捻挫とは関節にかかる外力によって非生理的運動が生じ、関節の正常可動域を越えることで起こる、靭帯や関節包などの軟部組織の損傷です。
足関節捻挫のほとんどが、足先が内側なか入り込んで痛める、内反捻挫です。足関節外側の靭帯にある前距腓靭帯が損傷します。
足関節捻挫での注意する点は、慢性化・再発しやすいことです。放置して自然治癒させたり、不適切な治療により症状が長引いたりすると、関節の不安定性が残ってしまうことがあるため、発生直後の応急処置や初診時が、とても大切になります。
足関節捻挫はスポーツ現場では非常に多くみられる疾患ですが、日常生活中にもたくさん見られます。階段や小さな段差、歩行時でも躓いた際に足首を捻り生じます。
この疾患は非常に多く、学生時代にスポーツをやっていた方なら自分自身か周りに足関節捻挫になった人を一度は見たことがあると思います。
症状も、軽く捻り関節包を痛めた程度の軽症から、靭帯を切ってしまうもの、骨折を伴う重度のものまで損傷程度さかなり広いです。靭帯の断裂や骨折を伴う、関節の不安定性が大きい捻挫の場合は鍼灸治療の適応外になりますが、靭帯損傷までであれば、鍼灸治療で治癒促進や筋力強化の予防まで診れます。
足は合計26個(片足)の骨で成り立っており、捻挫を起こす足首は上方は脛骨と腓骨で構成され、中央は距骨、下方は踵骨で関節をつくります。足関節の動きとして外側に腓骨の外果(外くるぶし)がある為外側の可動域は制限されますが、内側(内くるぶし)の方はストッパーとなる骨がない為、外側と比べて可動域が大きくなります。そのため、内反捻挫が多くなるのです。
損傷される可能性が一番高い靭帯は、外くるぶしと足の骨である距骨を繋いでる前距腓靭帯で、足関節を内反させる時に一番テンションがかかるためです。次いで踵腓靭帯、二分靭帯、後距腓靭帯など、内反を強制されて伸びる靭帯が損傷されやすいです。
外側につく靭帯
・前距腓靭帯
・踵腓靭帯
・後距腓靭帯
・前脛腓靭帯
・後脛腓靭帯
・二分靭帯(Y字靭帯)
内側につく靭帯
・三角靭帯
靭帯は一般的に『伸びた』と表現されますが、靭帯が伸びる事はありません。そもそも靭帯は、ヒモ状の組織によって骨同士を繋いでおり、ズレたり動きすぎてしまうことを防いでいます。
靭帯の損傷は、第一度の靭帯損傷、第二度の靭帯の部分断裂、第三度の靭帯の完全断裂に分かれます。足関節の不安定性は第二度の部分断裂から起こります。
・第一度:靭帯の損傷・・・靭帯を構成する線維の何本かが切れるが、靭帯としての機能は失われない。
・第二度:靭帯の部分断裂・・・靭帯としての機能がかなり失われ、不安定性が出現する。
・第三度:靭帯の完全断裂・・・靭帯としての機能は完全に失われ、体重をかけることなどが困難となる。
靭帯の治癒までの期間
・第一度の軽度の損傷であれば1〜2週間程度
・第二度の部分断裂であれば1ヵ月程度
・第三度の完全断裂であれば数ヶ月程度
治療は重症度により異なる場合があり、第一度と第二度の損傷では、基本的に保存療法が選択される。第三度の損傷では手術療法ならびに保存療法が選択される。
足関節の靭帯の損傷を確めるテストです。他動的に動かし、誘導方向の動揺の大きさにより靭帯の損傷が判別されます。
これからのテストは、強く引き延ばし損傷を悪化させてしまう可能性も含めて損傷時の腫れた足には行わず、炎症や急性の症状がある程度落ち着いた回復過程に行い、損傷レベルを確めます。
・内反ストレステスト・・・一方の手で脛骨の下方を固定し、他方の手で踵を包み込むように把持する。足部を内側に捻るように動かす。その時に、痛みが発生したり動揺が健側に比べ過度に大きかった場合に陽性となる。
調べる靭帯:前距腓靭帯、踵腓靭帯
・外反ストレステスト・・・一方の手で脛骨の下方を固定し、他方の手で踵を包み込むように把持する。足部を外側に捻るように動かす。その時に、痛みが発生したり動揺が健側に比べ過度に大きかった場合に陽性となる。
調べる靭帯:三角靭帯
・前方引き出しテスト・・・脛骨の下方を一方の手で固定し、他方の手で踵を包み込むように把持し、踵部を前方へ引き出す。その時に、痛みが発生したり、前方への動揺が健側に比べ過度に大きかった場合に陽性となる。
調べる靭帯:前距腓靭帯
整形外科での治療法
受傷直後は応急処置としてRICE処置が行われます。
Rest:安静
Icing:氷で冷却
Compression:圧迫
Elevation:挙上
