中医学では梨状筋症候群(坐骨神経痛)は、臀部付近の気血の運行がスムーズにいかずに気血が滞り、それが痛みや痺れの原因となると考えられています。
寒く風のあたる場所にいた際に「風寒の邪気」を受けた時や湿度の高い場所にいて「湿邪」を受けた時、長い間体力仕事をした時などに気血は滞り、それが臀部付近であった場合に梨状筋症候群(坐骨神経痛)を発症する可能性が高くなります。
また坐骨神経の通り道は、中医学の「膀胱経」の通り道と似ており、「膀胱経」が何らかの障害を受けると梨状筋症候群(坐骨神経痛)を発症しやすくなります。
また中医学でいう「肝」と「腎」の機能が弱ると全身的に血や体液が不足し、筋肉などの様々な器官に栄養を送ることができず、さらに上記のような条件が加わると梨状筋症候群(坐骨神経痛)がおこりやすくなります。
両者の関係は深いので「肝腎同源」とも言われており、「肝」と「腎」の症候が同時にあらわれることが多いです。
当院の梨状筋症候群(坐骨神経痛)に対する施術の目的は、臀部付近のツボや痛みの強い部位に鍼をさして微電流を流すことにより血行を良くして梨状筋の緊張を緩めることです。また鍼を刺すことにより痛みを感じる閾値を上げて痛みを感じにくくする作用を促します。
電気の刺激が苦手な方には、鍼とお灸とストレッチやマッサージ等を併用して筋肉を緩めて坐骨神経の圧迫されている部分を取り除いていく施術も行っていきます。
梨状筋症候群(坐骨神経痛)は五臓六腑の「肝」と「腎」、「膀胱」に深く関係しているので肝と腎に関するツボを用いて肝血や腎気を補うことや臀部付近の気血の流れをよくします。また「風寒」や「湿」の邪気によって引き起こされる場合はそれらを体外に出す治療が必要になります。
東洋医学では痛みはその部位だけの問題ではなく、五臓六腑を含めた体全体の問題としてとらえます。梨状筋症候群(坐骨神経痛)は全身性の疲労や気血の滞りが原因の場合もあるので梨状筋だけの部分的な治療ではなく全身を診て治療していきます。
全身治療を行うことにより人間が本来もっている自然治癒力を高め、早期回復が見込めます。
当院では補助的施術としてストレッチや吸角を行い、はりやお灸の効果を一層高めます。
※坐骨神経痛の鍼灸治療の有効性についての研究
明治鍼灸大学の研究
『根性坐骨神経痛に対する神経根鍼通電療法の開発とその有効性』
www.meiji-u.ac.jp/research/files/shinkyuigaku30_1.pdf
では、神経根に鍼通電療法を施すことで神経根ブロック注射よりも効果が持続出来て症状も軽減されたという研究結果も出ています。また、薬物療法神経根ブロック注射に対して鍼灸治療で用いられる鍼は細く、神経を傷つける危険性の低下や薬物による副作用リスクの軽減なども示唆され、鍼通電療法ではブロック注射よりも簡便に行うことができる治療法になり得る可能性が考えられるとされています。
30代 女性
仕事はデスクワークが主で一日中椅子に座って仕事をしていた。ある日座って仕事をしている最中に臀部に痛みを感じた。痛みの程度は軽かったためそのまま仕事をしていると仕事が終わったときには強い痛みに変わってしまっていた。次の日も臀部の痛みが強く出ていて1時間ほど座って作業をしていると足の方にも痺れの症状が出てきて座っていなれないほどになってしまった。整形外科を受診したところ、梨状筋症候群と診断されて痛み止めの薬と日常的に運動やストレッチを行うように言われた。
毎日、痛み止めの薬を飲んで薬の効果が出ている時は良いが、効果が切れてしまうと痛みが再現されて座っていられない。インターネットで調べて臀部のストレッチなども行ってみたがあまり効果が見られず、なんとか痛みを軽減させてほしいということで当院にご来院されました。
治療
まず、仰向け治療で鼠径部・前脛骨筋などの下腿部の固結部に鍼通電療法やお灸療法を施して筋緊張を緩和していきました。次にうつ伏せとなり、梨状筋をねらった鍼通電療法、腰部・下腿後面部にも鍼やお灸を施していき、最後にマッサージやストレッチで筋肉をほぐして痛みの緩和をはかりました。
◇1回目◇
その日は臀部が楽になったと感じた。以前は、痛み止めを飲まないと痛みで眠ることができなかったが治療後当日は眠ることができた。
◇2回目◇
ひどいと仕事開始して10分後に痛みを感じることがあったがそれがなくなった。痛み止めはまだ服用
◇3回目◇
