寝違えの鍼灸治療

①寝違えに対する当院の鍼灸治療

当院の寝違えに対する施術は、第一に首や肩背部のツボや痛みの強い部位に鍼をさしてその部位の痛みを抑える鎮痛効果を促します。
痛みを抑えた状態で、首肩部や背中に電気を流すことで筋の緊張を緩めて運動制限を取り除いていきます。

寝違えは五臓六腑の「」と「」に深く関係しているので腎や肝に関する経穴を用いて「腎気」や「肝血」を補うことや頸部の気血の流れをよくします。また「風寒」や「湿」の邪気によって引き起こされる場合はそれらを体外に出す治療が必要になります。

寝違えは体が非常に疲れている状態におこる場合がほとんどです。それは東洋医学では全身の気血が滞っている状態と考え、はり灸施術でその滞りを取り除きます。
寝違えといいましても軽い状態から重い状態の症状があります。施術ですぐ取れる場合もございますが、全身の疲れや慢性的な肩こりなどからくる寝違えの場合は、施術期間もそれなりにかかる場合がございますのでご了承ください。

 

寝違えの鍼通電療法

 

②寝違えのはり灸治療症例

30代女性
当院へご来院する前日の朝に起きて寝返りをうった際に突然右の首から肩にかけて痛みが走った。そのまま起き上がる時にも首に強い痛みが残り、出社されたとのこと。歩くだけでも首や肩に響き、デスクワークの仕事の際にも少し首を動かすだけでも痛む。

治療
寝違えは、疲れやストレスのたまっている時やソファーで寝てしまった時など寝る姿勢に問題があった時などに発症しやすいので寝違えになってしまった経緯を詳しく問診していきます。この方の場合、仕事が忙しく帰りも遅くなることも多いとのこと。また3か月前にも左首を寝違えており、デスクワークの姿勢や寝る姿勢などから普段から首や肩の筋の過緊張状態であることが推察できた。
また普段から全身の倦怠感や身体の冷えがあることから全身を調整する必要があると考え、自律神経測定器で自律神経の状態を計測しました。

1.自律神経調整治療
まず仰向け治療で全身の調整施術を行いました。体の自律神経などのバランスを整えることで身体を回復しやすいようにしていきます。

2.アイシング
触診してみると右頸部に若干の熱感が感じ取られたため、炎症ひかせる目的でまずは頸部をアイシングしました。

3、鍼通電気治療
腰部や背部にも筋緊張が見られたため、それらの筋肉の過緊張を取り除くため腰や肩甲間部にも鍼灸施術を施し、首の痛みが強い部分には鎮痛目的で通電気治療を行いました。

経過

◇1回目◇
鍼灸治療が初めてのご経験ということと注射の刺激が特に苦手ということで、刺激量が多くなり過ぎないように体の状態を見極めながら施術しました。

◇2回目◇
前回治療後、その日は痛みがだいぶ経過したが右頸部の違う場所に痛みがまた出た。新たに痛みが出た部分を中心に前回同様仰向けで自律神経調整治療を行ってからアイシングをしてうつ伏せ治療を行いました。

◇3回目◇
右頸部の痛みはだいぶ引いて最初の痛みが10とすると2回目の施術のあとは2となった。まだ少し痛みと筋緊張があるためその改善を目的に施術しました。

③症例2

40代男性
3日ほど前にお酒を飲んだ帰りにソファーでそのまま眠ってしまった。朝起きると首を動かすと痛みが出てその痛みが段々と痛みが強くなって首を後ろに曲げる動作や右に倒す動作をすると痛みが首から肩にかけてはしる。以前も同じようなことがあったが、2日ほど経つと痛みが治まっていった。しかし、今回はなかなか痛みが消えないということで当院にご来院された。

治療
痛みが発症して数日が経ち、その間も首をあまり動かさなかったということで、炎症部分は落ち着ていてきたのでアイシングはせずに首肩の通電気療法を中心に治療して行きました。痛みが徐々にとれてきた段階で肩周りの筋肉の張りはマッサージなどの手技療法で取っていきました。

