東洋医学ではネフローゼ症候群という疾患は五臓における「腎」という概念の機能の異常ととらえられています。東洋医学の腎は、腎臓そのものも指してはいますが、もっと概念が広いもので、それは、免疫系、生殖系、泌尿器系、ホルモン代謝系、カルシウム代謝系、自律神経系など幅広いものです。
五臓は「肝、心、脾、肺、腎」で成り立っており、「腎」は生命エネルギーのもととなる「精」が蓄えられているため、腎に異常が生じると、身体のすべての働きに影響が及ぶと考えられています。
腎が弱ると、瘀血(おけつ)が発生して、血液の質が悪くなり、血管がもろくなり、破れたり、詰まったりします。(動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞など)また、腎が弱ると肺も弱くなり、肺は皮膚を司るため、皮膚や粘膜は弱くなり、細菌や真菌やウイルスによる感染症や皮膚炎にかかりやすくなります。
腎が弱ることを腎虚(じんきょ)といいます。腎虚とは簡単に言うと「老化」のことで、その症状は、頭、耳、下半身に現れやすいといいます。例えば、記憶力の低下、抜け毛、白髪の増加、聴力低下、耳鳴り、めまい、生殖機能の衰え、足腰のだるさ、腰痛などの症状が現れます。
また、むくみの治療に対し、腎から尿として水分の排泄を促すだけでなく、体液の調整を行う五臓六腑の三焦(さんしょう)、水分の流れ全体の調整を行う肝、消化吸収を司る脾、体表の機能や水分代謝をサポートする肺の機能を高めることも重要と考えられています。
当院ではまず、内臓機能や血液循環、免疫機能などをとつかさどる自律神経のバランスを機械で測定し、お身体の状態を把握した上で治療へ移ります。
自律神経の調整施術を行い、全身的な血液循環を促進し、内臓機能、免疫力を高め症状が治癒しやすいお身体の状態へ整えます。
また、東洋医学的観点から腹部や背部、下肢などにある腎の機能を高めるツボをはじめ、五臓六腑の機能を整えるツボや水分代謝を高めるツボに鍼やお灸で刺激を与えます。
また、筋緊張や冷えを除き全身的に血液やリンパの流れを改善していきます。
ネフローゼ症候群とは、高度のタンパク尿と血液中のタンパク質濃度の低下が起こる糸球体の病気で、原発性の糸球体そのものの病変が原因である「一次性ネフローゼ症候群」と、何か別の病気があって糸球体の病変が引き起こされる「二次性ネフローゼ症候群」に分けられます。
微小変化型ネフローゼ症候群、巣状糸球体硬化症、膜性増殖性糸球体腎炎などが一次性ネフローゼ症候群の代表的な原因です。
また、糖尿病性腎症、全身性エリトマトーデスに伴うループス腎炎などが二次性ネフローゼ症候群の原因になります。子供でも大人でも一次性ネフローゼ症候群が多く、子どもで90%以上、大人で70~80%といわれています。
ネフローゼ症候群の症状の第一の特徴は、強いむくみで、まぶたのあたりや足のすねなどに出て、手で押すとへこむほどです。ひどくなると体中がむくんでお腹の中や肺のまわりに水がたまってしまいます。
尿量が少なくなり、食欲不振もみられますが、体重が著しく増加します。
ネフローゼ症候群では、間質に血液中の水分が漏れるため、体全体の体液量は増えているのに体を循環する血液量は減少します。その結果、腎臓に流入流出する血液量が減り、腎前性腎不全の状態になることがあります。これは大量発汗の後、水分の補給が不十分なときに腎不全を起こすのと同じようなことで、糸球体に流れ込む血液が不足してろ過が出来なくなる状態です。
このタイプの腎不全は適切な処置を行えば正常になりますが、なかには尿細管の一部が死んでしまい、腎不全が慢性化することもあります。
また、蛋白尿(尿の泡立ち)、高血圧、貧血、肺水腫(息苦しさや息切れ、疲れやすさなど)が見られます。
ネフローゼ症候群の診断基準は以下のように定められています。
(1)蛋白尿:3.5g/日以上が持続する。
(2)低アルブミン血症:血清アルブミン値3.0g/dⅬ以下。血清総蛋白量6.0g/dⅬ以下も参考になる。
(3)むくみ
(4)脂質異常症(高LDLコレステロール血症)
上記の(1)と(2)を満たしている場合、ネフローゼ症候群と診断されます。この他むくみと脂質異常症が診断の補助となります。
まずは、尿検査と血液検査が行われ、上記の基準を用いて診断します。その後超音波検査やCTで腎臓の形態を評価し、原因疾患を特定するために、腎生検(細い針で腎臓の組織を一部採取する検査)が行われます。
ネフローゼ症候群は初期は入院による安静、臥床、薬物療法が治療の基本です。安静にするだけでたんぱく尿とむくみが軽くなることもあり、安静にする事により腎臓の働きを安定させます。
薬物療法はまず第一に選択されるのが副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)です。その他、利尿薬、抗凝固薬、抗血小板薬、免疫抑制薬などが用いられます。
また、食事療法として塩分の制限が必要になります。
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 14:10 / 院長コラム コメント&トラックバック(0)