痛み止めを飲まなくても何とか座って仕事をできる日が出てきた。しかし、まだ1時間ほどすると足のしびれや痛みが出ることもある
◇5~4回目◇
痛みがほぼ出ないようになってきて調子のよい日が増えてきた。痛み止めの薬も服用していない。
梨状筋症候群は、臀部にある洋梨の形をした梨状筋が何らかの原因で坐骨神経を圧迫し、坐骨神経障害を引き起こす病気です。梨状筋は臀部中央にある仙骨から始まり足の付け根付近の大腿骨大転子という部分についている筋肉で足先を外側に向かせる働きがあります。
梨状筋は、中殿筋・小殿筋・大腿筋膜張筋と並んで痛みが遠くの場所にも発生しやすい筋肉の一つであり、こじらせると厄介な筋肉でもあります。特に梨状筋は、坐骨神経が通過しているため、梨状筋の緊張は、そのまま坐骨神経にも影響を与えてももの裏側から足の裏にかけて痛みが放散することもあります。
ももを曲げる働きをする筋肉はすべて坐骨神経から出る神経に支配されており、坐骨神経は一般的に梨状筋の下孔を通って骨盤外に出ます。しかし、走行には個人差があり梨状筋の下を通っている場合もあり、まれなケースでは梨状筋を貫通していることもあります。そして、大腿後面中央をほぼ縦に垂直に通り、膝裏に向かいます。膝裏に入る直前に脛骨神経と総腓骨神経という神経に分かれ、足の方へ下っていきます。しかしその過程で坐骨神経の一部が梨状筋の間を通ったりする場合があるため、股関節を曲げたり伸ばしたり捻ったりすることで筋の柔軟性が失われると坐骨神経は梨状筋に絞扼され、坐骨神経痛を訴えます。
症状としては臀部から足先にかけて坐骨神経の経路に沿って広がる痛みや痺れです。一般的に梨状筋症候群では腰痛症状がなく、足先を外側に向ける動きや横座りで体重を患側にかけると痛みが増強します。
※梨状筋症候群だと疑うポイント
・ももの裏・ひざ裏・足裏に痛みが走り、坐骨神経痛のような症状が出る
・特にももの裏に痛みがある
・股関節の痛みがある。
・仰向けで寝ている時に足先が内側を向く
・内またで歩く癖がある
※坐骨神経痛
坐骨神経痛は症状の表現であり、病名ではありません。坐骨神経が圧迫されることによって生じる神経痛を総称して「坐骨神経痛」といいます。
坐骨神経痛の原因疾患で最も多いのが腰椎椎間板ヘルニアで、その他に腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症・分離症、梨状筋症候群などがあります。基本的に梨状筋症候群の場合は腰痛を伴わず、臀部から下肢にかけての痛みおよび痺れがありますが、腰痛の所見がないからといって容易に梨状筋症候群と判断することはできません。そういった場合でも腰椎椎間板ヘルニアが痛みの原因である場合も多いからです。
※臀部の痛みの原因
臀部痛の原因となりやすい筋肉は、主に3つあります。人体の中で最大と言われる大殿筋、その大殿筋の上方に位置する中殿筋、それと梨状筋です。これらの臀部の筋肉は、人が歩行するにあたってとても重要な役割を担っています。中殿筋は、股関節の動きにとても重要な筋肉で中殿筋が委縮してしまうと歩行時に骨盤が斜めに下がってしまうトレンデレンブルグ徴候が起きてしまい、歩行が安定しません。中殿筋は、大殿筋よりも小さい筋肉で筋肉に刺激を与えないと比較的筋力低下が起こりやすい筋肉と言われていますので注意が必要です。特に病気で安静が必要となってしまったケースでは、筋肉が萎縮してしまわないように出来る範囲でトレーニングをしていないと歩行に支障が出てきてしまいます。
また、臀部に強い痛みが発生している場合は、臀部の表層筋である大殿筋が痛みを防御するために未意識に周囲の筋肉を固くしてしまい、梨状筋・小殿筋・中殿筋にも影響を与えてしまいます。
梨状筋症候群は坐骨神経が梨状筋間で絞扼され、仕事や運動でストレスが加わり発症します。外傷やスポーツ活動などで圧迫されて引き起こされることが多く、特にランニングのように股関節の屈伸を繰り返すスポーツでは、坐骨神経を摩擦し、絞扼するため神経炎を生じる原因となります。
また長時間、座位の姿勢を取ることによって圧迫され発症する事もあります。腰椎椎間板ヘルニアと症状が似ており、鑑別が必要となります。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 00:40 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)