスを正常に戻します。
その他不妊症の患者さんでは日中の頭痛・慢性的な肩こり腰痛・のぼせ・めまいなどを訴える方が少なくありません。そういった不定愁訴は身体にストレスを与え、妊娠に対してもよくないものです。当院では不定愁訴の改善を目的とした治療も並行して行っていきます。

 

不妊症の鍼灸治療

当院の不妊症に対する治療目的は、不妊で悩んでいる方の妊娠する確率を少しでもあげ、正常な妊娠・出産のサポートをすることです。妊娠するのはもちろん患者さん当人ですが、ご家族を含めた周りのサポートはとても重要なものとなっています。相談しやすい環境づくり、心地よい空間づくりを心掛け、日々診療しております。
また西洋医学とは違う東洋医学の観点により少しでも妊娠ができる機会を提供し、患者さんに少しでもお役にたてるよう尽力します。

 

②不妊症に対する東洋医学的考え

不妊症は、五臓六腑の「腎」と「肝」の働きが特に重要と東洋医学では考えられています。

<妊娠における「腎」の役割>
妊娠において特に重要なのが、腎で貯蔵される「精」というものがあります。それは、「腎精」とも呼ばれており、人体の生長・発育・生殖及び生命活動を維持する物質的な基礎です。これは、内分泌系全般の機能を指すものと考えられ、腎は妊娠に必要なホルモンバランスをつかさどっていると考えているのです。「腎精」が充実していると女性の場合、正常に月経が到来し、男性の場合は射精することができます。
また、「腎精」は、父母から先天的に受け継いだ要素が大きく、青年期に最も充実し、中年頃から次第に衰えて老化に向かいます。日々の偏った食生活やストレス・不摂生が続くいたりするとこの「腎精」が不足してしまい、ホルモン異常による排卵障害や着床障害、男性の場合ですと、造精機能障害を引き起こしてしまうのです。

<妊娠における「肝」の役割>
東洋医学でいう「肝」は血を蔵するとういう妊娠にとても重要な役割を持ちます。
「肝」は血を貯蔵し必要に応じて供給・消費します。血液循環の調節面では、自律神経系の作用を通じて血管を収縮あるいは弛緩させて体内各部の血流量を調整します。
女性の場合には、子宮に十分な血液を供給して子宮内膜や筋肉を順調に機能させ、またはホルモンバランスを調節して月経・妊娠・分娩が正常に行われるように調整することも含まれます。
このような「肝」の機能低下または過亢進が起きると、血が不足した状態やある場所で停滞してしまう状態を引き起こします。それは、月経不順や子宮内膜症・子宮および卵巣の妊娠力の低下につながります。また「肝」は精神的・身体的ストレスの影響を受けやすく、自律神経の過緊張を生させ、造精や精子の運動率低下に大きな影響をもたらします。

<「腎」と「肝」との関係>
東洋医学では「腎」と「肝」との関係は密接と言われており、両者の症状は同時にあらわれることが多く、「肝腎同源」ともいわれています。
「肝腎同源」は、女性の妊娠過程においてのホルモンバランスと自律神経系の関係を示しており、特に重要な関係となっています。

 

 

③不妊症の鍼灸治療症例

30代女性

現在不妊治療中で人工授精を行っている。原因は不明だがもともと卵子の量が少ないと医師から言われている。仕事が忙しく、運動不足や寝不足で身体の冷えやむくみ症状も強く、腰の痛みと時々下肢の痺れがある。

治療方針
まず自律神経測定器で自律神経のバランスを測定していきました。副交感神経が過亢進していたため、ホルモンバランスを整えるという観点から、まず自律神経のバランスを整える治療を行っていきました。同時に鍼と温灸器、灸を用いて下腹部を温め、ホルモンバランスを整える治療を行いました。その後うつ伏せで下肢のマッサージと冷えと浮腫みに対応する経穴に鍼と灸でアプローチし、仙骨部周囲の経穴に鍼と通電を行う事で、骨盤内の血流量を増加させる治療を行いました。下半身が全体的に冷えており筋肉の硬さが非常に強い状態で、関節の可動域制限が強かったため股関節と腰部のストレッチも行いました。

