毛細血管や細動静脈の微小循環は全身の各組織細胞に対する生活物資の供給と代謝産物の除去にありますので、微小循環の改善を目的として、お灸治療をします。
お灸は、皮下の毛細血管を拡張させて血流を改善できることと、温熱刺激による治療の方が患者さんが心地良いと感じるため冷え性治療に良く使います。
全身や下半身の冷えなどの範囲が大きいときにはMT式温灸器を使います。
これは先端が丸くなっていて、滑らせながら効率よく広範囲を温めていくことができます。
灸頭鍼
皮膚に刺した鍼の先端にもぐさをのせて火をつけて温めていきます。鍼の効果とお灸の効果が期待でき、当院でもよく使われる施術法です。
冷えに効く経穴に施すことで体内循環を整えて身体の内から温めていきます。
器械によりお灸と同じ効果がだせるもので、お腹や手足の末梢に効率良く温度を伝えていくことができるものです。
自律神経測定器により自律神経のバランス確認後
自律神経調節法を行います。これにより体内のバランスを取り戻し、自律神経を正常に働かせることでその人が本来持っている自然治癒力を最大限まで高めることができますので
自律神経由来の冷え症をかなり改善させることができます。
冷え症とは
冷え性の定義ははっきりと決まっていませんが
「中枢温と末梢温の温度較差がみられ、暖かい環境下でも末梢体温の回復が遅い病態であり、多くの場合、冷えの自覚を有している状態」や「通常の人が苦痛を感じない程度の温度環境下において、腰背部、手足末梢、両下肢、あるいは全身的に異常な感冷感を自覚し、この異常を一般的には年余にわたって持ち続ける病態で多くの場合、この異常に関する病識を有する」とも言われています。
両方共に言えるのは本人の自覚症状による病態であると考えられています。
ですので、他人が触って冷たくても本人が訴えなければ冷え性ではないことになります。
原因
原因はさまざまで自律神経の異常からくるものや、男女差、環境、生活習慣、心臓、血管障害、リンパなどがあります。冷え性の方は体の血液循環が悪く肩こりや腰痛・膝痛の原因となったり、体のあらゆる部分に悪影響を与えます。
交感神経が働き過ぎて冷え性になります。
交感神経は血管を収縮させて体温を外に逃がさないようにします。内臓の働きは生命にとって大事ですので、中心部には優先的に血液が供給されますが、末梢には血液量が少なくなります。末梢に温かい血液が回らなくなると手足に冷えを感じるようになります。
交感神経により血管が締められている状態ですと外側から温めても効きません。
このような状態には、温かい身体の中心部をさらに温めてあげることで、温度を下げようと末梢の血管が拡張して末梢血流量を上げることができます。
交感神経は人がストレスを感じると強く働きますので、お仕事や生活でストレスを多く感じる方はこのタイプの冷え性が多いと思われます。
逆に副交感神経が働き過ぎて冷え性になることもあります。
熱が外に逃げすぎてしまう場合です。
寒いときには血管が収縮して体表に流れる血液から温度が逃げないようにしますが、交感神経が弱い方は、血管の収縮が上手くできないために体表から温度が逃げてしまい冷えを感じるようになる場合もあります。
自律神経は互いのバランスが取れている状態が一番正常に働きます。
どちらかが優位の状態ですと身体のバランスを上手く取れないために冷え症へと繋がってしまします。
リンパ管系は組織液やリンパ液を回収してくれる働きがあります。このリンパ管系の運搬障害が生じると、皮下組織に過剰に水分が溜まりやすく、冷え症に繋がります。
静脈は老廃物を含んだ体内の水分の内約9割を回収しているため、静脈に障害がでると冷え性に繋がります。
重力により身体の中の水分は下半身へと流れていきやすいので、リンパや静脈が原因で冷えを感じる方はリンパ浮腫などのむくみなども一緒に悩まれていることが多いです。
熱産生力が低いタイプ
ダイエットなどをしている方に多いのですが、
