下肢に起こる浮腫(むくみ)の鍼灸治療

浮腫(むくみ)とは...

水が滞って溜まっている状態です。
体重の60%は水と言われます。体にある水分というと真っ先に思い浮かぶのは血液ですが、血液は体重の7%程です。残りの53%は、細胞の中に40%含まれ、組織間質(細胞と細胞の間にある隙間)に13%の水分が存在します。
この組織間質に存在する13%の水分量が増えることで浮腫(むくみ)として現れます。

浮腫の種類

浮腫の種類には局所性の浮腫、全身性の浮腫、特発性の浮腫、生活習慣性の浮腫があります。
局所性の浮腫
・リンパ性浮腫(象皮病、悪性腫瘍リンパ節転移)
・静脈性浮腫(深部静脈血栓症、慢性静脈不全症)
・血管神経性浮腫(クインケ浮腫)
・炎症アレルギー
全身性の浮腫
・心原性浮腫(心不全)
・肝性浮腫(肝硬変、劇症肝炎、脂肪肝炎)
・腎性浮腫(ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、腎不全)
内分泌性浮腫(甲状腺機能低下症、クッシング症候群、月経前浮腫)
・薬物性浮腫(経口避妊薬、抗炎症薬、血管拡張薬)
・低栄養性浮腫(蛋白漏出性胃腸症、脚気、摂食不良)
・妊娠
特発性浮腫(原因不明の浮腫)
生活習慣性の浮腫
・運動の不足
・食事の偏り

下肢に起こる浮腫の原因

ここでは、来院される患者様の悩みで多い「内分泌性浮腫」と「生活習慣性の浮腫」について詳しくお伝えします。

「内分泌性浮腫」
◯甲状腺機能低下症
甲状腺ではホルモンを作り、全身に働きかけて代謝活動や精神活動を維持する働きがあります。この甲状腺の働きが低下する疾患です。原因は3つあり、甲状腺自体に異常がある場合(原発性)、下垂体や視床下部(甲状腺に司令を出す上司的な部位)に異常がある場合(中枢性)、甲状腺から出たホルモンが正常に働かない場合(ホルモン不適応性)です。
特に自身の免疫力が、間違えて自身の甲状腺を破壊してしまう疾患は慢性甲状腺炎(橋本病)と呼ばれます。橋本病の多くは女性に発症し、男女比は1:20以上です。30〜50代に多く、女性の10人に1人という高い確率で起こります。
女性の下肢の浮腫は原因が多岐に渡ります。もし下の症状が複数合わせて見られるようでしたら甲状腺機能低下症かもしれません。
・全身症状:寒さに弱い、手足が冷える、汗をかきにくい、声が掠れる(嗄声)、全身の怠さや疲労感、体重の増加、月経異常など
・精神症状:やる気が起きない、物忘れが増えた、話し方がゆっくりになった
・消化器症状:食欲の低下、便秘
・皮膚症状:硬い浮腫 (粘液水腫)、皮膚の乾燥、頭髪の抜け毛、眉毛外側1/3の脱毛

甲状腺のホルモンは心と体の両方に深く関わっているため、活動量が減り元気の無さが見られます。また粘液水腫といい、脛を押した時に凹み(指の痕)が出来ない事も特徴的です。

「生活習慣性の浮腫」
◯運動の不足
血液を含む体の水分は重力によって下へ流れやすいです。逆に心臓に血液を戻すときは重力に逆らって送らないといけないためとても負担になります。この負担を担っているのがふくらはぎの腓腹筋を始めとする下肢の筋肉です。筋肉が収縮と伸長を繰り返す事で過剰な水分や血液を心臓に戻しています。
・運動の不足
脚を組む
・冷え
立ちっぱなし
・座りっぱなし
足首の硬さ
・股関節の硬さ
これらがあると十分に筋肉が働かず、浮腫が現れます。
◯食事の偏り
普段摂っている食事の栄養素に偏りが出ると浮腫の原因になります。
ナトリウムの過剰摂取やアルコール摂取は浮腫みやすい体になります。ナトリウムには水分を引き付ける効果があり体内の水分量を増やします。アルコールは末梢血管を拡張させるので皮膚の赤みや浮腫を起こします。また、カリウムやマグネシウムには、体内の過剰なナトリウムの排泄を促す効果があるため浮腫に効果的とされています。