保存療法ではギプス固定や弾性包帯など固定材は損傷程度により異なります。
足関節捻挫には、急性期の場合は病院と同じようにRICE療法を行い、テーピングなどで幹部の固定し、痛みや腫れを緩和させることを第一として治療します。
腫れが引いてからは、損傷部位や損傷程度を調べ損傷周囲に刺鍼を行い血液循環を良くしていきます。また、鍼灸の鎮痛作用を利用し、痛みを和らげ、筋肉の緊張を緩和し、損傷患部にはお灸を用いて炎症の引きを早くしていきます。
そして、靭帯損傷の治癒促進と捻挫の繰り返しを予防する為に、前脛骨筋や腓骨筋、下腿三頭筋などの比較的大きな筋肉にも鍼灸を用いて治療していきます。
足関節捻挫で腫れが引いてしばらく経っても痛みや違和感がでる方が多くみられます。これは、足関節の距骨が正常な位置に定まっていないことが原因として考えられます。
距骨は踵骨や舟状骨、脛骨や腓骨など様々な骨に挟まれるように存在し、距骨には筋肉が付着しておらず独立した緩衝材のような役割をもつ骨なので、筋肉の緊張の影響を受けやすくなります。前後、左右の動きも悪くなるとより正常な位置に戻りづらくなる為、筋肉の緊張や違和感を引き起こし、いつまでたっても足首の痛みが治らない状態になります。
その為、関連する他の筋緊張があれば筋肉に対して鍼を行うことで筋緊張を取り除きます。また、関節面の潤滑がうまく行えていない場合は矯正も行うなど、それぞれの状態に応じて施術を行っていきます。
日常生活では、インソールなどで足裏の環境(アーチ)を整える事も大切になってきます。
当院では自律神経のバランスを重要として考えており、治療方針の中に取り入れています。自律神経が整えることで、自然治癒力を最大限に引き出し、免疫力をあげて病気やウイルスから身体を守ってくれるため、自律神経を整えることはとても大切です。
当院では、自律神経を測定できる自律神経測定器があります。これにより交感神経と副交感神経のバランスを調べることができます。自律神経以外にも身体的ストレスや精神的ストレスも調べ、より多角的に症状を捉えてアプローチしていきます。
鍼灸治療は自律神経を整えるのに優れた治療法です。
自律神経のバランスを調整する事で筋肉の緊張を緩和し、血行を促進して症状を改善し、再発や悪化を防いでくれます。
足関節捻挫や足関節捻挫後の痛みでお悩みの方は、東京α鍼灸院へお越しください。
症例
40代 女性
昔からバレエをしていて、今も週3~4日程練習をしている。
バレエの練習中に左足を挫いてしまい、すぐにアイシングで対処したがみるみる腫れ上がり痛みも増してきた。少しでも早く復帰したいと思い当院を受診した。受傷部分は足関節の外側で過内反により捻挫した様子。歩行時に痛みがあり腫れが強いため念のため整形外科でX線検査を受けたが骨には異常が見当たらなかった。徐々に安静時にも鈍痛が強くなってきた。
捻挫は今回で2回目で、以前も左足の同じ所を痛めた経験がある。
当院の施術
患部の状態は、内出血が見られ腫脹が強い状態でした。受傷した当日ということもありまだ炎症状態なので、初回は患部の周囲に軽めの刺激で刺鍼し、腫脹が強い部分に直接お灸をし炎症を抑える施術を中心に行っていきました。炎症を抑える施術は2日連続で行い、その後3日空けて来院していただきました。炎症が治まってきたタイミングで次に患部に直接刺鍼しそこに電気で刺激する低周波鍼療法を行うのと同時に、関節拘縮を未然に防ぐために筋肉や靭帯の緊張を緩和する施術も行っていきました。
経過
1回目
まだまだ腫れがひどく、歩行時に痛みが出る。夜就寝中も鈍痛が起こる。
2回目
昨日捻挫したばかりなので、痛み、腫脹ともに変わりない。
3回目
腫れが引いてきた。痛みも以前より軽快してきたが、まだまだ歩くと痛む。
4回目
痛みが前回より軽くなってきた。歩行時にはあまり気にならないが、足関節を曲げると痛い。腫れは少し残っている程度まで改善。
5回目
足関節の曲げ伸ばしに痛みが生じるが、痛みの強さが軽減してきた。腫れはほとんどない。
6回目~8回目
足関節の曲げ伸ばしや歩行時はほとんど痛みはない。圧痛が多少気になる程度まで改善。
練習を再開できるようになった。
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 16:33 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)