経過
◇1回目◇
痛みが半分ほどに軽減。治療前よりはだいぶ動けるようになったが、まだ痛みはある。

◇2回目◇
治療後次の日の朝にまた痛みが出たがすぐに治まって動かすと痛みが出るためまだ可動域は狭い。

◇3回目◇
痛みはほぼ感じない程度になってきた。肩周りの筋緊張が強いため、ほぐしていった。

◇4回目◇
3回目の治療から1週間後にご来院。首の痛みが感じなくなった代わりに肩こりを感じるようになったとのことで肩の治療中心に行った。

④症例3

30代女性
朝起きてから首に違和感を感じ、時間が経つにつれて痛みが増してきた。首を後ろに曲げようとすると強い痛みが出て動かすことが出来ない。右側の頭と首の付け根から肩甲骨内側にかけて、特に肩甲骨のきわの所に強い痛みが走る。今までも寝違いすることはあったが、今回は全く首を動かすことが出来ず日常生活に支障が出てしまうためその日のうちにご来院された。

治療
まず眠りが浅い習慣があり、睡眠中の体勢が崩れ首の負担がかかりやすくなっているので、自律神経を調節する治療をおこなった。時間が経つにつれて急激に痛みが増してきたということなので急性的な炎症を抑えるためにアイシングをし、さらに肩首、肩甲骨まわりを中心に鍼通電治療をおこなった。

経過
◇1回目◇
施術後すぐに痛みが軽くなり首を後ろに曲げれるようになった。後ろに曲げた時に少し痛みがあるということなので、最後に寝違いの痛みを軽減するツボに貼るタイプの鍼を装着。まだ炎症が治まってなく痛みも出てくる可能性があるため次の日も治療をおこなう。

◇2回目◇
首や右肩甲骨内側の痛みは無くなり日常生活に支障はなくなった。今度は左の背中に軽い痛みが出現。首肩、左の背中を中心に鍼治療をおこない、痛みの原因であるものを一つ一つ取り除いていった。施術後はほぼ痛みは無くなり、首の可動域も広がった。

◇3回目◇
痛みは感じない。もともと肩が凝りやすいということもあり、再発予防のための施術をおこなった。現在も、メンテナンスを兼ねて来院中。

④症例3

30代女性

5日前に寝違えをして良くなったと思ったら今朝同じ場所にまた痛みが出現した。

下を向く動き、左を向く動きが痛くてできない。

左側の肩甲骨や背中のほうまで痛みがでる。

湿布をはったら少し痛みは軽減した。

 

治療

痛みがでる範囲からみて、肩甲挙筋、僧帽筋が主に炎症をおこしている状態だった。

最初の寝違えで痛みをかばうように動いていたことから、2度目は範囲が広がり出現したと考えられる。

局所の治療と、痛みをかばってできた身体のバランスを整える治療を行った。

経過

◇1回目◇

痛みの原因となっている肩甲挙筋、僧帽筋を中心に鍼をした。

施術後は痛みが7割減。

寝違えの治療は間隔を短くしたほうが効果的なので明日も来院するようにすすめた。

◇2回目◇

痛み消失。

痛くて動かせなかった分、コリ感があるのでコリをとるような治療をした。

施術後は体が軽くなった。

③寝違えとは?

寝違えとは、不自然な姿勢で眠り続けた時に、首に負担がかかるために起こる頸椎捻挫のことです。睡眠中に無理な姿勢を取り続けたり、無理に首を動かすことで首の筋肉に負担がかかって筋線維が損傷し、筋肉痛にも似た症状を呈します。骨の異常ではないのでX線検査を受けても異常が見つかることはほとんどないようです。
頚椎椎間板ヘルニアの治療

【寝違えの症状】
ⅰ)首の痛み
起床時に首を横に回すと激痛が走ります。首を回す角度が大きくなるほど痛みも徐々に増していき、横を向く際には無意識に体ごと横を向いてしまいます。

