嗅覚障害の鍼灸治療

嗅覚障害に対する当院の鍼灸治療

 

当院の嗅覚障害に対する治療の目的は、第一に鼻の周辺の経穴に鍼をさして鼻周囲の血行状態をよくします。お灸施術も並行して行っていきます。

嗅覚障害の鍼通電治療

 

 

また嗅覚障害は五臓六腑の『』に深く関係しているので肺に関する経穴を用いて肺機能を補うことや肺の陰液の巡りをよくします。
また腹部や背部の重要なツボをはりやお灸で刺激することで、自律神経を調整する治療を施します。

 

嗅覚障害の鍼治療

 

 

当院では、施術に入る前に自律神経測定器で自律神経の状態を計測してから施術に入ります。自律神経の状態を把握することでそれに合わせた適切な施術が可能になります。鍼灸治療が比較的効果の高いとされるのは、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎によって生じる呼吸性嗅覚障害やストレスによって生じる心因性嗅覚障害です。

自律神経を整えることで身体の回復する力が高まり、嗅覚機能が正常に戻りやすくなると考えられます。 部分的な治療ではなく全身を治療することは東洋医学の特徴でもあります。
全身治療を行うことにより人間が本来もっている自然治癒力を高めます。中国では嗅覚障害に対する鍼灸治療は有効とされています。

 

 

嗅覚障害の東洋医学的考え

 

東洋医学の五行学説五官で鼻は、『』に属すると考えられています。嗅覚障害は何等かの原因により肺が機能低下して生じると考えられます。

東洋医学の肺の役割として
・肺は気を主る
呼吸の機能に当てはまります。体内の濁気を派出して体外の清気を取り込む役割があります。

・肺は宣散・粛降を主り、水道を通調する
気や津液を全身のすみずみまで行き渡らせる役割があります。呼吸や汗によって体内の水分を外に排出する役割も担っています。また津液を全身に行き渡らせるばかりでなく、末梢血管の浸透圧のバランスを調整することで体液のバランスも調整しています。

・肺は皮毛を主り、鼻に開竅する
汗の分泌調整や立毛筋の調整など皮膚表面の温度や体液のバランスを調整しています。また病邪が侵入するのを防ぎ、侵入された場合は抵抗し排除する役割もあります。

・鼻水は肺液である
鼻水は鼻に開竅する肺との関係が深いと考えられています。

肺陰虚
肺の陰液が不足することで慢性の炎症や自律神経系の過亢進などが起こります。嗅覚障害や嗄声、口の渇きの原因となります。

 

 

嗅覚障害の鍼灸治療症例

 

症例 1

50代 女性
◇症状◇
7、8年前に風邪のため発熱を起こした。それと同時に副鼻腔炎が発症し、鼻水が止まらなくなり、徐々に臭いが感じられなくなった。鼻水はサラサラな状態。味覚の感覚も落ちている。耳鼻科には副鼻腔炎の症状が出ると通院しているが、嗅覚の異常までは改善しないため当院に来院した。

◇当院の治療◇
鼻粘膜にある嗅細胞が炎症によって機能不全に陥っているので鼻粘膜や副鼻腔への血液循環を向上させ炎症を回復させるために、鼻周りのや目の周りに刺激をして低周波電気を流していきました。
それに加えて自律神経の調節治療を行うことにより自己免疫力を向上させて回復力を高めていきました。また、頸肩のコリが強いため心臓から頭部への血流を阻害していることがわかり、同時に頸肩の治療も行っていきました。

