胃が行う飲食物から栄養を吸収し、不要なものを下に降ろすという働き(受納・降濁作用)は肝の協調によって行われています。肝は感情をコントロールし、ストレスを受け止める働きがありますが、ストレスなどが原因で肝の働きが妨げられると胃も影響を受けその働きが上手くいかなくなります。
(肝胃不和)また、中医学では体に悪影響を及ぼす自然の変化を「邪気」と呼びますが、梅雨から夏にかけて増える湿気の邪気は「湿邪」と呼ばれます。
胃と協調して消化吸収を行う五臓の「脾」は「湿を嫌い乾を好む」性質があるため、梅雨から夏にかけては体に余分な水分が溜まり胃腸の働きが低下しやすいのです。冷たいものの摂りすぎや、冷房の効き過ぎも胃腸の働きが低下してしまう原因となると東洋医学でも考えられています。
胃酸過多症の方は自律神経のバランスが乱れている方が多いため、まず、自律神経測定器で血管の状態や自律神経のバランスを測定していきます。その結果をふまえた上でその方々に合わせたオーダーメイドの施術を行っていきます。
胃酸の分泌を制御している自律神経のバランスを整え、胃、肝、脾の機能を高めるツボに鍼やお灸で刺激を与えます。また、身体の冷えは内臓機能を低下させる原因となるため冷えのある方には冷えを除く治療も合わせて行っていきます。
30代 男性
3ヶ月程前から仕事が多忙でストレスから暴飲暴食を続けていたせいか、数日前から空腹時の胃痛と食後の胃もたれと胸やけを起こすようになった。なんとなく常に胃部に不快感を感じ、特に夕方から夜にかけて症状が重い。
脂っこいものを食べた後や飲酒後、歯みがきの際の刺激などで吐き気を催し、時には嘔吐してしまう。
当院での治療
自律神経測定器の結果、交感神経が過亢進状態でしたので、自律神経のバランスを整える治療を主に、腹部、下肢、背部にある消化器系の機能を調整するツボを取り入れながら治療を行いました。慢性的な肩こりがあるということで、触診したところ頚肩、背部に筋緊張が見られたため、そちらの治療も合わせて行い全身的な緊張や疲労を緩和する治療も行いました。また、問診の中で食生活、飲酒、喫煙、運動習慣等の生活習慣の指導も行いました。
◇1回目◇
施術後当日は変化感じなかったが、翌日は胃のもたれと胸やけが少し楽に感じた。その後は徐々に状態戻った。胃痛、胃部不快感と吐き気は変わらない。
◇2回目◇
治療後は胃の痛みはさほど強く感じなかった。胃のもたれは変化ないが、胸やけは少し楽になった。以前はほぼ毎日飲酒していたが最近は控えていることも関係あると思われる。
胃部不快感は押すと感じる。吐き気、嘔吐は時折あり。最近仕事が残業続きで肩こりが酷い。
◇3回目◇
胃もたれ、胸やけ以前は毎日あったが、現在は3日に1回程度。胃部不快感はまだあるが、胃痛はたまにチクッと痛む程度になっている。吐き気も時折あるが強くはない。肩こりは痛む部位は狭くなった。
◇4回目◇
仕事で飲み会があった日は胃のもたれ、胸やけ、吐き気強く出たが、それ以外の日は胃症状軽くなってきたと感じる。胃部不快感は食後に感じるが、それ以外はそこまで気にならない。肩こりは全体的に楽になってきたと感じる。
◇5回目◇
吐き気を最近は感じなくなった。仕事でストレスを感じる事があり、その日は胃痛が久しぶりに出たが、それ以降は出ていない。胃もたれ、胸やけは脂っこいものを摂らなければあまり感じなくなった。肩こりが以前より楽になり体が軽くなったと感じる。
◇6回目◇
胃の痛みは消失した。胃もたれは、たまに脂っこいものを食べた時や飲酒を多めにした時くらいで胸やけも最近は出ていない。胃部不快感は押すと感じるが日常生活で気にならない程度。吐き気は歯ブラシの刺激のみ起こるが実際に嘔吐する事は無い。肩こりも押すと硬いところはあるが痛みが気にならない程度になった。
症状が日常生活であまり気にならなくなったので、治療間隔を延ばしてあと何回か健康維持のために通院したいとのこと。
胃酸過多症とは、何らかの原因によって通常よりも多く胃液が分泌される病気です。食べ物を消化する胃酸は非常に酸性が強いのですが、通常胃は胃酸で胃壁を溶かしてしまわないように胃粘膜から粘液を分泌して胃壁を守っています。胃酸が過多な状態では、この胃粘膜と胃酸のバランスが崩れ自分の胃を攻撃してしまうため身体の色々な部分に悪影響が現れます。
症状
・胃もたれ、むかつき
胃酸過多になると胃の粘膜が荒れてしまい、消化機能に支障が生じて胃もたれやむかつきが起こります。
・胃の痛み
胃酸が過剰に分泌される事で胃の粘膜が傷つき、炎症が起こると胃痛を感じることが多くなります。胃痛はみぞおちに感じることが多く、空腹時などにキリキリと痛みます。
・胸やけ