身体は熱を食事や運動から作ります。ダイエットなどをしている方は食事量も減っているため食事からの熱エネルギーが少なくなっています。さらに筋肉は熱を作るためダイエットなどで筋肉量が落ちていくと熱産生量も少なくなってさらに熱を生み出さない体になります。
皮下組織にある脂肪は保温材の役割があります。この皮膚と血管の間にある保温材が少ないと外に熱が逃げやすくなってため身体が冷えやすくなります。
この熱産生量が低い冷えは10代~30代の女性に多いタイプです。
体温や血圧をコントロールしている自律神経のバランスを崩しやすいのも女性です。
50代女性
足先の冷えが強く、夜眠れないため来院された。
靴下をはいていても寒さを感じる。
足元以外の冷えは特に気にならない。
冷たい飲み物が好きで、がぶ飲みしてしまう。
慢性的に腰痛もあり、冷えと腰痛治療を希望したい。
当院の治療
触診したところ、足首からつま先までの冷えがとても強かった。
手は問題なく、お腹は下腹部あたりに冷えがあり、腰は仙骨のあたりに冷えがある。
もともと腰痛もちであるため、腰の血行不良から足の冷えが強くでてしまっていると推測した。また、冷たいものを好むことから内蔵にも冷えがあると考えられる。
腰から臀部は圧痛も多かったため、まずはうつ伏せで腰まわりの施術を行う。
その次にお腹を電子温灸器で温めながら、足に灸頭鍼と点灸を行う。
内蔵の機能低下も考えられるため、自律神経系の調節もあわせて行った。
経過
◇1回目◇
お灸を足にしているとぽかぽかする感じが気持ちよかった。
◇2〜9回目◇
施術のあとは足が温かく夜もぐっすり眠れる。
自宅でもできるセルフ灸を朝晩してもらうことにした。
◇10回目◇
足の冷えはかなり改善。
まだ冷たくなるときもあるが、毎日ではない。
規則正しい生活を送るとともに冷飲食をなるべく避けてもらい適度な運動をしてもらうことが大切です。本人の冷えに対する取り組みで冷え症を大きく改善できますので養生法も大事です。
患者とともに冷えに対する問題意識を持ち、それを改善していけるように治療と養生法を的確にアドバイスしていくことが当院の治療方針です。
西洋医学では冷え性は病気として認識されていません。東洋医学では寒熱は重要な要素として捉えていますので、冷え性の治療は東洋医学が有効的な疾患だと思っています。
漢方医学では、体を温めるショウガなどの食べ物と身体を冷やしてしまう食べ物があると考えられています。体を冷やす食べ物は熱症状が出ている時などに食すると非常に有効な場合もありますが、冷え性の方が食べてしまうと体の冷えをさらに加速させてしまい逆効果です。知らず知らずのうちに身体を冷やしてしまう食べ物を多く摂取してそれが冷え性の原因となっている場合もあるのです。
身体を冷やしてしまう食べ物として代表的なものとして
熱いところでよく取れるの食べ物
・バナナ
・レモン
・みかん
・パイナップル
・トマト
・きゅうり
・スイカ
・なす
などがあります。熱い地域で住む人たちは元来から体を冷やす食べ物を多くとるようになっているため熱い地域で多く取れる野菜や果物は体を冷やす作用のものが多いです。
その他、水分を多くとりすぎていたり、白砂糖や化学調味料も身体を冷やしてしまうものとして知られています。生野菜も身体を冷やしてしまうためなるべく火を通して食べることが好ましいです。
また、食べすぎも身体を冷やすもととなります。飲食物が胃の中に入り消化が行われると多量の血液が胃腸の壁に集まります。胃腸を働かせて消化活動を行う必要があるため、体のあらゆる器官から血液が運ばれるため体の熱は低下してしまうのです。
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 13:02 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)