・1回目
施術後まだ変化は見られなかった。

・2回目
頸肩のつらさは軽減されたが、鼻の症状はまだ変化は見られない。

・3回目
以前に比べると鼻の通りが良くなった感じがするとのこと。

・4回目
鼻水の状態が漿液性のものから粘液性のものに変化した。匂いはまだ感じられない。

・5回目
鼻水の量が少なくなってきた。鼻の調子はいいが、匂いはまだ改善されていない

・6回目
鼻水が出なくなり、匂いを感じられるが出てきた。

・7回目
鼻の調子が良く、いい匂いが少しずつではあるがはっきりと感じられるようになってきた。

・8回目
前回からあまり変化なし。いい匂いは感じるが、臭いにおいは感じられない。

・9回目
カビのにおいなどの臭いも少しずつ感じられるようになってきた。

・10回目
いい匂いは、意識しなくても自然と感じられるようになってきた。

 

症例 2

2ヶ月前に鼻風邪引き、風邪症状は3日ほどで落ち着いたが、嗅覚だけがもとにもどらない。

うすい匂いは全くわからず、コーヒーやカレー、ラベンダー系のアロマのみ、なんとなくわかる程度。

もともと鼻炎もちではあるが、風邪のあとにここまで匂いが感じなくなったのは初めてで原因がよくわからない。

匂いがわからないため食事も楽しくなく、体重は3キロ落ちた。

心身ともに疲れているので、嗅覚と身体のケアもしていきたい。

当院の治療

自律神経測定器で自律神経の状態を確認したところ、交感神経が優位で精神的ストレス値がかなり高い状態だった。

自律神経の乱れは身体に様々な不調をもたらし、特に目や耳、鼻などの感覚器は影響をうけやすい。

風邪を引く前は仕事が多忙でストレスが強かったことから、今回の嗅覚は自律神経の乱れが少なからず関与していると考えられる。

鼻周囲のツボを用いて機能の改善を図るとともに、自律神経の調整を行った。

 

◇1回目◇

特に変化なし

◇2回目◇

前回施術後、ローズマリーの香りがわかるようになった。

変化が出たことで気持ちがすこし楽になった。

◇5回目◇

アロマで少しずつ匂いの分かるものが増えてきた。

食事の際も毎回ではないが味が分かることもあって嬉しい

◇10回目◇

うすくではあるが、嗅覚が戻ってきた感じがする。

薄味のものはまだ難しいが、ほかは平気で食事も楽しめるようになった。

まだ完全に戻ったわけではないので今後も続けて様子をみたい。

 

 

症例 3

50代 男性

約1年ほど前から、匂いがわからないことに気がついた。嗅覚障害になる半年前にはコロナにかかった。咳がでたり、むせるような後遺症がある。鍼灸院に通われたが効果はなく、耳鼻科で手術を勧められたが抵抗があったため当院にご来院された。にんにくなどの強い匂いであれば、たまに感じることができる。

当院の施術

コロナ感染により、匂いを感じ取る嗅粘膜にある嗅神経がダメージを受け匂いを感じ取ることができなくなっている状態だと考えられるため、嗅神経への血流を促し回復を図るよう鼻周りに低周波電気を流していきました。また、自律神経測定器の結果、交感神経が過剰に優位であったため、自律神経調整や自己免疫力を高めていく施術を行いました。

一回目

施術中、お灸の匂いを少し感じた。

二回目

前回の施術後、身体が軽くなった。匂いの感じ方に変化はない。

三回目

前回より少し刺激のある匂いが感じられるようになってきた。

施術後、外に出ると色々な匂いを感じることができた。

四回目

匂いの感じ方は50パーセントぐらい戻った。匂いを感じることを思い出している。

五回目

日によって、匂いの感じ方が変わる。

六回目

だいぶ匂いが分かるようになった。

コロナ後遺症の咳やむせることがなくなった。

 

嗅覚障害とは

 

嗅覚障害とは、においを感じにくいまたはまったく感じないという嗅覚機能の低下あるいは、本来いいにおいとして自覚されるはずのにおいを悪臭だと感じたり、ちょっとしたにおいでも耐えられない嗅覚の異常が挙げられます。

また嗅覚は味覚をとても深い関係にあります。味覚は舌の味蕾という細胞で識別されて脳に送られて嗅覚の情報とともに脳で情報処理されるのです。嗅覚が障害されても苦みや甘味などの大雑把な味はわかりますが、複雑な味は嗅覚とともに脳で処理される必要があるため複雑な味覚はわからなくなるのです。

