夏の疲れの原因は発汗による気の流出、暑さによる睡眠不足、冷房による陽気の不足、冷たいものの摂り過ぎによる脾胃の不調など様々ですが、東洋医学では夏バテは気虚、陰虚、湿邪の三つのタイプに分類されます。
気虚
暑さによって体力が消耗し、力が出ない状態
食欲の低下、元気が出ない、だるさ、めまいなど
陰虚
汗など体内の水分を失い、脱水症状に近い状態
手足のほてり、のぼせ、イライラ、口の渇き、食欲不振、頭痛など
湿邪
冷たい食べ物や飲み物の摂り過ぎで胃腸の消化吸収や水分代謝が悪いことが原因になりあます。新陳代謝が悪くなることで、体内に水分が溜まり、夏太りやむくみを引き起こします。
だるさ、むくみ、下痢など
当院の夏バテに対する鍼灸治療は、まず第一に自律神経を整えることです。自律神経の状態を正常に機能させることで、睡眠の質の向上や胃腸の機能回復、免疫力のアップなどにつながります。
そこで当院では、自律神経測定器で自律神経の状態をチェックして一人一人の自律神経の状態・体質などを見極めてその方に合った施術を行っていきます。
また東洋医学的観点より、特に気虚・陰虚・湿邪の病態を改善していきます。その他夏に多いむくみ症状や足の冷え、頭痛・肩こりに対してもその症状に合わせた独自のツボを用いて施術していきます。
50代女性
暑くなり始めた7月中旬辺りから徐々に体調不良に。朝の通勤時の電車や社内は冷房がきいていて寒さも感じて胃の辺りがキリキリと痛むことがある。足周りの冷えは感じるが、頭は火照った感じで額や頭からよく汗は出る。
何となく日中体のだるさを感じて仕事のやる気がおきづらく、夜も寝つきが悪くなってきた。食欲はあり。
漢方など普段から服用することもあり、東洋医学に興味があり、鍼灸治療を受けてみたいということで当院にご来院されました
施術
自律神経測定器では、日中の測定にも関わらず副交感神経の状態が優位で日中夜が逆転しているような自律神経のバランスでした。夜の寝つきも悪いとのことでおそらく夜は交感神経の活動が上がってしまうタイプだと考えられ、自律神経のバランスは良くない状態です。
東洋医学では、気虚・湿邪タイプだと考えられ特に五臓六腑の『腎』や『肝』に異常が出ていると考えれます。
鍼灸治療では、自律神経のバランスを整え、腎や肝のツボで気を補いつつ湿邪を体外に排出するようなツボを用いて治療していきました。
経過
合計4回ほど施術を受けていただきました。治療のペースは3~4日に一回ほどです。
徐々に睡眠が改善されてきて日中のだるさと冷えも感じづらくなっていきました。
日常生活では、運動習慣がなかったため血行改善や日中の交感神経の活動を高めるためにも朝に軽いジョギングの有酸素運動と日中にスクワットの無酸素系の運動を行うようにしていただきました。
症例2
20代 男性
10代のころに比べて夏のだるさが気になるようになってきた。特に今年の夏は今までで1番だるさを強く感じる。だるさ以外にも、食欲不振、不眠や、頻度は少ないが下痢をすることもある。
社会人になってから環境が変わり、生活習慣の乱れやストレスによって自律神経の乱れが気になっていた。
ここ最近夏場の平均睡眠時間は5時間程度で、長い日は6時間、短い時は4時間しか眠ることができない日もある。
身体のだるさや疲労感から仕事に集中することが難しくなってきており、体調を整えて今年の夏を乗り切りたいと思い来院した。
当院の施術
問診、触診に加え、自律神経測定器で現在の自律神経やストレスの状態を確認していきました。
測定の結果、交感神経の働きが弱く、副交感神経の働きが強くなっていました。
測定した時間は日中のため、交感神経が優位になっているのが正常ですが、副交感神経の働きが強いので、自律神経の働きが乱れていることを確認できました。
まずは仰向けで腹部、腕、足、頭部の経穴に鍼で刺激し、自律神経の調節を促す施術を行いました。
次にうつぶせになり、背中や首肩の筋緊張を緩める施術を行いました。
経過
1回目
施術した日はよく眠れた。
次の日からまた眠れなくなったため、まだだるさは取れない。
2回目
徐々に眠れる日が多くなってきた。
3回目
熟睡できるようになってきて、身体の疲れも軽快してきたような気がする。
4回目
睡眠の質、時間共に改善傾向。
だるさも軽くなった。
夏の暑さに身体が対応できなくて不調が出ている状態の事を、夏バテといいますが具体的な定義はありませんし、「夏バテ」=病名ではありません。室内外の急激な温度変化や日中の暑さから体温調節中枢である自律神経のバランスが崩れることで様々な症状が現れます。夏バテの代表的な症状は全身のだるさと疲労感です。何となく体がだるく、疲れが取れにくい日が続きます。暑さによって睡眠不足になる事も少なくありません。
また、日中の暑さによって体の中の温度が高くなると胃腸への血流が少なくなったり冷たいものの飲食が増える事で胃腸に負担がかかり胃腸の働きが低下し、食欲不振や便秘や下痢を引き起こす事もあります。睡眠不足で疲労が回復されない事での疲労の蓄積や、食欲不振での栄養不足、これらが引き金となってなんとなくだるいといった全身の倦怠感に繋がります。
夏バテは体力や免疫力の低下を起こすので、そこから風邪に繋がることもあります。