治療経過

◇1回目◇
まだまだむくみと冷えは強いが、治療後よく眠れたとの事。腰痛も少し軽減。

◇2回目◇
浮腫みは少し軽減した感覚はあるが、冷えがまだ取れない。腰痛は疲労が溜まると感じるが今は感じない。人工授精四回目を行ったが着床認められず。

◇3回目◇
足先の冷えは少しとれたが、医師から適度に運動した方が良いとの指示を受けたため、意識して歩くようにしているのだが少し歩き過ぎてしまったため下肢が筋肉痛。むくみは少し感じるが前ほど気にならない。

◇4回目◇
むくみが気にならなくなってきた。冷えも以前のように強くは無いがまだ感じるとの事。
人工授精を来週行う。

◇5回目◇
人工授精五回目行ったが着床認められなかった。下肢の循環は良くなっているように感じる。冷えと浮腫みも最初よりも半分ぐらいに軽減した感覚はある。

◇6回目◇
来週もう一度人工授精行う。それまでに体の状態を万全にしておきたいとの事。
体の調子は良いが少しむくみはある。

◇7回目◇
六回目の人工授精で着床成功。身体の状態も最初と比べると良くなっていると感じる。慢性の腰痛が軽減され、下肢の痺れもたまにしか出現しなくなった。下肢のむくみ、冷えは疲労が溜まると感じるが日常的に感じることは無くなった。

 

④不妊症とは

不妊とは、生殖年齢の男女が妊娠を希望し、一定期間性生活を行っているのにもかかわらず、妊娠しない場合をいいます。その一定期間については、アメリカや日本とは相違があり、日本では2年とされていますが、アメリカでは1年です。
女性・男性ともに年齢を重ねるに従って妊娠する確率が低下していきます。25歳以下の女性が妊娠するまでに要する期間が平均2~3カ月なのに対し、35歳以上の女性の場合は平均6カ月以上かかると言われています。
ある統計によると、生殖年齢の男女が避妊せずに性生活をおくった場合、一年で80%、二年で90%のカップルが妊娠するという結果が出ており、約10%のカップルが何らかの原因で不妊に悩んでいるとされているのです。
女性の社会進出や晩婚化、社会のストレス過多などにより不妊は現在でも増加傾向にあり、約100万組以上のカップルが不妊で悩まされているといわれています。
そういった状況下で早急に原因を検査することは重要なことであり、一年妊娠しなければ、病院へ行くタイミングの目安となるでしょう。

従来、不妊は女性側に原因があると考えられており家族から冷たい目で見られるなど、女性にとってとてもつらい思いをしてきましたが、現在では不妊の約半数は男性にも原因があるとされており、男性不妊という言葉も広く知れ渡ってきました。
WHOによる不妊の原因調査によると、女性のみの原因41%、男性原因のみ24%、男女に原因あり24%、原因不明11%という調査結果が出ています。

 

⑤妊娠するしくみ

妊娠しやすい性交のタイミングは、女性の生理周期によって決まっており、妊娠するしくみを知るということは、妊娠する確率をあげるためにとても重要なことでもあります。

女性の体は、初潮を迎えてから排卵と月経とを繰り返し妊娠に備えています。女性の卵子はすでに胎児の時から決まっており、それ以降増えることはなく、減っていく一方です。
月経が始まる頃に約20個の卵子からただ一つだけ卵子が選ばれ、排卵を迎えるまでに成熟していきます。この期間は個人差があり、もし低温期が長い場合はゆっくり成熟していることです。
そして、排卵を促す黄体化ホルモンが脳下垂体から大量に分泌され排卵がおこります。

 