嗅覚が障害されると今までの食事の味の感覚も変わり、それがストレスとなり精神的な病気にかかる可能性もあります。

最近では、ストレスによる嗅覚障害発症が増えています。感覚器官は自律神経とも深くかかわっているため嗅覚もストレスによって自律神経が乱されると障害が起きるのです。

嗅覚障害

 

嗅覚障害には主に3種類あります。

 

・呼吸性嗅覚障害

臭細胞のある部分が慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などによる粘膜の腫れやできものなどにより塞がれて臭いの元となる分子がにおいを感じ取る部分に到達できない状態です。
先天的な鼻腔の形成異常や外傷などによって鼻中隔が湾曲することによっても起こります。

 

・末梢神経性嗅覚障害

鼻の粘膜が障害される場合と嗅神経が障害される場合とがあります。鼻粘膜が障害される原因としてインフルエンザウィルスなどのウィルスが鼻粘膜に炎症や萎縮を起こさせることで鼻粘膜が変性を起こしてにおいを感じ取りにくくするのです。
風邪を引いたり、インフルエンザに罹った時に臭いを感じにくくなるのはこのためです。嗅神経が障害される場合は、頭を打った時などの外傷性のものが多く、頭を打った衝撃で嗅神経が切れてしまうために起こります。

 

・中枢神経性嗅覚障害

大脳などの脳の部分が障害を受けることで起こる嗅覚障害です。頭部外傷・脳梗塞・脳腫瘍や初期のアルツハイマー病・パーキンソン病などによっても嗅覚障害が起こります。
鼻炎や風邪に罹ったわけでもなく、においの感じ方が普段と違うと感じた時はすぐに病院で検査を受ける必要があります。

 

主にこの3つが挙げられます。

 

 

 

嗅覚障害の原因

嗅覚障害の原因として鼻道の異常神経の異常脳の異常があります。

慢性鼻炎などにより鼻がつまった状態だと鼻の内側にある嗅覚を感知する受容体に臭い分子が到達することができないためにおいを感じられません。風邪を引いて鼻炎になるとにおいを感じにくくなるのはそのためです。

またウィルス感染によって嗅覚受容体が障害されると数日から長いと数か月においを感じることができない場合もあります。

嗅覚障害が長く続く場合は、嗅神経という脳神経が障害を受けている可能性があります。嗅神経が障害される多くの原因は交通事故などでの頭部外傷や頭を打った時による骨折が原因となります。またアルツハイマー病やパーキンソン病でも嗅神経が変性を起こして障害されることがあります。

 

嗅覚障害では原因がはっきりとわからない場合もあります。多くは心因性と考えられます。

 

嗅覚が過敏に反応する嗅覚異常では、うつ病副鼻腔の感染症などが原因となり、一般的には妊婦もにおいには敏感になります。

 

日常生活での注意点

嗅覚障害はストレスなどとの関わりも深く、普段の日常生活を注意すると予防や症状が緩和されることが多くあります。

・十分な睡眠
十分な睡眠時間を確保して体の疲れをためないように注意しましょう。

・栄養バランスのとれた食事
栄養バランスのとれた食事をとって体の抵抗力や自然治癒力を高めることは重要です。

・鼻のケア
できるだけ鼻への刺激を避けて、鼻をかむ時でも勢いよくかむのはしないようにしましょう。風やインフルエンザにかかってしまうと嗅覚障害がさらに治りにくくなってしまうのでマスクなどして風邪予防や鼻部の保護をしましょう。

・ストレスを溜め込まない
ストレスをため込んでしまい自律神経が乱されると人間が本来持っている免疫力が低下して症状改善が難しくなります。有酸素運動などの適度な運動や趣味をする時間などを設けてリラックスできる時間をつくりましょう。

 


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 19:30 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)

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