チックとは不規則で突発的な体の動きや発声が、本人の意思とは関係なく繰り返し起きてしまう疾患です。根本的な原因はいまだ解明されていませんが、子どもの10人に1~2人が体験するといわれています。4~11歳頃の思春期~青年期の男児に発症することが多く12歳頃を境にして減っていき、成人になるまでに約50%の方は自然治癒していきます。
症状が継続する期間によって
・一過性チック症(一年以内に症状が消失する)
・慢性チック症(一年以上持続する)
に分類され、さらに多種類の運動チックと一種類以上の音声チックが一年以上続く場合は「トゥレット障害(トゥレット症候群)」と分類されます。トゥレット症候群の頻度は一万人に1~5人くらいといわれており性差はありません。
以前は心の問題と言われていきましたが、現在では遺伝的な要因の関与やドーパミンという神経伝達物質のアンバランスの関与が指摘されています。
また、不安や緊張、興奮、疲労、などが誘因となりやすいといわれています。
不安などのストレスや強度の疲労、発熱によって悪化しやすく、心身共に落ち着いている状態のときは改善する傾向にあります。
不安や緊張などの精神的ストレスが原因となることが多い病気のため、傷つきやすかったり敏感に感じやすかったりする性格も関係があると考えられています。
動作性の症状(運動チック)
・まばたき
・顔をしかめる
・鼻をピクピクさせる
・口をゆがめる
・とがらせる
・舌を突き出す
・首を左右に振る
音声性の症状(音声チック)
・咳払い
・鼻や舌を鳴らす
・叫ぶ
・単語を連発する
などに大別されます。
チックは意図的なものではなく、やるつもりがなくてもやってしまうものです。ある程度であれば意志により抑制することも可能です。しかし、抑制を続けると反動で一時的に症状が激しくなることもあります。
検査・診断
チック症は子供の場合は小児科や小児神経科で診察を受け、大人の場合は精神科や神経内科を受診することが勧められています。
症状と持続時間を中心に、問診、視診などで判断されることが多いです。問診からチック症を大きく3つの病型に分けます。運動チックまたは音声チックの症状が見受けられ、発症してから一年以内の「暫定的チック症」、運動チックと音声チックのどちらかの症状が一年以上見られる場合の「持続型(慢性)運動または音声チック症」と、運動チックも音声チックのどちらも発症してから一年以上経過している「トゥレット症候群」の3つです。また、ADHDや強迫症などの病気はチックとともに発症することが多く、合わせて検査を行うこともあります。
治療
症状が比較的軽度の場合は、薬物治療などは行わず、できるだけ身体的、心理的ストレスを減らす環境を整える方法を医師との相談の上で考えていきます。また、認知行動療法という本人の認知の仕方を変えることで、ストレス軽減を目指す認知療法が行われます。
チックが重度で学校生活に支障をきたすなど、特に問題となる場合、単純なチックにはクロナゼパムやジアゼパムなど、生活に支障をきたすような重度のケースでは、向精神薬などが用いられることがあります。
これらの方法で症状が軽快しない場合、難治性のチック症の場合は深部脳刺激療法(DBS)という手術が選択されることがあります。
チック症における多くの症状は筋肉の動きが制御できないことが根本にあります。
東洋医学では、筋肉の動きは五臓六腑の肝がコントロールしていると考えられています。
肝の主な働きは気、血(けつ)、津液(しんえき)の巡りをコントロールすることですが中でも気と血の巡りに強く関係しています。これらの流れを調整する働きを疏泄(そせつ)といいます。また、肝は血の貯蔵、精神状態の安定化にも貢献しています。他にも目、爪、筋肉の働きや状態を支えています。
ストレスを受け続けると肝の気や気を巡らす疏泄機能がうまく働かなくなってしまい気滞(きたい)や瘀血(おけつ)を引き起こしてしまいます。その結果眼精疲労、視力低下、まぶしさ、めまい、立ちくらみ、爪や肌の荒れ、抜け毛、筋肉の痙攣、ひきつり、こむら返り、生理不順などの症状を引き起こすことがあります。
さらに、肝と関連深い腎へのアプローチも必要な場合があります。腎は成長や生殖などを司る精(せい)を蓄えています。肝腎同源(かんじんどうげん)といって、肝が失調すると腎の働きも弱まり、逆に腎の精が少なかったりすると肝の働きも弱まってしまうのです。
チック症の方は体と心の緊張状態が続くために自律神経も緊張しやすいです。
そのためイライラ、不安、やる気が出ないなどの自律神経失調症の症状も出やすくなります。
自律神経は内臓の働きや代謝、体温などの機能をコントロールするために無意識に働いている神経で、日中活動的な時間に優位に働く交感神経と夕方から夜にかけて優位に働く副交感神経の二つに分けられます。
精神的な緊張、不安などのストレスや疲労の蓄積などにより自律神経が失調すると、チック症状が出やすくなったり症状を悪化させる要因にもなります。
そのため当院では、問診後に自律神経測定器で測定を行いお身体の状態を把握したうえで治療へ移ります。
お子様の場合小児鍼を使用し施術を行います。
小児鍼は、一般的な鍼とは違い、鍼を体に刺さず、専用の鍼具で皮膚をさする、あるいは皮膚にトントンと当てるだけの手法です。不安なお子さんにはお母さんに抱いて頂いたままで施術を行うこともできますし、親御さんの治療室への同席も可能です。
腕や足、腹部や背部などに存在する自律神経のバランスを調整するツボへ鍼やお灸で刺激し、免疫機能や内臓機能を整え体をリラックスさせることにより症状の改善が期待できます。
また、ストレスは、神経線維に伝わり筋肉を緊張させたり血管を収縮させ血行不良を引き起こします。それが最も現れやすいのが首や肩周辺の筋肉です。
チック症やトゥレット症候群の方はストレス反応により首や肩周りの筋肉が緊張していることが多いため当院では首や肩周りの施術を合わせて行います。首や肩の筋緊張を緩和することで脳内の血流を促進し、ドーパミンをはじめとした神経伝達物質のバランスを整える作用が期待できます。
また、痙攣が見られる場合その箇所に直接施術を行うことで筋肉の緊張を和らげ血流を良くしてコンディションを整えます。
さらに、東洋医学的観点から肝や腎をはじめとした五臓六腑の機能を調整するツボや、気血の巡りをよくするツボに刺激を与えお身体の状態を整えていきます。
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 18:36 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)