卵巣から出た卵子は卵管へ移動し、受精が行われる卵管膨大部という場所に向かいます。
一方、射精された精子は子宮腔を通過し、卵管へと進出してきます。受精の行われる卵管膨大部にたどり着くまでに精子の数は100~200万分の1までに減少し、さらにその中で1個の精子だけが卵子と受精します。射精された精子は卵管内で4~7日くらい寿命があるといわれていますが、排卵された卵子は1日しか寿命がありません。しかも近年では、精子の数や運動率が低下しており、妊娠するためには性交のタイミングがとても重要となってきます。

また、卵子は年齢とともにダメージを受けて行き、体は健康そうに見えても卵子は老化しています。年とともに卵子の機能は低下しいき、一人目はすんなり妊娠したのに二人目の子供をもうけられないというのはこういった原因があるといわれてます。

よって10代後半~30代前半までが妊娠・出産の適齢期であり、40代になると能力は著しく低下し、50代以上ではほぼゼロに近くなり、50代以上の妊娠は非常に稀になるのです。

 

 

⑥不妊の原因(女性)

妊娠するためには、排卵・受精・着床と多くの行程をクリアしていかなければなりません。どこに不具合があっても妊娠することはできず、原因は多岐にわたります。
女性側に不妊の原因がある場合、子宮や卵巣など様々なことが考えられますが、複雑に絡み合い不妊を引き起こしている場合が少なくありません。

<排卵障害>
排卵障害とは、排卵が起こらないあるいは排卵が遅い状態のことをいいます。排卵障害は、不妊原因の15%をも占めるといわれています。
・視床下部や脳下垂体性による排卵障害
視床下部や脳下垂体に何らかの原因があり、卵子を成熟させるホルモン(卵胞刺激ホルモン)や排卵を促すホルモン(黄体化ホルモン)などが異常をきたし、排卵が起こりにくくなります。
その大きな原因が過度なストレスです。現代特有の社会のストレスやなかなか妊娠できないストレスまたはパートナーが不妊に無頓着という不満からくるストレスなど複雑です。そういったストレスを受けると特に視床下部というホルモン指令部に影響を与えます。視床下部はホルモン指令部の役割の他に自律神経の中枢でもあります。よって強いストレスを受けて自律神経が乱れた状態だとホルモンバランスの異常をも引き起こします。
ストレスによって月経リズムが崩れるのもこういった原因があるのです。

・高プロラクチン血症
乳汁を分泌するプロラクチンというホルモンがあります。その値が高くなると排卵を抑制することがあります。本来は、産後に多く分泌されて授乳中に次の妊娠を起こさせないようにするために排卵を抑制する役割があります。
胃潰瘍や心療内科系の薬の副作用として高プロラクチン血症となることもありますが、時間帯によって変化するホルモンであることから強いストレス不規則な睡眠冷えなどが関与している可能性があります。

 

多のう胞性卵巣症候群
卵巣周辺に多くののう胞が付着して卵胞が大きくなるに従って排卵しづらくなります。
原因は現代医学でも特定できていませんが、血中のホルモン値が高くなり、男性ホルモンの値も高くなるのが特徴で、ひげが生えたり、すねなどの毛が濃くなるといった男性徴候がみられるたり、肥満となることも多いようです。

 

・早発卵巣不全
ホルモンバランスが原因で排卵が起こらないのではなく、40歳よりも前に排卵すべき卵子がなくなってしまった状態をいいます。

 

<卵管障害>
卵管は卵巣と子宮をつなぐとても重要な器官です。射精された精子が通る部分でもあり、受精された受精卵が子宮に移動するために通過する部分です。この部分が閉塞すると精子や受精卵が通過出来ないため妊娠ができません。また、卵管の出口である卵管采が癒着すると、排卵された卵子がうまく卵管膨大部に移動できません。

・クラミジアなどの感染症
クラミジアや淋病などの感染症は、卵管に炎症を起こして卵管を狭くして通過させにくくします。

・先天性卵管障害
子宮や卵管の先天的な異常で構造的な障害が生じて卵管が閉塞することがあります。

 

 

<着床障害>
受精された受精卵は、卵管を通って子宮内に入り込み、受精卵は、子宮内膜としっかりとつながります。これを着床といい、これではれて妊娠成立となります。
この着床に原因があると妊娠できません。

