排尿時の痛みをはじめとする頻尿、残尿感、排尿困難などの症状を東洋医学では「淋証(りんしょう)」と呼びます。
尿は六腑の膀胱に貯蔵され、五臓の腎の作用によって排泄が調節され五臓の腎と六腑の膀胱は密接な関係にあり、両者の連携により排尿がコントロールされています。
また、体の全体の機能を調整する五臓の肝や、体液の調整をする肺の機能も関係してきます。人体の主な構成成分である気、血、津液の中では、人体に必要な正常な体液を意味する「津液」が最も関与します。
淋証の病因・病機
・膀胱湿熱
油っぽいものや辛いもの、甘いものの過度の摂取や飲酒過多は体内で湿熱を形成します。飲食物により生まれた湿熱は、当初は中焦といって腹部の辺りにありますが、湿の重い性質により下部へと移行して膀胱に入りこんでしまいます。
また、性器を不衛生にしていると性器を通じて、濁気が膀胱へ入り込み湿熱となります。
尿が体外に排泄されるのは膀胱の気化作用によるものですが、膀胱に入り込んだ湿熱はこの気化作用を失調させてしまいます。
・腎虚
腎と膀胱は表裏関係にあり、腎が虚すと膀胱の気化作用は失調します。腎陽虚は加齢、大病、妊娠、出産などにより、腎陽を消耗する結果、腎が膀胱の気化作用を抑制できなくなることや、外邪が虚の乗じて膀胱を侵しやすくなることで淋証を生じます。また、腎陰虚があると下焦に虚熱を生じ、膀胱の気化作用も失調するため湿熱を生じます。
・肝気鬱滞
悩みや怒りで肝が損傷されて気滞を生じ、気が鬱して火に転化したり、気と火が下焦に鬱し膀胱の気化を妨げたり、気虚による下焦の固摂機能の失調を生じます。
当院では、内臓機能や免疫機能、血液循環などの司令塔である自律神経のバランスを自律神経測定器で測定し、お身体の状態を把握したうえで治療へ移ります。
自律神経の調整施術を行い、全身的な血行促進と免疫力や内臓機能を高め、症状が治癒しやすい状態へとお身体を整えます。
また、東洋医学的観点から腎、膀胱、肝などをはじめとした五臓六腑の機能を高めるツボや、津液の流れを調整するツボも用います。さらに、膀胱炎の方は下半身の冷えがあることが多く、それが泌尿器の血行不良に繋がりその機能を低下させる一つの要因として考えられることから下半身の冷えを除く治療も取り入れていきます。
痛みが出ている場合は下腹部に鍼通電治療を用いてより鎮痛効果を引き出すような施術も行っていく場合もございます。
膀胱は内面が柔らかい粘膜の袋で、尿を溜める器官です。その膀胱に炎症を起こすのが膀胱炎です。
圧倒的に女性に多い病気で、女性のうち2人に1人は経験する病気と言われており、女性には非常に身近な病気です。これは女性の体の構造として、肛門と膣が尿道に近いことや、尿道が男性に比べ4分の1ほどと短く、細菌が膀胱まで簡単に到達してしまいやすいためです。多くの場合、尿とともに最近は膀胱の外へ洗い流されますが、排尿を我慢したり、体調が悪かったりすると膀胱の中で細菌が繁殖し、膀胱炎を起こします。
・急性単純性膀胱炎
20~30歳代の若い女性に多く発症し、閉経前後の中高年期の女性にも比較的多い膀胱炎です。過労、睡眠不足、風邪、身体の冷え、排尿の我慢、性生活などが誘因となることが多いです。
・複雑性膀胱炎
尿路に尿停滞、異物、持続的細菌源、あるいは全身的抵抗力の低下などの基礎疾患を有する慢性膀胱炎です。複雑性膀胱炎はこれらの基礎疾患を除去しなければ感染症は治癒しないことが多いといわれています。また、複雑性膀胱炎にはしばしば複数菌感染がみられます。
・間質性膀胱炎
何らかの原因で膀胱の粘膜の内側の層に炎症が起こり、筋肉が萎縮する病気です。
間質性膀胱炎では尿検査などで尿中の細菌の存在は認められません。この病気の原因は分かっておらず、自己免疫やアレルギー反応の関与があるのではないかという仮説がありあます。通常、膀胱には200~400mlの尿が溜まると尿意を覚えますが、間質性膀胱炎になると膀胱炎が膨らまないため、100ml以下でいっぱいになります。そして、尿が溜まると下腹部が激しく痛み、トイレに行く回数がとても多くなります。
・嚢胞性膀胱炎
膀胱粘膜に袋状の病変が発生します。
・真菌性膀胱炎
真菌(かび)の感染によって膀胱が炎症を起こすものです。
急性膀胱炎の原因としては、大腸菌やぶどう球菌などの細菌が膀胱粘膜に感染して起こるものが最も多いです。膀胱は本来細菌に対する抵抗力、免疫力をもっていますが、病気や無理なダイエット、過労で体力が落ち、抵抗力が弱くなった場合に感染しやすくなります。
また、ストレスが溜まっている時や不潔な性交渉をすると膀胱炎にかかりやすくなります。さらに、月経の前後にきわめて雑菌が感染しやすく膀胱炎が起こりやすくなります。
その他、摂取した薬剤、食物による刺激などの物理化学的刺激が原因となるものや、膀胱の粘膜にアレルギー反応が起こることが原因となる膀胱炎があります。
<頻尿>
尿意を催してトイレに行く回数が増加します。症状の強い時には10分前後の感覚でトイレに行くことも少なくありません。1回で出る尿の量は少なくなります。残尿感もあることが多いです。
<排尿痛>
炎症を起こした膀胱が、排尿により急激に縮まり刺激されることで痛みを感じます。排尿の途中よりも、排尿の後半または排尿後に痛むことが多いようです。下腹部や尿道口の痛みとなります。
<尿混濁>
膀胱炎になると、細菌が尿の中で増殖し、白血球や炎症を起こした膀胱の粘膜が剥がれたりして尿が白濁します。尿に膿のようなドロッとしたものが混在します。
また、匂いもきつくなることが多いようです。
<血尿>
最近に膀胱粘膜が傷つけられて、目で見て分かるほどの血尿が出ることもあります。血尿は出始めから出終わりまで同じ濃さではなく、膀胱が空っぽになる最後に強くなる、排尿終末時血尿のことがほとんどです。
これらの症状があっても病院に行かないで我慢していると、排尿しない時にも下腹部が痛むようになってしまいます。膀胱炎では通常発熱はしませんが、発熱したり、腰痛があったりする場合は、細菌が腎臓の腎盂まで炎症が広がり、腎盂腎炎になっている恐れがあります。
検査・診断
基本的には尿検査で診断します。尿中の白血球や細菌数を調べて一定以上の値を認めれば膀胱炎と診断されます。
尿の細菌培養検査で原因となる細菌の同定を行いますが、診断までに一週間程度の時間がかかるため培養検査の結果が出るまでに治療も行い治ってしまう場合がほとんどです。
しかし、症状が改善しなかった場合には珍しい細菌による膀胱炎の可能性が高くなるため、初診時の培養検査をもとに治療を変更します。
治療
ほとんどの膀胱炎は細菌感染症であるため、抗菌薬治療を7~10日程度行うと完治します。また、症状は治療を始めて2、3日で良くなることがほとんどです。
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 20:41 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)