肉離れとは筋膜や筋繊維の損傷や断裂した状態を意味します。
特に太ももの筋肉やふくらはぎといった、大きな筋肉にみられることが特徴です。受傷時に「急に力が抜けた」「バキッと音が鳴った」などの訴えもあります。
また、肉離れとは俗称で医学的には「筋挫傷(きんざしょう)」と呼びます。
運動中のジャンプやダッシュ動作、急な切り返し動作など、筋肉の瞬間的な収縮が過度に行われることで、筋肉や筋膜が急に引き伸ばされて損傷します。
しかし、その背景にはオーバーユース、筋肉の柔軟性の低下や筋肉の疲労、筋力不足、加齢、ウォーミングアップ不足、脳から筋肉への指令系統(運動神経)の不調和、関節運動の不安定、ミネラル不足、体の冷えなど様々な要素が関与しています。
・筋肉の過緊張
筋肉にはゴムのように伸びたり縮んだりする作用があり、それによって関節を動かし、運動時の出力を上げています。ところが、疲労やストレッチ不足などが原因で筋肉が過度に緊張していると、古くなったゴムのように切れやすくなってしまい、肉離れのリスクが高くなります。
・水分不足
体にはいくつものミネラルが存在していますが、汗をかく水分不足に陥ってしまうと体内のイオンバランスが崩れ、筋肉がつりやすくなってしまい、それが肉離れにリスクが高くなります。
・冷え
冬場やクーラーの風が直接当たるなどして体が冷えていると、血流が悪化し筋肉が硬くなりやすい状態になっています。筋肉が硬くなると外力により筋繊維が断裂しやすく肉離れを起こしやすくなります。
損傷を起こした筋肉の痛みと圧痛が主な症状です。痛みは、伸ばした時(伸長痛・ストレッチ痛)や力をかける時(収縮時痛)に強く出ます。
そのため、ももやふくらはぎに肉離れが生じると、重度の場合、体重をかけることで痛みが強くなり、うまく歩くことができなくなってしまいます。
また、重症度の肉離れを起こすと、見た目の変化を伴うこともあります。例えば断裂した部分がへこんだり、内出血を伴ったりすることがあります。また、肉離れによる腫れが大きい場合、血行が悪くなることで患部がしびれるコンパートメント症候群がみられることがあります。重度のコンパートメント症候群では、筋肉の壊死を引き起こすことがあり注意が必要です。
肉離れは普段からストレッチを行うなどして予防に努めることが重要です。
・ウォーミングアップをしっかり行う
運動前にはウォーミングアップを行い、筋肉を温めておきましょう。
・運動後はストレッチを行う
スポーツ終了後のクールダウンをしっかり行うことで筋肉に疲労が残りにくくなります。
肉離れを起こしてから48時間以内はRICE処置が有効です。
・R:Rest(安静)
肉離れは筋繊維が断裂しており、動かしてしまうと内出血がひどくなってしまいます。なるべく患部には体重をかけず動かさないように安静を保ちましょう。
・I:Ice(冷却)
患部を氷嚢などで冷やしましょう。15~20分ほど冷やしたら一度様子を見て、痛みや腫れが続くようであればさらに冷やしましょう。
・Compression(圧迫)
患部を弾性包帯などで固定し、炎症による腫れを抑えましょう。※あまり強く圧迫してしまうと血流が悪化してしまうため注意が必要です。
・E:Elevation(挙上)
可能であれば患部を心臓よりも高くし、炎症の拡大を抑えましょう。
診断
問診、診察、エコー(超音波検査)、CT(コンピューター断層診断)、MRI、レントゲンなどの画像診断などによって状態を確認します。肉離れ、剥離骨折の有無、軽傷・重症の判断を行います。
肉離れ重症度の分類
・Ⅰ型:出血所見が特徴である軽傷型
・Ⅱ型:肉離れの典型例で筋腱移行部、腱膜の損傷が特徴の中等 症型
・Ⅲ型:腱性部の断裂や腱付着部での裂離損傷といった重症型
受傷直後は、RICE処置で対応します。RICEとはRest(安静)、Ice(患部の冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)です。適切なRICE処置を行えばその後の治療も良好な経過をたどります。
肉離れは基本的に保存療法とその後のリハビリによる治療が中心となります。痛みが強く荷重歩行が困難な時にはギプス固定や松葉杖を用いて免荷(めんか:体重をかけないこと)をすることもあります。
また、ストレッチ痛の強いⅢ型に関しては手術療法も考慮する必要があります。
当院では肉離れの早期回復と再発防止の為の施術を行っています。炎症の強い急性期には必要であればアイシングを行い、患部やその周囲のツボに鍼やお灸で刺激を与え炎症を抑える作用を促し、損傷した筋肉を改善させるための施術を行います。
また、肉離れの周辺の筋肉が凝り固まり違和感を覚えたり痛みの原因になることがありますが、この筋肉のしこりも鍼やお灸の刺激で筋肉の柔軟性を高めたり血流を良くすることで取り除くことができます。
慢性期では、根本的治療として全身の筋肉のバランスを整え肉離れの再発を防ぎます。また、筋肉の血流改善と組織の修復促進のため患部やその周囲のツボを用いて施術を行います。
症例
40代 女性
症状
3日前に自宅でトレーニングしていたらふくらはぎから変な音がして急に息ができないくらいの痛みがふくらはぎにでた。その場で冷やし、応急処置はしたが歩くことが難しい。病院に行く前に少しでも楽になりたいので来院。
当院の施術
筋肉の炎症と緊張が強く、少しでも動くと痛みがあるようでした。
特に痛みの強いふくらはぎから大腿四頭筋までの筋肉に鍼と電気で刺激をあたえて筋肉の血流改善をし、筋肉細胞の修復を速める事を目的とした治療をうつ伏せで行い、仰向けでは自律神経を整えて身体全体の自然治癒力を高め、回復を手助けする効果のある治療を週に2回行いました。
経過
◇1回目◇
治療直後は変化なし。
◇2回目◇
痛みと腫れはまだあるが、軽減してきた。
◇3回目◇
炎症反応が強くなり、痛みが戻ってきた。
◇4回目◇
前回の痛みがかなり良くなった。少し歩けるようにまで回復した。
◇5回目◇
一気に痛みがなくなり、ゆっくりであれば歩けるようになった。
◇6回目◇
痛みはほぼなくなり、日常生活に支障がなくなった。
これからは再発防止と体のメンテナンスとして週に1回のペースで通いたい。
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 12:14 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)