トロサ・ハント症候群の複視に対する鍼灸治療

 

トロサ・ハント症候群は、非常にまれな疾患でありますが、症状としましては片側の頭痛眼の周囲や奥の痛み物が二重に見える複視の症状が出ます。

 

トロサ・ハント症候群に対する複視の治療

 

トロサ・ハント症候群に対する複視の治療は、第一に目周囲に鍼の施術を行うことで痛みを取り除いたり、お灸の炎症を取り除く効果を用いて眼の周囲にお灸をすることでトロサ・ハント症候群における目の奥の炎症を緩和させることです。

トロサ・ハント症候群の鍼通電治療

 

 

また、目の周囲の鍼に対しては低周波治療器を用いてさした鍼に電極を繋ぎ電気の刺激を加えていくことで筋肉や神経に刺激を与えることで複視の症状の改善を図っていきます。

トロサ・ハント症候群のお灸治療

 

その他、トロサ・ハント症候群は自己免疫疾患の要素もあるため自律神経のバランスも整えていく施術を行っていきます。体の免疫機能は、自律神経のバランスがよくない状態ですと免疫機能も低下する可能性が高くなります。

 

トロサ・ハント症候群のうつ伏せ鍼灸治療

 

・複視に対する鍼灸治療について

 

 

トロサ・ハント症候群の鍼灸治療症例

 

30代 女性

当院にご来院される2週間ほど前から左目中心に痛みが出て、その翌週から物が二重に見える複視の症状が出た。今までも同じような症状が4回ほど起こっており、トロサ・ハント症候群と診断された。病院では、ステロイドの治療を受けてはいて軽快傾向にはあるが、早く回復させたいとのことで当院にご来院されました。

 

当院の治療

今までもストレスや体調の崩れから発症することが多いとのことで自律神経測定器を用いて自律神経の状態を測定したところ、交感神経の活動がやや活発気味でした。痛みが強い時は睡眠もうまく取れず痛みで目覚めてしまうことも多かったとのこと。

トロサ・ハント症候群が再発してしまう前には仕事上でもストレスを抱えており、体の疲れも溜まっていた状態でした。目の症状も気になる状態ですがそれに付随して寝つきが悪かったり、睡眠の質の低下などの心療内科的な状態もわるくなっているとのことで合わせて施術していきました。そのほか首肩コリや背部の筋緊張も見られたため背部の筋緊張緩和も重点的に行っていきました。

 

◇1回目◇

1回目の施術を複視の症状が少し改善。正面は一つに見えるが左右上下とだぶって見える。

 

◇2回目◇

視界の左側だけ物が二重に見える。その他は正常に見える。以前は眼帯をして片方の目で物を見ないとつらかったが眼帯をつけなくてもつらさはない。

 

◇3回目◇

目やまぶたの重たさや多少の痛みはあるが複視はいい。

 

◇4回目◇

仕事を再開してまた複視の症状が出てしまった。最初の頃よりは楽だが物が二重に見える

 

◇5回目◇

左目の動きづらさを感じる。動いているものに左目がついていかない状態とのこと。二重に見える範囲は減ってきた。

 

◇6回目◇

左目の動きづらさ軽快。複視に見えることはなくなった。目の多少の重たさは感じる。6回目以降は、睡眠や精神的不安などの治療を中心に変更。

トロサ・ハント症候群とは

 

トロサ・ハント症候群の症状は、ほとんどの場合目周囲の筋肉の強い痛みと麻痺が起こることが言われており、目の奥の領域の炎症や野の動眼神経・滑車神経・三叉神経・外転神経・顔面神経が何らかの関係があるともいわれています。

動眼神経

動眼神経は中脳から出て眼球運動を行う眼筋群を支配しています。その他、毛様体筋などに作用して水晶体の厚さも調節することで対象物にピントを合わせる働きや上眼瞼挙筋を上げてまぶたを上げる働きもあります。動眼神経に異常が起きてしまうと眼瞼下垂や複視の症状、散瞳などが起き、トロサ・ハント症候群でも動眼神経の異常から複視症状や眼瞼下垂が見られることもあります。

・動眼神経麻痺の鍼灸治療について

 

滑車神経

滑車神経は中脳から出て眼球を外側や外側下方に動かす上斜筋を支配しています。滑車神経に異常が生じると複視の症状が出て階段を降りる動作が物が二重に見えるためにこわくなったり、顔を傾けて物を見ると複視の症状が消失したりします。

・滑車神経麻痺の鍼灸治療について

 

三叉神経

三叉神経は、その名の通り眼神経・上顎神経・下顎神経の3つの神経に分岐する神経です。三叉神経も脳神経の1つで脳神経の中でも一番大きな神経でもあります。三叉神経は顔全般の知覚を主っていてその他にも咀嚼筋などの運動も主っています。三叉神経に異常が生じるとよく見られるのが三叉神経痛で顔の鋭い強い痛みに悩まされます。トロサ・ハント症候群でも三叉神経痛のような目周囲に痛みが出る場合もあります。

・三叉神経痛の鍼灸治療について

 

顔面神経

顔面神経は、表情筋の運動をつかさどっています。顔面神経に異常が生じると顔面神経麻痺と言われ、表情筋の運動麻痺や知覚障害などが起こります。顔の筋肉が麻痺をしているため食事が口からこぼれ落ちてしまったり、口笛を吹くような動きが出来ない、主に片側に症状が出るため左右非対称の表情となってしまうなどの症状が出ます。トロサ・ハント症候群でも顔面神経麻痺のような症状が出ることもあります。

・顔面神経麻痺の鍼灸治療について

 

 

トロサ・ハント症候群の原因

トロサ・ハント症候群の原因はいまだ詳しくは解明されていませんが眼の奥にある海綿静脈洞や上眼窩裂の部分に炎症が起きてしまっていると考えられています。よって炎症による強い目周囲の痛みが生じてしまったり、その他発熱めまい関節の痛みなども出ることがあります。よって病院で行われる治療は副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤で炎症や痛みを抑えます。

トロサ・ハント症候群の予後は比較的良いとされていますが、症状がおさまってもまた再発率が高い疾患でもあります。また、眼筋の運動は障害が残る可能性もあり、なかなか複視や眼瞼下垂の症状が取れないこともあるので注意が必要です。

 

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年
鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年
おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年
中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年
渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年
三軒茶屋α鍼灸院を開院


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 14:01 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)

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