東洋医学的な浮腫の考え方

東洋医学的に浮腫は、津液(体の水分の総称)の滞りと考えられます。また、津液は「」、「肺」、「腎」3つの臓によって調節されています。
3つの中でも「脾」が最も浮腫に関わっています。脾は体の水分の量や分布を司っており、脾が病むと顔や足に浮腫が現れます
脾が病む原因は、糖類の過剰摂取、アルコール摂取、冷飲や多飲、高湿度の環境などが挙げられます。これらの原因により徐々に脾の能力が弱まり浮腫となります。
また東洋医学では鍼やお灸によって、人の本来持っている自然治癒力や免疫力を引き出すことで症状の改善を行います。
そのため、原因となる食生活の改善や運動習慣の改善を併せて行うことがむくみを改善することに繋がります。

当院での浮腫の治療

当院では症状 (浮腫)を改善する施術と合わせて、浮腫が起こりにくい体にするための施術を行います。

むくみを改善させるためには下肢の筋肉が充分に活動する必要があります。
固まっている筋肉に、はりやお灸で施術を行い、血流や柔軟性を改善させます。股関節や膝関節、足関節の可動域が少ない方は周囲の筋肉の柔軟性が低下しています。その場合はストレッチを行うことも考慮して行います。
また、筋肉に力が入りにくい場合は筋肉に電気を流して自動的に動かす事でむくみが改善されます。

浮腫が起こりにくい身体にするためには、脾・肺・腎の3つの能力を高めることが必要です。
そのために、仰向けでは手足に鍼とお灸を行います。うつ伏せでは背中、腰、ふくらはぎに鍼とお灸を行います。

 

症例

50代 女性

昔から足のむくみを気になっていたが、ここ2か月ぐらい前からひどくなってきた。

腎臓や心臓の病気が気になったので念のため病院を受診し、血液検査、心臓超音波、画像検査を行ったが特に異常が見られなかった。

午前中よりも午後から夕方、夜にかけてひどくなる。特に足首からふくらはぎにかけてむくみが強い。

仕事はデスクワークで一日中座りっぱなしのため、足を動かすことは少ないが、だるさを感じる。

当院の施術

足の状態を見てみたところ指で押しても圧痕は付きませんでしたが、足全体に強い張りがあり、軽度の静脈瘤も出現していました。下肢の冷えもあるため、血流低下や女性ホルモンの乱れが関連していると考えました。

精神的ストレスも感じやすく、十分睡眠時間を確保しているにもかかわらず、疲れが取れない倦怠感が続いているということなので、まずは自律神経測定器でお身体の状態を確認していきました。

 

お昼ごろに測定したにもかかわらず、副交感神経が大きく働いており、逆に交感神経の働きが弱い状態でした。これは、交感神経と副交感神経の切り替えがうまく機能しておらず、日中に副交感神経が強く働くことで血管が拡張してしまい、血液の流れを緩やかになりすぎることが足のむくみに影響を及ぼしていることが伺えます。

①自律神経調節治療

②女性ホルモン調節治療

③下肢への低周波電気鍼療法

上記の内容を中心に施術を行いました。

経過

1回目

施術後、足がポカポカして暖かくて気持ちがよかった。

快適に眠れた。

2回目

初回より、足の太さが細くなったような気がする。

3回目

むくみが改善してきた。足がすっきりしてきている。

4回目

ほとんど気にならない。

 


Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 12:35 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)

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