・自律神経の乱れ
自律神経とは自分の意思とは関係なく、無意識のうちに働いている神経で交感神経、副交感神経の二つの神経が心臓や血流、呼吸、消化、代謝などの働きを活動、抑制しバランスよく機能する事で私たちの身体を調節しています。しかし、高温多湿の環境が続く事や、室内外の温度差、冷房での体の冷やし過ぎなどで体温調節や発汗中枢の役割である自律神経を酷使する事でバランスが乱れたり、うまく機能しなくなる事で胃腸の不調や全身の倦怠感、食欲不振、のぼせ、めまい、頭痛など様々な症状を引き起こします。
・下痢や便秘などの胃腸の不調
冷たい飲食物の摂りすぎなどによって胃腸に負担がかかり、胃腸の機能が弱まる事で消化機能の低下や下痢、便秘、食欲不振などを引き起こします。
・睡眠不足
熱帯夜など特に夏は寝苦しい日が続くことがあります。睡眠が十分にとれない日が続いてしまうと体の疲労が取れずに日中の疲労感を感じやすくなってしまいます。また、夜に交感神経が高まりやすく逆に日中に副交感神経が働いてしまい通常の自律神経のバランスと真逆になってしまう危険性もあり、それが原因で自律神経の乱れに繋がることもあります。
・食欲の低下
胃腸の不調にも関係しますが、暑いとどうしても冷たい飲み物や食べ物を多く摂取してしまい、胃腸が正常に機能しなくなってしまうことが原因で食べ物を体が受け入れづらくなってしまいます。また胃腸の働きは自律神経の活動がつかさどっているため自律神経の乱れは食欲の低下にもつながります。
・免疫力の低下
免疫機能は自律神経が司っているため、自律神経が乱れることによって免疫機能が低下して普段は排除できるウィルスや細菌なども体が防御することができずに風邪などをひきやすくなってしまいます。また、夏風邪は長引きやすいと言われますが、免疫力の低下も一因として挙げられます。
・熱中症の初期
吐き気、下痢、めまい、頭痛などといった症状は熱中症の初期症状でも見られます。熱中症は暑さによって体内の水分や塩分バランスが崩れて起こります。夏バテと熱中症の症状は似ていますが熱中症は重症化すると命の危険性もあります。
熱中症はⅠ度(軽度)、Ⅱ度(中等度)Ⅲ度(重度)に分類されており、めまいはⅠ度に含まれ、立ちくらみが起こる状態で「熱失神」とも呼ばれます。運動を終えた直後に起こりやすく顔面蒼白、脈が弱くなって速くなる、呼吸の回数が増えるなどの症状が見られます。
吐き気、頭痛、下痢はⅡ度に含まれ他にも倦怠感、虚脱感、判断力や集中力の低下などがみられます。Ⅱ度は従来「熱疲労」と呼ばれていた状態で放置したり対処が適切でない場合などは重症化する危険性があります。
Ⅲ度に分類されるのは意識障害やけいれん、ショック症状、過呼吸、手足の運動障害などです。
最近では夏バテ外来を設ける病院も増えてきましたがまだまだその数は少ないようです。夏バテをそのまま放置しておいてしまうと免疫力なども低下して体に隠れていた思わぬ疾患が出てくる危険性もあります。
内科などで行われる夏バテ治療としまして夏に不足しがちなミネラルやビタミンを補給する注射やニンニク注射などが行われたり、または最近は漢方薬を処方するところもあるようです。
食事の工夫
暑いからと言って麺類などあっさりしたものばかり食べいては、体力がなくなってしまいます。肉や魚、野菜、果物など良質なタンパク質、ビタミン、ミネラルを補給しましょう。栄養バランスのとれた食事が大切です。
また、ショウガやワサビ、コショウなどの薬味や香辛料や、しそ、ねぎ、みょうがなどの香味野菜には食欲を増進させる効果がありますから上手く食事に取り入れるのも良いでしょう。決してたくさん食べる必要はありませんので、少量でも栄養価の高い食品を一日三回の食事で摂りましょう。
適度な運動
ウォーキングや軽いジョギングなど適度な運動を行うと自律神経の働きが整えられて夏バテが解消されやすくなります。朝や夕方の日差しが弱い涼しい時間帯に行い無理なく続けられるようにすると良いでしょう。
外で運動する時間がなかなか取れないという方はストレッチやスクワットなど室内で出来る運動を取り入れてみましょう。
十分な睡眠
夜遅くまで起きていると一日の疲れが残ってしまいます。早めに就寝して睡眠時間を十分にとり一日の疲れはその日のうちにとるようにしましょう。
竹素材やゴザのシーツを使ったり除湿を行うなど出来るだけ涼しく寝られるよう配慮しましょう。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年 おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年 中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年 渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年 三軒茶屋α鍼灸院を開院
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 16:15 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)