一般的にみぞおちの痛みは、胃の問題が考えられます。みぞおちの奥には外腹斜筋、腹直筋、腹横筋の三層の筋肉があります。さらに奥に腹膜、胃が存在します。心窩部深くにある胃で異常が起こるとお腹の筋肉は緊張し硬くなり表面が張っていきます。また胃の容積が増えて膨らむことでもみぞおちが張ります。
呼吸は、胸部が膨らむ胸式呼吸と腹部が膨らむ腹式呼吸があります。胸部が膨らむ為には肋骨がよく動く必要があります。首・胸・背中・ウエスト周りの筋肉の柔軟性が必要です。
また、浅い呼吸になっている状態では交感神経が過剰に活動します。交感神経が過活動的になると筋肉は緊張し、さらに呼吸が浅くなる悪循環に陥ります。加えて交感神経過活動では、胃痛・動悸・発汗・持続的な疲労感や倦怠感を起こします。
東洋医学では臍から上の腹部を胃脘といいます。そして胃脘で起こる痛みを胃脘痛といいます。胃脘痛の原因には食滞、肝気犯胃、脾胃虚寒の3つがあります。
○食滞による胃脘痛・・・暴飲暴食などで胃に重く負担がかかった場合に、胃脘部に気が滞り痛みをおこします。食滞では胃脘痛の膨満感、食欲低下、げっぷ、嘔吐、呑酸などを伴う場合があります。
○肝気犯胃による胃脘痛・・・精神的ストレスにより気持ちが不安定になることで肝の作用(気を巡らす作用)に異常をおこし、胃の気が滞ってしまうことで痛みをおこします。肝気犯胃では季肋部(肋骨とお腹の境)が張る、食欲不振、呑酸、溜息、げっぷを伴う場合があります。
○脾胃虚寒による胃脘痛・・・過労や睡眠不足、不摂生な生活により、脾胃(胃腸の機能)を損傷することで痛みをおこします。脾胃虚寒では喜温喜按(温めたり手で押さえたりすると軽快する)、手足お腹の冷え、空腹時痛、疲労感、倦怠感、気力の減少を伴う場合があります。
呼吸は呼気と吸気に分かれ、呼気は「肺」、吸気は「腎」が司っているため、肺と腎の機能低下によるものと考えられます。肺は身体の中で一番始めに外部環境の影響を受けるとされています。季節の変わり目に風邪をひきやすいのは、冷えや乾燥によって肺を損傷するためです。腎は生命活動において根源的な役割を持ちます。吸気で息を吸い、酸素を充分に取り込むために腎の働きが欠かせません。
始めに起きている症状、それによって仕事や日常生活で困っていることなどを包括的に伺います。
みぞおち(上腹部)の痛みと呼吸が浅く感じる場合、自律神経の交感神経と副交感神経が不均衡になっている場合が多いため自律神経測定を行います。
当院では自律神経測定器を導入しており、指先に測定器を装着しておよそ3分間安静にしていただき測定します。自律神経の過活動が見られれば抑制させるように、反対に低活動であれば働きを促進させるように治療していきます。より患者様の困り事、悩み事を最善の形で解決できるようご相談し、治療方針を決めます。
治療内容は、まずうつ伏せになり背部兪穴の「肺」や「腎」に関係するツボ、首から腰の筋肉の硬結に鍼灸を行います。特に首・肩・背中の筋肉の緊張が緩和すると呼吸が深くなります。
次に仰向けになり、手足にある肺や腎の要穴、腹部の痛みを緩和させる鍼灸を行います。胸部には鍼をすると気胸になる可能性がある部位があるのでお灸を主体に施術します。
・胃炎
・胃十二指腸潰瘍
・急性膵炎、慢性膵炎
・胃がん
・膵癌
・狭心症
・心筋梗塞
・心膜炎
・気道内異物
・喘息
・気管支炎
・気胸
・肺線維症
・鉄欠乏性貧血
・過換気症候群
急に痛み出した、急に呼吸がしづらくなったなどの急性症状は医療機関を受診ください。
症例
20代 女性
学生の頃から呼吸が浅く、体育の授業等で走るとすぐに息が切れてしまう。数ヶ月前から急にみぞおちが痛くなりはじめた。最初は数秒間ほどで治まっていた痛みが、今では平均10分間続いている。長い時で20分間続く時もある。
病院に行って検査をしたが原因不明と言われ、痛み止めしかもらえなかった。
日常生活や仕事は辛うじてこなせるが、今よりも痛みが強くなるか、時間が長引くと生活に支障が出てきてしまうので、その前に改善するために来院。
当院の治療
脈診、腹診をしたところ、かなり緊張が強い状態が続いていることがわかった。緊張状態が続くと交感神経が優位になり、自律神経の乱れにつながるため自律神経調整治療をメインで行う。これと同時に身体全体の筋肉が緊張し、硬くなっていたので血行促進治療も行った。
鍼は初めてとのことで、痛みに対して抵抗感があり、刺激量はかなり抑えての治療を提案した。
回数を重ねて慣れてきたら少しずつ刺激量を上げる。
治療間隔は週2回
治療経過
◇1回目◇
特に変化は感じない。
◇2回目◇
来院前に痛みがでた、痛みの強さや時間に変化は感じない。
◇3回目◇
痛みが少し弱く感じる時が数回あった。
◇4~7回目◇
治療を受けるたび痛みが軽くなっていった。
◇8~12回目◇
仕事の繁忙期に入り症状が強くでる日が増えた。だが、以前より痛みがある時間が短くなったとのこと。
◇13回目◇
仕事が落ち着いたら症状も落ち着いてきた。治療頻度を週に1回に変えて経過観察することにした。
◇14回目◇
日常生活のなかでほぼ痛みがでることはなくなった。
◇15回目以降◇
みぞおちの痛みから首肩回りのコリを目的として治療を継続することになった。
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 15:04 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)