・器質的着床障害
子宮内に腫瘍ポリープができているとその大きさや位置によって着床しづらくなります。子宮筋腫や先天的な子宮奇形などが知られています。

・ホルモンの問題による着床障害
厚くなった子宮内膜は、卵巣内の黄体から分泌される黄体ホルモンにより着床しやすい状態へ準備されます。しかしこの黄体の機能がうまく働かず、黄体ホルモンが十分に分泌されないと子宮内膜が準備不足となります。これを黄体機能不全といい、排卵日から次の月経までの日数が10日以下の場合に判断されます。

 

 

<抗精子抗体>
女性にとって精子は異物ですが、通常は精子に対する抗体がつくられることはありません。しかし、まれに精子に対する抗体ができてしまい、射精された精子が子宮に入ろうとしても抗体に攻撃されてしまい、動けなくなって受精が起こることがありません。

子宮内膜症
子宮内膜症とは、子宮内腔しか存在しない子宮内膜が子宮内膜層以外の骨盤内臓器で増殖することをいいます。好発部位として卵巣、卵管、腹膜、直腸、膀胱などがあります。
主な症状は、月経時痛で子宮内膜症患者の約9割に認められる症状です。子宮内膜ができる場所によって症状は異なり、卵管采周辺にできると卵子の卵管内への取り込みがうまくできなかったり、卵巣にできると卵巣内に血液が溜まってチョコレートのう腫ができます。
30~50%の方に不妊が見られます。

 

⑦不妊の原因(男性)

以前は、不妊の原因が女性側にあると考えられていましたが、現在では約半数は男性側にも原因があるといわれています。不妊で悩んでいるカップルは、男性も検査を受け原因を明らかにする必要があるかもしれません。
その原因は、精子がつくられる過程で何らかの問題が生じている場合や精子を運ぶ個所に問題がある場合またはうまく性交できない勃起障害なども近年では増えてきています。

<造精機能障害>
精子をつくる機能がうまく機能せずに十分な精子がつくられない状態をいいます。原因としておたふくかぜの罹ったことにより精巣炎が起こって精子をつくる組織に影響を及ぼす場合や染色体及び遺伝子に問題があり先天的に精子をつくる機能に影響がある場合などがあります。
造精機能障害は、男性不妊の9割以上も占めているといわれており、精子の数が少なかったり精子の運動率の低下または重症となると全く精子がつくられない場合もあるのです。
近年では、食生活や生活環境の変化から成人男性の精子数が減少しているという研究結果がでており、運動率も低下してきています。また寝不足や過労が続いた状態で精液検査をすると結果は悪くなります。
よって現代特有のストレスは、精子をつくる機能に影響を与えて男性不妊の原因になるといえます。

 

<精路通過障害>
精子を運ぶ精管が部分的に欠けていたり、狭くなって詰まっていると精子が正常に通過することができず、うまく射精ができません。原因は、先天的に精管に異常がある場合や炎症によって精管が閉塞する場合などがあります。

 

⑧妊娠しやすい体づくり

妊娠しやすい体づくりをするためには、生活習慣の見直しがとても重要です。

バランスの良い食事と同じような時間帯に食事を摂る、有酸素運動を中心とした運動習慣、十分な睡眠が特に重要です。

その他、卵巣機能は血行不良によって妊娠機能の低下に繋がりかねませんので下腹部が冷えないように対応することも必要です。就寝の際に腹巻をする・日中は腹部をホッカイロで温めることも有効な手段です。

ストレスのよって自律神経が乱れてしまうと血流状態もわるくなってしまうためストレスによる自律神経の乱れも緩和させることが妊娠しやすい体づくりには重要です。

具体的には、趣味の時間をつくることや有酸素運動を中心とした運動習慣などが挙げられます。

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好医院にて多くの臨床経験を積む

2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立

2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院

2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院

2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸整骨院|眼精疲労 at 21:32 / 院長コラム 不妊症の鍼灸 への2件のコメント

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