ⅱ)首の運動制限
起床時突然に首が動かせなくなります。症状が重い場合では、首にこわばりがあり、起き上がるのもつらい状態になります。

寝違えは症状が重い状態から軽い状態まで様々であり、寝違えによって仕事に影響が出る場合も少なくありません。痛みや運動制限が数週間続く場合もあり、決して侮ってはいけない疾患です。
首の痛みとともに痺れの症状などが併発している場合は、神経系の障害の可能性が考えられます。よく見られる神経系の障害として頸椎椎間板ヘルニアがあります。また首の筋肉は転倒や交通事故などの時に損傷を受けやすく、むちうち症との見極めも重要になってきます。首への外力が急激にかかった場合がないかを検討していく必要があります。

頸椎椎間板ヘルニアとは?
頸椎椎間板ヘルニアとは、首の骨の間にある椎間板が飛び出して、急激な片側の頸・肩・腕などの痛みを発症します。頸椎椎間板ヘルニアの主な症状は、首から背中にかけてのこり不快感疼痛などと首の運動制限が生じることに加え、飛びだした髄核が脊髄や神経根を圧迫するために圧迫された神経によって腕や手指の痺れや疼痛が現れます。

ムチウチ症とは?
交通事故による後遺症で最も多いのが首から肩にかけての痛み、所謂むち打ち症です。頚椎部分の神経や血管が損傷したり圧迫されたりすると首・肩・腕などの痛みはもちろんのこと頭痛めまい吐き気なども引き起こします。むち打ち症の怖いところは事故直後は症状が出ていなくても数日経過して徐々に痛みが出てくる場合が往々にしてあることです。

 

 

④寝違えの原因

 

寝違えの原因

寝違えにはいくつかの原因があると考えられています。

ⅰ)寝る時の姿勢
通常人が眠っている場合は、一部分へ負担がかからないように無意識に寝返りなどで体の向きを変えます。しかし、泥酔状態で眠ってしまった場合や体に疲労が溜まっていたり、睡眠不足の場合はそういった負担を軽減する無意識の行動が減少します。その結果一部分に負担がかかってしまい寝違えを引き起こします。

ⅱ)慢性の肩こりやリウマチ
慢性的な肩こりやリウマチから血流の流れが低下して首に痛みを生じ、寝違えを引き起こします。デスクワークや車の運転時間が長い人は慢性的な筋疲労や筋肉や筋膜の方さが見られる場合が多く寝違えが起きやすいです。

ⅲ)日常的な筋疲労や体の疲れ
寝違えを起こしやすい筋肉は、一般的に肩甲挙筋・板状筋・僧帽筋・菱形筋などが挙げられます。

肩甲挙筋・僧帽筋・菱形筋
肩甲挙筋第1~4頚椎横突起から肩甲骨の上角に付着する筋肉で肩甲骨を上げる作用、主に肩関節を動かす作用があります。

僧帽筋は首肩周りや背部を覆うとても大きな筋肉で寝違えで痛めた場合上部の筋肉が炎症を起こしている場合が多いです。僧帽筋は後頭部から鎖骨外側に付着する筋肉です。

菱形筋は頚椎7と1~5胸椎の棘突起から肩甲骨内側につく横に作用する筋肉です

これら筋肉は肩甲骨を動かす作用があり、寝違えで炎症が起きた状態になると肩関節を動かしたときに痛みが増強します。その他、首を動かした際にも引き伸ばされたりするため痛みを誘発します。

板状筋
板状筋には頭板状筋と頸板状筋とがあり、頭板状筋は頚椎や胸椎の棘突起から後頭骨や乳様突起に付着します。頸板状筋は胸椎の棘突起から頚椎の棘突起につきます。
二つの筋肉ともに首の伸ばしや回す、横に倒すなどの作用を担っており、この筋肉に寝違えで炎症が起きると首を動かすごとに痛みが強く出ます。

また、筋膜の損傷が痛みの原因になっている場合も多く引き伸ばされると痛みを誘発します。

 

執筆者

清水大地

眼精疲労専門の鍼灸師

資格
はり師
きゅう師

2008年
鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年
おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年
中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年
渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年
三軒茶屋α鍼灸院を開院


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 17:10 / 院長コラム コメント&トラックバック(%)

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