胃酸が過剰に分泌されると、食道と胃を繋ぐ筋肉が緩み食べた物や胃酸が逆流しやすくなります。胸からみぞおちまでの間に焼けつくような不快感を感じたり、チクチク刺されるような痛みを感じます。
・ゲップ
胃酸が過剰に分泌されると食べ物外で消化される際に大量のガスが発生します。そのため頻繁にゲップが出るようになります。食道と胃の間には弁があり胃の中の空気やガスは逆流しないようになっているのですが量が多すぎると弁では支えきれなくなりゲップとして出てきます。早食いをすると食べ物と一緒に空気が胃の中に入りやすくなりゲップも出やすくなります。
・吐き気、嘔吐
胃酸が過剰に分泌されると食道と胃を繋ぐ筋肉が緩むため口の中に胃酸が上がってきます。すると喉を圧迫し吐き気や嘔吐が起こりやすくなります。
その他
・胃部、腹部膨満感
・食欲減退
・口の中の酸っぱさ
・喉の奥の違和感
などが挙げられます。
ストレス
胃酸と胃の粘液は自律神経(交感神経・副交感神経)の働きにより分泌のバランスが制御されており、通常は胃の中に食べ物がある時に胃酸が分泌されます。交感神経が優位になると胃酸の分泌が減少し、反対に副交感神経が優位になると胃酸の分泌は増加します。
ストレスを感じると交感神経が優位になります。すると胃の血管が収縮し、胃酸の分泌が減少します。しかし、交感神経が強く働くと体はバランスを保つために副交感神経の働きも盛んにします。そのため胃の蠕動運動が活発になり、胃液の分泌を促進するため胃酸過多の状態となるのです。
食生活の乱れ
刺激物の食べ過ぎも原因となります。香辛料、酢を使う料理、アルコール、カフェイン、脂質や糖質の摂りすぎは胃酸の分泌を促進させます。また、早食いや食べ過ぎなどの食習慣も胃酸過多を招きます。
喫煙
喫煙は交感神経を刺激するため、胃の血流が悪くなり消化機能が低下して胃酸の分泌量を低下させます。しかし自律神経はバランスをとるため副交感神経の働きを強めるため胃酸の分泌が増加します。また、たばこに含まれるニコチンには一部中枢神経を刺激して、胃酸を分泌させる働きもあるため過度な喫煙は胃酸過多を招きます。
過剰なガストリン分泌
ガストリンとは胃の出口にある幽門前庭部から分泌されるホルモンの一種で、胃酸や消化酵素を分泌させる作用や血糖値を下げるインスリンの分泌を促進する作用があります。
ガストリンが大量に分泌されるのは、消化機能が低下した際や、ピロリ菌の産生の原因となるアンモニアが発生した際に、それに対抗するためだと考えられています。ガストリンが過剰に分泌されると胃酸も過剰に分泌されるようになります。
・逆流性食道炎、逆流性胃腸炎
胃酸過多によって胃酸が逆流して炎症が起こる病気です。逆流性食道炎と逆流性胃腸炎の違いは炎症が起こっている場所の違いです。逆流性食道炎の場合は食道に、逆流性胃腸炎の場合は胃腸に炎症が起こっています。この二つの病気の症状は似通っていて胸やけ、ゲップ、喉の違和感、胃もたれ、吐き気、胃痛などが起こります。
逆流性食道炎の鍼灸治療について
・十二指腸潰瘍
十二指腸の粘膜が炎症を起こし、粘膜や組織の一部が損傷してしまう病気です。症状としては、空腹時や夜間に上腹部が痛む、下腹部の違和感、胸やけ、ゲップ、吐血、下血などが挙げられます。
・胃潰瘍
胃の粘膜がただれ、傷つき損傷した状態の事を言います。進行すると胃壁に穴が開いてしまうこともあるので、病院で早期治療を受けることが大切です。主な症状としてゲップや胸やけ、吐き気、空腹時のみぞおちの痛み、腰痛や背中の痛み、吐血、黒い便が出る、などの症状が挙げられます。
・胃炎
胃の粘膜に炎症が起きた状態です。
・胃がん
胃粘膜の表面の組織が、がん細胞に変わってしまう事で発病します。胃がんの症状は他の胃の病気と非常に似通っており、胸やけ、胃痛、ゲップ、食欲不振、消化不良、吐血、黒色便が出る、貧血などがあります。
慢性的な胃炎や胃潰瘍により胃の粘膜が傷ついているので、細胞の遺伝子が損傷しやすく、細胞の再生時にがん細胞化しやすいと言われています。
また、塩分の過剰摂取も胃がんのリスクを高めるというデータもあります。
清水大地
資格
はり師
きゅう師
2008年
鈴鹿医療科学大学鍼灸学部 卒業
卒業後2年間北京中医薬大学に留学。日中友好病院にて多くの臨床経験を積む
2011年
おおうち総合鍼灸院に勤務。眼科鍼灸の確立
2014年
中目黒にて東京α鍼灸整骨院を開院
2016年
渋谷α鍼灸整骨院を開院
2018年
三軒茶屋α鍼灸院を開院
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 09:02 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)