シェーグレン症候群に対する当院の治療はまず東洋医学的観点により、機能が低下している臓腑、主に『肺』『脾』『腎』の機能を補うような治療を施していきます。治療前に脈診・舌診・腹診などを用いて、特にどの部分が弱っている可能性があるか問診をいたします。
また、自己免疫疾患の場合でも自律神経の乱れが見られることが多いため自律神経の状態を自律神経測定器で計測してその結果をふまえて自律神経調整治療も行っていきます。
特にドライアイが強く出ている方の場合は、ドライアイの治療を積極的に行っていきます。あわせてドライマウスの施術も頬周辺のツボを使って行っていきます。
シェーグレン症候群の治療期間につきまして体質の変化などを目的に3か月ほどと比較的長めの治療スパンを見ていただいております。最初の一か月ほどは週に2回ほどの間隔で詰めて治療を行い、それから徐々に治療間隔を延ばしていくと効果的です。
シェーグレン症候群は、1930年にスウェーデンの眼科医(シェーグレン)によって報告されたのが最初と言われています。40代・50代の方に多く発症し、特に女性に多く男女比は1対14ほどといわれています。1993年度の政府による自己免疫疾患調査によるとシェーグレン症候群の有病率は10万に約15人程度の割合とされていますが、病院にかかっても疾患の特定に至っていない場合も多いと推察されています。
シェーグレン症候群は、自分の体を自分とは違うものと認識してしまい自分の体を攻撃してしまう自己免疫疾患だと考えられています。自己免疫疾患は、よく知られている病気では関節リウマチや全身性エリテマトーデスがあり、膠原病として一括りにされることもあります。人間の体には、ウィルスや細菌が体内に侵入してきた際にそれを認識して侵入者を攻撃して撃退する機能が備わっています。それを免疫機能と呼びますが、自己免疫疾患では自分の細胞も外からの侵入者も見分けがつかない状態に陥ってしまい見境なく攻撃してしまうのです。
その攻撃する場所が、違うことで疾患が分けられます。主に手の関節の節々を攻撃してしまうのが関節リウマチ、全身の各臓器が攻撃されてしまうのが全身性エリテマトーデスといった具合です。
そして、シェーグレン症候群では全身の分泌腺が攻撃を受けてしまう疾患です。
シェーグレン症候群は、主に2つの症候群に分類されます。
原発性シェーグレン症候群
関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患を併発していない場合、原発性シェーグレン症候群と言われます。日常的にドライアイやドライマウスに悩まされているが、日常生活にまでも支障をきたしていないこともあります。
続発性シェーグレン症候群
原発性シェーグレン症候群とは逆にシェーグレン症候群の他に別の自己免疫疾患を患っている場合を続発性シェーグレン症候群といいます。自己免疫疾患でも様々な病気があるため、それらの診断が非常に難しくなり、病院でも疾患の特定が難しくなる原因となります。
シェーグレン症候群は、主に分泌腺を侵入者と判断して攻撃するため分泌腺のある目や口腔、鼻腔、呼吸器などに症状が出ることが特徴です。
・ドライアイや疲れ目
ドライアイや疲れ目は、パソコンやスマホ操作など目を酷使する現代では非常に多い病気です。それは、画面を集中的に見ることで瞬きが減少して自然と目の表面の涙の量が少なくなることが原因です。しかしシェーグレン症候群の場合はそういったことではなく涙の分泌腺自体が攻撃を受けてしまうため涙の量が減ってしまうのです。
よって日常的に排出される涙の量も減ってしまいますが、感情による涙や玉ねぎを切ったり、目の中にゴミが入ったときなどに出てくる涙も出なくなってしまっている状態なのです。
・ドライマウス
唾液腺も攻撃を受けてしまうため唾液の分泌量も減ってしまいます。唾液には、抗菌・殺菌作用や口腔粘膜の保護、食べ物を潤滑に食道に運ぶ作用などがあります。それらの作用が低下してしまうため、虫歯・口内炎・口腔内が傷つきやすくなる・味覚が低下する・唇がひび割れてしまう・パサつく食べ物が食べられなくなるなどの状態を招いてしまいます。
・呼吸器疾患
鼻や気管支などにも粘液腺という分泌腺があります。それらの機能は外からの侵入者を痰として体外に排出する役割があります。その機能が低下してしまうため肺感染症などの呼吸器感染症にかかりやすくなっていましまいます。
・頭痛
シェーグレン症候群で頭痛に悩まされる方は多いです。吐き気を伴ったり頭ががんがんと痛む激しい頭痛に悩まされてロキソニンなどの鎮痛剤も効果がなく、慢性的な頭痛となり集中力の低下やめまい、精神疾患と発展していくこともあるので注意が必要です。
・その他
自己免疫疾患の特徴でもある血管の壁を攻撃してしまうため気づかないうちに青あざができたり、レイノー現象(寒冷刺激で痺れ感や皮膚が紫に変色する)が起きることがあります。関節にも影響を与えて膝や手首などといった間接に痛みを感じる方は多いです。関節痛につきましてはシェーグレン症候群にかかっている人の半数以上が悩まされているとも言われています。
また、膣の分泌腺も攻撃してしまうため膣炎や性交時の痛みの原因となったり、腎臓にも影響を与えて頻尿をともなうこともあります。
シェーグレン症候群の診断は、主に唾液の分泌量・涙の分泌量・血液検査・生検組織検査などから診断されます。
シェーグレン症候群の診断は、その他自己免疫疾患が絡んでいる可能性があるため難しく慎重となります。下記のような症状が当てはまる場合は一度病院で診断を受けてみましょう。
・一日に3回以上ドライアイ用の目薬をさす
・感動する映画など見ても涙が流れなくなった
・目が特に最近疲れやすくなった
・目が赤く、常にゴロゴロしている
・口の中が乾燥していると感じる
・食事の際に水をよく飲むようになった
・口内炎や口の中が切れやすくなった
・最近味覚を感じにくくなった
シェーグレン症候群の原因はいまだ特定されるまでには至っておらず、根本的な治療法がないのが現状です。
ドライアイには目薬や涙液プラグを入れたり、ドライマウスには人口唾液を用いたりとあらわれている症状によって治療法が異なっています。
シェーグレン症候群の予後は、症状自体は寿命を縮めるというわけではなく、個々の症状に対してきちんと治療していけば重症化することは少ないといわれています。
しかし、間質性肺炎などのその他自己免疫疾患を併発した場合は死にも至る危険性のある怖い病気です。その他、症状が長く続くことで心身ともにストレスを感じて免疫力の低下に繋がったり、うつ病などの精神疾患を患うことがあるので症状に気づいたらすぐに治療を行っていくことが重要となります。最初は対処療法で個々の症状にアプローチしていくことで少しでも心身へのストレスを軽減させていくことはQOL(生活の質)の向上につながるのです。非ホジキンリンパ腫の悪性リンパ腫の発症リスクが高まることが言われており注意が必要です。
Posted by 中目黒の鍼灸院 東京α鍼灸院|眼精疲労 at 19:09 / 院長コラム コメント&トラックバック(%)